学生時代のYes!アキト。

北海道芸人の上京物語 第5話 [バックナンバー]

Yes!アキトの上京物語(前編)

北海道カルチャーで養われた芸人としての強い思い

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北海道出身芸人の活躍が注目を集める中、お笑いナタリーが立ち上げた連載「北海道芸人の上京物語」。第5回は北海道札幌市出身のYes!アキトに、同じく札幌出身の記者がインタビューを実施した。前編では、雪を好きすぎるエピソード、北海道カルチャーとそこで養われた芸人としての強い思い、おいしい食べ物のことなどに関して、ギャグを交えて語ってもらった。

取材・/ 成田邦洋

雪捨て場の公園が僕のアナザースカイ

──Yes!アキトさんが生まれたのは札幌市のどのあたりでしょうか?

プライベートのことは、ちょっとすみません。ナタリーさんでも答えられないです。ごめんなさい。

──では、今回のインタビューはなかったことに……?

いや、すみません。答えられます。北区です(笑)。24、5歳くらいまで実家にいました。札幌時代は1回も引越しを経験していなくて、“チョイ豪邸”で犬1匹と猫2匹を飼っていました。

──いわゆる北国らしい暮らし、という感じではなかった?

「北の国から」みたいなことはなかったです。冬場、水道が凍結することくらいですかね。

──テレビを観ていたらよく「水道の凍結に注意してください」というテロップが出ますね。

あれは北海道だけなんでしょうか? コミュニティFMを聞いていても「戸締りをしっかりしましょう」「電気を消しましょう」、そして「水道を落としましょう(=水を抜くこと)」というのがありました。それは北国ならでは、かもしれません。

──それ以外に札幌時代の北国らしい思い出はありますか?

「さっぽろ雪まつり」は、全国の人には雪像を見るお祭りみたいなイメージがあると思うんですけど、僕は雪の滑り台で遊ぶのがめっちゃ好きでした。あと、雪上ステージというのがあって、いろんなパフォーマンスが行われているんです。僕、大学に通っていたときダンスサークルに入っていて、雪まつりの会場でダンスをした2日後、同じステージで今度はお笑いでネタをやりました。雪まつりの同じステージで、お笑いとダンスの両方をやる人も珍しいのでは?

──ダンスとお笑いの二刀流ですね。

二刀流です。これは思い出深いです。

──ウィンタースポーツの経験は?

ひと通りやりました。スノーボードはやっていないけど、スキーには結構行っていました。スキー検定みたいなのを受けて“ジュニア何級”とか。札幌国際スキー場とかテイネオリンピアとかに友達と行きました。

──雪を見てテンション上がったりしますか?

めちゃくちゃテンション上がります! 東京に住んでいると、なかなか降らないじゃないですか。たまに降って、自分の家の玄関を出てすぐの廊下に積もっていたら、そこに雪だるまを作って、指で雪をなぞって「Yes」って文字を書いて写真撮ってTwitterに載せたりとか、全然しちゃいますね。めちゃくちゃ好きです、雪。

Yes!アキト

Yes!アキト

──「Yes」の雪だるまはSNS映えしそうですね。北海道時代の雪の思い出はありますか?

あるあるだと思うんすけど、学校から帰ってくる途中に垂れ下がっている、つららで遊びました。子供でも届くぐらいのつららをバキッとへし折って、道路を歩きながら柵みたいなのに先端をそわせて、ちょっとずつパキパキと折っていく。あれは何が楽しかったんでしょうか(笑)。あと家の近所のでっかい公園が雪捨て場みたいな場所になっていて、ちょっとした山ぐらいの雪の山がいくつも並んで、夜には重機がずらーっと置いてある。それが僕の「アナザースカイ」です(笑)。

──雪捨て場になっている公園が、ですか?

大人になってから結構な歳まで、逃避行の場所としてそこを使っていました。雪がいっぱい積もったところで、タバコを吸うこともあって。もともとタバコを吸う習慣はないんですけど、吸いたいメンタルはあるっていうか。あと、雪山の陰でゲームボーイをやりました。雪っていうものの安心感や非日常な感じが、自分の心の何かを埋めるのにすごくマッチしてた気はするんです。これを言ってもピンと来ないかもしれないですけど、「雪あるとめっちゃ温かい」。

──なんとなくわかります。

風を防いだりとか、暖かさを保ったりとか。かまくらとかも、そうですね。たまに北海道に帰ったとき、いまだに1人でその公園には行きます。雪には神秘のパワーがあるかもしれない。ペットボトルに入れて今から一緒に売りましょう(笑)。

北海道カルチャーの中で養われた芸人としてのギラギラ

──北海道で触れたエンタメの話も聞かせてください。たとえば一視聴者として好きだった番組はありますか?

「カーナビラジオ午後一番!」(HBC)という老舗のラジオ番組には、「北海道だなー!」って思います。北海道の番組って密室感じゃないけど、こぢんまりとやってる感じがすごくして、その空気感が心地いいです。あと「どさんこワイド」(STV)の星澤幸子さんの料理コーナー「奥様ここでもう一品(現在は「どさんこ☆キッチン」に改題)」。今、TOKYO MXでもやっています。それとオフィスキュー系の番組が切っても切り離せないくらい、当たり前にありました。北海道カルチャーには大きな特徴があると思うんですよ。

──北海道カルチャーの特徴とは?

