ナタリー PowerPush - くりぃむナントカ
くりぃむしちゅー初冠番組がついにDVD化 伝説と化した“ユルグダ”収録の舞台裏を2人が語る
有田哲平がいつも以上にテキトーに仕切り、上田晋也はいつもとは違うヤンチャな顔をのぞかせる。くりぃむしちゅー初の冠番組となった「くりぃむナントカ」は、どの番組とも違う2人の素直な「面白がり」を濃縮還元させた、最高のバラエティだった! 今でも熱烈な支持を集めるこの番組が、ついにDVD化! 「くりぃむナントカ」だからこそ明らかになる、上田の本当の姿とは……!?
取材・文/渋谷直角 撮影/中西求
「くりぃむナントカ」DVD化にあたって
──「くりぃむナントカ」DVD、やっぱりすごく面白かったです!
上田・有田 ありがとうございまーす。
──番組が終わったら、すぐにDVDが出そうな気もしたんですけど。
有田 DVD化の話は、終わってからすぐに出てましたね。でも、まずは「アメトーーク!」さんにDVDを出していただいて、ある程度、実績を作ってもらった上で、2番目にうちらが出そう、と(笑)。だから話があっても、「待って、まず『アメトーーク!』さんが出てからだよ?」っていう。
──正に「ナンバー2選手権」※1 な感じで。DVD化するにあたって、おふたりから何か意見や要望を言ったりすることはあったんですか?
上田 まあ、夜中にやっていた時代のものと、比較的今に近いやつ。そのへんをバランス良く収められればいいかなっていう話くらいですかねえ。今度また「くりぃむナントカ」の特番をやらせてもらうんですけど、そういう新しいものと、初期のものを一緒にね、ごっちゃにしてパッケージできればいいなとは思いましたね。
──ご自身でご覧になったりしました?
有田 いや~、僕ねえ、「長渕剛ファン王決定戦」※2 は、オンエアされた後に録ったビデオを、何かあったら……自分が落ち込んだりヘコんだりしたときにね、何回も見返してましたよ。
上田 なんで「長渕ファン王」で、おまえが励まされてんだよ(笑)。
有田 いやだって、あれはもう……。
──すごいですよね。長渕さんのそっくりさんが出てきて……。
有田 そうそう。やっぱそのときの(上田の)初恋顔ったらねぇ(笑)。だって、そっくりさんを見てるだけなのに、まるで本物を見てるかのような初恋顔になったりとか、そっくりさんなのに(ペナルティの)ワッキーが泣き始めたりとか(笑)。
上田 ハハハッ。あれはな、たしかに。
有田 もうすげーなって。こっちは仕掛人だからもう何時間も聴いてるのに、向こうの映像に切り替えたらまだ「うぎゃー!!」って盛り上がってるからねえ(笑)。
──上田さん自身もだいぶ励まされた回なんじゃないんですか?
上田 そう……ですね(笑)。まあ、「長渕ファン王」に関しては2回目 ※3 のほうがね、感動という意味ではありましたけどねえ。2回目は今回のDVDには入ってないですけども……。
有田 そうは言ってるけどこの1回目、見直してみ? どれだけ感動してるか!
上田 そうかー(笑)。記憶にないからな、1回目の。
──上田さんはDVD、見てないんですか?
上田 あのね、見てないっていうか、スタッフがDVDをくれないんですよ。くれないくせにこの2~3週間で20本くらい取材入れてくるんですよ(笑)。「このDVDの見どころは?」「いや俺見てねえよ!」っていう。まー、ムチャなスタッフなんですよ。
──(笑)。企画で思い出深いのはあります?
