昨年2022年12月には東京・池袋のサンシャイン水族館でのオンラインコントライブ「トワイライト水族館」を開催し、美しい映像とユニークなコントの融合を成功させた男性ブランコ。生物が大好きな2人が次に企てたこの科博(国立科学博物館)でのコントライブでどんな手応えを得たか、そして一風変わった場所をライブ会場に選ぶ理由、今後考えている会場などについて、本人に聞いた。
男性ブランコ インタビュー
──水族館に続いて、念願の博物館でのコントライブ。どうでしたか?
浦井:めっちゃ楽しかったです。舞台がすごく“変”なので、何してもいい状態というか。すごくのびのびとやれた。始まったらもう緊張よりワクワクしっぱなしでした。
平井:たくさん発見がありましたね。うしろ向いたときに「(展示物が)めっちゃきれいやん!」とか。本当に博物館の中で遊ばせてもらっている感覚でした。
──コントとコントの間の着替えなどの準備はどこでされていたんですか?
平井:控室が、人類誕生の展示物のところだったんです。
浦井:類人猿や新人類の標本を見て、「へえ~600万年くらいかけてこの種は進化したんだあ。600万年って途方もないなあ」と思いながら着替えてました(笑)。
平井:世界最古の人類・ルーシー(アウストラロピテクス)の前で(笑)。
浦井:開演前の待機場所に、壁一面のミンククジラの腸の標本があって。「ミンククジラの腸内にはこれだけの寄生虫がいますよ」という展示を見て、毎回「ウエッ!」ってなるんですよ。
平井:でも見ちゃうんですよね。気持ち悪いけど。
──お客さんの様子は?
浦井:若干の緊張感があったように思いました。「ちゃんとしないといけない」みたいな空気が。3回ほど移動する場面があって、しっかり全員が「このライブを成立させるぞ」という意気込みを持って移動してくれたような気がします。ありがたいですし、「すいませんね、なんだか付き合わせてしまって」みたいな気持ちです(笑)。いいお客さんに恵まれました。
平井:お客さんを誘導してくれたスタッフさんが言うには、むちゃくちゃすみやかだったらしいです(笑)。「この世界が壊れてしまうんじゃないか」と、足音も立てないようにしてくれたりとか。お客さんも、物語の登場人物になってくれた。
──科博の職員の方からリアクションはありましたか?
浦井:ずっと交渉を担当してくれていた方が「めちゃくちゃ面白かったです」って言ってくれました。「こういうこともできますよ、というのがもっと伝わればいいなと私たちも思います」と言ってくれたので、よかったですね。
──水族館や博物館でのライブ開催はいつ頃から考えていた?
平井:東京・アーツ千代田 3331(中学校を改装したアートギャラリー。2023年3月に閉館)とか、以前から少し変わった場所でやっていて、その延長線上。海外とか、水族館、動物園、博物館、動物園。大阪にある民族博物館とか。そういうところをやりたいと方々で言っていたところ、サンシャイン水族館さんがで「貸し出せますよ」と言ってくださって。科博はコロナ禍に入って1年目くらいのときに、施設の貸出を始めたんです。それを作家のワクサカソウヘイさん(構成)が見つけてきてくれました。
──「変な場所でやりたい」という案はどこからくるもの?
平井:誰もやってないことをやりたいっていうのが一番目にあって。大阪時代、おこがましいですけど、本当にときどき、1人、2人くらいに「ラーメンズさんっぽい」と言われたことがあったんです。2人ともラーメンズさんが好きだったのもあって、ああいう最小限の小道具ですごいクオリティの高いコントライブをやってみたいですけど、そうすると「~っぽい」と言われてしまう。そこで「先人たちもやっていないことってなんだろう」と考えたら、「変な場所で」というのが出てきました。コントとの相性もいいと思いましたし。僕らのネタを見たことない、顔も知らない、でも「水族館でコントライブがあるらしい」と聞いたら興味を持って来てくれる人がいるんじゃないかと。お客さんを増やすにはどうしたらいいかを考え続けた13年なので。その中で、“変な場所”というのがお客さんに興味を持ってもらう一手でした。
──着実にお客さんが増えていくコンビというイメージがありましたが。
浦井:大阪のときも、東京来てからも、劇場でコントをしているだけでは増えなかったんです。
平井:これはもう実感として。「キングオブコント」で知ってもらうまでは、びっくりするくらい増えなかったです。クオリティは絶対下げていないつもりだったんですけど。
──やりたいことを実現できる環境になってきたきっかけは?
