今月のお笑い 6本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚とニッポンの社長・辻が語る「2022年10月のお笑い、どうだった?」
間に滝音さすけ、【暗転】、「M-1」、関西に好かれる井口&きょんちぃ、水を得たケツ、よくない太
2022年11月2日 18:00 76
構成
※取材は10月30日に実施。
ゲストはニッポンの社長・辻
──今回は、ニッポンの社長・辻さんをお招きしました。井口さんが今年すでに何度もゲスト出演されている「マルコポロリ!」(関西テレビ)にレギュラー出演中という縁もあるので、そのへんのお話も伺えたらと思っています。
飯塚 来ていただいてありがとうございます。なんで引き受けてくれたんですか?
辻 飯塚さんにはだいぶ前からTwitterをフォローしてもらっていますよね。「キングオブコント」のこととかも言ってくれていて。
飯塚 僕は「もしも師」(テレビ朝日)って特番でもお世話になってたり、以前から普通にニッポンの社長のネタが普通に好きで……。まあ、みんな好きだと思いますけど。
辻 いやいやいや、ありがとうございます。井口さんは、いつも「マルコポロリ」で見させてもらってます(笑)。
飯塚 共演してる……じゃなくて“見てる”んだ(笑)。
辻 僕、前の記事も読んでたんですけど、この2人の連載ってめっちゃシブいなと思ってました。
井口 放っておくとすぐ
で、ニッポンの社長は東京進出するの?
──まずはお互いに気になることなどを話していきましょう。
井口 関西の番組で、レギュラーの枠を後輩に引き継いでいく文化ってあるじゃん。
辻 僕らが今出ている「せやねん!」(MBS)とかですよね。抜擢されたときは光栄でした。「
井口 大阪で活躍している若手が出られるの?
辻 「キングオブコント」で決勝に行ったのは大きいかもしれないですね。「マルコポロリ」は、1回ゲストで出たときにいい感じだったんですよ。で、いざあっち(レギュラー)側に座ってみると、何したらいいかわからんかった(笑)。失礼ボケみたいなのはあんまりしたくないんですけど、レギュラー側のみなさんはたいていのゲストさんよりだいぶ先輩ですし、めちゃくちゃイジるじゃないですか。僕らは後輩やから、それに乗っかるわけにもいかず。
井口 確かに、東京のちょい先輩みたいな人が来るときは難しいよね。
辻 でも「マルコポロリ」と「せやねん」に出てからは関西のおっちゃん、おばちゃんからの知名度はかなり上がりました。
井口 それで? ニッポンの社長は東京進出するの?
辻 めっちゃしゃべらそうとしますやん!(笑)
飯塚 (2人の様子を眺めて)僕、井口くんのことは昔から知っているんですけど、ニッポンの社長はむしろテレビで見る人だから、今井口くんが辻さんに先輩面してるのがすごい変な感じ……。
井口 実際先輩なんだからいいんですよ!
辻 井口さん、僕らの1年先輩でしたっけ?
井口 それはよくわかんないけど……。いいでしょ、もう。違ってても今さら戻せないし。
飯塚 芸歴的には合っているんだろうけど、なんか違和感があって(笑)。
井口 僕なんて基本的にめちゃくちゃ威張ってますからね。で、東京は?
辻 あはははは(笑)。でも東京は、考えますね。コントの本場は東京なのかなと思うんです。漫才師は大阪にいても東京にいてもどっちでもいいと思うんですけど、コントで東京に行かないのは逃げている気がして。音楽とか芝居とか映画とか、全部やっぱり東京が本場みたいなところがあるじゃないですか。一度はそこで仕事してみたいっていうのはあります。表現が合っているかわからないですけど、田舎でやって終わるのかな、みたいな気持ちになるというか。
井口 僕らとはまったく違う感覚だよね。大阪でちゃんと稼いで生活できてるのに、それを捨てて東京に行くなんて考えられない。
辻 逆に僕も知りたいです。大阪の芸人ってどう見えてますか? 地方っていう感じがしますか?
