濱田祐太郎「口の中に広がったあの味あの感触」

文 / 濱田祐太郎

神戸新開地・喜楽館で初単独ライブメモリー

みなさんこんにちは、盲目のピン芸人濱田祐太郎です。

俺は生まれつき目が悪くて今はほとんど目が見えてません。だから写真週刊誌を見てみたくて見てみたくてしょうがないですね。今日はそんな俺の初単独ライブの話をしたいと思います。

俺が初めて単独ライブをやったのは2020年の11月、神戸の喜楽館という劇場でした。芸歴8年目での初単独ライブ、まぁ不安でしたね。

自分は人気があるわけでも圧倒的な実力があるわけでもないのだから、お客さんが集まるのかなって気持ちでした。自分は好き嫌いが分かれるパクチーのような芸人だと思ってます。因みに俺はパクチーは大苦手です。

単独ライブをやると決まって、さてどんな単独ライブにしようと思いました。時間は60分、普段の劇場や営業で漫談をやるときは5分から長くても15分の時間しかネタをやりません。コーナーやVTRなんかをやって時間をつぶそうか？ コーナーをやるならどんなのがいいだろう？ ジェスチャーゲーム、目が見えなくてもこういうことが出きるのかって検証企画、ぬるぬる相撲、いろいろ考えましたがどれもこれもしっくりきません。

今までずっと漫談をやり続けてきたんだからやっぱり初単独も60分全部漫談にしよう、1人喋りで60分の単独ライブ、これができたら最高やなって思いましたね。

そして単独ライブ当日、その日は喜楽館に行く前に難波の漫才劇場の出番があって出番終わりにマネージャーが来てくれて神戸に連れていってもらいます。そのときに単独ライブでやりたいことがあってマネージャーに「自動販売機で飲み物を買いたいので前まで連れていってください、ただどのボタンを押したら何の飲み物が出てくるかは言わないでください」と言って漫才劇場の中にある自動販売機に連れていってもらいました。俺は目が見えないので誰かに教えてもらわない限り自分では何を買ったか分からない、この何か分からない飲み物を単独ライブの最中に飲んでみようと気まぐれに思ったんです。

ライブ中は俺が舞台に立って隣にテーブルを置いてもらい、持参したお茶と謎の飲み物を置いて喋ってました。時間がどれぐらい経ったかは音声が出る時計を持っているので分かります。その時計の説明をお客さんにしつつ時間を確認すると、ちょうどライブが折り返しの30分ぐらいだったので「よし、そろそろやってみようかな」と思いました。それでここまで書いてきたことをお客さんに話していよいよ謎の飲み物のふたを開けます。

俺はここまでの30分喋りっぱなしで持参したお茶の方もまだ一口も飲んでなかったので「いやー単純にのど乾いてるからこれがお茶だったら最高ですね」と言いながらペットボトルのふたを回した瞬間「プシューッ」という音が会場に響きました。

完全に炭酸が抜ける音、「絶対にお茶ちゃうやん」と言うと、会場には拍手笑いが広がっていきました。飲んでみるとさわやかな酸味とシュワシュワとした炭酸が口の中に広がります。あとでマネージャーに確認したらレモンスカッシュでした。

いやー30分喋り続けた後のレモンスカッシュはなかなかのどにこたえましたね、これが俺の初単独ライブの思い出です。

因みに有り難いことにチケットも完売しましたし、ライブ終了後お客さんから「お茶が飲みたかったんですよね」とお茶のペットボトルを差し入れで頂きました。

他にも少し時事ネタをやったり、あえて差別と言う言葉を使って笑いを取りにいったり、いろんなことを喋りましたね。それも含めて濱田祐太郎らしい単独ライブができたと思います。今思い出しても漫談の単独ライブをやるのは大変やなぁって感じです。

最後まで読んで頂き有り難う御座いました。

濱田祐太郎（ハマダユウタロウ）

1989年9月8日生まれ、兵庫県出身。NSC大阪校35期生で2013年にデビューし、2018年には「R-1ぐらんぷり」で優勝を果たす。2021年10月期に放送された、盲学校生と不良のラブコメドラマドラマ「恋です！～ヤンキー君と白杖ガール～」（日本テレビ系）に案内人として出演。自身のYouTubeチャンネル「濱田祐太郎のはまゆうチャンネル」はラジオ「はまゆうラジオ」を中心に更新している。東京では初となる単独ライブ「濱田祐太郎スタンドアップコメディーライブ」を5月8日（日）に開催予定。吉本興業所属。

濱田祐太郎スタンドアップコメディーライブ

日時：2022年5月8日（日）15:30開場 16:00開演
料金：前売2800円 当日3300円 / 配信2000円
会場：東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
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