ピース又吉の芥川賞受賞会見詳細「芥川龍之介に褒めてもらう自信はない」

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ピース又吉が又吉直樹名義で手掛けた小説「火花」が、純文学の新人賞として広く知られる「第153回芥川龍之介賞」を受賞したのは既報の通り。東京・帝国ホテル東京にて本日行われた会見の模様を以下に紹介する。

ピース又吉

ピース又吉

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会見に姿を見せた又吉は、最初やや緊張の面持ちで写真撮影に応じていたが、記者からの「笑顔は出ませんか」との問いかけに少し微笑んで見せた。

ピース又吉のコメント

──最初に一言お願いします。

すごくビックリしたんですけど、とにかくうれしいです。ありがとうございます。

──敬愛してやまない太宰治が欲しくてたまらなかった芥川賞を受賞してどう思いますか。

小説を読み始めたのが芥川と太宰だった。太宰が芥川賞を獲れなくて手紙を書いたっていう状況が、いつもテレビで「太宰好き」とか勝手なことを言っている自分と似てるかもしれませんね。そんなこと言うのも申し訳ないので、太宰好きとテレビで言うたびに、三鷹にお墓参りに行ってます。

──今後又吉さんの作品を読んで文学界に入ってくる人へのメッセージをお願いします。

面白い小説がたくさんあるし、好き嫌いがあるから、僕の作品を読んで合わなかったから小説読むのやめよう、となった責任はみんなでなんとかしていきたい。僕でジャッジしないでほしい(笑)。100冊読んだら絶対に本が好きになると思う。2、3冊はわからないかもしれないけれど、100冊までがんばってもらいたい。

──羽田圭介さんとのW受賞についてはどう思いますか。

すごくうれしいです。羽田圭介さんがいろんなところで「火花」を紹介してくれて、プロの作家さんが偏見なく褒めてくれるのはうれしいこと。

──もし、この受賞を芥川龍之介が聞いたらどんな言葉をかけてくれると思いますか。

芥川は僕みたいな髪型の奴は嫌いだと思います(笑)。ベートーベンの髪型をよく思っていなかったみたいで、それがすごく印象深い。僕はベートーベンはあれでいいと思ってたんですけどね。(芥川は)それくらい厳しい一面を持っているけど説得力もあるので。恐らく「嘘つけ」と言われるんじゃないですか。褒めてもらう自信はないです。

──芸人として初めての受賞となって、作品も芸人に関することですが、今後、先輩に「先生」と呼ばれることはあると思いますか。

もちろん僕のことをふざけて「先生」と呼ぶ人はいるけど、本気で「先生」と呼ぼうとしているのは相方の綾部だけだと思います(笑)。ただ、いろんな先輩が「読んだでー」とか声かけてくれるのはうれしいです。

──芥川賞を受賞したことによって、今後、芸人としてのやりづらさや不都合はありそうですか。

注目してもらうのは芸人としてありがたいので、不都合は今のところ感じてません。コンビとしてやってるので不都合はないと思います。

──綾部さんは何か言っていましたか。

綾部は今、仕事中なんですけどコメントくださったみたいで。「くださった」って敬語使っちゃいましたけど(笑)。コメントいただきました。

──ノミネートされたあたりから自信はありましたか。

芥川賞の候補にしてもらえるという連絡をもらったとき、うれしかったのと驚いたのとで正直自信はなかったです。多少もなかったです。ゼロ。ゼロですとは言ってたけど、今日の朝も緊張してたので、もしかしたらどこか期待していたのかもしれません。

──「火花」を書く前と書いたあとでは、気持ちや生活が変わりましたか。

小説を書く前はすごく脅えてもいたんですけど、急に書きたくなって書きました。書いているときはすごく楽しかったです。広い表現というか、「いろんなことができるんだな」と感じた。生活の面では、小説が取り上げられるようになってから、街を歩いていても「火花読みました」とか声をかけてもらえて。今までの「死神、死神」と呼ばれていたときよりは変わりました。

──これから芸人と小説の比重はどれくらいの割合でやっていくつもりですか。

芸人を100でやって、それ以外の時間で書くというのをずっとやってきたので、その姿勢は崩さないようにしてます。

──それはどうしてですか。

それが一番、どちらにとってもいいと思うので。ライブをやりながら感じた「笑いにできなかったもの」「コントにできなかったもの」みたいな、どこかに残っていたものが文章を書くときの一歩目になることが多いので。

──作品を書こうと思ったのはいつ頃で、きっかけはなんですか。

「小説を書いてみませんか」と声をかけていただいたのが大きい理由としてあります。あとは、急にテンションが上がったというか、例えが難しいんですが、ジャッキー・チェンの映画を観た翌日に階段を走りながら駆け上がりたい衝動ってあるじゃないですか。その感じですね。西加奈子さんの「サラバ!」を読んで無敵になったような気持ちで書けました。

──現在、64万部単行本が出ていて、ミリオンも狙えそうですが、100万部へのイメージは。

小説書いてるときは、もちろんそんなイメージはなくて、とりあえず自分で作品に向き合って書いたんですけど、書き終わると「いろんな方に読んでもらいたい」という気持ちになりました。さっきも言ったんですけど、僕の作品を読んで、他の人の作品も読んでもらって、本を好きな人が増えたら楽しくなるなと思います。あとは、お笑いの劇場に多くの人が来てもらって、お笑い、文学、音楽、演劇などが盛り上がっていけばうれしいです。

──表現者としてお笑いと小説それぞれ感じる自由、不自由はありますか。

お笑いはわりと何やってもいいというのはありますけどね。めちゃめちゃ子供みたいなこと言うと、自分が2人とか3人に瞬間的になれたら、できることの幅が広がるなとは思います。自分の体と声でやるしかないんですけどね。でも、そんなに不自由はないです。あとは、お笑いの場合はすぐにお客さんの反応がわかって「笑ってへんなー」とか思って、言うことを変えられるんですけど、小説の場合は変えられないですよね。

──小さい頃から自分から独り言があふれていたと言っていましたが、さきほどの「どこかに残っていたもの」というのは、独り言と関係あるのでしょうか。

割と近いですね。散歩しながらとか、走ったりしてるときに頭の中に言葉が出てくるんですけど、なんでもないようなことだけど、そこから文章を書くことはよくあります。

──最後に一言お願いします。

たくさん集まっていただいてありがとうございます。まだ、お読みでない方がいたらぜひ読んでみてください。ありがとうございました。

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新潮文庫 @shinchobunko

「100冊読んだら絶対に本が好きになると思う。2、3冊はわからないかもしれないけれど、100冊までがんばってもらいたい」

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