お笑いナタリー Power Push - Netflixオリジナルドラマ「火花」
又吉直樹「火花」映像化 笑いとは。人生とは。もがきながら懸命に生きた若手漫才師の10年を描く
「林くんは僕が育てるから!」(好井)
──スパークスのお2人は「何度もネタ合わせした」と舞台挨拶でおっしゃっていましたね。
林 めっちゃしましたね。
好井 しかもネタ自体も僕ら、けっこう自分たちで考えていて。基本は作家さんが書いてくれた台本をもらって読むんですが、僕がボケを出して、林くんが笑ってくれたのを採用するっていう作業もしたんですよ。だからネタの6割5分はほんまに2人で作った感じで。撮影中の4カ月はスパークスっていうコンビで何本も漫才を披露するから、漫才ではウケたかったんです。
村田 単独ライブのシーンの導入のしゃべりも自分たちで考えたん?
林 全部作ったやつです。
好井 林くんと「どうします?」「事務所イジりましょうか」って話して、マネージャー(染谷将太)のことや事務所の場所とかをイジってます。ちょっとキザなことも入れようかってことで「一度も単独ライブできないで辞めていく芸人もいる」みたいなことも言っているんですが、これ、いつだったか僕が林くんにした話なんです。林くんはこういう、僕自身がいつ言ったのかも覚えてないようなことも覚えているんですよ。
林 でも僕、ちょっと気まずかったんですよ。作家さんに対して。
波岡 あははは!(笑) ネタがはじめと全然違うからな。
林 「全っ然書いた通りやってくれへんやん!」って、作家さんの叫びが僕のボイスメモに残ってます(笑)。
村田 そらそうですよ!(笑) 作家からしたら「寝ずに考えてきたものを!」ってなりますって。
好井 もちろん作家さんが書いてくれたものがベースにあるから僕らもボケを足せるんで、悪いなあとは思ってたんですけど……。
林 ボケの言い方ひとつとっても、やっぱり芸人さんっていろんな引き出しがあって、僕のレパートリーでは到底敵わない。だから僕のボケを一旦、好井さんにやってもらって、真似させてもらっていたんですけど、それがまた作家さんが書いてきたものからどんどん変わってしまって。
好井 あと、林くんがいろんな人に「間を詰めたほうがいい」「延ばしたほうがいい」って言われて、パニックになってることがあったんです。だから「僕の林くんにやんやん言うのやめてくれ! 僕が育てるから!」みたいな気持ちになってもうて。
村田 実際にお客さんの前でやるのは僕らなので、難しいですよね。
好井 そんなこと言って、あほんだらも揉め事ありましたやん!
波岡 言われてみれば確かにな(笑)。
村田 漫才っていうのは、そういう紆余曲折を経てできあがるものなんです(笑)。
林 作家さんはすべてウケようと思って作ってるんじゃなくて、スパークスやあほんだらの成長にあわせて漫才を書いてくださっていて。でもやっぱり僕らはウケないとつらいから、こんなワガママを言わせてもらったというか。
好井 ただただスベリたくなかったんです(笑)。
村田さんは、マイクの前に立つ直前に一発だけ手を叩く(林)
──実際に相方とサンパチマイクを挟んで漫才するときはどう感じましたか?
波岡 僕は映画「ベイブルース~25歳と364日~」でがっつり漫才をやらせてもらっていたので、サンパチの前に立つ緊張というよりかは、あほんだらとして漫才をやる覚悟みたいなものは感じながらやりました。
好井 全然、役柄違いましたもんね。
波岡 そのときはツッコミやったからね。今回はボケっていうのもあって、別の気負いはありました。
林 僕は怖かったですね。ちょっとした素人感が出ると、残念な感じになるので。
波岡 残念やなー! わかるわ、それ。
林 普段やっているお芝居では、「これがいいんじゃないか」って思うことを勇気を持ってやったりするんですけど、漫才に関しては経験がなさすぎて勇気を出す以前にわからないことだらけで、演技でどうにかなることではないなと思いました。特に「火花」は日常と芸人さんの生きざまを描いた作品なので、入り込まないと絶対にボロが出るというか。立ち姿、2人の距離感、声の大きさ、細かいことも常に好井さんに聞きながらやっていました。
波岡 僕が一番思ってたのは、「絶対調子乗らんとこ!」ってことです。ウケたら「面白いんかな」って勘違いしてしまうし、みんなが「やっぱ俳優さんは違うわ」って言ってくれるのも真に受けてたらおかしくなるから、僕らは絶対に謙虚にやるべきで。
村田 舞台挨拶でも漫才を見せようか、みたいな話になったことがあったんですけど、波岡さんが「絶対にしない!」って言ってて。
波岡 お客さん絶対笑わんって。なかなか怖いから、漫才は。
──最後に、あほんだらから見たスパークスの魅力、スパークスから見たあほんだらの魅力を教えてください。
波岡 スパークスはポップやったよな!
