お笑い好きの私たちに「忘れられないあのライブ」があるように、芸人にもそんなライブがあるだろうか? ウケた、スベった、隣の芸人が爆笑を取って悔しかった……出演者として体験した「忘れられないあのライブ」、そしてお客さんとして心揺さぶられた「忘れられないあのライブ」を、芸人たちに聞いてみる。第7回は
取材
忘れられない“出た”ライブ
復帰を飾る伝説の90分単独
たかのり 2015年に「THE NUANCE」という90分単独を大阪・よしもと漫才劇場でやったんですよ。僕ら、前年に30分の初単独をやったあと、周平魂の体調不良で何カ月か休んでいて。その休養明け一発目が「THE NUANCE」でした。
たかのり 復帰して、「ここで見せるんや!」とめちゃくちゃ気合いも入っていて、内容を充実させることはもちろん、とにかく満席にせなあかんと思って知り合いとか身内とか、いろんな人に声をかけました。その結果、当時は立ち見もOKだったので、満席立ち見の超満員。前の30分単独が好評だったのもあって、噂を聞きつけた芸人たちもブワーッと集まってくれて。
周平魂 漫才7本にコント6本。ネタ13本用意して、間のV(=VTR)も全部ボケてんねんな。
たかのり そうそう。ネタもVもバチバチに用意して、人呼びまくって漫才劇場満席にして迎えた本番、90分間スベり続けました。マ、ジ、で、大スベリ! 90分間ですよ? 自分らが打ったライブの中でも一番印象に残っているし、今でもあの日の帰り道は思い出しますね。
周平魂 あれはしんどかったなあ。
たかのり 要は、お客さんを無理やり連れてきてたのがあかんかったんですよ。当時キャバクラのボーイをしていたので、その社長とか、キャバ嬢とかホストとかが来てくれていたんですけど、会場自体に一体感がマジでなくて(笑)。ここの軍団にだけ変にウケてるけどあっちは一切笑ってない、みたいな。まあ、最初のネタで出ていってすぐ僕がミスってしまったっていうのもあるんですど。
周平魂 たかのりが、ネタ飛ばしたかなんかして、まあそれはしょうがないじゃないですか。そしたら手を合わせて「すんません、すんません」と謝るっていう。それで会場中の全員が一気に不安になったと思うんですよ(笑)。
たかのり 一発目の僕の大ツッコミが、溜めて溜めて、バーン!で全然ウケなくて。ヤッバー!って焦って次のセリフが出てこなくなり、絞り出したのが「すんません、すんません」(笑)。「伝説の初90分単独」って銘打ってたんですけど、逆の伝説になりましたね。忘れられません、あれは。ライブ終わった瞬間、口内炎が5、6個できました。
周平魂 「超満員の90分単独で大スベりした」という伝説を打ち立てましたね。見に来た芸人にも「スベりまくっとったなあ!」とイジられました(笑)。いまだに見取り図さんとか言ってきますよ。
たかのり うれしそうに「自分たちのことを好きな人が集まって、なんであんなことなんねん(笑)」ってな。
おもろいと信じてやり続けたネタが大一番で花開いた瞬間
たかのり ライブとはちょっと違うんですが、「ABCお笑いグランプリ」のラストイヤーの最終予選も記憶に残っています。その年にかけていたネタが、それまでずっと調整しながらウケる、ウケないを繰り返していたんですけど、最終予選の日が一番ウケたんですよ。あの光景は忘れられないですね。
周平魂 「あ、(決勝)行った!」と思ったな。
たかのり そのネタ、単独でもうまくハマらなくて。それでもおもろいはずやと信じていろんなライブでやり続けていました。ある寄席のときに僕らの次の出番が千鳥さんやったんですけど、ネタ終わって舞台袖に行ったら制作のスタッフさんがバッと寄ってきて、「千鳥さんが2人で手を叩いて笑ってましたよ」と。それ聞いた瞬間めちゃくちゃうれしくて、「俺らがめっちゃ面白いと思っている兄さんが面白いって言ってくれてるんなら、大丈夫や!」と自信になったんです。それでギリギリ最終予選に間に合った気がする。