井口 大阪ではスターなんだろうなって思ってるから、前に
辻 めちゃくちゃ若手にめちゃくちゃ怖いこと言ってる(笑)。
井口 「M-1グランプリ」準決勝のときに合間で飯行って、まだ優勝する前の
辻 え、なんでですか?
井口 なんか、ちゃんとしてるでしょ? 「千原ジュニアの座王」(関西テレビ)とかもそうだけど、こっちが負けたあとの言い訳でおちゃらけてるのに、みんなちゃんと芸で笑いを取りに来るから。恥ずかしいよ。
飯塚 井口くん、ちゃんとお笑いセンスが問われる番組苦手でしょ?
井口 そうですよ。結局「ウチのガヤがすみません!」(日本テレビ)と一緒で、しゃべっちゃいますから。全部言い訳芸というか。そう思うと大阪芸人は本当にちゃんとしてる。
飯塚 大阪よしもとからはウエストランドみたいな芸人は絶対出ない気がする。関西の方って、基本は“自分の作った笑い”を見せたい気持ちがあると思うけど、ウエストランドって2人とも“ドキュメント”じゃないですか。誰も憧れない芸風というか生きざまというか(笑)。でもそれが逆に、最近「マルコポロリ」とかで受け入れられている理由だと思う。関西にはいなかったから。
井口 東京じゃ別にこんなのいっぱいいますもんね。グレープカンパニー軍団もそうですけど、ああいうザ・マンパワーみたいな芸人を大阪の人たちはまだ新鮮に喜んでくれているなとは感じます。東京じゃもう鼻つまみ者みたいになってますから。
辻 あはははは(笑)。僕らとトレードしたほうがいいんちゃいます? 大阪でスターになれますよ。
辻は井口がうらやましい?
飯塚 芸人としての能力を縦軸と横軸で表すグラフに2人を置くとしたら、まったく真逆にいると思う。全要素が逆というか。
辻 でも僕、井口さんうらやましいです。
井口 そんなわけないでしょ。
辻 僕らは結局ネタをずっとやって、作品的なものを一生がんばっていかなあかんなと思っているんですけど、井口さんはタイミングがあればネタやめてもいいじゃないですか。
井口 やめたいよ。今すぐやめたい。
飯塚 この連載でもさんざん言っているけど、単独やりたくないんだもんね。
井口 単独なんか本当にやりたくない。
辻 現場に行ってハネる、みたいな芸人じゃないですか。それはある意味理想というか。
井口 だけど、ネタやりたいんでしょ?
辻 そうですね。でも、ネタしかないからやりたいって感じです。
井口 そういうことなんだ。もし別の得意なことがあったらやめてもいいの? ネタがやりたくて始めたんじゃなくて?
辻 最初はネタを作れるかもわからず始めたんですけど、やっていくうちに自分の作るものが好きになりました。でも、瞬発力で行く人を見ると「ああいう芸人になっているのもよかったなあ」と思います。ただ適正がなかったっていう。
井口 飯塚さん的にどうですか? ニッポンの社長の今後は。
飯塚 いやいやいや。僕が言うまでもなく今以上に人気者になっていくだろうし、テレビでももっと活躍する人なんだろうなと思っていますよ。
辻 ありがとうございます。でも、僕らは井口さんが活躍してへん場所に出たほうがいいかもしれないですね。
井口 なんでよ。一緒に出ようよ。
辻 共演NGかもしれないです。畑が違いすぎますもん(笑)。井口さんは仕事を選んだりしてます? 僕ら最近は、マネージャーさんに「こういう仕事が来てますけどどうしますか?」と聞いてもらえるので、わりとストレスなくやれているんですけど。
井口 僕はもう無条件に勝手に入ってる。別に全部出たいからいいけど……。自分の力がどこで発揮できるかちゃんとわかっている人はそういうふうにするのがいいよね。僕もそんなふうになってみたいよ。どっしり構えて、「この仕事は僕に合ってない!」みたいな。
飯塚 それは絶対違うと思う(笑)。井口くんは荒れてる場ほど得意なんだから。「マルコポロリ」とか「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ)とか。
辻 どうなってもいいですもんね、井口さん(笑)。ウケてもスベっても得しかない。
よしもと以外の楽屋にもすぐ行く滝音さすけ
──井口さんと辻さんは「マルコポロリ」のスタジオ外での交流はないんですか? ごはんに行くとか。
辻 ほんまに挨拶だけです。行きたいですけど。
井口 え、行けるの? 行きたいよ全然。
辻 「行けるの?」がもう準レギュラーの言い方じゃないですか(笑)。いや、ぜひぜひ。
井口 2本撮りでしょ? 何もなければ待ってるよ、ずっと。
辻 それはそれでプレッシャーやなあ(笑)。 井口さんって常にスイッチオンじゃないですか。僕おもろいこととか言わんでも大丈夫ですか?
