ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2022年8月のお笑い、どうだった？」

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は8月31日に実施。

きしたかのがキャーキャー言われる日

──さて今回で4回目ですが、反響は増えてきたでしょうか？

飯塚　芸人さんはけっこう読んでくれているみたいなんですけど、公に「読んでます」という発信は見かけませんね。ニューヨークとか、トンツカタン森本くんとか、お会いしたときに「見ました」とは言ってくれたんですけど、つぶやいてはくれない。

井口　腹立ったのが、ちょっと前にきしたかのに会ったんですよ。たびたびここで話題にしているじゃないですか、きしたかののYouTube。岸は「ありがとうございます！」って言ってきたんですけど、高野はこの連載の存在すら知らなかった。で、またあいつらのYouTubeがバズってますし。

飯塚　前回募集した、井口くんへの感謝のエピソードもなかったね（笑）。

井口　本当ですよ！ でも若手からしたらうれしいと思いますけどね。飯塚さんが名前出してくれたら。

飯塚　いやー、ちょっと絡みたくないんじゃない？ 僕らって絶妙に。なんかダサいんだと思いますよ。

──ダサい連載……。

井口　じゃあ、ここでちょっと注目の芸人の名前出しておきましょうよ。

飯塚　この流れで？

井口　そいつは絶対読むと思うんで。何かしらで言及してもらいましょう。

飯塚　注目というか、今本当に勢いがすごいなと思うのはマユリカ。「マユリカVS全員」（※）というライブを配信で観たんですけど、お客さんからも芸人さんからも愛されているのを感じました。「ラヴィット！」（TBS）に出たときに毎回ファンが沸いているのもすごいですし。

※編集部注：シゲカズです企画「〇〇VS全員」シリーズとして8月に開催された「マユリカVS全員」。何度も配信期間が延長され、最終的に会場・配信含めて3500枚以上のチケットを売り上げた。

井口　なんでそんなに愛されているんですかね？

飯塚　ネタが抜群に面白いのは言うまでもないけど、ツッコミの中谷さんが漫才の中で個性的な女性役を多くやるようになったのも理由の1つのような気もする。あれによって2人とも変な奴だぞって印象もついたし、どっちでも笑えるようになった。

井口　「M-1」とかでネタの面白さはみんな知っていたにせよ、ここ数カ月でめちゃくちゃ人気者になっていますよね。

──「LIVE STAND」でもキャーという歓声が上がっていたみたいです（参考記事：東京との違いを「肉の付き方が大阪」と見取り図盛山、マユリカが人気なら誰も身体絞らない）。

飯塚　もう王道のキャーがなくなってきてますよね。イケメンでネタがわかりやすいシュッとしたコンビに女子がキャーって言う現象がなくなりつつある。

井口　ランジャタイも真空ジェシカも、超イケメンというわけじゃないですからね。

飯塚　三四郎も最初は女の子に人気で、とかじゃなかったよね。だからきしたかのも、千鳥さんや佐久間（宣行）さんが面白いって言ったり、「ラヴィット！」で相席スタート山添さんが紹介したりしてどんどん注目されて、キャーキャー言われる日が来ると思う、これから。

井口　そしたらとんでもないことになりますよ!? きしたかのですからね（笑）。

飯塚　それに浮かれる高野さんの顔も目に浮かぶ（笑）。

「M-1」ネタバレ回避問題

飯塚　前回からの流れで言うと、井口くんの「ダウ90000がキングオブコント準決勝に行く」という予想が外れてしまったけど。

井口　最悪っすよ。媚び売り損ですよ！ 一応本人には「ふざけんな！」とは言っておきました。

飯塚　準々決勝のネタを見たけど、単独ライブで個人的に一番好きだったネタを、面白さを損なわずにコンパクトにできていてすごいなと思った。じゃあ、改めて決勝予想しておく？

井口　そうだなー、行ってほしいのはラブレターズです。唯一の同期なので。準決勝まで進むのが6年ぶりだと聞いて驚きました。あと、TCクラクションがすごくいいって話は耳にしますね。それと……もう全然わかんないっす。こうなるとただ一緒にやってた芸人を応援してるだけ（笑）。予想でもなんでもない。