周平魂 ラストイヤーで初めて決勝行けて、まあ決勝はそないでダメだったんですけど(笑)、あれがなかったら諦めてたかもな。ネタのおもろさっていうのはいつも自分たちの中では確信していて、あとはお客さんに伝わるかどうか。ただ、やれどもやれども伝わらないとモチベーションもなくなってきて、だんだん愛の火が絶えていって別れてしまうカップルみたいにネタとお別れする瞬間もあります。
今、ここがお笑いのど真ん中
周平魂 僕は、「もしかしたらお笑いの歴史の中にいさせてもらっているのかもな」と思った瞬間があって。
周平魂 そもそも「漫才ブーム」の以前、ミルクボーイさん、金属バットさん、ぷくぷく隊さん(現ヤング)、僕らで「漫才やめなさいライブ」というのをやっていたんですよ。僕らが1年目のときにミルクボーイさんに声をかけていただいて。表向きは「『もう漫才やめなさい』と言われるまで漫才をやるライブ」という意味なんですけど、実は「芸人見に来い。俺らの漫才見て、漫才やめなさい」っていうめちゃめちゃ尖ったライブ(笑)。2、3年やったんですけど、それぞれの考え方の違いで離散してしまった。その後、ミルクボーイさんはよく言う“暗黒時代”を経て、また漫才に力を入れていくんですけど、それまで先輩付き合いばっかりだった駒場さんが「周平、また漫才に戻ってこよう思ってんねん」とNGKの駐車場の裏で恥ずかしそうに言ってきたのをよく覚えています。
たかのり そこから「漫才ブーム」が始まって、ミルクボーイさんは毎回キレキレの3本を作ってくる。
周平魂 「漫才ブーム」はその日の出来がまんま打ち上げのテンションに出るんですよ。毎回全員が全員、ウケるわけじゃないので。楽しいんですけど、ネタに関しては真剣勝負のバチバチなんです。
忘れられない“見た”ライブ
人生初ヒロトに大興奮
周平魂 中学3年生のときに初めて見た、THE HIGH-LOWS。それが人生初めての音楽ライブでもあって。THE BLUE HEARTSのときからずっと好きで、出てきた瞬間のヒロトは一生忘れないです。エグかったです。カッコよかった……。ただ、興奮しすぎて暴れてしまって。ダイブしてやろうと思っていたわけではないんですけど、とにかくヒロトに近づきたい一心で、気づいたら“上”にいた、みたいな(笑)。しかもそのときに、僕の勝手なニュアンスですけど、ヒロトがハーモニカで「TRAIN-TRAIN」の冒頭みたいな旋律を吹いたんですよ。ブルーハーツの曲をやるわけないんですけど、まだハイロウズになって3枚目のアルバムの頃やったから、お客も「え?」ってなって。で、ハーモニカをパーンと外して、1曲目が、「グッドバイ」。「サヨナラする キレイサッパリ」という歌詞なんですけど、「ブルーハーツは歌わんで」という意思をズバーン感じましたね。
たかのり え? ブルーハーツの曲歌ったことないん?
周平魂 歌わんよ! ザ・クロマニヨンズになってからも、昔の曲を歌ったのは松本人志さんの結婚パーティーで「日曜日よりの使者」を歌ったときだけ。それ以外で歌ったことない。
たかのり えー! あんな名曲歌わんの?
周平魂 例えば俺がインタビュアーとしてヒロトのところに行って、ハイロウズとかブルーハーツの話ばっかり聞いたら「じゃーねー」って感じやと思うわ。「バイバーイ」って。
たかのり 「えー、それではインタビュー始めさせていただきます。まずはブルーハーツのことをお聞きしたいんですけど」。
周平魂 「バイバーイ」。
たかのり なんやねん!(笑)
周平魂 そんなんやで、絶対。だから俺も、ラフ企画の話されたらキレるし。
たかのり キレんでええねん(笑)。俺らのNSCのときのコンビ名。
いつまでも舞台上に漂う街裏ぴんくの残り香
たかのり 僕が衝撃受けたのは、
周平魂 けもの臭がすごい。匂いが消えへん。「さっきここに街裏ぴんくさんおったやろ!」って匂いでわかるもん。出番順が街裏ぴんくさん、ミルクボーイさん、僕らっていうときでも、まだ街裏ぴんくさんの匂いが残ってるからな。
ツートライブの“観てほしい”ライブ
全国6会場で初漫才ツアー「闊歩旅」
周平魂 ツアーをやりたいという話は、2人では前々からしていたんですよ。そしたらマネージャーから「やりませんか?」と言ってきてくれて。
たかのり 僕らから「やりたい」とは言ってないよな?