井口 そんなの全然ないよ。嫌なこと言ってきたら東京戻ったときにめちゃくちゃ言いふらすけど。「大喜利勝負しましょうよ」みたいなのは絶対やめてよ?
辻 いや僕、そういうのの逆ですよ!
井口 僕のほうが怖いからね? 大阪の人の飲みとか。
辻 そしたら、ちょうどええ奴いるんですよ。誰かと誰かの間に絶対ハマる奴。滝音のさすけなんですけど。
井口 えー、大丈夫?
辻 「M-1」ツアーのとき、楽屋でクイズ大会やってましたよね。僕らは大阪芸人が集まっている楽屋にいたんですけど、そっちの楽屋に行ったさすけが大きい声で「いやー、井口さんおもろいわー!」って言いながら帰ってきてました。「あの人おもろすぎる!」って。僕らはビビってそっちの楽屋に行けなかったんですけど、あいつはすぐ行く奴なので。
井口 こっちはよしもと以外の人の楽屋になってたけど、滝音だけは来てたなあ。
重たい会場で強い
──では10月のお笑いの話に移りましょうか。
井口 やっぱり「キングオブコント」じゃないですか? 飯塚さんも現場にいたんですよね。
飯塚 今年は初めて構成作家として参加させていただきました。
──具体的にはどんなことを?
飯塚 例えば、エントリー開始のポスターのデザインやキャッチコピーをどうするかって話から、今年はどんなグッズを作るか、事前特番はどんな内容にするか、決勝本番のオープニングや出場者紹介VTRまで、いろいろとお手伝いさせていただきました。
辻 僕ら出番も遅かったので、オープニングのラップはカッコええなと思って見てました。あの、これ聞きたかったんですけど、準決勝って見ました?
飯塚 見ました、見ました。
辻 準決勝、めちゃくちゃウケてなかったですか? 僕ら。
飯塚 ウケてました(笑)。
辻 これをもっと言ってほしいんですよ! 僕らがおもんないネタしたわけじゃないと。
飯塚 いや、めちゃくちゃウケてましたよ。準決勝の初日は最高の人間とどっちかが一番ってくらい。僕は審査には関わってないんですけど、体感の笑いの量として。
辻 決勝で最下位になったネタのことなんですけど、準決勝ではケツに照明が当たってドンとウケて、暗転してもどよめきが収まらないくらいウケてたんです。だから決勝であの点数が出ても悔しくなかったんですよね。いいネタなのはわかってるから、点数として評価されなかったことに対しては「しゃあないか」と。ただ、あの数字だけでスベったみたいなイメージになるのが納得いっていなくて。
飯塚 そこがテレビで見ている視聴者になかなか伝わらないところですよね。あの点数って、あの日のあの空間のあの流れでの点数なだけであって、ネタの絶対評価じゃないじゃないですか。ちょっとしたことで全然結果は変わったと思うし……。でもあのネタ、もうやりづらくなりますよね?