──「M-1グランプリ」の1回戦は8月1日に始まりました（参考記事：「M-1」1回戦が本日スタート！ママタルト、大仰天、10億円、Hi TEENSら登場）。

井口　1回戦の動画もけっこう毎回話題になりますよね。

飯塚　「M-1」はネタバレ対策も同時にやらないといけないのが難しいところ。1回戦は1位から3位までに入るとYouTubeにネタ動画が上がって、3回戦、準々決勝はGYAO!で公開されるから、芸人さんたちはどこでどのネタをやるか悩ましいと思う。

井口　もちろんみんな1回戦からトップ3に入る気持ちでやってますから、そういう想定だと同じネタはもう2回戦ではやれない。

──そもそも、なぜ知られているネタはやりたくないんですか？

井口　どうしてもウケが弱くなるんですよ。

──審査員が変わるとしても？

井口　ウケないことが一番嫌ですからね。審査員の方はそういうの関係なくちゃんと見てくれるのかもしれないですけど、ウケないとこっちもノッてこないし、不安にもなるし、印象もよくないでしょうから。本当にまれだと思います、3回戦と準々決勝で同じネタやる人は。さすがに「M-1」ともなれば、お笑いファンはみんな見てるでしょうし。

飯塚　ネタバレしててもウケるときもあるし、その日や会場でけっこう反応は違うんだよね。

井口　気にしすぎるのもよくないんでしょうけど。バレてるかもって思って面白いのを引っ込めておくのも意味わかんないし。

飯塚　ミルクボーイはGYAO!で相当面白いと話題になって、そのまま同じネタで優勝しているから、関係ないと言えば関係ないのかもしれないけど。ウエストランドは1回戦から出るの？

井口　1回戦からです。「漫才工房」（※）のメンバーが今のところ全員1回戦1位なんですよ。ストレッチーズ、ママタルト、さすらいラビー、ひつじねいり。で、赤もみじは活動休止するし。どうなってんだよっていう。だから、僕らも1位で通過します！

※編集部注：「漫才工房」はウエストランドが中心となって開催している、毎月の新ネタライブ。

飯塚　1回戦1位宣言はファイナリストにしては低い目標な気もしたけど、馬鹿よ貴方はやスーパーニュウニュウが1回戦で落ちてるんだよね。

井口　そうですよ、怖いです。「大丈夫っしょ」とか本当に1ミリも思えない。

ダメな先輩ブーム

井口　爆笑問題の太田さんと光代社長の「ふたりのディスタンス」（NHK総合）の感想を聞いてみたいです。タイタンの僕らはもう麻痺してる部分もあるので、いつもの距離感というか、「まあまあ、こういう感じだよな」と思ったんですよ。けっこうリアルに無言の時間もありましたけど。でも事務所のトップの芸人の奥さんが社長で、って普通に考えたらかなり特殊じゃないですか。だからみんなはどう思ったのかなというのは気になりました。

飯塚　絶妙なバランスだよね。何十年の積み重ねで、「この距離感がいい」っていうふうに落ち着いたんだろうけど。

井口　太田さんがどれだけわーっと言っても、恐妻家な一面があることで一気にかわいく見えますよね。あの芸風で亭主関白だったら全部怖く感じちゃいますけど、家ではあんな感じだし、しかも太田さんのほうが離婚したくないって思っているという。

飯塚　井口くんが結婚したら恐妻家になるしかないよ。仮に結婚したとして、井口くんの芸風で奥さんに偉そうになんかしてたら絶対よくない。

井口　そうですね。僕が家でも怒っていたらヤバすぎますから（笑）。でも太田さんを見ていて、男としては「大変だなあ」と思うところもあるわけですよ。あんなにがんばってるんだから、ちょっとくらい許してくれよって。ただ、見ている人には「太田さんが悪い」というふうに映るくらいがちょうどいいんでしょうね。未だに奥さんとの距離感を掴めてない感じがいいのかもしれません。