上田 「ビンカン選手権」※4 とかは好きでしたね。最後のステージの一番でかいドンデン返し。アイデアもそうだし、セット作るのも大変だっただろうなっていうこの……なんか「心地良く騙される」というかね。あれは毎回「あっぱれだわ」って気分でいましたね。
──最後の高ポイントの問題は、本当にすごいくつがえし方をしますもんね。
上田 あのへんぐらいからスタッフは大変だったと思います。毎回「裏切んなきゃ、裏切んなきゃ」って。だから電流爆破マッチみたいな感じでしたよね。最初は有刺鉄線だけだったのが、有刺鉄線に電流流して、次は爆破しちゃえとか、今度は水上でとかね(笑)。エスカレートする一方、みたいなノリはありましたね。
- ※1 芸能界ナンバー2選手権
ナンバー1よりもナンバー2を目指す、という企画。体温測定やメール返信など、1番にはならず、あくまで2番を競うという内容。DVD Vol.3に収録。 « 本文に戻る - ※2 長渕剛ファン王決定戦
上田、ワッキー、大八木淳史の3人が、真の長渕ファンを決めるべく、モノマネ芸人・英二の歌をエンドレスで聴き続けるなど耐久勝負に挑む企画。DVD Vol.1に収録。 « 本文に戻る - ※3 2回目
「第2回長渕剛ファン王決定戦」で、なんと長渕剛本人が登場するというサプライズ。この時、上田はバラエティで初めて涙した。DVDには残念ながら未収録。 « 本文に戻る - ※4 芸能界ビンカン選手権
あらゆる場所で、間違い探しを行なうという「くりぃむナントカ」の人気企画。わざとらしいほど簡単な間違いは正解してもポイントが低いため、全員スルーし、時間制限ギリギリまで高いポイントを狙う。想像を絶するような間違いを仕込むことで、業界的にも話題となった。DVD Vol.1、Vol.3に収録。 « 本文に戻る
「ユルグダ番組」ができあがった背景
──「ユルグダ番組」というのが番組のキャッチコピーとしてDVDにも書かれてますけど、ご本人たちの意識としては、ユルグダっていうのは……。
有田 いや、「ユルグダにしないとダメだ!」とかって気持ちはまったくないんですけど、スタッフ、演者含めて、いわゆるバラエティ番組の整え方というか、テンポよくポンポンいくというものにあんまり面白みを感じてなかったんじゃないですかね。だって、この番組、平気でどんどん脱線したり、平気で間があいたり、平気で最初から企画に穴があったり……。
──(笑)。
有田 普通ならカットする部分を全部流してたんですよ。ほかの番組でも収録現場ではユルグダなところはあると思うんです。ただ、そこは普通切るんですよ! でもこの番組はそこをあえて使うんですよね。テンポ良いところを切ってる(笑)。
──当時としては、初の冠番組だったわけじゃないですか。気負いみたいなものはなかったんですか?
上田 いや、あったと思うんですよ、最初はね。「がんばって人気番組に!」というのは。あったと思うんだけど……。例えば有田の悪ふざけとかね。有田本人も「ここは使わないだろう」って思ってるくらいの、後輩とじゃれあったり、俺とふざけあったりしてる場面。他の番組の収録でもよくあるんですよ。でもこの番組は「そこ流してんのかい!」みたいな(笑)。有田の悪ふざけを平気で流すっていうのが続いて、有田も「ここ使うんだ」と思って、それでどんどんユルユル、グダグダに……。だから「意気込むような番組じゃねえんだ」って意識の変化になったんでしょうね。
有田 実際「くりぃむナントカ」のせいにしてた部分ってあったんですよ。(ユルグダになるのは)「編集のせいでしょ?」っていう。でも、僕が個人的に作ったDVDとか、僕がやってるほかの番組のDVDとか、全部やっぱりグダグダなんですよ(笑)。だから元々(僕が)持ってる資質なのかもしれないです。
──そういう「くりぃむナントカ」の面白さって、言葉で説明するのって難しいなと思ったんです。企画の内容だけ書いても、面白さが伝わらないというか。
有田 企画うんぬんというより、この世界観ですよね。本当の意味でダラダラ見られるバラエティ、というのはなかなかないと思うんですよ。やっぱりほかのバラエティって、よくできてるんですよね。“ここでVTRポン! と入って、ここでCM入って……”とか。そういうのが全盛の今、この番組は本当にずーっと雑誌をパラパラ見ながらとか、平気でビール取りにいけるとか、途中でトイレ行って、戻ってきてもまだこの話してるとか(笑)。本当に身近に、リラックスして見られるという。