辻 もうできないですね(笑)。とくに決勝は盛り上がりがエグくて、出る前にもうボケ数が少ないなと思っちゃったんです。この流れはきついぞと。僕ら、(会場が)重たいときしか結果出たことがなくて。重たいときってみんなウケないから、数が少なくても5、6個拍手笑いがあったら勝てる。優勝させてもらった大阪の賞レースが2つあって、それどっちも僕らしかウケてませんでした(笑)。ウケる場所では勝てないんですよね。
井口 それはちょっとわかるなー。「M-1」で言うと、よしもと以外の漫才師はNEW PIER HALLが苦手だから、みんなが苦戦してるときのほうがチャンスあると思ってた。
辻 なるほど。
井口 小さい劇場でしかやってない芸人だと、声が手前に落ちてる感じになるんだよ。僕らはまだ「タイタンライブ」っていう爆笑問題が出る大きいライブに2カ月に1回出させてもらってるおかげ……かはわかんないけど、まだそっちのほうが目立てる可能性があるなと思ってた。で、ビスケットブラザーズが優勝したわけだけど、後輩?
辻 超かわいがってきた後輩です。
井口 どういう気持ちだったの?
辻 最下位やったんで、全然悔しくなかったです。ほんまに、「よかったなあ!」みたいな。もし最終決戦で逆転された、とかやったら悔しいかもしれないですけど、気持ちいいくらいの点差やったんで。
井口 「なんだよ、クソ!」とかはなく。
辻 ないですね。とくに僕はそのタイプというか、ラッキーやったら優勝もあるかなくらいに思っていたので。
飯塚 ニッポンの社長って、ネタもトークも面白いし、陰口叩かれるようなことも聞かないし、イジり要素がなかったから、今回の「暗転」の件(※)は「ついにイジれるぞ、やったー!」って芸人さんたちががすごいうれしそうですよね。特に
辻 屋敷はここ2年ぐらい僕をイジろうイジろうとしてて、狙ってましたね(笑)。
飯塚 こんなこと話していいかわからないけど、「暗転」でイジられて「それ言うのやめてくださいよ」って負け顔をしていく道もあったじゃないですか。でも辻さんは自分から全部言ってて。どこまでも簡単にはイジらせてくれない人だなと思いました。
辻 いや、たぶん返しに自信なかったんだと思います。井口さんだったら絶対返しでウケるじゃないですか。
井口 ボロクソ言ってくるからだよ、みんなが。なんの遠慮もなく。
※編集部注:「キングオブコント2022」決勝でニッポンの社長の出番後、暗転と明転を繰り返す演出に対して審査員がコメント。点数が出た直後から辻は「暗転」をネタにしていた。Twitterのアカウント名にも付けている。
「M-1」が落とした面白い人を見つける
──井口さんは先ほど「M-1」3回戦を終えたばかりですが。
井口 この記事が出る頃には結果が出ているわけですからね。大阪・京都の結果見て怖くなってきましたよ(参考記事:見取り図、金属バット、鬼としみちゃむ、ダブルアート、生ファラオら「M-1」準々決勝へ)。
──感触は?
井口 「絶対行った」みたいなことはないので、わかんないです。だからそれ次第で、なんかいい感じに書いといてくださいね。
※編集部注:11月1日の発表で、ウエストランド、そしてニッポンの社長の3回戦突破が明らかに(参考記事:コマンダンテ、きしたかの、10億円、大仰天、怪奇ら「M-1」準々決勝へ、決勝は12月18日)。
──ニッポンの社長はこの取材の翌日に3回戦を控えています。
井口 っていうかもう「M-1」は出なくていいんじゃない? なんで出るの?
辻 ええ?(笑) 僕らが「キングオブコント」優勝してたら出てないかもしれないですけど、最下位なんで出るしかないです。逃げたと思われますから。
井口 飯塚さんは見たんですか? 大阪・京都の3回戦は。
飯塚 YouTubeで気になったところは見てます。「M-1」が落としたけど面白い人を早く見つけたいっていう気持ちで(笑)。
井口 なんかできたりしないんですか? 救済というか、飯塚さんのパワーで何かに呼んであげるとか。
飯塚 そんな力はないよ。去年
辻 それは大事ですよね。
井口 ちなみに誰かいました?
