バナナマンの最新単独ライブ「bananaman live O」を収めたBlu-ray / DVDが3月29日にリリースされた。設楽の頭文字を取った「S」、日村の頭文字を取った「H」に続き、“3人目のバナナマン”として知られる作家・オークラの「O」を冠している今作。本特集では、その見どころや制作秘話を紹介すると共に、バナナマンとオークラの関係を紐解く。
設楽と日村のもとを訪れたのは、今年2月、多くのファンを感動に包んだ「赤えんぴつ in 武道館」から2日後。最新コントの解説はもちろん、興奮冷めやらない武道館ライブの感想を聞いた。また、後日オークラにも単独インタビューを実施。20年以上、一番近くで見てきたオークラが語る“今のバナナマン”とは?
取材・文 / 狩野有理撮影 / 多田悟
3人目のバナナマン
──先日は「赤えんぴつ」の武道館ライブお疲れさまでした。
日村勇紀 ありがとうございました。どうもどうも。
設楽統 「感動で泣いた」っていう人もいたみたいで。
──シアタートップスなどでやっていた頃から知っているファンは特に感慨深いものがあったと思います。
日村 ずっと観てくれている人は特にそうかもしれませんね。ありがたいです。
設楽 こんなことないもんね。コントに出てくるキャラクターだけで丸々2時間、武道館ライブをやるなんて。本物のアーティストさんがゲストとして出てくると、赤えんぴつも実在するものみたいに思えますよね。僕もやりながらそんな感覚になってました。現実とコントの世界がごっちゃになるというか。
──お二人が気持ちよさそうに歌っていて、最高の気分なんだろうなというのが伝わってきました。
設楽 だから、そのモードがまだ抜けてないです(笑)。今日は赤えんぴつの取材ではないんですよね?
──3月29日に発売される「bananaman live O」のお話を伺いに来ました(笑)。この作品に収録されている赤えんぴつのコントの話も含めて、武道館ライブのことはのちほど改めて聞かせてください。まずは、2019年開催の「S」、2022年開催の「H」に続く「O」というタイトルについてぜひご本人からご説明いただけますか?
設楽 「S」が設楽の「S」、「H」が日村の「H」で、今回が作家オークラの「O」です。と言っても、「O」にするっていうのは前々から決まっていたからそこまで深い意味ないんですけど(笑)。
日村 まあでも、「設楽」「日村」「オークラ」なわけだから。自分たちの名前が刻まれたタイトルのDVDがこうやって並ぶっていうのは気持ちがいいよ。
──ライブのタイトルにもなるオークラさんはバナナマンにとってどんな存在なのでしょうか。
設楽 昔からよく言っているのは、「3人目のバナナマン」。3回目くらいの単独から入ってもらっているんですけど、1回目はお客さんとして観に来ているんですよ。最初は記録用の映像撮影とかを手伝ってもらったと思います。
日村 オークラと一緒に合同コントとかもやってなかった?
設楽 それがいつぐらいだっけ? そういうデータはオークラが詳しいから、一緒にインタビュー受ければよかったね。でも、とにかく長い付き合いです。そんな意味を込めての「O」でもあるって感じですね。
日村 今回の主役ですよ。
設楽 主役なのかな?(笑)
日村 出てはこないけどね(笑)。
──「バナナマンというすごい芸人がいる」という噂を聞きつけたオークラさんがすり寄って行った、というエピソードはご本人が自著「自意識とコメディの日々」でも振り返っています。
日村 あはははは(笑)。Mac使えますって言ってね。
──買ったばかりのPower Macで「デザインできます」「動画編集できます」とアピールしたそうですね。そんなオークラさんのバナナマンライブにおける役割を教えてください。
設楽 基本は僕とオークラがメインで台本を作っています。一緒に作ったり、相談役になってくれたりという感じです。あとは、わりともう今のスタッフは固まってきていますけど、新しい人員を紹介してくれますね。最初に「チラシ作れます」と言ってきたのもそうで、まあ実際は全然できなかったんですけど(笑)、「こうしたい、ああしたい」ってアイデアを出すとか、それを叶えるために調整役として動くのはオークラがやってくれます。音楽も、「こういうのいいんじゃないですか?」「こういう人いますよ」とか教えてくれる。
日村 オークラがいろんなパイプ役になってくれているもんね。
設楽 だから改めてどういう存在かと聞かれると……。「なくてはならない、かけがえのないおじさん」ですかね(笑)。
──親しい友人でもあるわけですよね?
設楽 そうですね。幕間のVTRでゲームしているところなんかはその感じが出ていると思います。一応ネタなんだけど、普段遊んでいるまんま。
日村 確かに。ラジオでもオークラを交えてふざけることが多いから、そこで生まれた面白い雰囲気がそのままネタになることもあるよね。
設楽 仕事だけど遊んでいる感じだよね。
──20年以上一緒にいて、変化したと感じる部分はありますか?
