「今田×東野のカリギュラ」“ミスターカリギュラ”平成ノブシコブシ吉村インタビュー|どんな過激な企画でも断らない理由

唯一のNGは……

──吉村さんの目から見た「カリギュラ」の魅力は?

平成ノブシコブシ吉村

“タガが外れたレジェンド”の面白さだと思います。今田さんや東野さんといった、普段はお茶の間に合わせている化け物たちからいろいろな枷を取ったら、こんな馬力とスピードが出るんだっていう驚き。モンスター級のマシンを公道以外の場所で走らせてみたらめちゃくちゃヤバかったという。

──ご自身で収録中に一番手応えを感じた瞬間を教えてください。

手応えがあったときなんてないです。考える間もないというか、いきなり火を付けられても「早く飛ばないと燃えちゃう」しか考えられないじゃないですか。そういう意味では、この番組って古代ローマのコロッセオと同じなのかもしれない(笑)。俺らみたいな下僕が追い込まれる姿を、視聴者が貴族の目線で笑ってる。でもそれが古代からある人間のエンタテインメントというか、バラエティの原点なんだと思います。こちらもそれで笑ってくれるのは気持ちいい。

──確かにコロッセオの剣闘士と、命がけで過激な企画に挑戦する芸人さんの姿に似たものを感じる気がしてきました(笑)。こういった企画に臆することなく挑戦できるのはすごいです。

吉本興業に長年所属してきたことで培われた“犬”感がそうさせているんだと思います。「NO」と言えずにすぐ尻尾を振ってしまう習性が、なんでも挑戦できてしまう理由。昔、第13希望くらいでオファーが回ってきたときがあって、そこで初めて「みんな、こんなに企画を断ってるんだ」って知ったんですよ(笑)。貧乏性なのかもしれないけど、結果的に「カリギュラ」のような楽しい番組と出会えてよかったです。

──逆に吉村さんにとってNGはあるんですか?

相方との漫才とコントです。

──本業では?(笑)

ケツにバイブを入れられてからおかしくなっちゃったんです。「お笑いってなんなんだろう?」って。今はネタNGです。

──ははは(笑)。もし「カリギュラ」のシーズン3があったらやってみたいことを教えてください。

平成ノブシコブシ吉村

「火の鳥コンテスト」は定例化したいです。「今度はトランポリンを用意して」みたいなアイディアが浮かんでくるので、心のどこかでまたやりたいと思っているのかもしれない。もっと規模を大きくして、参加人数も増やして、世界大会にしたいなあ。「嗚呼!麗しのバイブス」の続編もいいですけど、僕は調教されちゃったので、またバイブでやってもズルッと出てきてしまうと思うんです。次は木製バットとか違うものを入れないと。これじゃあタイトルが変わっちゃいますね(笑)。あとは危険な国や独裁国家で普通に街ぶらロケをする企画もやってみたいです。具志堅用高さんとか、日本でやる商店街ロケとなるべく同じ感覚でキャスティングしてやったら面白いんじゃないかな。国交を結んでない未承認国家にロケの達人・千鳥を連れて行ったり。

──キャスティングを考えるだけでワクワクしますね。ミスターカリギュラの吉村さんから見て「この人がカリギュラに出演したら脅威だな」と感じる人はいるのでしょうか?

ゆにばーすかな。あの2人のじゃじゃ馬ぶりはなかなかですね。インパルス堤下さんも来たら強いだろうな(笑)。ここから羽ばたいていくしかないですから。あと僕の同期で「カリギュラ」向きだなと思うのは5GAPと大西ライオン。5GAPは18年間まったく変わらずに昭和というか明治のお笑いをやっていて、大西ライオンは18年間ネタを作らず、ボケもツッコミもせずにただ大声を出して歌っている。もはや恐怖ですよ。彼らの異色さは「カリギュラ」に新たな風を吹き込んでくれるんじゃないかと期待しています。

アイデアや考えなんてない

──吉村さんは「カリギュラ」の中で「昔のバラエティを取り戻したい」と何度もおっしゃっていました。それはなぜですか?

