バナナマンの最新単独ライブ「bananaman live H」を収めたBlu-ray / DVDが2月3日にリリースされた。
設楽の頭文字を取った前作「S」に続いて日村の頭文字「H」を冠したこの公演は、バナナマンにとって実に3年ぶりとなった単独ライブ。この特集ではバナナマンにインタビューを実施し、開催を見送った2度の夏をどう過ごしたのか、そして久々の舞台に立った感触や、各コントについて聞いた。
「H」istory(ヒストリー)的な意味も込められた今作には、初期のバナナマンを彷彿とさせるコントも収録されている。世の中の変動にも動揺することなく、ライフワークとして淡々と単独ライブを続けながらも実はさまざまなチャレンジに取り組んできたバナナマン。2人はこの先の「bananaman live」をどう考えているのか? そんな質問も投げかけてみた。
取材・文 / 狩野有理撮影 / 森好弘
お客さんの前に立つのはやっぱり楽しい
──「bananaman live H」は2019年に開催した「S」から3年ぶりの単独ライブでしたね。
設楽統 単独ライブは毎年毎年緊張するんですよ。僕らにとっては1年に1回のネタをやる場なので。それが今回はけっこう期間が空いちゃったから、余計に緊張感がありました。
日村勇紀 お客さんの前に2人で、コントで出る機会が単独ライブ以外にないですから。3年ぶりともなると特に緊張しました。
設楽 なんか、恥ずかしかったよね(笑)。
日村 恥ずかしかったね! 一生懸命練習はしたんだけど、とにかく心配で。
設楽 日村さんは前回の「S」の最初のネタでセリフが飛んじゃって、袖に行って台本を見てからもう1回舞台に戻ってくるということがあったから、その記憶が上塗りされて不安がでっかくなっていて。
──単独ライブ3回分の不安が。
日村 「またあれをやってしまったら」という恐怖心はありましたね。だから、いつもよりすごい練習しました。
設楽 ここ何年かで一番練習したかもね。
──いつも以上の緊張を感じつつも、お客さんの前に久々に立てるうれしさもあったのでは?
設楽 もちろん! やっぱりお客さんの前でやるのは楽しいですから。お客さんが来てくれて、またライブができてよかったなあと思いました。
日村 本当にそうね。僕はけっこう本番ギリギリのときに客席をチラッと見るんですよ。
設楽 日村さん、客席を見に行くんだよね。のぞきの癖があるんです(笑)。
日村 のぞき癖というか(笑)、楽屋にいると客席の音が全然聞こえてこないんですよ。だから「本当にいるのかな?」というのを一応確認しに行って。で、「いるいる」って設楽さんに報告してます。「最前列、全員男だったよ」とか。
設楽 言わなくていい情報を言うんです(笑)。ウケないんじゃないかって不安になるようなことを伝えてくる。
日村 笑っちゃうんだもん、1列目が全員男性だったりすると。うれしいんですよ。
──お客さんの様子を本番前に見てしまうと緊張が増しそうです。
設楽 そうだよ、あんなことやるから緊張するんだって(笑)。日村さんは3年ぶりとか関係なく毎回緊張がすごくて。いつもオエオエやって、ひどいときはちょっと吐いちゃったりしてね。
日村 プチゲロしたこともあります(笑)。
設楽 でも今年は嗚咽がなかったね。
日村 嗚咽は1回もなかった。たくさん練習した自信があったからなのか。
設楽 それか、体の変化じゃない? 50歳になって嗚咽が出ない喉の構造になったとか。
日村 そういうのもあるのかもしれない(笑)。設楽さんは本番前もいつも通りなんです。緊張はしているのかもしれないけど。
設楽 オエオエ言ってる日村さんを見てるから、逆に落ち着いてくるんだよ。
日村 スタッフさんとも普通にしゃべっているんです。ごはんも食べているし。僕はもう、オエアッ!みたいなことをずっとしてて。
設楽 日村さんは本番前、ごはん食べないもんね。
日村 食べられない。水飲んで、最後ちょっとユンケルだけクッと飲んでます。
単独ライブがない夏
──新型コロナウイルスの流行状況を考慮して2年間開催を見送ってきたわけですが、2022年はいつ頃やれそうだというお話になったんですか?
設楽 春くらい?
日村 僕が言われたのは5月、6月くらいでした。毎年そうなんですけど、ラジオの本番の30分くらい前に言われるんです。
設楽 何かあるときは、オークラと日村さんがいるところで言うんですよ。日村さんに、「今年はやるよ」って言って。「今年は中止です」が続いていたんですけど。
日村 そうそう。「今年はライブをやります」という宣言を受けて、「ああ、やるんだなあ」と。
──単独ライブがなかった2年はいつもとは違った夏をお過ごしだった?
