10年前の今日、何をしていましたか? ~ 東日本大震災10年特集 お笑いナタリー編
赤プル、あばれる君、アルコ&ピース平子、ゴー☆ジャス、レイザーラモンRGが語る、あの日の記憶
2021年3月11日 14:46 7
2011年3月11日の東日本大震災の発生から、本日で10年を迎えた。
国内観測史上最大となったマグニチュード9.0の地震と、あらゆるものを飲み込んだ巨大な津波、そしてそれにより引き起こされた福島での原発事故――ちょうど10年前に発生したこれらの災害は、東日本の太平洋岸一帯に甚大な被害をもたらした。時間の経過とともに人々の関心は徐々に薄れつつあるが、被災地の復興は今もなお道半ばの状況だ。
震災の記憶をこれからも語り継ぐべく、このたびお笑いナタリー、音楽ナタリー、コミックナタリー、映画ナタリー、ステージナタリーは5媒体合同で「10年前の今日、何をしていましたか?」というテーマの横断企画を展開。各ジャンルで、さまざまな人々に地震発生前後の出来事やその後の生活を振り返ってもらう。
お笑いナタリーでは、
構成
寄稿者一覧(※50音順)
お笑いナタリー編
赤プル / あばれる君 / アルコ&ピース平子 / ゴー☆ジャス / レイザーラモンRG
音楽ナタリー編
新井ひとみ(東京女子流) / 石田亜佑美(モーニング娘。'21) / 菅真良(ARABAKI PROJECT代表) / 橘花怜(いぎなり東北産) / 本田康祐(OWV)
コミックナタリー編
いがらしみきお / 井上和彦 / ひうらさとる / 菱田正和 / 安野希世乃
映画ナタリー編
小森はるか / 園子温 / 廣木隆一 / 宮世琉弥 / 山谷花純
ステージナタリー編
柴幸男 / 長塚圭史 / 萩原宏紀(いわき芸術文化交流館アリオス) / 長谷川洋子 / 横田龍儀
赤プル
10年前、私は1月に結婚したばかりで浮かれていました。仕事も、人気のネタ番組に出演させてもらって、ますます忙しくなるものと、調子に乗っていたと思います。
3.11。
CSテレ朝チャンネルの番組収録中、あの地震が起こりました。先輩芸人がMCをしている番組で、「新婚さんいらっしゃい!」のパロディをしてくださったのです。仕事もプライベートもハッピーで、良い方向に進んでいた矢先の出来事、新婚の私は、大きな揺れに恐怖を感じながらも、心底結婚してよかったなと思っていました。こんなときに、頼れる旦那様がそばにいてくれるなんて、本当に心強いと。揺れがおさまり、ふと旦那の方を見ると、先程まで横にいたはずの旦那が、入り口の方へ走って逃げていくのが見えました。スタジオに置いていかれる新妻の私。どんどん小さくなっていく旦那の背中を見つめながら、恐怖よりも寂しさを感じたものでした。
今思うと、旦那は災害時、いつもしてはいけない危険な行為をしています。震災時、すぐに逃げなければいけないのは、津波が迫っているときや、倒壊する恐れのある建物内にいるとき、落下物やガラス割れの恐れがある建物のそばにいた場合などです! 耐震のしっかりとしたテレビ朝日内で慌てて逃げて、外に飛び出る方が、よほど危険です。地震に限らず、台風のときに出かけてしまったり、大雨の時、川を見に行ったりもしてしまう危うい旦那です。防災士になった今、夫を守るために防災を学んでいるような気さえしてきました。とはいえ、10年前は、まさか自分が防災士になるなんて思いもしなかったですし、防災士という資格があることすら知りませんでした。
震災の影響で、赤いプルトニウムという芸名が、福島の原発事故で使えなくなり、現在の赤プルに改名せざるを得なくなりました。天災により改名を余儀なくされたのは、私と阿曽山大噴火さんくらいではないでしょうか!? それでも嘆いたり悲しんだりしている場合ではないと、石巻の友人と連携をとり支援物資などを送らせてもらったり、被災地へ何かできることはないかと、必死に支援の活動をしていました。地元の茨城も被災地となりましたが、地元のみんなを元気づけたいと、5月には、中止すべきか迷った結婚披露宴とパーティを決行。このパーティがのちに、“ぼったくりパーティ”と呼ばれてしまうとは当時は全く思いもしませんでした。
そんな、災害時でもハッピーで元気だった私ですが、1年もすると、やっと軌道に乗り始めていた仕事は、お笑い自粛モードもあり、めっきり減ってしまい、また生活が困窮してしまいました。被災地支援がしたいと思っていたのに、自分の非力さに落ち込む日々が続きましたが、この経験が後に、地元をまたも襲った災害時(2015年9月関東・東北豪雨)、何かできることを!と防災士になることを決意させてくれました。私が防災士になったというと、暴走族の仲間だったり、暴れる妻のことかと間違われることもありますが、そのキャラを生かし、命を守るための行動を訴え、ブイブイ言わせています。
これから、夫と一緒に夫婦コンビで、笑って学べる防災漫才を主軸に、講演活動なども頑張っていくべと思っています。またナタリーさんに夫婦揃って登場できることを夢見て頑張ります!
