スーパー・ササダンゴ・マシン「ドキュメンタル」シーズン2特集|松本人志フリークが考察する「ドキュメンタル」

松本人志が新たに立ち上げた「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」。参加費100万円を支払った10人の芸人が賞金1000万円を懸け、密室で繰り広げる笑いのサバイバルだ。自らは笑わずして相手を笑わせるというシンプルなルールにも関わらず、さまざまな思惑が飛び交い、笑いの深層を垣間見られる作品になったことから、芸人はもちろん、ミュージシャンや俳優など多くの表現者を興奮させた。

お笑いナタリーではそのうちの1人、熱狂的な松本人志フリークであるスーパー・ササダンゴ・マシンを本特集に召喚。「ドキュメンタル」シーズン1の感想を中心に話を聞くと、松本の思惑についてさまざまな想像を膨らませてくれた。こうやって深読みするのも楽しみ方の1つかもしれない。

取材・文 / 狩野有理 インタビュー撮影 / 玉井美世子

Amazonオリジナル作品「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」

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「世界一面白い人はきっと世界で一番つまらない人」

──今回ササダンゴさんには「ドキュメンタル」シーズン1を一気に観ていただきました。いかがでしたか?

衝撃でした。もちろんめちゃめちゃ面白いんですが、いろんな意味で実験的でしたね。実は、シーズン1が配信開始される前に予告編を観ていたんですが、刺激が強そうだなと思って本編を観られなかったんです。

スーパー・ササダンゴ・マシン

──どうしてですか?

だって、芸人さんたちの見てはいけない部分を知ってしまうかもしれないじゃないですか! 予告編を観ただけでそのくらい笑いの深いところに迫っている番組だというのはわかりましたから。

──確かに。お笑い好きだからこそ「観たいけど観たくない」という心理になりますね。

作品の中で松本人志さんが言っている、「世界一面白い人はきっと世界で一番つまらない人だ」っていう言葉があるんですけど、本当にそれが集約されているなと思いました。言葉自体の意味は正直、全然わからないですよ? 答えはどこにも書いてないですし。で、松本さんの言葉に、「世界一つまらない人は実は世界一面白い」っていう言葉もあるんです。「これは同じ意味のことを言っているのか? どっちだ!?」っていう(笑)。松本さんにとってはそれを確かめる実験なのかなとも思います。

──シーズン1のメンバーは「男臭い笑い」がお好きなササダンゴさん好みのラインナップだったんじゃないかと思います。

完全に好みですよ! だからよりハラハラしました。

──どのシーンが印象的でしたか?

「ドキュメンタル」シーズン2より、招待状を渡される宮川大輔。

僕は基本的に下ネタが大好きで。なので宮川大輔さんの“アナリンピック”は最高でした。おしりの穴にティッシュがついてるっていうハプニングも含めて。プロレスラーって奇人変人が集まってきている業界なので、大抵のことに笑わなくなってきてしまってるんですけど、ああいうことが起こったら誰でも笑っちゃいます。試合前の控室がどんなにギスギスしていてもあれを見たら笑いますね。僕も1回やってしまったことがあるんですよ。年に1回のビッグマッチでおしりを出したらティッシュがついてるっていう。でもそのときは、女性レフリーにしか気づかれませんでしたけど(笑)。

用意してきているからこそ起きるハプニングが美しい

──東京ダイナマイトのことは昔からお好きとおっしゃっていましたよね。ハチミツ二郎さんのご活躍はどうご覧になりましたか?

ハチミツ二郎さんのプロレスマスクの七変化みたいなネタは、前からライブでも好きなネタだったので、あれを「ドキュメンタル」というある意味大一番に準備してきたのはうれしかったです。さすがだなと。

──あのネタはそのあとの場面で効いていましたね。ちょっとした事故が起こって、それが笑いにつながるっていう。“アナリンピック”もそうですが、ササダンゴさんご自身はそういうハプニング的な笑いに弱いタイプですか?

「ドキュメンタル」シーズン2のワンシーン。

用意してきているからこそ起きるハプニングに美しさを感じますね。極度に緊張していないと起きない事件じゃないですか。通常のレギュラー番組やライブだったら絶対にありえないことで、あの緊張状態に置かれて初めて生まれたアクシデントだと思います。そういうところも含めて、「ドキュメンタル」がいかに特殊な場なのかっていうのがよく伝わってくる。準備してきたから、そこにエンタテインメントの神様みたいなものが降りてくるんだろうなって思いながら観ていました。制作側について言えば、芸人さんたちにとって特殊な状況を作ってそこに対象を放り込むっていうまさにドキュメンタリー的な手法だなと思いましたね。

──今少しお話が出ましたが、演出についても感じたことがあればお聞きしたいです。

番組のデザインは、アメリカの総合格闘技UFCのリアリティショー(「TUF」)を観ているかのような質感でした。格闘技番組みたいな緊張感もあって。優勝賞金として1000万円が懸かっているってところも絶妙。ここで勝ちたいっていう芸人としての欲にもまして、1000万円欲しいっていう人間として切羽詰まる何かを喚起させる装置になる金額ですよね。そういう意味でシーズン2では、ジャングルポケットの斉藤さんや平成ノブシコブシの吉村さんなんかは本来とんでもない博打打ちだと思うので、ものすごい力を発揮するんじゃないかなと予想しています。

「ドキュメンタル」シーズン2

Amazonプライム・ビデオ
全5話配信中

出演者

松本人志
FUJIWARA藤本 / 宮川大輔 / ジミー大西 / バナナマン日村 / アンジャッシュ児嶋 / バイきんぐ小峠 / 森三中・大島 / ダイアン津田 / 平成ノブシコブシ吉村 / ジャングルポケット斉藤

Amazonプライム・ビデオとは
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スーパー・ササダンゴ・マシン
スーパー・ササダンゴ・マシン
新潟県出身。DDTプロレスリングの覆面プロレスラー。松竹芸能に所属しタレントとしても活動する。試合前に行う、PowerPointを駆使したプレゼンパフォーマンス“煽りパワポ”が話題となり、DVD「スーパー・ササダンゴ・マシンによるコミュ障サラリーマンのためのプレゼン講座」を昨年2016年4月にリリース。また同年11月にはマッスル坂井名義で松江哲明と共に監督を務めた映画「俺たち文化系プロレスDDT」が公開された。