飯塚 「例えば炎」というコンビが3回戦で落ちちゃったけど、まだ結成2年目くらいらしくて、今後もっと出てきそうだなって思いました。
辻 僕は、2回戦で落ちてしまった
井口 ああー。どうなの? 元気にやってるの?
辻 いつもめちゃくちゃおもろくて、僕毎月ライブに呼ばせてもらっているんですけど、オーディションでなかなか劇場に入れないんですよ。今年マジで準決以上行くと思ってたんですけど。
井口 多少やっぱりトータルの勝負というか、名が知られてるかどうかもあるのかもね。知らない奴と思って見るのと、知ってる芸人と思って見るのじゃ絶対違うと思うし。
辻 それで言うと僕ら、「荷物多いんかい」ってネタがあるんですけど、知らない奴としてめっちゃウケていたんですよ。だから最近それをやると、「おもんなっ」みたいになって。
井口 知らない奴がやる「何だこのネタ!」のパターンだったんだ。
辻 カマしてるつもりなかったんですけど(笑)。
飯塚 ニッポンの社長は「M-1」のために手数を増やそうみたいな作業をやってる感じに見えないのがカッコいいなと思うんです。
辻 でも、それができるのもすごいですよね。
飯塚 それで言うと、「キングオブコント」でビスブラのネタのすっごい微妙なところが準決勝からめちゃくちゃ変わっていたのが驚いた。オチも違っていて。
井口 決勝を想定して変えたっていうことですよね。
飯塚 ここもうひと笑い欲しいなっていうところが新しいボケに変わってて、変えたところが全部ハマってた。それでいて、よくわからない遊びの部分とかも残してたりして、賞レース向けにギチギチになってない感じもすごいと思った。
文化系賞レース
飯塚 「ラフターナイト」(TBSラジオ「マイナビLaughter Night」チャンピオンライブ」 / 参考記事:サスペンダーズ「ラフターナイト」優勝特典のラジオ特番で「内面の魅力が出せたら」)はあまりなじみないですよね?
辻 そうなんです。
飯塚 「東京の賞レース」という感じがすると思います。TBSラジオが主催なので、お客さんの多くがラジオファンなんですよ。ウケるところが普通のお笑いライブよりマニアックというか……。「M-1」が体育会系の賞レースなら、「ラフターナイト」は文化系賞レースって感じがします。僕は
辻 うわー、見たらよかったな。関西の賞レースは、そのときの優勝賞金がうれしいんじゃないんですよね。ギャラの単価を上げるためにみんながんばってる。
井口 「単価を上げる」ってよしもとの人はみんな言ってるよね。
飯塚 お金の話で言うと、「お笑いの日」(TBS)でマヂラブや
辻 応援はされにくくなるかもしれないですよね。井口さんはどれくらい稼ぎたいとかあるんですか?
井口 そんなのいくらでも欲しいよ。でも、芸能人と付き合いたいとかめちゃくちゃお金欲しいってよく言ってるし本当に思うけど、そんなの漠然とした考えでしかないじゃん。実際はどうでもいいというか。すごいお金にこだわってる人とかを見ると「もういいだろ」みたいな気持ちになる。僕は独り身だし、家族がいるとまた違うのかもしれないけど。ギャラも1回も聞いたことないし、そのために営業に行ったほうが効率がいいとかも思わない。明細も見ないし。
辻 僕は感覚ですけど、「明日の仕事、大丈夫か」って精神的にめっちゃしんどくて年収億より、ノンストレスで700万くらいのほうがいいなって思います。
井口 それはある。さっきの話もそうだけど、辻くんは力を発揮できるところでやっていくっていうのが合ってるんだろうね。
──先ほど行われた「NHK新人お笑い大賞」では
辻 あのネタ、めちゃくちゃおもろいですよね。
飯塚 あれ(エスカレーター)が面白いからコントに取り入れようって思ったところがすごい。ニッポンの社長も昨年優勝していますけど、「NHK新人お笑い大賞」の雰囲気は独特ですよね。
辻 お客さんの年齢層がほかの賞レースより高いです。
飯塚 あの客層の中、今日は一発目が
辻 あはははは(笑)。スパイシーガーリックも、ようゾンビで勝ちましたよ。でも、いろんなところで名前を聞くところが本選に上がってますね。
──本選には2組のほか、パーティーパーティー、紅しょうが、10億円、トンツカタン、隣人、オダウエダが出場しています。
飯塚 観に来るお客さんの層的にはもう少しわかりやすいものを見たい気がするんだけど、選ばれているのは今最先端の個性的な人たち。不思議な大会だなと思います。
東京では、いいネタができたら隠す
飯塚 また「マルコポロリ」の話だけど、「井口大好きクラブ」が好評だったんでしょ?