プロフィール
赤プル(アカプル)
茨城県出身。若手時代より茨城弁を駆使した漫談で人気者に。2011年1月に松丘慎吾と結婚し、現在は夫婦コンビ・チャイムとして活動している。2017年に防災士の資格を得た。太田プロダクション所属。
赤プル|太田プロダクション
赤プル(夫婦コンビ“チャイム”) (@akaplu) | Twitter
赤プル(@puluco_a)|Instagram
「調子んのってんじゃねぇかんな!!」赤プルのオフィシャルブログPowered by Ameba
あばれる君
手応えのないオーディションが終わって最寄駅のトイレによると何故か立ちくらみが。全校朝礼でも絶対に倒れたことのない私は、初めての経験にとてつもない焦りと不安を感じました。「とにかく外に出て、仮に倒れても人に見つけてもらえるようにしよう」ととっさに判断して、トイレを飛び出しました。しかし、目に入ってきたのは、駅の太い柱がギシギシと風で揺れる竹のようにやんわりしなっていたことと、そのゆれる柱に掃除のおばさんがしがみついている光景でした。脳が理解するのに2、3秒ぐらいかかったかもしれません。そこで気づきました。倒れそうなのは自分ではなく駅だということに、です。
駅を飛び出すと悲鳴をあげたり倒れ込んでいる人が沢山。周りの建物を見ると縦やら横やら3D映画でも観ているような、巨大なモンスターがガッハッハと笑っているような、そんな現実との境もつかない心境に追い込まれたのを覚えています。ガラスを沢山、抱えた高いビルを眺めるしか出来ない自分達の無力さに全身の筋肉が緩みそうでした。そしてその日から48日後、津波で行方不明になっていたおじさんが見つかったと携帯電話に連絡がきました。
東日本大震災の日の経験は「今」「今日」「無事に生きていること」に感謝するという当たり前のことをずっと教え続けてくれています。そして、私も3月11日を迎えるたびにその気持ちは輪をかけて強くなるのですが、人の親になったからというのが理由のひとつにあります。10年という歳月の中、少しずつですが確実に歩んでいる復興の足をより一層加速させることが東北の、そして福島県のねがいです。同じ気持ちで支え合ってくれる全国各地の方々にも心から感謝します。
復興の足取りは思ったよりはゆっくりです。しかし確実に進んでいると信じてます。「今」、「無事に生きていること」に感謝しながら、「まだここまでか」と嘆くより、「ふぅ。今日はここまで来れたか」とか、ボソッとつぶやきながら毎日を積み重ねて行こうと考えています。
プロフィール
あばれる君(アバレルクン)
1986年9月25日生まれ。福島県出身。ワタナベコメディスクールに9期生として入学し、2009年にデビュー。全力感溢れるキャラクターやひとりコントで注目を集め、「ポケモンの家集まる?」(テレビ東京)などの出演を通して子供からも人気に。「R-1ぐらんぷり2015」決勝進出。2019年に自身のYouTubeチャンネルを開設した。ワタナベエンターテインメント所属。
あばれる君(@abarerukun)|Twitter
あばれる君(@abarerukun)|Instagram
あばれる君|YouTube
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音楽ナタリー @natalie_mu
「10年前の今日、何をしていましたか?」企画は5つのナタリーを横断して展開中
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#東日本大震災から10年