平井:ワクサカさんじゃないでしょうか。3331や博物館にしろ、デザイナーの川名潤さん(宣伝美術)、画家の網代幸介さん(宣伝画)、すべてつなげてくれたのがワクサカさん。もちろん作家の大澤紀佳さん(構成)も基盤を築いてくれましたが、広げてくれたで言うと。網代さんは画家さんなので、本来こういう宣伝用のものをお願いできる方ではないんですが、ワクサカさんが面識ないけど個展に押しかけて(笑)、ご挨拶して、これはご本人がおっしゃっていたんですが“アホなふりして”お願いしてくれたそうです。もちろんちゃんと筋を通すところも忘れずにやってくれて。現場のムードもめっちゃ作ってくれる方です。ご本人もコントを作れるから、スタッフ側も芸人側の気持ちもわかる、すごい人です。
──ワクサカさんとの出会いは?
浦井:大阪の同期の堀川絵美が、「テレビブロス」で連載していたワクサカさんのコラムのファンやったんですよ。堀川もアホなふりして(笑)、単独ライブのコントをワクサカさんに書いてもらったんです。そのライブに平井も1本コントを書いていて、僕が客演しました。そこで知り合いました。
平井:そこから8年くらい、大澤さん、ワクサカさん、男性ブランコでやってきて、桃太郎のように仲間がどんどん増えていきました。だいぶキーマンですね。いろんな人との繋がりを運んできてくれた。しかも、みなさんプロフェッショナル。自分で解釈を持ってくださっていて、それがちゃんと僕らに寄り添ってくださってもいる。「こうやったほうがもしかしたらもっとカッコいいかもね」とか、活発な議論ができる。
浦井:ちゃんとネタを見てくださっている方々なので、僕らに似合いそうなものを作ってくださるんです。僕らより、僕らに似合いそうなものを知ってらっしゃるのかなと思います。
──今後はどうしていきたい?
平井:「変なところでやりたいね」の先に、大英博物館とか、海外の博物館でできたら面白いなと思います。日本を飛び出て。今は何の準備もしていないし、まだ届きませんけど。「変な場所、面白い場所でやる」っていうのは、知られてない奴の武器というか。水族館や博物館は、その始まりっていう感じですね。
浦井:あと、あれやりたい。美術館の常設展示も見られて、夜は男性ブランコのコントを見られるセット券みたいな。
平井:ちゃんとコラボレーションしたいね。今回は、ご協力はいただいているけど、コラボレーションじゃなくて“お借りして”やっているので。もちろん変な場所だけじゃなくて、ホールの劇場でやる単独ライブがメイン。だた、場所を限ることで考え方も変えられるし、普通に考えるコントでは思いつかない案も出てくる。場所なり道具なり、固定してもらったほうが、なんだったら考えやすいです。
──配信開始に向けて、読者に伝えたいことがあればお願いします。
浦井:あとにも先にも、これだけすごい背景でコントをやってるライブはないのではないかと思います。編集も、ものすごくしっかりやってくださっていて、配信ならではの味わいも絶対あると思いますので、年末年始はこれを観てほしいですね。元旦の夜中とかに。
平井:照明さん、音響さん、映像スタッフさん、自分たち、集大成と言ってもいいくらいの、それぞれのプロの技を極限まで振り絞ったようなものとなっています。ちゃんと科博の面白さ、奇天烈さ、不思議さも味わえるコントライブになっているので、若男、老男、若女、老女に観ていただければと。
浦井:それがめんどくさいから「老若男女」っていう言葉があるんでしょう?(笑)
平井:ご家族で観ても面白いんじゃないかなと思いますので、ぜひ、おせち片手にご覧いただけたらと思います。
男性ブランコの博物館コントライブ「嗚呼、けろけろ」
販売期間:2023年12月28日(木)10:00~2024年1月8日(月)12:00
配信期間:2023年12月28日(木)10:00~2024年1月8日(月)23:59
料金:3000円
パンテオン(半遁モード) @pantheo27705718
男性ブランコの博物館ライブ配信開始、世界最古の人類・ルーシーの前で衣装着替える(写真16枚) https://t.co/ZQkZC9W785