設楽 オークラだけじゃない? こんなにビジュアルが変わってるの。昔はマッシュルームカットで、可愛くて、細かったのに。
日村 星野源くんみたいな。
設楽 そうそう。まあ日村さんもけっこう変わったけど。
日村 俺はめちゃくちゃ変わってる。めちゃくちゃ太った。
設楽 日村さんも昔は可愛い感じだったのに。
日村 でもオークラは今でも可愛いじゃない。
設楽 ゆるキャラみたいな可愛さはあるけど(笑)。
何をやってもバナナマン
──前回はコロナ禍が明けて最初の単独ライブだったということもあり、たくさん稽古されたとお聞きしました。今回はどうでしたか?
設楽 今回も練習はたくさんしました。「S」のときに、一発目のコントで日村さんがセリフ飛んじゃって、「忘れたら大変なことになる」というのを再認識したので。
日村 本当にそう。あとは、設楽さんの台本の上がりが早くなっているんですよ。「H」もそうだったし、今回の「O」もかなり早く上がってきたからいっぱい練習できました。
──以前は本番ギリギリまで書いていることが多かったですか?
設楽 当日まで書いていた頃もありましたね。
──今回の単独ライブは、登場人物のおしゃべりをいつまでも聞いていたいと思うようなネタばかりでしたが、会話の内容はまったく架空の話なんですか? キャラクターたちの関係性がバナナマンご本人のようで、すごくリアリティがありました。
設楽 いろいろですね。実際にあった話を「こういうときどうするかな」って広げることもあれば、0から書いているものもあります。でも確かに、観に来てくれた人や東京03の(飯塚)悟志が「2人の関係性が完成されてる」と言ってくれて。
日村 悟志は褒めてくれるよね。
設楽 設定やセリフはもちろんあるんだけど、何をやってもバナナマンの遊んでいる感じ、楽しそうな感じがすごい伝わってきた、って言われた。今回は特に、全体を通してその場その場で掛け合うコントが多かったかもね。
日村 稽古で遊びながら足していく部分が増えたから、そういう要素も出てきたかもしれないね。
お客さんのワクワクを想像して書く
──では1本目のコントから振り返っていきましょう。
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Obtain
お互いのスーツ姿を褒め合っていたところから、「勝ったほうが相手の着ているアイテムをもらう」というゲームがスタート。負けを重ねながらもヒートアップする日村は裸に近づいているのも構わず次々と設楽に勝負を挑む。
設楽 最初に作ったのは「頭の中で脱がしていく」というネタだったんですよ。だけど実際にやってみると脱がない理由がない気がして、日村さんに「どうするこれ?」って聞いたら一言「脱いだほうが面白いっしょ」と。
──カッコいいですね。
設楽 カッコいいですよね(笑)。
──日村さんは面白さのためなら裸になることも厭わない?
日村 いやいやいや(笑)。でも脱いだほうが絶対面白いだろうなとは思いました。もちろん想像の中で脱がせていく面白さもあるんですけど。脱ぐことにそこまでためらいはないですよ。とはいえ、最後に「やったー!」って両手挙げて、バサッて(股間を隠していた)服を落としたら終わりですから。そこは必死に隠しましたね。
設楽 しかもこれ、オープニングのネタだからね(笑)。過去にも裸になるネタはやったことあったけど、舞台上でパンツまで脱いじゃうってなかったよね。
日村 「そこまでやっちゃうんだ」っていう。でも、これで勢いがついたと思います。
設楽 このオープニングで今回のライブの雰囲気が決まった感じはありました。
日村 やっぱりオープニングコントはライブの“顔”だからね。めちゃくちゃウケましたよ。
設楽 これだけいろいろやってきたけど、やっぱり裸って面白いんだなと思いました(笑)。このコントは日村さんがどんどん脱いでいくから次の着替えが楽だったよね。
日村 楽(笑)。こんなカッコいいスーツ着ていたのに、すぐ脱いじゃうっていう。
設楽 1本目のコントはセットをポスタービジュアルの写真っぽくしているから、お客さんも開場中に「あの2人が出てくるのか」って想像すると思うんですよ。で、いざ音楽が大きくなって会場が暗くなり、パッと明かりがついたときにスーツの2人がバンッと現れるとワクワクする。そういうのを想像しながら作ってます。
オークラ解説
バナナマンの2人がよくやるやり取りを凝縮したものがコントになっています。設楽さんの口車に日村さんが乗せられて、手の上で転がされるというのは2人の芸風そのもの。ラジオでやっているやり取りのような、「ザ・バナナマン」という一番ベーシックなスタイルで、バナナマン独自のライブを紹介するのにぴったりのオープニングコントになっています。このスーツの着こなしを見ると、バナナマンって外国の映画に出てきてもおかしくないキャラクターだなと感じますね。
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バナナマンの王道