東京のカルチャーがめちゃくちゃ細分化されているのに対して、北海道は“1個”なんです。音楽もお笑いも演劇も一緒くた。「芝居好き」「お笑い好き」みたいに、そのジャンルに特化したファンがあんまりいないイメージなんです。東京だと、たとえば「人力舎が好き」「タイタンが好き」「街裏ぴんくさんが好き」とか細分化されたものが当たり前にある。北海道の人は、お笑いライブを演劇好きが観に行ったり、その逆があったりして、それが特有のカオスみたいな感じを生み出している気がして。これは僕の中では、北海道カルチャーの特徴だと思っています。

上京前後のYes!アキト(中央)。

上京前後のYes!アキト(中央)。

──それが北海道でも芸人活動をしてきたYes!アキトさんの実感だと。

僕、営業とか、いわゆるお笑い好きの人がいない場所でのMCみたいなことが結構上手だと言われるんです。北海道でそういう機会が多かったんですね。東京で、たとえばお笑いの人はお笑いライブにだけ基本的には出るけど、北海道ではほかのジャンルのライブに出るのが当たり前だった。オフィスキューの役者さんが面白いことをやるし、ミュージシャンがロケ番組で有名だったりする。「ブギウギ専務」(STV)のウエスギ専務(上杉周大)とか、芸人より全然有名で。これを僕は出る側として「なんぼのもんじゃい」「なめられてるわ、お笑いが」と。北海道で売れているエンタメの人が役者とか音楽の人だったから、僕はお笑いで北海道で売れたかった。「お笑いってすげえんだぜ」という反逆精神、他業種に対するギラギラは、その環境だからこそ養われてきた気がします。

──そこまで熱い思いがあったとは。

今日はもっと北海道愛を語りたいのに(笑)。とにかく、その混沌の中だからこそ「俺はお笑いに行くぜ」と強く思えた気がします。

おいしいごはんの話が止まらない

──話は変わりますが、北海道のごはんでお気に入りのものはありますか?

まず、僕はラーメンのInstagramをやっていて、毎日食べたラーメンを「ビッグ官能小説」「永久歯だろうがポイ」とギャグで評価しています。札幌といえば味噌ラーメンというイメージですが、僕は塩ラーメンもすごく好きです。塩ラーメンって素材のうまさが表に出てくるからこそ、真価が問われると思う。そもそも全種類好きなんですけど、北海道の塩ラーメンは全体的に優秀という気がしています。ただ、ソウルフードは「山岡屋」で、家系とは違う独特のこってり感を醸し出しています。東京に住んでからも、800円交通費をかけて埼玉の店舗に行って、800円のラーメン食べて、また800円かけて帰ってきたりしました。3杯分で1杯のラーメン。“3分の1の純情なラーメン”(笑)。

──突然のSIAM SHADE! ラーメン以外に最近味わった北海道らしいものは?

先々週、実家から届いた「マルセイバターサンド」を食べました。僕、北海道のそういうお土産やもらったお菓子は、よく人に配るんです。「白い恋人」とか「じゃがポックル」とか。ただ、マルセイバターサンドは半分だけ家に取っておいて、それをちびちび食べるのが大好きです。銀の包み紙を完全に開ききらないで、ポロポロこぼれるのを阻止しながら食べるのがいいですね。

──わかります。

お菓子の銘菓は本当に多いです。六花亭、柳月、石屋製菓、ロイズ。あと、下北沢によく行くんですけど、下北沢全体がまとめて一皿のスープカレーという気がしています。南口がライスで北口がルー。こんなにスープカレー屋さんがあるんだというのが最初は衝撃で、上京した直後に「Rojiura Curry SAMURAI.」とか「SOUP CURRY ポニピリカ」とか行っていました。“札幌”をふと思い出したいときに行っていた気がします。

Yes!アキト

Yes!アキト

──デパートなどで行われる北海道物産展は気になりますか?

たまに行っちゃいます。昆布をかじるのが好きで。うちの母親が教えてくれたレシピがあるんです。まず水で洗って表面の塩を落として、細かく切って、皿に並べてレンジでチンする。すると、ちょっと表面が焦げたパリパリの昆布ができて、クリスピーなんです。厚みもあって、うまみが強くて、人生で親が教えてくれたことの中で一番役立ちました(笑)。それで言うと「北海道開拓おかき」も好きです。おかきの袋の中に、ちっちゃい昆布が入っている。

──連想で思い出したんですね。

あと今また思い出して、鮭とばが好きで、ずっとかじっていました。怪奇(=怪奇!YesどんぐりRPG)の2人(どんぐりたけし、サツマカワRPG)と北海道に行ったとき、うちの両親が客人をもてなしたい人で、うちの兄貴も中華料理店をやっているので、そこでも「食え食え」ともてなしたあと、最後お土産を渡したんですよ。普通はお菓子とかラーメンとかじゃないですか。そのときは一尾分の乾いた鮭を持って帰らせました(笑)。鮭とばを愛する親子です。

──血は争えないですね。

食べ物の話はどんどん出てきますね。空港の売店に行くと、えんがわの辛子明太子あえとか、えんがわのわさび風味とかが売られていて、めちゃくちゃうまいんです。これをお茶漬けにしたら最高。空港のその売店では人気ナンバーワンみたいな話があるので、えんがわはお土産界隈のサスペンダーズと言えます。“ツギクルお土産グランプリ”2年連続決勝進出、えんがわ!(笑)

<後編につづく>

Yes!アキト(イエスアキト)

1990年6月11日生まれ。北海道出身。「R-1グランプリ2022」では敗者復活戦を勝ち上がり、初の決勝進出を果たした。どんぐりたけし、サツマカワRPGとのユニット・Yes!どんぐりRPGとしてもネタ番組や賞レースで爪痕を残し続ける。サンミュージックプロダクション所属。

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Yes!アキト @yumeakito

さっぽろ村ラジオで及川広大と『おいちゃん・アキトの乙女座銀河団』をやってた頃でゲストにHappyRougeMagic、らぶりんご、こっとんとん、コカウーロン、ロベルト三好さんなどを呼んでた頃の写真💥 https://t.co/NZyw1eYjKt

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