ナタリー PowerPush - バカリズム THE MOVIE
お笑い界の風雲児が“ほぼ監督”として映画初挑戦
監督・脚本・主演を“ほぼ”バカリズムが務めるオムニバス映画「バカリズム THE MOVIE」がついに公開される。
TOKYO MXでは2012年1月から3月にかけて、この映画のメイキングシーンを同名タイトルで放送。カチンコを手作りしたり、ロケ弁を真剣に選んだりと、本筋と関係ない部分ばかりをクローズアップしてきたこの番組は、フェイクドキュメンタリーの手法がとられていたこともあり、視聴者の間ではバカリズムが本当に映画を監督するのかが疑問視されてきた。ところが番組後半になると、バカリズムが“ほぼ監督”を名乗り、実際にメガホンを取ることを宣言。その作品がオムニバス形式の映画として劇場公開されることが番組中にアナウンスされた。
お笑いナタリーでは、本映画撮影中で超多忙を極めるバカリズムをキャッチして、独占インタビューを敢行。制作の経緯や撮影の様子、作品の見どころについて話を訊いた。
取材・文 / 遠藤敏文 撮影 / 辺見真也
“ほぼ監督”の役割
──今回の映画、バカリズムさんは“ほぼ監督”という肩書きですが、そもそもこの“ほぼ”というのはどういう意味ですか?
100%やるわけではないっていうことですね。いろんな技術を持っている大人の方に助けていただきながら映画を作るっていうことです。映画はほとんど観てないんで、知識がないんですよ。
──映画はどれくらいの頻度で観るんですか?
年に1回観ればいいほうですかね。何が嫌っていうわけではないんですけど、「行こう」って思ったことがないんです。
──いままで観た中で好みの映画はありましたか?
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とか「マトリックス」とか……観た映画は大抵面白かったです。
──大抵(笑)。でも映画はあんまり観ないんですね。
映画館が嫌なんですよ。あんな知らない人と同じ空間でリラックスできない状態で観るとか、僕はありえないです。子供の頃から好きじゃなくて。やっぱりお菓子食べたりしたいじゃないですか。でも音とか気になる人もいるし。トイレに行きたくなってもDVDだったら止めて行けますけど、行けないっていう。そういうのが嫌ですね。大画面で観たいとか、こだわりもまったくないんで。
──なるほど。そんな中、映画監督のオファーが来たときの気持ちは?
最初は「映画監督を目指すみたいな番組をやります」って言われて。スタッフさんは「バカリズムマン対怪人ボーズ」(2009年にテレビ東京で放送された特撮ドラマ)のときに一緒にやらせてもらったり、「戦国鍋TV」(tvkほか)とかやってるチームなんです。僕が大好きな番組を作ってる非常にセンスのいい方たちなんで、面白そうだなと思って「よろしくお願いします」と。そのときは実際に映画を撮るとか、そこまで深く考えてなかったです。
──好きなスタッフと一緒に番組ができるならっていう。
それが映画じゃなかったとしても喜んでやってたと思います。
映画作りの進め方
──まだ撮影の途中ですが、いまのところ一番苦労している部分は?
寒いのと朝早いっていうこと。外のロケが寒いですね。好きな人たちと面白いものを作ってるんで、撮影自体はものすごく楽しいんですけど、寒いのと朝早いのがとにかくダメなんです。こんなありがたいことやらせてもらってるので、もちろん朝早くからやってますけど、もう二度と朝早い仕事はしたくない。眠いです、とにかく眠いです。僕はロケとかそんなに行ったことがないんで、これまで朝早い仕事ってほとんどなかったんですけど、こんなに大変なんだと実感しました。
──夜型なんですね。
完全に夜型ですね。
──普段は夜中に何をすることが多いですか?
なにかしらの締め切りがあるんで、それをちょっとやったり、ネタを書いたりしてます。ネタ書くのは全部夜中から朝にかけてです。
──今回の映画は最初に何から手をつけましたか?
取っ掛かりは台本ですね。作家さんも含め、みんなでそれぞれアイデアを出しあって台本を書くところから始めました。
──その作業はコントを作るときと何か違いはありますか?
なんら変わらないです。まったく同じですね。もうライブ作るのと同じくらい普通に台本書いて、みんなに読んでもらうっていう。だからコントを撮ってる感覚です。
──「映画だからこそ、こんな要素を入れた」というのは?
ああ、それで言うと、おっさんたちがカッコよく空港の滑走路を歩くシーンとか、ワイヤーアクションとか。普段のコントだったら自分で判断してやめてしまうような要素も、現実的にできるかどうかはプロの人たちの判断に任せて、好きなように書きました。
素直に笑ってもらえれば
──今回の映画をオムニバス形式にしたのはなぜ?
やりたいことがたくさんあったからですかね。こんなに気の合うみんなで映画を撮れるチャンスはないんで、僕のアイデア1つに絞るよりも、みんなでアイデアを持ち寄って作ろうっていう。それで持ち寄ったものを全部やっちゃおうって形に近いと思います。
──実際に映画作りに携わってみて発見した映画の魅力は?
やっぱりライブとかだと考えたことを自分の体ひとつで表現しなきゃいけなくて、どこになにがあるとか、こういう奴が来るとか、あるものとしてやらなきゃいけないんですけど、それが実際本物として用意されるから、そういうのは感動しますね。イメージどおりの場所やイメージどおりの役者さんが本当に形になって見られるのは嬉しいです。
──この映画はどんな人に観てもらいたいですか?
僕と同じようにあんまり映画を観てこなかった人に観てほしいですね。素直に笑ってもらえればうれしいです。普通は映画ってメッセージ性とかあったりするんでしょうけど、これに関しては本当になにも伝えたいことはなくて、ただ好き勝手にみんなで面白いものを作っただけなので気軽に観てほしいです。楽しい気分になる映画だと思います。
監督・脚本・主演を“ほぼ”バカリズムが務めるオムニバス映画。東京・シネマート六本木にて、5月26日(土)、27日(日)、6月2日(土)、3日(日)に劇場公開。
バカリズム
本名:升野英知(ますのひでとも)
生年月日:1975年11月28日
出身地:福岡県
所属:マセキ芸能社