お笑いナタリー Power Push - Netflixオリジナルドラマ「火花」
又吉直樹「火花」映像化 笑いとは。人生とは。もがきながら懸命に生きた若手漫才師の10年を描く
Netflixオリジナルドラマ「火花」全10話が、世界190カ国で配信されている。
第153回芥川賞を受賞したピース又吉の中編小説「火花」を5人の監督が実写化。林遣都、波岡一喜、門脇麦、井下好井・好井、とろサーモン村田といったキャストとともに、売れない芸人とその周囲の人たちの心の機微を丁寧に描いた。
お笑いナタリー、映画ナタリーでは本作の特集を展開中。今回はお笑いコンビ・スパークスを演じた林と好井、コンビ・あほんだらを演じた波岡と村田の4人による座談会と、主題歌を担当したOKAMOTO'Sのオカモトショウから届いたコメント、さらに劇中フォトギャラリーを掲載する。
文 / 狩野有理 撮影 / 永峰拓也
好井さんには僕がどういう人間かっていうのを全部話そうと思った(林)
──顔合わせのときの“相方”の印象はいかがでしたか?
好井 「有名人や!」って思いましたね。それと同時に「仲良くなれんのかな?」という不安もありました。もともと波岡さんと村田さんはお知り合いで、顔合わせのときからすでに打ち解けていたんですが、僕と林くんはずっとしゃべる機会をうかがっていて。帰り際、お互いにじり寄っていきました(笑)。そしたら「家近いですね」「ファミレスとかでネタ合わせしましょうか」とか気さくな感じで話してくれて。最初は「芸人のことバカにしてない?」とか思っていたんですけど。
村田 その気持ち強いねん、好井。卑屈やねん。
波岡 芸人さんがって問題じゃないよな。好井の問題やで(笑)。
好井 林くんのことはいろんな作品で見ていたっていうのもあって、こっちが構えちゃっていましたね。
林 好井さんがそういうこと思ってるんじゃないかなっていうのはけっこう序盤で感じましたよ。
好井 え、ほんま?(笑)
林 だからとにかく、「僕なんか本当になんでもない奴です」ってことをまず伝えようと。これから長い期間一緒になるから、好井さんには僕がどういう人間かっていうのを全部話そうと思って。
波岡 誤解されがちやからな、遣都は。
好井 最初に「この人いいかも!」って思った瞬間が、2人で鳥貴族に行ったとき。お笑いの話をして、芸人のことをすごくリスペクトしてくれてるのがわかったんです。それに何より、「鳥貴族でええんかい!」とも思ったし。
波岡 それは鳥貴族に失礼や!
好井 こんな俳優さんが大衆居酒屋に行くとは思わないじゃないですか。
村田 僕らは1回、知り合いを介して飲んだことがあったんですよ。
波岡 中野坂上でな。
村田 僕はもともと波岡さんのことがすごく好きで、そのとき普通に「写真撮らせてもらっていいですか?」ってツーショットをお願いしました。その次の年に「沖縄国際映画祭」でまたお会いして、それから2年後、まさか「火花」で相方役をやるとは。波岡さんってお兄さん的な存在で、すごく一緒にいて頼りがいがあるんです。
波岡 村田と1歳しか違わないけどな。
村田 楽屋でみんながいるとき、場の空気が沈まないように波岡さんがずっとしゃべってくれるんです。
波岡 村田もずっとしゃべってたで?
村田 波岡さんがいい空気にしてくれてるから、話しやすくて。波岡さんは僕が相方だって聞いてどう思いました?
波岡 「あ、村田や」って。
村田 感想短すぎですって(笑)。
波岡 いやいや、ラッキーだなと思いましたよ。とろサーモンも好きやったし、村田も知ってたから、最初の“探りあい”みたいなものをはしょれた。好きな知り合いが相方だったっていう。
村田 僕にとっても最高ですよ。
波岡 トーテムポールみたいな顔してるけどな。
村田 誰がトーテムポールや。何段目か言え!
好井 (笑)。この「何段目か言え」、何回もやってるんですよ。波岡さんが好きすぎて。
村田 漫才のシーンの撮影のとき、何時間もスタンバイしている観客役のエキストラさんを和ませるために、波岡さんが舞台に出ていくんですよ。で、僕も行かなあかんと思って出ていくと、「何トーテムポールみたいな顔してんねん」って言ってくるんですけど、このくだり何回もやってるからお客さん1個も笑わへん(笑)。僕的にはほんまに地獄でした。
波岡 あははははは(笑)。
村田 ウケるウケない関係なくて、場を和ませるためにやってるから。このへんがお兄さんですよね。あと、めっちゃ屁こきます。
波岡 この前も舞台挨拶中に出そうになって、さすがに我慢したわ。
好井 村田さんが「めっちゃ臭いな! ウンコ食うたみたいな屁してるわ」ってツッコんだときあったじゃないですか。「ウンコ食うたみたいな屁ってどういうことなんやろ?」って周りのみんなが思ってる中、2人だけケタケタ笑ってて、仲ええなーって思ってました(笑)。
神谷はとろサーモンのスタイルでボケてる(波岡)
──林さんと波岡さんはもともとお笑いはお好きなんですか?
林 小さい頃からテレビではよく見ていました。
波岡 僕はあんまりテレビ観ないんですよ。でもとろサーモンは面白いなって思ってましたよ。なんで思ってたんやろ? だいぶ昔、とろサーモンが大阪にいた頃ですね。
──ではとろサーモンさんが敗者復活戦で活躍した、昨年の「M-1グランプリ」は応援してました?
