Amazon Original新番組「最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ」は、独自のスタイルを持つ芸人たちが1日限りのオリジナルコンビを結成し、最強新コンビ=ゴールデンコンビの座を争うお笑いサバイバルバトル。新旧「M-1」王者の2人、漫才とコントのキング同士、芸歴20年差コンビ、20年来の友人コンビなど、まだ見たことのない個性豊かな8組が優勝賞金1000万円を懸けた即興コントバトルに挑む。お笑いナタリーでは、この番組の見どころをさまざまな角度から紹介する大型企画を展開中。企画・演出を務める橋本和明氏には、番組制作の経緯、収録の舞台裏、8組の活躍、MCの千鳥にもらったアドバイスなどについて語ってもらった。
取材・文 / 成田邦洋
「最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ」予告映像第2弾
千鳥がMCを務めるAmazon Original新番組。令和ロマンくるまがマヂカルラブリー・野田クリスタル、霜降り明星せいやがハナコ秋山、ネプチューン堀内がニューヨーク屋敷、チョコレートプラネット長田がシソンヌじろう、ハライチ澤部がスリムクラブ真栄田、男性ブランコ平井がロングコートダディ堂前、ラランド・サーヤがしずるKAƵMA、ダイアン津田が永野を自らの“相方”に指名し、優勝賞金1000万円を懸けた即興コントバトルに挑む。ゲストとして、片岡鶴太郎、あの、那須川天心、吉岡里帆、道枝駿佑、船越英一郎、中村倫也、木村佳乃らが登場。彼らは即興コントのお題となったり、ムチャぶりを振ってきたりと、各ステージで挑戦者たちを翻弄する。10月31日(木)18時に全5話一挙配信。
企画演出・橋本和明氏インタビュー
芸人がどうすれば本気を出して一番輝いてくれるのかを考えた
──この企画を実施することになった経緯をはじめに教えてください。
僕が日本テレビを退職した頃、2年くらい前から「Prime Videoで何かやりましょう」みたいな話がある中で、新しいお笑いコンテンツを考えていたところに「サバイバル形式のものが作れないか」というアイデアが出てきました。しかもそれをオリジナルコンビで、というのは新しいんじゃないかなと。「有吉の壁」(日本テレビ系)をやっていると「芸人さん同士が交わることの面白さ」を感じることが多々あって。それぞれの本来のコンビの面白さは、究極的に言えば単独ライブで十分発揮されていますよね。それぞれの世界観の結晶だし、誰の単独ライブに行ってもいつもすごいと思います。ただ、「この人とこの人のコントを見てみたいよね」「ここの化学反応ってどうなんだろう」というのは何かきっかけがないと見られない。そういう意味で、サバイバル形式の賞レースにすることで新しく見られるんじゃないかな、と会議しながらブラッシュアップしていきました。
──という流れからすると、この企画が「本来のコンビでのサバイバル」という内容にならなかったのも頷けます。
「見たことのないものってなんなんだろう」というのはテーマとしていつも悩んでいて、地上波のテレビではないもので、どんな番組を配信すればいいんだろうと考えながら作っています。
──橋本さんの肩書きは「企画・演出」ですが、具体的にはどんな役割でしょうか?
番組のフレーム(枠組み)やセットを考えて、出演者を決めて、VTRチェックして、音を付けて、という通常の演出作業です。プロデューサーではないので、お金の管理や労務管理などはやっていません。
──配信のお笑い番組がほかにもいろいろある中、何を意識して番組作りをしましたか?
「王道のお笑いをちゃんと作りたい」というのは意識しました。それはPrime Videoというプラットフォームが大きいです。テレビよりスケールアップした、ワクワクするものをどう配信で作るか、というアプローチができるので、ある程度エッジが効いたものをやって、お客さんを獲得したい。地上波のテレビのゴールデン番組だと3000万人のお客さんがベースにいて、3000万人に対してベストなコンテンツを届ける戦いをやっているんですが、一方でPrime Videoではお客さんが世界中にいらっしゃる中、「ワンクリックして見に行く」という動作が起きるような企画の立て付けにしなくてはいけないんです。
──「王道のお笑いを」というお話がありましたが、例えば「配信のバラエティだから過激なものを」と考えていらっしゃるわけではない?
