ナタリー PowerPush - ジャッカス / クソジジイのアメリカ横断チン道中
ジョニー・ノックスヴィル×ケンドーコバヤシ 日米“最狂のふたり”が初対談
全米のテレビ番組で人気を博し、映画にもなった「ジャッカス」シリーズ。その最新作で1億ドルの興行収入を突破した「ジャッカス / クソジジイのアメリカ横断チン道中」が、ついに日本でも公開された。本作はドッキリ企画とロードムービーを合体させた異色作。“最狂のふたり”こと86歳のスケベなじいさんと8歳の生意気な孫が、アメリカを横断しながらスーパーで万引きしたり、結婚式のシャンパンタワーにダイブしたりと各地で大暴れする。
そしてこのたび、アーヴィングじいさん役を演じたジャッカス軍団のリーダー、ジョニー・ノックスヴィルがファン待望の来日。お笑いナタリーでは本作を一足先に鑑賞したケンドーコバヤシとジョニーとの対談の場を用意した。人を驚かせることを得意とする両者には、笑いの感覚や考え方に共通する部分はあるのだろうか。
取材・文 / 遠藤敏文 撮影 / 辺見真也
ドラマの中にいたずらを組み込むというチャレンジ
──今日はよろしくお願いします。
ケンドーコバヤシ 初めまして、ケンドーコバヤシです。
ジョニー・ノックスヴィル オーライ。オネガイシマス(笑)。
──まずはケンコバさん、今回の作品で一番好きなシーンから教えてください。
ケンコバ 全部面白かったけど、一番好きなのはやっぱり美少女コンテストで孫の男の子が女装してポールダンスを踊るシーンですね。あのひっくり返し方は最高でした。
ジョニー ハハハハ(笑)。グーッ!
ケンコバ それと一番笑ったのは、ジョニーさんがハーレー軍団(ライダースを着た児童虐待保護団体)と別れるときにハーレーを倒していったシーンです。
ジョニー オー、イエス! ハハハハ(笑)。ドウモアリガトウゴザイマス。
──ジョニーさん、今回の作品で一番力を入れた点は?
ジョニー このシリーズは常に先に突き進むようにして作ってきたんだけど、今回はドラマの中にいたずらを組み込むことに初めて挑戦したんだ。あのバイカーたちを刺激するシーンでは、父親のチャック役を演じていた俳優(グレッグ・ハリス)が実際かなり危険な目に遭っていてね。バイカーの1人が彼の腕をへし折ろうとしたんだよ。「降参、降参!」って大変な状況で(笑)。実はチャック役を決める段階でこのシーンのことを説明して、「もしかしたら5~6発殴られるかもしれないけどOK?」って聞いたら「OK!」って覚悟してくれたんで、彼に決まったんだ。
ケンコバ ブレイブハートの持ち主ですね(笑)。ほかに撮影するときに危険だと思ったシーンは?
ジョニー 男性ストリッパーが出てくるバーは、もともと暴力が盛んで銃撃があったりした場所なんだ。
ケンコバ あははははは(笑)。
ジョニー そこでいたずらを仕掛けるってことは、可能性として自分が撃たれるか、刺されるか(笑)。でも、とんでもなく素晴らしい映像が撮れるかもしれないと思ってやってみたら、実際すごい映像が撮れたよ。僕のクルーは僕がボコボコにされるのを期待したけどね。裏話を明かすと、あのシーンではストリッパーたちが登場するまでに1時間ぐらいあったんだけど、その間にアルコールをたくさん飲んで酔っ払ってしまったんだ。キャラクターと自分自身が入れ替わってしまって、暴れ回って「フゥーフゥー! ナマチュウクダサーイ!」って(笑)。結果的にはうまくいったけどね。
ケンコバ かなりキワキワのシーンだったんですね。
いたずらを仕掛けるときに心がけていること
──お2人とも人を驚かせることを得意としていますが、それぞれコツをちょっと教えてもらえますか?
ジョニー ハハハハハ(笑)。(ケンコバに向かって)噂は聞いてるよ!
ケンコバ この映画でも、ビンゴ大会のシーンでジョニーさんが横の人に話しかけるようにしながら、実際はそのまわりの人にも聞こえるように大きい声で話をしてたじゃないですか。ああいうのは重要ですよね。
ジョニー そう、あれはすごく重要だよ。
ケンコバ 僕もよくやる手口なんです(笑)。
ジョニー ハハハハハ(笑)。自分がいたずらを仕掛けるときに心がけているのは、とんでもなく演じるのではなく、あくまでも真面目に普通に演じるということ。そうじゃなきゃ信じてもらえないからね。自動販売機に自分のペニスが挟まってしまったシーンもそう。
ケンコバ あれはほんとに挟まれたような表情がよかった(笑)。
ジョニー ああいう状況に陥ると、周りのみんなが興奮して理性を失ってしまうようなところがあって、より一層本当の出来事のようになるんだよ。
ケンコバ なるほど。あと、今回はいたずらを仕掛けるのがおじいちゃんという設定がすごくいいですよね。おじいちゃんがやるわけないことをどんどんやるから面白い。
ジョニー そう。例えばペンギンの看板を車で轢き倒すシーンでは、店員の男が僕に向かって「殴るぞ、殴るぞ」って言ってきたよね。でも、「殴る」と口にする人は大抵殴らないんだ。本当に殴る人は何も言わずに殴るからね。
ケンコバ 確かに。
ジョニー あれは86歳の老人だったから殴られなかったんだけど、そのままの自分だったら完全に殴られてたよね。もっと細かく言うと、男の子役のジャクソン・ニコールはまだ8歳だから、ペンギンを轢くときには車の中にいられず、彼の座る席にはダミーの人形を置いていたんだ。でも、ある時点で店員が車の中をのぞき込んだときにダミーを見られてしまって。しかも無線機もそこにあったから、「これはもうバレちゃうかな」と覚悟したんだけど、彼は完全に理性を失っていて、どうやら僕のことをダミーを助手席に乗せて運転する変態だと思ったらしいんだ。
ケンコバ はははは(笑)。ちょっとおかしい人だと思ったんですね。
ジョニー そうそう。映画本編では使わなかったけど、あの男、ダミーで僕を殴ったんだよ。だから僕は「もう1回殴って!」って彼と目を合わせながら尻を突き出して(笑)。
ケンコバ あははははは(笑)。
ジョニー 彼はそこで呆れて去っていったけどね。
映画「ジャッカス / クソジジイのアメリカ横断チン道中」
体を張ったハードなパフォーマンスで人気を集める「ジャッカス」シリーズ。その最新作となる今作は、ジョニー・ノックスヴィルが86歳のスケベなじいさんに変装して街中でいたずらしまくるドッキリ企画とロードムービーを合体させた新感覚の映画。じいさんと8歳の生意気な孫がアメリカを横断しながら各地で大暴れする。アメリカではオープニングで3200万ドルを記録し、「ゼロ・グラビティ」を軽々と抜き去り初登場No.1スタートとなった。3月29日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー。
右 / ジョニー・ノックスヴィル
1971年生まれ。テネシー州ノックスヴィルで生まれ育ち、18歳のときに役者を目指してカリフォルニア州に移った。1997年にジェフ・トレメンス、スパイク・ジョーンズとともに「ジャッカス」のアイデアをMTVに売り込み、番組は大成功を収める。
左 / ケンドーコバヤシ
1972年生まれ、大阪府出身。1992年に大阪NSC(吉本総合芸能学院)に入学。いくつかのコンビを経て2000年からピン芸人として活動している。現在のレギュラー番組に「にけつッ!!」「バイキング」など。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。