井口 「よかった」っていうのを
辻 そのくらいの先輩が来ると一番ハネるんですよね。東野さんも好きやし。で、TVerめっちゃ再生されるじゃないですか。ただ、僕らは一番そのへんの方々と面識がないから、TVerが回れば回るほど「ニッポンの社長なんもしてない」って言われるんですよ。
飯塚 あはははは(笑)。確かに関東の先輩ばっかり出てますよね。
──関東の芸人さんのノリみたいなものはあの場で初めて知ることが多いですか?
辻 そうです、そうです。よしもと以外の芸人さんのああいう場での面白さもそうですし、ネタをどうやって鍛えてはるのかが気になっていて。僕らって、新ネタライブでめちゃくちゃ荒い状態でやって、そのあとライブでやりまくって、やっと「今年1本できた」となるんですよ。でも、よしもと以外の方ってそんなにライブないですよね?
井口 あっても、よしもとの人と比べれば全然だし、同じ200人ぐらいのお客さんがぐるぐる回って来てくれている感じだから、2、3回やると本当にウケない。だから「ネタを叩く」みたいな作業ができないんだよ。いいネタができたら隠さなきゃいけないっていうわけわかんないことになってきて(笑)。「M-1」でやるネタができても、やればやるほどウケなくなってこっちも冷めちゃうみたいなこともあるから。例えば人気者が出るライブがあったら、その人気者のファンが来るから試せるんじゃないかとかね。どこでやるかの見極めもしながら。
辻 なるほど……。それやったら絶対僕、決勝行けてないと思います。
きょんちぃ「座王」ギャルマインドで活躍
飯塚 井口くんが関西に求められている話にも通ずると思うんだけど、「座王」で
辻 あ、ちょうど「マルコポロリ」にも来てましたよ。
飯塚 きょんちぃみたいなスタンスの人、あんまりいないじゃないですか。
辻 荒川は言っても、お笑い脳がベースでやってますからね。
飯塚 ぱーてぃーちゃんみたいにマインドもギャルっていうのは珍しいし、大阪で活躍する伸びしろがあるんだなと。
辻 でも「マルコポロリ」は早いので、もうすがちゃん最高No.1ばっかりイジってました(笑)。「なんやその名前!」って。すがちゃんも戸惑ってました。
井口 「お笑い芸人です」って名乗るとハードル上がるじゃないですか。もちろんぱーてぃーちゃんも芸人なんですけど、会話しててもちゃんとギャルだから、振り幅はすごいありますよね。
辻 僕昔、テレビ見てて、やしきたかじんさんが一番卑怯やと思ってました(笑)。ハードルはないのにお笑いしかしないじゃないですか。
飯塚
辻 ああー(笑)。武将様とかも。
飯塚 その一方で、
井口 “鬼”として出て普通に勝ちますからね。
飯塚 どえらいハードルを毎回越えてくるっていう。
変な売れ方しているマユリカ
辻 マユリカが「りぼん」登場(参考記事:マユリカが「りぼん」登場)はタイミングがおもろかったですね。「マンゲキ芸人取扱説明書」というライブで中谷がある絵を披露して、のちに配信停止になってピー音とモザイクが入ったことがあったんですけど、その1週間後くらいに「マユリカが『りぼん』登場」だったので。一番出したらあかん奴やろっていう(笑)。
──そのライブの翌日にマユリカの劇場出番休演のお知らせがあったこともあらぬ憶測を呼んでいました。そして辻さんが発信した「#さよならマユリカ」「ニッポンの社かもと」も話題に。
辻 えらいみんなザワついてたんで。マユリカが最近人気すぎて、毎日Twitterのトレンドに入っているような状態じゃないですか。変な売れ方してるんですよ、あいつら。EXITみたいな売れ方してる。
井口 ネタに影響がないならいいけど、そのへんは大丈夫なの?