何も考えないで楽しめる情報性ゼロの笑いが単純に好きなんです。そういったものが昔は多かったなと。「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」で林家ぺー師匠がヘリコプターで飛んでいっちゃうシーンとか、「ダウンタウンのごっつええ感じ」に出てくる「パイマン」という、動物にただパイを投げるだけのキャラクターが印象に残っています。

──そういったバラエティの内容が変化していったのは、クレームの増加なども関係していると思われますか?

平成ノブシコブシ吉村

うーん、「最近の視聴者はすぐにクレームを入れる」みたいな意見を見かけるんですが、個人的には昔もクレームはあったと思うし、すごく増えているわけではないような気がします。それよりも、最近のバラエティがクレームなどの否定意見ばかりをすぐに反映してしまうのが原因なのかもしれない。「面白かった」「もっとやってくれ」という意見があまり採用されないのが悔しいなと感じていて、この現状をどうにか変えられればいいですよね。その点、Amazon Prime Videoさんはいいレビューも悪いレビューも平等に可視化されるから、やりがいがある。

──最近の若者の中にはYouTubeしか観ないという人も多いそうですが。

そういう人たちも「カリギュラ」のような番組をぜひ観てほしいです。我々が作っている番組とYouTuberの方々が作る動画はそれぞれに魅力があると思っていて、船に例えるとしたら、YouTuberは小回りが利くジェットスキーで、地上波はとんでもない破壊力の空母。この中間でいいとこ取りをしているのがネット配信系の番組なんじゃないでしょうか。だからYouTubeしか観ていないという人はまずネット配信番組をチェックしていただいて、そこから地上波の番組にも触れてほしい。あと、ネット番組の長所はこの国以外でも視聴できるところ。日本のお笑いをより世界に発信しやすくなったのはうれしいです。

──吉村さんは先日、バーレスクの男性版・ボーイレスクのパフォーマンスをニューヨークで披露されていましたよね(参照:NYのバーレスクイベントにノブコブ吉村ら出演、プロデューサー絶賛「来年も来て」)。やはり世界進出したいという思いがあるんですか?

いや、まったくないです(笑)。行けって言われたら行くだけのNGなし芸人ですから。僕にアイデアや考えなんてない。指差した方向に向かって走っていくだけの竹槍を持った一兵卒です。

──ある意味、特殊な立ち位置な気がします(笑)。そんな吉村さんが目指す理想の芸人像を知りたいです。

「今田・東野 世界へ飛ぶ ~The phoenix to the world~」より。

明石家さんまさん、ビートたけしさん、ダウンタウンさん、とんねるずさん、ナインティナインさん……僕らがずっと見てきた天下人への憧れは当然ありました。でもあの方々が天下を獲っていった時代を戦国時代とするなら、それはもう終わっちゃったんです。今は江戸時代に入って、太平の世になってしまった。そこで僕が刀を振り回していたらただのヤバい奴になってしまうので、今はチームワークが大切なんだろうなと思います。だから理想の芸人を目指すというよりは、みんなでいかにこの江戸時代を面白く長く続けていくかを重視しているかもしれません。

──では最後に改めて、「カリギュラ」をどういった方々に観てほしいかを教えてください。

最先端のカルチャーに敏感な若者に観てほしいです。りゅうちぇるが出てきて1990年代のファッションが1周回って流行っている今、バラエティもそれにやや遅れて1990年代の空気感が流行していくと思うんです。そういった意味では「カリギュラ」は今の最先端になっているはずだし、アンテナを張っている人にとってはすごく刺激になるはず。家族で一緒に観るよりは、トイレでこっそり観るほうが「ヤバいものを観てるんだ」というドキドキ感があって楽しいかも。とにかく「次の時代のバラエティを観たい人にはオススメです!」と声を大にして言いたいです。

平成ノブシコブシ吉村
吉村崇(ヨシムラタカシ)
吉村崇
1980年7月9日生まれ。北海道出身。2000年8月に徳井健太と共に平成ノブシコブシを結成。