周平魂 そこでバッチーンなったんや!
たかのり ちょうどマネージャーもやるタイミングだと思ってくれたのか、僕らの「ツアーやりたい」という気持ちと合致して、ぜひやろうということになりました。
周平魂 兵庫から始めるっていうのはなかなかニュアンスがあるんじゃないですか?
たかのり 出会いの地・兵庫から始まって、僕の出身地の広島、周平の出身地の京都、以前からやってみたかった愛知の大須演芸場、ゆかりの場所を回ります。僕ら、凱旋単独っていうのが初めてで。ドキドキ感がまた違いますね。地元で単独するってどういう感じなんやろう。
周平魂 福岡会場は幻になったんですよ。集客が見込めなさすぎるって(笑)。
たかのり それは僕らも大賛成。あまりにもゆかりがないからな(笑)。
周平魂 大阪では変わらず毎月新ネタライブをやるので、ツアーは楽しい場にしたいですね。お客さんと僕ら、どっちが楽しめるかの対決かなと思ってます。終わったときには「M-1」にもいい感じの空気を持ち込めるんじゃないかと。いい結果になると信じてやっていきたい。
たかのり やっぱり15周年、「M-1」ラストイヤーというのも含め、「ツートライブがここにいるんだぞ」っていうのを知ってもらうきっかけの1つにしたいですね。集大成を見せたい。ネタもそうやし、2人のノリとか。もう「すいません、すいません」状態にはしないので!(笑)
周平魂 各地を回っていくごとに自分の戦闘力が上がっていく感覚を味わえたらいいなあ。それが楽しみ。1周ってええ漫才できるようになっていたいと思います。ツートライブ、スベり散らかして生きてるんで、スベることに対して日和るようなことはないです。そうなってきたら福岡で追加公演やって、観客0人で漫才だけやっていい飯だけ食って帰りたい(笑)。「闊歩旅 2歩目」をやるためにもこのツアー成功させたいです。
ツートライブ
たかのり(タカノリ)
1984年4月11日生まれ、広島県出身。
周平魂(シュウヘイダマシイ)
1983年9月11日生まれ、京都府出身。
NSC大阪校30期生。兵庫県立大学の同級生で、在学中に「M-1グランプリ」に挑戦したことをきっかけに芸人を目指す。2023年1月の「ラヴィット!」(TBS)で見取り図リリーが開催した「正月-1グランプリ」で優勝し、初めてコンビ名がTwitterトレンド入りした。「TSSライク!」(テレビ新広島)、「TENGA presents Midnight World Cafe~TENGA茶屋~」(FM OSAKA)、「MBSヤングタウンNEXT」(MBSラジオ)木曜に出演中。stand.fmで「ツートライブの周波数は3329(耳肉)」を配信している。吉本興業所属。
ツートライブ結成15周年!初漫才ツアー「闊歩旅」
チケット:FANYチケットにて2月21日(火)10:00に一般発売。
日時:2023年6月30日(金)17:45開場 18:00開演 19:30終演
会場:兵庫・神戸三宮シアター・エートー
料金:前売2500円 当日3000円
ツートライブの周波数は3329(耳肉)~板の上公開収録~ in 神戸
日時:2023年6月30日(金)20:00開場 20:15開演 21:15終演
料金:前売1200円 当日1500円
日時:2023年7月15日(土)18:30開場 18:45開演 20:15終演
会場:広島・広島市南区民文化センター
料金:前売2500円 当日3000円
日時:2023年8月12日(土)18:00開場 18:30開演 20:00終演
会場:東京・よしもと有楽町シアター
料金:前売2500円 当日3000円
日時:2023年8月26日(土)19:15開場 19:30開演 21:00終演
会場:愛知・大須演芸場
料金:前売2500円 当日3000円
日時:2023年9月10日(日)20:15開場 20:30開演 22:00終演
会場:大阪・よしもと漫才劇場
料金:前売2500円 当日3000円
日時:2023年7月28日(金)18:00開場 18:15開演 19:45終演
会場:京都・京都ARCDEUX
料金:前売2500円 当日3000円
ツートライブの周波数は3329(耳肉)~板の上公開収録~ in 京都
日時:2023年7月28日(金)20:15開場 20:30開演 21:30終演
会場:京都・京都ARCDEUX
料金: 前売1200円 当日1500円
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よっっしゃー!けもの臭、更に更にまとっていきます! https://t.co/bPTp1GMlH8