飯塚　ファンにとっては太田さんのシャイなところや不器用なところも魅力だから。逆に、なんでもない日にさらっと花とか贈ってたらちょっと嫌かも（笑）。

井口　プレイボーイな太田さん（笑）。

──太田さんの恐妻家なイメージっていつから周知のものになったのでしょうね。

井口　そう言われると起源はわからないですね。

飯塚　太田さんのそういう弱点だったりかわいい一面を周りの人が言うようになってきたのもあるんじゃないですか？ 少し話が逸れるかもしれませんけど、今って先輩が後輩にイジられるのがいいという風潮になっていますよね。昔はMCの芸人が「こいつほんとダメな奴で……」って上から後輩をイジって面白くすることが多かったけど、今やったらちょっとパワハラにも見える。

井口　確かに。太田さんなんて、ボケて後輩から「なんだこいつ！」って言われるのが本当に好きな人ですから。

飯塚　この前「ダウンタウンDX」（読売テレビ）と「マルコポロリ！」（カンテレ）にTAIGAさんが出ていて、両方でぺこぱが「うちの先輩こんなに変なんです、面白いんです」ってプレゼンしていて。「マルコポロリ」ではバイク川崎バイクさんをさらば青春の光・森田さんがイジっていたし、ダメな先輩ブームになっているなと思った。みなみかわさんが先輩や会社そのものをネタにしているのもその一種だと思うんだけど。だから、イジられない先輩はすごく悲しいと思う。けっこうな芸歴になってイジってくれる後輩がいないのは。

井口　イジる側もムズいですけどね。その先輩とちゃんとした関係性がないと。爆笑問題は優しいから成り立っていますけど、リスペクトがある上でやらないと。

お笑い裏ビデオ「オールザッツ漫才」

飯塚　ロングコートダディが優勝した「真夏のオールザッツ漫才」（MBS）（参考記事：ロングコートダディが「オールザッツ漫才」優勝、ゴールデンに飲まれないぞ）。彼らって1分尺でも荒れてる場でも、もちろん正統派なネタ番組でも、全部でウケてるのが本当にすごいと思う。

井口　平場じゃなくて、ネタで場所を選ばないのは無敵感ありますね。「キングオブコント」も準決勝進出していますし、去年は「M-1」でも決勝に行っていて。

飯塚　僕が学生の頃はまだVHSの時代だったんだけど、所属していた落研の中に関西出身の人がいて、年末に実家帰ったら「オールザッツ」を録画して持ってきてくれてたんだよ。裏ビデオみたいな感じでみんなで回し観して（笑）。で、観ると、とんでもない映像。キャーキャー言われているような人気芸人が出てきてもお客さんは笑わない、芸人も笑わない。ケンドーコバヤシさんとか野性爆弾さんがドカンとウケていて、普段見ている世界とは真逆な光景が本当に裏ビデオみたいだった。「こんなの観ていいのか？」みたいな。それがすごい衝撃的だった。

──東京から来たゲスト芸人が苦戦するイメージもあります。

飯塚　「東京の芸人が出るとスベる」みたいな空気が出来上がりつつある中、トータルテンボスの漫才がハマっていたのがめちゃくちゃカッコよかった。

井口　その当時の裏ビデオ的な感覚って、今の「オールザッツ」ではどうなんですか？

飯塚　昔は売れ線とアングラで二極化していたと思うんだけど、今ってハリウッドザコシショウさんが一般的にウケているようにその二極がグッと混じり合っているような状態だから、ウケ方としてはちょうどいい感じになってると思う。あと、白桃ピーチよぴぴさんの今年の仕上がりをボジョレーヌーボーみたいな感じで年に1回、「オールザッツ」で確認するのが東京在住お笑いファンの楽しみ方（笑）。

ランジャタイの男気

飯塚　井口くんが出たライブの話は何かある？

井口　出たというか、僕はあんまり関係ないですけど、ランジャタイと浜口浜村のツーマンライブ（参考記事：“お笑い界の不死鳥”こと浜口浜村、ブランク感じさせない漫才にランジャタイ唸る）。