村田 服装もめっちゃオシャレやったし、井下好井には悪いけど、抜群に華がありました(笑)。
好井 林さんの横におったら、こっちも輝いてるような気がしましたもん。
波岡 輝いてたよ! 女の子にもワーキャー言われそうやし。
村田 スパークスが本当におったら、それなりに売れますよね。
波岡 ほんまにほんまに。男前やしな!
好井 あほんだらは逆で、原作を読んだときから泥くさいイメージを抱いていて、もうそのまんま。芸人からは面白いって言われてるけど、テレビ的なことができなくて売れへん、っていうのを、本当にうまいこと演じられてて。実際、こういう芸人ばっかりなんですよ。あほんだら見て「これ俺らのことちゃうか?」って思う芸人、山ほどいると思います。それを4カ月くらいで完璧に表現するっていうのはすごいですよね。
林 僕、ひとつめっちゃ「うわ!」って思ったことがあって。漫才師って普通「どうもー」って手を叩きながら出てくるじゃないですか。村田さんは、マイクの前に立つ直前に一発だけ叩くんですよ。それがめっちゃカッコよくて。客に媚びてないというか、それがあほんだららしすぎるなって思っていたんです。
好井 よう見てんなあ!
林 「これからすごいことやるから、見なくてもいいし見てもいいし」みたいな感じがして。
村田 めちゃくちゃ見てくれてますね……!
波岡 村田、めっちゃうれしなってるやん!(笑)
好井 普段もそうやってるんですか?
村田 うん、やってるわ。1回だけやんねん。
林 出てきたときの「何かしてくれるんじゃないか」っていう期待感が、すごくありました。村田さんのこの登場の仕方も、波岡さんの存在感も、これぞあほんだらやなって思いますね。
- Netflixオリジナルドラマ「火花」
第153回芥川賞を受賞したピース又吉の中編小説「火花」を全10話でドラマ化。漫才の世界に身を投じた若者たちが現実と夢の狭間で苦しみながらも、自分らしく生きる様を描く。
スタッフ
総監督:廣木隆一
監督:廣木隆一(1話、9話、10話) / 毛利安孝(2話) / 白石和彌(3話、4話) / 沖田修一(5話、6話) / 久万真路(7話、8話)
原作:又吉直樹「火花」(文藝春秋刊)
主題歌:OKAMOTO'S「BROTHER」
挿入歌:SPICY CHOCOLATE「二人で feat. 西内まりや&YU-A」
キャスト
林遣都 / 波岡一喜 / 門脇麦 / 好井まさお(井下好井) / 村田秀亮(とろサーモン) / 菜 葉 菜 / 山本彩(NMB48)/ 渡辺大知(黒猫チェルシー) / 高橋メアリージュン / 渡辺哲 / 忍成修吾 / 徳井優 / 温水洋一 / 嶋田久作 / 大久保たもつ(ザ☆忍者) / 橋本稜(スクールゾーン) / 俵山峻(スクールゾーン) / 西村真二(ラフレクラン) / きょん(ラフレクラン) / 染谷将太 / 田口トモロヲ / 小林薫
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Netflixとは
世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190カ国以上で8100万人を超える会員を抱え、オリジナルシリーズを含めたドラマや映画、ドキュメンタリーを数多く配信している。
左から
好井まさお(ヨシイマサオ)
1984年4月27日生まれ、大阪府出身。NSC東京校11期生。2006年11月より、井下昌城とのコンビ・井下好井として活動中。2015年9月に双子の女児が誕生した。
林遣都(ハヤシケント)
1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年、主演映画「バッテリー」で俳優デビューし、日本アカデミー賞をはじめとするその年の多くの新人賞を受賞した。7月にスタートするドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)に心療内科医師・中島保役で出演。今後、映画「にがくてあまい」「花芯」「しゃぼん玉」などの公開を控える。また舞台初出演作「M&Oplaysプロデュース 家族の基礎 ~大道寺家の人々~」が9月より東京・Bunkamura シアターコクーンのほか、大阪、愛知、静岡で上演される。
波岡一喜(ナミオカカズキ)
1978年8月2日生まれ、大阪府出身。2005年公開「パッチギ!」で注目を集め、以降映画やテレビドラマ、舞台などで多数の作品に出演。映画「クローズZERO」シリーズ、「ベイブルース~25歳と364日~」「図書館戦争」シリーズ、ドラマ「ごちそうさん」(NHK)などが近年の主な出演作。現在、「立花登 青春手控え」(NHK BSプレミアム)に出演中。
村田秀亮(ムラタヒデアキ)
1979年12月3日生まれ、宮崎県出身。NSC大阪校21期生。2002年に高校の同級生である久保田和靖と、とろサーモンを結成。「第27回ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞、「第38回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞など、受賞歴多数。
2016年6月20日更新