芸人のオリジナルソング、歌ネタ、リズムネタなど、よしもと関連楽曲を一覧できるサービス「Laugh & Peace Music」。話題の現役医者芸人・しゅんしゅんクリニックPの「ヘイヘイドクター」や永井佑一郎の「アクセルホッパー」、チョコレートプラネットのネタに登場するEDeeeeNの「ストロングリーン」など、多彩な楽曲情報をチェックすることができる。
お笑いナタリーではLaugh & Peace Musicとタッグを組み、3回にわたる特集を展開。その第1回として、しゅんしゅんクリニックP、おばたのお兄さん、ひょっこりはんというコンビ解散を経て人気芸人の仲間入りを果たした3人による座談会の場をセッティングした。コンビ時代とは一転し、振り切れたパフォーマンスで世間の注目を集めた彼らの転身は、果たして本意なのか不本意なのか、はたまた売れるための戦略なのか。ピン芸人の道を選択した3人の思いとは。
取材・文 / 狩野有理 撮影 / 玉井美世子
僕たち2016年解散組!人気ピン芸人座談会
解散報告を受けて
輝くおばたを見て、ピンでもありだなって思った
──今日はコンビを解散しピン芸人として活躍中のお三方にお集まりいたきました。
おばたのお兄さん この3人で取材を受けるって初めてじゃないですか?
しゅんしゅんクリニックP 確かに。普通に仲良しだから照れますね。
ひょっこりはん しゅんPさんはNSCの2つ先輩でおばたは同期なんですけど、本当に仲のいい3人ですね。仕事もよく一緒になりますし。
おばたのお兄さん 僕ら、解散した年も同じなんです。僕が2016年の1月、ひょっこりはんが3月、しゅんPさんが6月。
──お互いの解散について聞いたときはどう思いましたか?
しゅんしゅんクリニックP 2人とも順調に行っているコンビだったから驚きました。「まあしょうがないんじゃない?」って言うしかなくて。とにかく2人とも、ムカついている感じでした(笑)。
おばた・ひょっこり あはははは!(笑)
おばたのお兄さん 怒りの念で固まってました(笑)。僕はひょっこりはんが解散するって聞いて「やっと!?」って言いましたもん。今までよく耐えてたなっていう。
しゅんしゅんクリニックP おばたは(解散を)言われたほうなんだよね。ひょっこりは自分から切り出して。
ひょっこりはん 僕は言って、言い返されてです(笑)。だから2人とも平和的解決には至らず。そのモヤモヤをしゅんPさんに聞いてもらいました。
しゅんしゅんクリニックP で、「しょうがない」とか言っていた自分が数カ月後に解散することになって。
おばたのお兄さん それこそフレミングさん(しゅんPが組んでいたコンビ)は意外でした。医者と美容師のコンビでもう定着していましたし、ヨシモト∞ホールのランキングシステムでは一番上のクラスで活動していましたから。医者っていうキャラはコンビのときからありましたけど、ピンネタは見たことなかったので「大丈夫かな?」って。
しゅんしゅんクリニックP あはははは(笑)。心配させてた?
おばたのお兄さん はい。自分も解散したばかりでしたけど、仲良しなので普通に心配しちゃいました(笑)。
ひょっこりはん おばたは解散してものすごくのびのびしていたんです。おばたを見て、ピンでもありだなって思いました。ウケるウケない関係なく、なんかめちゃくちゃ輝いてて。
しゅんしゅんクリニックP うんうん。解散した当時はとんでもないネタやってたよね。魔法使いみたいな格好でセグウェイに乗って登場したかと思ったら、ネタを飛ばして「ワー!」って叫んではけていくっていう(笑)。客席は「え?」ってなるんですけど、芸人はめっちゃ笑ってた。
ピンになって……
「これどこでウケんの!?」何が面白いかわからない
──ピン芸人になって、何が一番変わりましたか?