飯塚　配信で観たけど、井口くんエンディングに出てたよね？

井口　僕はそのあとにライブがあって、少し早めに会場に入っていたんですよ。そしたらK-PROの児島（気奈）さんに「井口くんこっちこっち」ってどう考えても見えるだろっていう袖のところに連れていかれて。だから僕はライブ自体はほぼ観ていないんですけど、結果、乱入してあんなに盛り上がらないことあるんだ、みたいな感じになりました（笑）。でも飯塚さんが感想をツイートしてたから浜村さんは相当喜んでると思いますよ。

飯塚　浜口浜村、ネタ6本くらいやってたよね。

井口　新ネタもやってましたからね。どういうつもりなんだ（笑）。

飯塚　本当に復活はないのかな。

井口　どうなんでしょうね。実際浜口さんが一番変わり者で、ちゃんと会話したことがないので本心はまったく掴めてないですけど（笑）。浜村さんはやりたがってると思うので、浜口さん次第じゃないですか。名古屋公演もありますし、そこでやって火が付けばもしかしたら。

飯塚　ランジャタイの男気みたいなものもすごいなと思った。「M-1」前日に上がった、国崎さんのQJWebのコラム（「ランジャタイ国崎のっ!!『キャハハのハッ☆』）見た？

井口　見ました、見ました。

飯塚　かつてオフィス北野で同門だったマッハスピード豪速球の単独ライブにもシークレットゲストで出ていたけど（参考記事：マッハスピード豪速球が3年ぶり単独でKOC優勝を誓う、隠しゲストに盟友ランジャタイ）、自分たちが出ることで配信チケットが伸びたり、お客さんも増えるんじゃないかっていうのを照れずに、カッコつけずにやれちゃうのとか、今回の浜口浜村も自分たちとのツーマンということで復活の場にふさわしい舞台を用意してくれるのとか、カッコいいと言うと安くなっちゃうけど、兄貴肌だよね。

井口　そうですね。一方僕は、「でもな、」と思ってますけどね。

飯塚　そこもつっかかる？（笑）

井口　いや、僕だって普段やってますからね？

飯塚　それを言わずにさらっとやるのがいいじゃない。普段そういうキャラじゃないのに。さりげなくカッコいいのがランジャタイだけど、井口くんは全部自分で言って、誰からも評価されてないわけでしょ？

井口　それこそ「漫才工房」も新ネタ2本作って「M-1」がんばろうってやってるのに、4組が全員1位になったら「風穴」（※）がすごいってことになっているんですよ。あいつらは「漫才工房」メンバーでもある、というか「漫才工房」のネタだぞ？っていう。

※編集部注：「風穴」はさすらいラビー、ストレッチーズ、ひつじねいり、ママタルトの4組によるユニットライブ。

飯塚　何が違うんだろうね？（笑）

井口　それが今一番腹立ってますよ。

結婚発表、どこで言う？

井口　結婚のニュースは毎月ありますね。鬼越トマホーク坂井にEXITりんたろー。に。

飯塚　鬼越は「オールナイトニッポン0（ZERO）」（ニッポン放送）で結婚発表していましたけど、2人のリアルな関係性をすごく感じる放送でした。坂井さんが、真剣に話しているのに金ちゃんに軽くあしらわれたと言ってすねちゃうんですけど、それが普段の毒舌のイメージとは違う、“内側の鬼越”という感じがしてよかった。鬼越がいいなと思うのは、炎上するかもしれないみたいなリスクを抱えて毒舌芸をやってるけど、「こいつとだったらどうなってもいい」という“戦友”感が伝わってくる。僕なんかはずっと1人で仕事してるから、そういう関係性に憧れるんですよね。

井口　確かに、同じことを思っている感じはしますね。一緒に心中する覚悟みたいな。

──ちなみに、井口さんが結婚するとなったらどこで発表したいですか？

井口　まったく予定がなさすぎて考えてもないですけど、しずる池田さん……KAƵMAさんみたいに、あんなトリッキーな発表（参考記事：しずる池田、ファミマ店内放送で結婚発表していた）はできないと思います。みんなだいたいラジオですよね。自分の言葉を直接届けたいということなんでしょうけど。