上田 でも、おっしゃってることはわかるんですよね。なんて書きゃいいんだ、みたいなのは。俺らも説明のしようがなくて、ゴールデンタイムに行ったときによく言ってたんです。「(実際に)見てくれりゃ、面白いんですけどねえ」って。
──ああー。
上田 ……まあ、結果、見てくれなかったんですけども(笑)。
──(笑)。
有田 ためになるとか、節約術バラエティとか、そういうものが何もないですからね。ただ、「確かにほかではあんまやってねえな」っていうことだらけだと思うんです。「見て損した」ってことにはならないと思いますよ、絶対。
上田 だから、「見りゃ面白い!」って書いといてもらえますか(笑)。
番組はスタッフのもの
──ユルグダとはいえ、ものすごく細かいところまで情熱を注いでやっていたってことなんでしょうね。
有田 現場ではやりっぱなしみたいな感じでしたから、スタッフのセンスがすごかった、ってことですよね。ほかの番組を見習えないわけですから。ほかの番組が使わない、ダラダラしたところばっか使ってるんで(笑)。
上田 正直僕は、番組ってスタッフのものだと思ってるんですよね。例えば「くりぃむナントカ」は毎週撮ってましたけど、普通は隔週で2本撮りとかでやるわけですよ。でもスタッフはその番組のためだけに2週間準備を……徹夜とかもして、やるわけです。僕らタレントは、その収録日の1日だけふらっと来て、そこから何時間かは集中力出してやりますけど、その番組のことを考えるのは、極端な話その1日だけだったりするわけでしょう。なのに、そこで偉そうにタレントが「俺の番組」って言うのは違うと思っていて。
──なるほど。
上田 スタッフが2週間考えたことって愛情もあると思うんです。「ここはこういう風にしたい」「こう展開したい」って。なのに僕らが2週間に1回ふらっと来て、それを壊したりとか、適当にふざけたりすることを、どっちかというとそっちを優先して使ってるんですよ。だからその緻密さと、グダグダのノリをバランスよく使ってくれたというか。「2週間考えたことをスパッと切って、よくココを使ってくれたな」って。その決断力はすごいなって思いますね。
──そうですよね、スタッフはその番組だけを一生懸命……。
有田 ただ、スタッフがちゃんと会議を重ねて、練りに練った企画、台本も何回も書き直して、いざ「上田さん、こうやります」って説明したら、上田が「いや、この企画、おかしいじゃないですか」ってことも平気であるんですよ(笑)。
上田 ホントにね、初見の5秒で気づくような穴があって(笑)。
有田 だから「お前ら一体、その会議で2週間も何をしてたんだ!?」っていう(笑)。
収録内容
- 第5回芸能界ビンカン選手権
- 第1回長渕剛ファン王決定戦
- 日本一早い! 流行語大賞2009
おまけ
- 記念すべき番組1回目のオープニングトーク&各コーナーの間に名物「3分足りません!!」を収録
- 「 第5回芸能界ビンカン選手権」には土田晃之、おぎやはぎ矢作兼によるオーディオコメンタリー
特典映像
- 大木アナ番組降板ドッキリ
収録内容
- 第1回N-1グランプリ
- ナントカ好感度クイズ! LOVE5
- 大木vs前田アシスタント決定戦パート1&パート2
おまけ
- 各コーナーの間に名物「3分足りません!!」を収録
- 「大木vs前田アシスタント決定戦パート1&パート2」には大木アナ、前田アナによるオーディオコメンタリー
特典映像
- ノリノリ堀越傑作選
- 大木vs前田のタマゴかけご飯対決
収録内容
- 芸能界ビンカン選手権 in 京都
- 第2回芸能界ナンバー2選手権
- 大木vs前田アシスタント決定戦パート3&ファイナル
おまけ
- 各コーナーの間に名物「3分足りません!!」を収録
- 「芸能界ビンカン選手権 in 京都」にはおぎやはぎ・矢作兼、次長課長・河本準一によるオーディオコメンタリー
- 「大木vs前田アシスタント決定戦パート3&ファイナル」には大木アナ、前田アナによるオーディオコメンタリー
特典映像
- 堀越vs小阪
- ナントカ変換 in 京都
- ますだおかだ・岡田 伝説の前説
くりぃむしちゅー
左/上田晋也(うえだしんや)1970年 5月7日、熊本県生まれ。
右/有田哲平(ありたてっぺい)1971年2月3日 、熊本県生まれ。
1991年にコンビ「海砂利水魚」を結成。2000年にコンビ名を「くりぃむしちゅー」に改名。現在、『シルシルミシル』(テレビ朝日・ABC系)『しゃべくり007』(日本テレビ・読売テレビ系)などにレギュラー出演中。ナチュラルエイト所属。
© 2009 テレビ朝日