おばたのお兄さん やっぱり好きなことができるようになったことですね。コンビのときは、相方が才能もあるし見た目もよくて、僕が彼を引き立てなきゃいけない、出すぎないようにしようと勝手に思ってしまっていたんです。その反動でセグウェイに乗ったりしていたのかもしれません(笑)。
しゅんしゅんクリニックP 僕もピンになって解き放たれた感じはあります。コンビ時代はちゃんとしたボケとツッコミがある漫才をやっていて、ピンになった当初もフリップを使う構成のしっかりしたネタを作ろうとしていたんですが、途中から「ウケなくてもいいや」ってダンスや音楽を取り入れました。昔は全編通して「なんだこれ?」って思うようなネタをやるのは嫌だったんですけど、今は全然そういう気持ちはないです。みんなが笑ってくれるってことは、こういうネタでいいんだなって思います。
ひょっこりはん コンビだとなかなかそういうわけにいかないですもんね。僕も、そもそも漫才をしたいっていう気持ちがそんなになかったですし、ツッコミが向いているとも思っていませんでした。もっと弾けたいのにそういう役回りじゃないからとずっと抑え込んでいたんです。だから解散したら、もう真逆のことをしてやろうと思って。今は縮ませていたバネが伸び切った状態です。
──では漫才をもう1回やりたいと思うことはありませんか?
しゅんP・おばた・ひょっこり まったくないですね!
しゅんしゅんクリニックP 親しい人と組んでっていうのは楽しいかもしれないですけど。
おばたのお兄さん 「M-1」獲りたいとかは全然ないです。
しゅんしゅんクリニックP 去年、先輩に誘われて「M-1」に出たんですけど、まず人とスケジュール合わせて練習するのがめっちゃめんどくさくて。
おばた・ひょっこり あはははは!(笑)
しゅんしゅんクリニックP なんでこの人に合わせて予定組まなきゃいけないんだろうって思っちゃう。
おばたのお兄さん わかります(笑)。どんどんそういう人間になっていきますよね。
──自由になった分、大変なことも増えたのでは?
おばたのお兄さん 「処理してくれる人がいない」ってけっこう不安じゃなかったですか? 1人コントを考えていても、何が面白いかわからないっていうか……。
しゅんしゅんクリニックP うわ、めっちゃわかる! 自分で作って、「これどこでウケんの!?」ってなる。
おばたのお兄さん 相方との掛け合いじゃないから、どこでウケるか計算できないんです。もちろん自分では面白いと思って作っているんですけど、「果たしてウケるのか?」って考えると途端にわけがわからなくなる。だから僕は1人コントを諦めて、もともと好きだった歌ネタとかモノマネのほうに行きました。
共通するスタンス
変なプライド一切ない
──同じ年に解散しピン芸人として活躍中という境遇が似ている3人ですが、笑いに対する姿勢で共通することもありますか?
ひょっこりはん いい意味でプライドみたいなものがない気がします。例えば、本気でやっている趣味や流行っているものを安易にネタにしたくないっていう芸人もけっこういると思うんですけど、ダンスが好きで医者と掛け合わせてみるとか、小栗旬のモノマネでピコ太郎さんのPPAPをやるとか、割り切っている感じは共通しているのかな。
おばたのお兄さん しかも「小栗旬でPPAP」って全部人のものじゃないですか。「おばたのお兄さん要素ねえじゃねえか!」っていう(笑)。言ってみれば賞レース無視のネタなんですが、一切プライドないです。自分にとっては「テレビに出たい」が一番なので!
──潔いですね。
しゅんしゅんクリニックP 今Instagramで看護師さんあるあるを募集しているんですけど、医者に対する愚痴発散所みたいになっていてすごく面白いんですよ。それを歌詞に採用して「ゴーゴーナース」っていう曲を作ろうと思っていて。僕もそこらへんのプライド全然ないので、堂々と一般の人の力を借ります。
ひょっこりはん あとは、周りの人の意見を聞く素直さが全員にあると思います。僕は解散したときにいろんな人に自分の何が面白いか聞いて回って、「顔が変」って言われて今の芸風になりました。まさか顔芸をやることになるとは思いもしませんでしたけどね(笑)。30年間毎日見てきた顔なので、なんならカッコいいくらいに思っていましたから。
しゅんしゅんクリニックP え、めちゃくちゃカッコ悪いよ?
ひょっこりはん めちゃくちゃカッコ悪いってはっきり言わんでええねん!(笑)
しゅんしゅんクリニックP 確かに人の意見や流行を柔軟に取り入れるところが共通しているなっていうのは2人の話を聞いていて思いました。僕の場合は、自分が好きなのはもちろんですが、お客さんが笑ってくれたからこれをやろうって思うことが多いです。
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しゅんしゅんクリニックPの「P」はなんの「P」?
2019年3月29日更新