──差し出がましいですが、この連載で発表というのはどうでしょう。

井口　いやー、あんまり言いたくないですけど、そんなに重きを置いてないんで（笑）。

飯塚　本当に重きを置いてないよね、井口くん。「ぶちラジ」で1回もこの連載のこと言ってなくない？ 最後に告知タイムもあるのに。

井口　うわ、バレたか……。毎回忘れちゃうんですよ！

飯塚　東野さんの動画で言うのはハードル高いけど（前回の記事を参照）、「ぶちラジ」でも言わないかーとは思った。温度差感じるというか……。

井口　これからは毎週言います！ この連載、情報解禁もクソもないですもんね？

──はい。いつ何を言っていただいても構いません。

井口　今度こそ東野さんにも言っときますよ。また「マルコポロリ」に呼ばれたので。

──おお！ どんなテーマなんですか？

井口　まだ収録前なんですけど、例によってともしげさんと国崎さんはいるみたいですね（笑）。

モグライダーともしげの邪悪な部分

井口　ともしげさんが、今ドッキリが増えてきてめちゃくちゃ疑心暗鬼になってます。大変だなと思いますね。昔の小宮さんもそうでしたけど、ドッキリって手応えも感じづらいし、難しい道。いろんな番組に出られるからいいことなんでしょうけど。

飯塚　ともしげさんを天然キャラの素朴な奴だって思ってたテレビの人たちが「あれ？ ちょっと違うぞ」ってだんだん気づいてきてるよね（笑）。

井口　そうですね。もう、かわいいわけないんだから！ 邪悪なんですよ。

飯塚　邪悪なほうで突き抜けてもうひと展開あるのか、「思ってたの違う」ってなっちゃうのかはこれからだよね。本人は邪悪を仕事にしようとはしていないと思うけど、とろサーモンの久保田さんとか、それすらも自分の糧にしている人もいるし。

井口　普通に飲んでるときが一番悪いこと言ってるんで、「今カメラが回っていればな」と思います（笑）。

はんにゃ金田は「喜劇」だった

飯塚　あと面白かったのは「チャンスの時間」（ABEMA）の「第2回 令和の喜劇王決定戦」のはんにゃ金田さん。

井口　金田さんってああいうの、めちゃくちゃうまくないですか？

飯塚　金田さんのストロングポイントってこれだったんだ！って思った。なんとなくは認識してたけど、金田さんの面白さは喜劇だった。

井口　すごいですよね。それこそイケメンでシュッとしてて、バーンと人気が爆発したあと紆余曲折を経て今、喜劇。あんな動きとかできないですもん。

飯塚　ああいう全力でふざける企画は井口くん苦手そうだね。

井口　一番嫌です。ああいう真正面からスベりそうなやつ。あれでがっちりウケるって本当にすごいですよ。

飯塚　金田さんってここがすごいんだって再発見できたし、大悟さんが志村けんさんから教えてもらったという酔っぱらい芝居の「軸」の話も勉強になったし、学びの多い企画だった。

ニノも見ているYouTube

飯塚　「ニートと居候とたかさき」っていうYouTube知ってる？

井口　知らないです。芸人のYouTubeですか？

飯塚　オドるキネマの南さんが居候で、ニートとたかさきの2人は芸人じゃないんだけど、同居している3人のちょっとした面白い日常のひとコマみたいなYouTubeが話題になっていて。二宮和也さんがインタビューで「芸人がルームシェアしているYouTubeを見てます」って言っていたことがあったんだけど、「板橋ハウス」とかルームシェア芸人がみんな「俺たちのことじゃないのか!?」ってざわついたらしいんだよ（笑）。で、ニートと居候とたかさきが、「もし僕らのことだったらこのポーズをテレビでやってください」って動画で言ったら、実際に二宮さんがやっていて「俺たちだ！」と判明した。それがあってさらに人気になってる。