波岡 いや、まったく見なかったです(笑)。もちろん情報は入ってきてて、敗者復活でギリギリ落ちた村田を見なあかんとは思っていたんですけど。
村田 それは見なくていいんですよ!
好井 林くんは撮影に入る前に井下好井の単独ライブを観に来てくれて。客席でめっちゃ浮いてました。
波岡 お客さんは基本、女の子なん?
好井 女の子と、ちらほら同年代の男の人もいるんですけど、林くん、同年代の男の人とも顔のサイズがちゃうから。「どうもー」って出て行った瞬間、「いる!」ってすぐわかりました(笑)。
波岡 どうやった? 井下好井の漫才は。
林 純粋に面白かったです。好井さんが(ピース)又吉さんと親しいってことを事前に聞いていて、テレビで見ている又吉さんの印象で言ってしまいますけど、やっぱり近い部分があるなと感じました。そして井下好井さんの漫才と、好井さんの普段の感じを見て、「この人を信じてやれば大丈夫だな」って思いました。勉強して準備したもので演じるっていう考え方をやめて、「全部この人に習おう」と。
──漫才の練習は大変でしたか?
村田 波岡さんが真面目なんですよ。正の字で練習した回数を記していって、「これが20になるまでやろう」みたいな。とろサーモンってネタ合わせ、ほんまにしないんですよ。ルミネtheよしもとの出番前の袖で、「こうボケるから、こういうふうに言ってもらってええ?」って出囃子鳴ってるときに久保田が言い出すからドキドキしながらやってるんです。
波岡 でも10回やったらもう飽きてたよな。
村田 10回練習したところで作家に見せたんですけど、セリフ入れ込みすぎてて「棒読みになってますよ」と(笑)。
波岡 途中でいい時期越えてしまって。「まずい、段取りになってる!」って。段取りをなぞることばっかり意識すると、相手の言葉を聞かなくなってしまうんですよ。そうすると勝手にこっちで走ってるだけになって、お客さんを置いていってしまう。神谷はそのときそのときの思いつきで、それこそとろサーモンのスタイルでボケてると思うんです。久保田さんがその場で思いついたことをボケて、村田にその場でツッコんでもらう。神谷もそう。「お前、適当にツッコめよ」っていうノリなんです。村田のツッコミに僕の言葉が被ってもいいやろうし、ツッコんだあとにちょっとの間があってもいいやろうし。自由なんですよね。
村田 これをわかってるのがすごいです。僕も、あほんだらだからこうやろうっていうつもりは全然なくて。というより、いつもの感じでしかできなかった。波岡さんもいいバランスでやってくれて、めちゃくちゃやりやすかったです。
次のページ » 「林くんは僕が育てるから!」(好井)
- Netflixオリジナルドラマ「火花」
第153回芥川賞を受賞したピース又吉の中編小説「火花」を全10話でドラマ化。漫才の世界に身を投じた若者たちが現実と夢の狭間で苦しみながらも、自分らしく生きる様を描く。
スタッフ
総監督:廣木隆一
監督:廣木隆一(1話、9話、10話) / 毛利安孝(2話) / 白石和彌(3話、4話) / 沖田修一(5話、6話) / 久万真路(7話、8話)
原作:又吉直樹「火花」(文藝春秋刊)
主題歌:OKAMOTO'S「BROTHER」
挿入歌:SPICY CHOCOLATE「二人で feat. 西内まりや&YU-A」
キャスト
林遣都 / 波岡一喜 / 門脇麦 / 好井まさお(井下好井) / 村田秀亮(とろサーモン) / 菜 葉 菜 / 山本彩(NMB48)/ 渡辺大知(黒猫チェルシー) / 高橋メアリージュン / 渡辺哲 / 忍成修吾 / 徳井優 / 温水洋一 / 嶋田久作 / 大久保たもつ(ザ☆忍者) / 橋本稜(スクールゾーン) / 俵山峻(スクールゾーン) / 西村真二(ラフレクラン) / きょん(ラフレクラン) / 染谷将太 / 田口トモロヲ / 小林薫
©2016YDクリエイション
Netflixとは
世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190カ国以上で8100万人を超える会員を抱え、オリジナルシリーズを含めたドラマや映画、ドキュメンタリーを数多く配信している。
左から
好井まさお(ヨシイマサオ)
1984年4月27日生まれ、大阪府出身。NSC東京校11期生。2006年11月より、井下昌城とのコンビ・井下好井として活動中。2015年9月に双子の女児が誕生した。
林遣都(ハヤシケント)
1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年、主演映画「バッテリー」で俳優デビューし、日本アカデミー賞をはじめとするその年の多くの新人賞を受賞した。7月にスタートするドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)に心療内科医師・中島保役で出演。今後、映画「にがくてあまい」「花芯」「しゃぼん玉」などの公開を控える。また舞台初出演作「M&Oplaysプロデュース 家族の基礎 ~大道寺家の人々~」が9月より東京・Bunkamura シアターコクーンのほか、大阪、愛知、静岡で上演される。
波岡一喜(ナミオカカズキ)
1978年8月2日生まれ、大阪府出身。2005年公開「パッチギ!」で注目を集め、以降映画やテレビドラマ、舞台などで多数の作品に出演。映画「クローズZERO」シリーズ、「ベイブルース~25歳と364日~」「図書館戦争」シリーズ、ドラマ「ごちそうさん」(NHK)などが近年の主な出演作。現在、「立花登 青春手控え」(NHK BSプレミアム)に出演中。
村田秀亮(ムラタヒデアキ)
1979年12月3日生まれ、宮崎県出身。NSC大阪校21期生。2002年に高校の同級生である久保田和靖と、とろサーモンを結成。「第27回ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞、「第38回NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞など、受賞歴多数。
2016年6月20日更新