「本日も絶体絶命。」は、「有吉の壁」(日本テレビ系)などを手掛ける橋本和明が総合演出、TikTokクリエイターのコンビ「伊吹とよへ」の伊吹が監督を担当する新たな縦型ショートコントコンテンツ。ハナコ、吉住、かが屋に加え、窪塚愛流、田中美久、堀未央奈、そして学校の先生モノマネで人気の動画クリエイター・ウンパルンパが参加し、「絶体絶命」をテーマにしたショートコントを届ける。コントの可能性を広げる異業種の化学反応が見どころだ。
今回の特集では、ハナコ、吉住、伊吹による座談会を実施。ジャンルの垣根を越えた面々でコントを作ることへの手応え、好きなコントなどを聞いた。またスケジュールの都合で座談会に参加できなかったかが屋へのショートインタビューも行ったので、併せてチェックしてほしい。
取材・文 / 塚越嵩大撮影 / 小坂茂雄
もっと“この世代”でコントをやりたい
──今回の企画内容や出演者の顔ぶれを聞いたときのご感想は?
ハナコ秋山 コントのコンテンツを作るには最高の座組みだなと思いました。やり慣れた芸人仲間に異業種の方も入るし、単純にワクワクしました。
ハナコ岡部 「有吉の壁」の現場で橋本(和明)さんから「こういうことを考えてる」という話を聞いていたんです。その場でマネジャーさんに「こういう話がくるかもしれないので、絶対にやらせてください」と言って、すぐ橋本さんのところに戻って「マネジャーさんもやらせてくれるらしいです」と伝えました(笑)。あんまりないんですけど、演者がマネジャーとスタッフの間に入ってどんどん話を進めるという。楽しみすぎて。
ハナコ菊田 僕が言われたのは「なんとか予算確保する」って(笑)。最近では珍しいですよ。コント番組はセットを組むので本当にお金がかかるんです。
吉住 最初に話を聞いたのは、ちょうど東京03さんの武道館公演に出させていただいたときで、それを見た橋本さんが「よかった!」と褒めてくださって、さらに「この(吉住の)世代でも、もっとコントをやりたいんだよね」と仰っていて。それがすごくうれしかったんです。でも、なかなか話がそこから進まなくて……。
秋山 確かに不安な期間あったよね。
吉住 「あの話、なくなっちゃったのかな?」と思って。共演者として名前が挙がってたハナコ秋山さんに「橋本さんに『あの話、どうなったんですか』と言ってもらっていいですか?」とお願いしました。
秋山 なんで俺に言わすの?(笑)
岡部 「この世代でコントやるんじゃないの?」って。
吉住 実際は橋本さんも忘れてたわけじゃなくて、ちゃんと進めてくださっていたみたいで。裏で“大人の動き”をしていて時間がかかっていたという(笑)。待った分、ちゃんと形になったときはうれしかったです。
岡部 心配だったのは縦動画という点だったんですけど、伊吹さんが携わると聞いて「なんて頼もしいんだ!」と思いました。
伊吹 ありがとうございます。
岡部 僕らからすると「(コントに)出ないの?」とも思っています。
伊吹 確かにいつも「伊吹とよへ」として作っている動画では僕が出役をやらせてもらっていますが、今回は芸人さんの演技力やパンチ力を大事にするためにも、裏方に専念しようと思いました。
──肩書きとしては監督ということですが、コントコンテンツの監督に抜擢されるプレッシャーはありませんでしたか?
伊吹 橋本さんに声をかけていただいたときは「おぉ!?」ってなりました(笑)。でも、「ぜひやらせてください」と。監督という肩書ですけど、僕ができることはとにかく「縦型でどう見せるか」「カット割りをどうするか」を考えることなので、それに集中していました。カットを割りすぎると面白さがなくなっちゃうときもあるけど、緊迫感を出したいときにはあえてカットをたくさん作るとか。
もはやジャズだよね
──実際にコントを撮影した感想は?
秋山 手応えはあります。めっちゃ順調ですよね?
伊吹 順調です。縦型動画は冒頭の1~2秒でどれだけたくさんの人に見てもらえるかが重要なので本数を出せば出すほど、どういうものが見られるかという傾向は見えてくると思います。
──伊吹さんにとって、普段の動画を撮影するときと、芸人さんとコントをやるときの主な違いはなんですか?
伊吹 ワンカットでいけるところが多いのは芸人さんならではだと思います。最近は縦型のショートドラマも増えてきていますが、ここまでワンカットを中心に作ってるアカウントはそんなにないんじゃないかな。今回のコントを撮影したものを見たとき、単純に「あんまり割りたくないな」と思ったんですよ。芸人さんの演技の面白さって“間”なんだなという発見がありました。最近の若い子は間を重視している動画はあまり見ないんですけど、だからこそ新鮮な面白さがあるんじゃないかと思っています。自分も作っていて楽しいです。
──逆に芸人さんたちにとって、普段のコント撮影とはどのようなところが違いますか?
吉住 「フリは短いほうがいい」というのは普段作ってるコントと全然違いますね。でも、そういう作り方もあるんだという発見があって面白いです。いろいろと勉強になります。撮ったあとにみんなで「ここはこうやったほうがいいのかな?」とか話し合ってるのもすごく楽しいんですよ。いつもは1人で生きているので……。
一同 ははははは!(笑)
秋山 悲しい言い方しないでよ。
吉住 人がいるっていいなと思いました(笑)。
秋山 チームだからね。確かにすごく勉強になります。手応えのあったコントが意外と再生されてなかったり(笑)。僕が脚本を書いた、トイレで漏れそうになっている男たちのコントは再生回数が最下位なんですよ。現場の大人たちは笑ってたんです。窪塚愛流くんの我慢する演技も完璧だったんです。なのに……。
岡部 いつものコントは振りに振ってから、見せたいシーンをやるんですけど、今回は見せたいシーンを最初に持ってくるんです。そこからペースを落とさず1分間走り切れるかという勝負。いつもと全然違いますね。
秋山 百人一首で賀屋がビンタされるコントは、始まっていきなりビンタなんです。普通のコントだったらありえない(笑)。
岡部 最初からトップスピード。
──菊田さんは普段の演じ方と違う部分はありましたか?
菊田 コントを撮るときは大抵、場当たりをやって、リハをやって、そのあとに本番なんですけど、「本日も絶体絶命。」はいきなり本番。初めての撮影が僕と岡部と窪塚愛流さんの3人でやるコントで、僕、まるでセリフを入れてなかったんですね。
秋山 入れておけよ。
菊田 「もう本番なんだ!」ってビックリして。だから……この現場に来るときはいつもよりも台本をちゃんと読んでます。
秋山 いつも読めよ(笑)。
──台本は自由な部分もかなりあると伺いました。
吉住 そうですね。私が脚本を担当するときも、面白い人しかいないので「きっとこういう表情してくれるんだろうな」と思いながら、セリフじゃなくて「!」みたいな記号で書くことも多いです。本番では思ってる以上の表情をしてくれて、「こういう仕上がりになるんだ!」という驚きもあって。……最高の奴らです(笑)。
岡部 もはやジャズだよね。
吉住 セッションさせていただいてます。
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賀屋をビビらせた堀未央奈のアドリブ