すごく過激なものを、みたいなことは考えてはいません。僕がもともと得意じゃないので、その発想にはあんまりならないんですよね。それよりも、そこに出てくる人たちの意図をちゃんと汲むことを重視しています。今回は芸人さんたちに、お客さん投票で1組ずつ「一番面白くないコンビ」が選ばれてしまうという熾烈な争いをやってもらいました。でも、そこに向き合う芸人さんたちの姿勢や戦う様子は僕の中ではワクワクするもので、ちょっと青春の匂いがあるんです。芸人さんがどうすれば本気を出して一番輝いてくれるのか。言い方を変えれば、ムキになってもらえるのか。そこのフレームを作るのが一番大事だなと考えました。地上波ではできない規模感で、予算をかけて、いいキャスティングをできるのが配信のすごさかと思います。
──橋本さんなりの配信番組への向き合い方ということですね。
あえてどこでもストイックな直球を投げたいとは思っています。本当にお笑い好き、コント好きの人をなんとか惹きつけたい気持ちがあって。自分がお笑い好き、コント好きだからこそ、そういう人たちを本当に惹きつけられるものを作れるのか、というのがディレクターとしての勝負だと考えています。
コンビ間の関係性が見方を深くする
──熾烈な争いに臨む8組のキャスティングについて、橋本さんはどのような携わり方をされたのでしょうか?
最初の、相方を指名する側の8人を選びました。純粋に「この人たちの戦いを見たい」という理由です。それぞれの相方は、8人に本当に選んでもらいました。「この人となら勝てると思う相方は誰ですか?」というのを何人か出してもらって、優先順位の高い順に相手の人に聞いていきました。ここは嘘をついちゃダメだろうと思っているところなので、リアルにやりました。仮に「番組的に盛り上がるからこの人でお願いします」と頼んでも、それで負けたら本人たちが納得しないでしょうから。
──先ほどおっしゃった「芸人さんを本気にさせる」という意味でも大事ですね。
人間って、言ったからには責任取らなきゃいけないことってあると思うんです。「この人となら勝てると思う」と言ったことで、指名する自分に負荷がかかる。それを芸人さん本人に言ってもらうことが大事で、「あの人を選んだ」「あの人に選ばれた」というお互いの責任も生まれる。コンビ間の関係性ができるので見方も深くなるんですよね。そこをちゃんと設計するようにしました。
──相方の指名がほかの人とかぶって取り合いになることはありませんでしたか?
それはなかったです。それぞれが好きな笑いや「どう生かしあえるのか」を考えてもらったら、見事にかぶらなかった。僕たちスタッフ側で調整することもしていません。そういう意味ではみんな誰となら自分を活かせるかを考え抜いていたんですよね。お題がわからない中で、「この人なら自分のボケを拾ってくれそう」とか「この人ならアドリブのやり合いになるかな」とか、みんな想像を巡らせるんだと思います。
──橋本さんにとって印象的な人選をした芸人さんは?
ホリケンさんが屋敷さんを選んだのは「賢く見えるツッコミがいいよね」という発想がホリケンさんにあったからで、それを見られたのが面白かった。くるまさんと野田さんみたいな勢いがあって引っ張り合うコンビもいますし。せいやさんが選んだ秋山さんは、僕が携わっている「有吉の壁」や「本日も絶体絶命。」の出演者で、本当に生粋のコメディアンだなと常々感じていて。「絶体絶命」のコントでは顔芸がものすごく面白くて、本当にただただコントが好きな人。そんな秋山さんをせいやさんが「一番心強い」と選んだのは、まさに芸人さんの視点だなと思いました。2人の演技が共鳴したり、お互いを引き上げあったりするところも本編にあるので、ぜひ注目してほしいです。
──せいやさんと秋山さんはレギュラー番組で共演しているからお互いをわかっているんでしょうね。
近い人を選ぶ人は、それも作戦でしょう。例えば平井さんと堂前さんは大阪時代からよく知っている仲ですが、改めて2人でやるとこういう世界が生まれるんだなと思いました。いい感じで両方ねじれているというか(笑)。津田さんと永野さんは、共演はたくさんしているでしょうけど、一緒に何かをやることはそうないと思うので、こういう“遠い人”も面白いです。お互いにどういう人かわかっていない人同士のワクワク感があって。各コンビの関係性そのものが見どころだし、エンタテインメントだと勉強になりました。
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千鳥の2人にアドバイスをたくさんもらった