辻 それはもう全然大丈夫です。
飯塚 これでネタでもちゃんと評価されたら本当に売れることになるんでしょうね。
辻 今、追い風はえげつないと思います。
大阪にガクヅケ呼んだらカマされた
──辻さんはよく若手のネタを見ていると聞いたのですが。
辻 「Kakeru翔LIVE」のMCをするときは絶対ちゃんと全組見てますね。
井口 ネタ見るのが好きなの?
辻 はい。まだ誰にも見つかってない奴をライブに呼んだりするのが好きで。腹立つんですよね、おもろい奴が落ちてるのが。せめてライブに呼ぼう、みたいな。滝音も最初それで知り合いました。
井口 僕も呼んでよ。
辻 え!? まだ見つかってない芸人の話してるんですよ?(笑) じゃあ、僕ら毎月ネタとエンディングだけの「ニッポンの社長のスーパーライブ」というライブをやっているので、そこに呼ばせてください。
飯塚 この前は
辻 「あらびき団」(TBS)でも面白かったし、YouTubeも見てて。ただガクヅケ呼んだんですけど、カマされましたね。あいつら45秒ひとボケで終わりよったんですよ。
井口 ええ!?
辻 昔のパンクバンドのカマし方してました。「ルールは破ってねえぜ」みたいな。昼にわざわざリハしに来て、デカい小道具使って、45秒で終わった。
飯塚 大阪まで来て(笑)。
ケツ&河本、相方は今
辻 ケツが「マルコポロリ」で
飯塚 あんなにTwitterを動かしてるケツさん見たことないです(笑)。
辻 そうでしょう? あいつって基本なんもしないんですよ。今「やっと東野さんにウケた!」みたいな感じではしゃいでます。
井口 確かに、「なんなんすか!」って怒りながら前に出ていたけど、席に戻るときはめちゃくちゃうれしそうだったもん(笑)。そういう場所で東京の芸人と絡むのがよかったりするんだろうね。
──そろそろ終わりのお時間です。
飯塚 河本太の話もしたかったね。吉田豪さんが河本くんを面白がっている(※)。
※編集部注:YouTubeチャンネル「集英社オンライン」で吉田豪がウエストランド河本にインタビューする番組が生配信され、話題に。
辻 面白いですもんね、あの人。
飯塚 「朽木糞牆」(代官山ブックス)という自伝風の小説を吉田豪さんが取り上げているんですけど、なんというか、いわゆるクズ芸人とも違う、仕事につながらなそうな“人間としてのダメさ”が書いてある本なんだよね(笑)。
井口 だから、よくないんですよ。広まれば広まるほどよくないんだから。
辻 河本さんが売れてきたら、ウエストランドさんのギャラ折半の問題も解決しますよね。同じくらい稼いでくれたら。
井口 別のところで稼いでくれたらシステム的には一番いい。よくよく考えたら、折半って休んでいる間のお金も入ってくるからいいわけで、コンビで一緒に出てもそんなに変わらないんだよ。だから、最近はもうあんまり関係ないと思ってて。別にコンビで出てもどうせ機能しないし(笑)。見ている人は「あいつなんにもしてないのになんで金もらってんだよ」と思うかもしれないけど、一緒に出たとしても僕のお金が増えるわけじゃないから。
飯塚 折半になったのは太くんの戦略だったんだよね。まだ2人とも仕事がないときに、太くんだけCMの仕事がポンと決まって、そのギャラを折半にするから今後も折半にしようと提案したら、井口くんがまんまと食いついた(笑)。「きっとこいつは売れるから、折半にしといたほうがのちのちいいぞ」って。
辻 すごいなあ。戦略家やな。でも井口さんの好感度も上がりますよね。
井口 それが上がらないんだよ。言っても言っても。
ビッグニュース
──1つお知らせがあります。12月27日(火)に東京・阿佐ヶ谷ロフトAでこの連載発のイベントをやりますので、みなさん告知お願いします。
井口 何をやるんですか?