設楽 超ー、楽でしたよ(笑)。楽なんだけど、夏は特番期でもあるから忙しくはしていました。
日村 そりゃそうだよね。通常営業というか、単独ライブがない分、仕事が入ってくるわけだから。
──ライブがない夏というのは変な感じがしませんでしたか?
設楽 ああ、確かに。それはあったかも。なんかやっぱり、「ないんだな」という感じはしましたね。夏じゃないときもありましたけど、単独ライブは結成してすぐくらいから毎年やっているので。
日村 「途切れちゃったな」みたいな気持ちはあったね。
設楽 でも、だからって焦って「なんかやらなきゃ」とは思わなくて。できるようになったらやればいいじゃんって。お客さんを入れないでやる方法もあったけど、僕らはそういうのはいいかなと思ったんです。毎年やってきたからこそ、やれるようになったらいつでもやれるという気持ちでいました。
ビジュアル撮影と衣装の話
──空いた2年の間は、ネタを作り溜めていたんですか?
設楽 と思うじゃないですか。全然溜まってませんでした。僕も思ったんですよ。2回分やってないから、パンパンに詰まってるんじゃないかと。でもうわずみをすくったらもうなかった(笑)。なんとなくメモったりはしているんですけど、開催が決まって「やるぞ!」となってからギュッとやるので。取り掛かる時期がそのまま移動しただけでした。
──これまで通りにライブの数カ月前から作り始めたわけですね。
設楽 そうです、そうです。
──今回もビジュアル撮影を一番はじめに行ったんですか?
設楽 前回のタイトルが「S」で、次は「H」というのは決まっていたので、タイトルが先にある状態だったのはいつもと順番が違いましたね。スーツをちゃんと作って、今までのナチュラルな雰囲気とは変えてカメラ目線で撮るとか、ビジュアル面はタイトルや前作ありきでスタートしました。このジャケット写真の場所、教会なんですけど、(米津玄師の)「Lemon」のMVを撮ったところと同じ場所なんです。
──そうなんですね! たまたまですか?
設楽 たまたま。いつもスタッフさんとかマネージャーに撮影場所をリサーチして挙げてもらうんですけど、教会になったのは特に意図があったわけではなくて。ここが教会だったから、1本目のネタを教会の設定にしました。この写真いいですよね、日村さんが神々しくて。
日村 これいいよね。うしろからライトを当ててもらって。僕は過去の単独ライブのポスターを家の廊下に飾ってるんですよ。
──へえ! いいですね。
設楽 廊下ってほどの廊下じゃないんですよ。
日村 それは自分で言うから(笑)。6枚で廊下の壁が全部埋まるので、新しいライブをやると一番古い1枚が外れていくっていう。
設楽 外れたのはしまっちゃうの?
日村 そう! しまっちゃう。
設楽 なんかもったいないね。違うところに貼ればいいのに。
日村 ないのよ。うち。
設楽 壁ってないもんね。
日村 壁はあるよ!
設楽 違う違う(笑)。飾る壁って意外とないじゃん。真っ白の。
日村 ああ、そうね。だから楽しみなんですよ、新しいやつを飾っていくのが。
──スーツがまた素敵です。
設楽 これは作ってるからカッコいいんですけど、日村さんって借りてきたスーツだとカエルが轢かれたみたいになっちゃうんですよ。ダボダボで。
日村 そうそうそう。
設楽 作るとカッコいいよね。
日村 これは見事なんですよ。ここだけしか着られないのはもったいない。
設楽 2人で揃ってこれを着るのは今日のこの取材が最後かもしれないです。
──衣装展をやってはいかがです?
日村 ああー。バナナマンミュージアムみたいなね! 素晴らしい。
設楽 その発想なかったな。面白いですね。ここ最近はオープニングで着ている衣装は作ってもらっているし。
日村 衣装展いいね。
設楽 あと赤えんぴつの衣装とかね。衣装と言えば、変なキャラクターの衣装を決めるときに一応私服も持ってきてもらうんだけど、だいたい日村さんが普段着ているやつが選ばれるよね。
日村 どういう意味よ(笑)。変な人の役の服を普段着てるってことじゃん。でも最近はちゃんとスタイリストさんとかが衣装を揃えてくれるから。
設楽 「Helpless」の日村さんの茶色いジャージなんて、GUCCIだもんね。
日村 わかんないでしょ? 僕が着ちゃったから(笑)。けっこういいやつ着てるんですよ。
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日村、稽古場で大量のお菓子を食べなくなった