井口　板橋ハウスにせよ、シェアハウス系のYouTubeがやっぱり人気ですね。

飯塚　板橋ハウスの二番煎じ的な感じで「東中野ハウス」というのをダイヤモンド野澤さんたちが始めてる。

井口　それはどうなんですか？

飯塚　まだ始まったばかりでバズってはないけど、そんなにモロな名前でいいんだっていう（笑）。でもここから本当に人気が出たりするからYouTubeはわからない。

面白い若手、まだ出てくるのかよ

井口　ランジャタイと浜口浜村のツーマンライブのあとに「THE VERY BEST OF LIVE」というK-PROの大きめのライブがあったんですよ。間に若手コーナーがあって、全然通用してないところを見てやろうと邪な気持ちで覗いていたら、フランツがその日一番くらいにウケていて。すごい嫌になりました。

飯塚　フランツ面白いよね。

井口　なんかめちゃくちゃウケてました。まだ出てくるのかよっていう。

飯塚　超えていくんじゃない、ウエストランド。

井口　だからまた足引っ張んなきゃいけないですね。

──飯塚さんが先ほどまで審査員を務めていた「大学芸会個人戦2022」（※）はどうでしたか？

※編集部注：2011年から開催されている大学お笑いの大会。

飯塚　ベタな仕組みのネタはあまりなくて、センスや発想が新しくて「よくこのネタ思いついたな」と思う人が多かったですね。プロの芸人さんでも、見に行くとすごく勉強になると思います。

井口　学生芸人の人たちは続けるかやめるかみたいな話にもなってるんですか？

飯塚　大学でやめて就職する人もいるけど、半年くらい会社勤めして、退職してやっぱり芸人やりますみたいなことも多い。

井口　本当にきっぱりやめられる人じゃないと、あのウケた感覚なんて絶対忘れられないじゃないですか。学生お笑いに限らずですけど、芸人をやめてもこっそり大会に出ていたりする人もいるし。その気持ちがあるならやめないほうがいいって個人的には思いますけどね。

──ウケるというのは何にも代えがたい快感なんですね。

井口　と思いますね。その気持ちがあったら、芸人やめても全部が中途半端になっちゃう気がします。

飯塚　でも、今まではお笑いサークルって本当に大学のサークル活動の1つって感じだったけど、養成所に入ることと同じ並びの選択肢になってくるかもなとは思いましたね。

井口　しかもちゃんと大学出たことにもなるしなあ。ずるい。飯塚さんの落研の頃ってもっと学生お笑い人口が少なかったわけですよね。みんなプロ志向じゃないんですか？

飯塚　プロになろうって人は少なかったね。今は圧倒的に母数が多いし、サークルが巨大になってるから、そういう人も多いんだと思う。

井口　それで真空ジェシカみたいな例が出てきたら、自分もやってみようってなりますよね。

──そろそろお時間ですが、言い忘れたことがあれば。

飯塚　あ、9月9日に「深解釈 オールナイトニッポン～10人の放送作家から読み解くラジオの今～」（扶桑社）という本が出ます（参考記事：「オールナイトニッポン」支える10人の作家に迫る本、ナイナイ＆佐久間Pインタビューも）。

井口　どういう話をしてるんですか？ ここまでの経歴とか？

飯塚　そうそう。なんで作家になったのかとか。僕以外はみんなラジオのすごい作家さんたちで、作家になりたいとかラジオ業界で働きたい人にはすごくためになる本。僕のブロックは「こいつだけ全然ラジオの話してねえな」と思いながら読んでもらえればと思います（笑）。

井口浩之（イグチヒロユキ）

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太（コウモトフトシ）とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも！」（フジテレビ）のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年の「THE MANZAI」認定漫才師、2020年「M-1グランプリ」ファイナリスト。2011年からラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ！」をYouTubeなどで配信している。9月11日（日）に東京・新宿ロフトプラスワンで公開収録イベントを開催。タイタン所属。

飯塚大悟（イイヅカダイゴ）

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス！」（日本テレビ）、「サンドウィッチマン＆芦田愛菜の博士ちゃん」（テレビ朝日）、「水曜日のダウンタウン」（TBS）、「トークィーンズ」（フジテレビ）、「オードリーのオールナイトニッポン」（ニッポン放送）など。参加している「深解釈 オールナイトニッポン～10人の放送作家から読み解くラジオの今～」（扶桑社）が9月9日に発売される。