──もう、“これ”を。
飯塚 公開収録ですよね。
辻 いいっすね!
井口 読者にアンケートとります? みんなが何話してほしいかわからずやってるじゃないですか。
飯塚 本当に手応えがないからね(笑)。
辻 でも僕も読んでましたし、いろんな人が読んでるんじゃないですか?
井口 僕はけっこういい感じに言われますよ。
飯塚 井口くんはいろんな芸人さんに会うからいいけど、僕はずっと家にいるから。「一体誰が読んでるんだろう?」って思いながら、月に1回ここに来て、話して、また家に帰ってる。
辻 大阪の芸人も、「飯塚さんが若手一番の作家さんだ」みたいに噂してます。だからすごい2人の連載やなと。
──ですよね!
井口 「いい人選だ」ってコメントも見ましたよ。僕からしたらラッキーなだけですけど。
飯塚 井口くんは「M-1」で優勝するようなことがあったら、イベントやってる場合じゃないんじゃない?
井口 「M-1」次第で変わるかもしれないですね。
辻 井口さんが優勝してこのイベントなくなってたらショックですわ(笑)。
──この連載に愛を注いでください。
井口 愛はありますけど、すいません、そういえばまた東野さんに言うの忘れちゃいました(※)。
※編集部注:東野幸治をゲストに呼ぶことがこの連載の最終目標。
──先ほど井口さんが出演されている「東野vs」のランチ動画が上がってましたけど、また言ってくれなかったんですね。
井口 ランチなんて行くことないから、お店どうしようってことで頭がいっぱいだったんで。
飯塚 僕はもう東野さんの名前を出すの、怖くなってきました。来てほしくないです。
──ガーン。
飯塚 なんか、バレたくない。というか今日さ、同じ時刻に東野さんと佐久間(宣行)さんのYouTubeが更新されて、どっちにも井口くんが出ていたよね?
辻 めっちゃ売れてますやん!(笑)
井口 それが「M-1」3回戦の裏でちょうど上がりましたからね(笑)。
──ということで、イベントよろしくお願いします。
「今月のお笑い」イベント情報
ライブ!!今月のお笑い~井口と飯塚の楽しい連載~
日時:2022年12月27日(火)19:00開場 19:30開演(約2時間)
会場:東京・阿佐ヶ谷ロフトA
料金:前売2000円 当日2500円(別途飲食代500円以上) / 配信1500円
チケット:イープラスにて12月上旬販売予定。
<出演者>
ウエストランド井口 / 飯塚大悟
辻(ツジ)
1986年11月15日生まれ、京都府出身。2013年11月にケツとニッポンの社長を結成。「笑う心臓」(日本テレビ)、「関西コント保安協会」(ABC)、「おかわりコント学園」(読売テレビ)といったコント番組のメンバーで、「キングオブコント」では2020年から2022年まで3年連続で決勝に進出している。2021年に「NHK新人お笑い大賞」で優勝、2022年に「上方漫才大賞」で新人賞を獲得。また2022年8月に「スーパーお笑い大賞~おもろいやつが得をする~」で優勝し、スーパー西友のWeb CMに起用された。バンド・ジュースごくごく倶楽部ではギターと作曲を担当。つぼみ大革命に提供した楽曲「とってもペイズリー」も配信中。「お笑いワイドショー マルコポロリ!」(関西テレビ)、「せやねん!」(MBS)にレギュラー出演している。吉本興業所属。
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年の「THE MANZAI」認定漫才師、2020年「M-1グランプリ」ファイナリスト。2011年からラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信している。タイタン所属。
飯塚大悟(イイヅカダイゴ)
1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「トークィーンズ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)販売中。
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