さらば青春の光

初単独メモリーズ Vol.10 [バックナンバー]

さらば青春の光・森田「ワーキャーもなく、出待ちもない、ストイックなお客さんに感謝」

7

877

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 122 731
  • 24 シェア

初めてのことに緊張や戸惑いはつきもの。期待に胸を膨らませて臨んだのに、想定外のハプニングに見舞われて大失態を犯してしまうこともある。そんな初々しい経験の中から「初単独ライブ」の記憶を芸人たちが綴るこの「芸人が綴る初単独メモリーズ」。第10回ではさらば青春の光・森田が、大阪で活動していたのにもかかわらず東京で行うことになった初単独を振り返る。“ワーキャーファン”に向けたサプライズ演出に、客席の反応は?

/ 森田哲矢

ワーキャー言われたい僕達、ワーキャー言わない客

僕達さらば青春の光の初単独ライブは確か2011年だったと思います。当時僕達は、大阪の松竹芸能という事務所で活動していました。しかし、大阪で活動していたにもかかわらず、初めての単独ライブは実は東京でした。その頃、東京で毎月バトルライブみたいなのがあり、僕達は毎月自費でそのライブに夜行バスで通っていました。そしてそのライブで半年ぐらいを通して一番成績が良かった組には、東京で単独ライブをさせてあげるという事務所からのご褒美的なノリをゲットしてしまったのが発端でした。

しかし、東京での知名度が皆無に近い僕達にとっては、ご褒美でもなんでもなく、もしかしたら0に近いお客さんの中で単独ライブをやらないといけないという恐怖しかありませんでした。同じ事務所だったうしろシティさんのライブは、チケットが即完し転売屋まで出る勢いの中、僕達の単独ライブの売れ行きは案の定壊滅的でした。「おい東口、こうなったらお前の東京のカキタレ全員呼んでくれ」。そんな汚物のような言葉も吐いていたと思います。それぐらいチケットが売れてなかった。どれだけ呟こうが反応の薄いTwitterにも嫌気がさし、もうこうなったら来てくれる数少ないワーキャーファンに最高のパフォーマンスを見せるしかない。そう意気込んでネタを10本ぐらい用意し、幕間のVTRにも相当こだわり、オープニングは客席から登場するというサプライズ演出を考えていました。

本番当日、恐る恐る袖の幕から顔を出し、客入りの状況を確認すると、思いの外満席に近い状態ぐらいまでには埋まってくれていました。そこまでの壊滅的な売れ行きをかわいそうだと思って色んな芸人さんがSNSで告知をしてくれたり、これは後になって分かったことなのですが、当時全く面識のなかった、囲碁将棋さんやニューヨークの屋敷など、吉本の芸人さん達がわざわざチケットを買って観に来てくれていたらしいです。そんな色々な方々の慈悲の心によって、とりあえず客入りは恥ずかしくない状態までは持っていけました。あとは渾身のネタを披露するのみ。

そしていよいよ開演の時刻に。客席の照明が暗くなっていき、音楽が煽られていく。それと同時に客席の後方にスタンバイする僕達。そして音楽が鳴り止み、舞台客席共に眩いばかりの灯りがついたその瞬間、僕達二人は満を持して客席から登場しました。

静寂。

今日の主役が客席から登場したにもかかわらず、これでもかってぐらいの静寂。黄色い声援とまでは言わないものの、多少なりとも歓声が沸くと高を括っていた僕達は、あまりの沸かなさに愕然としました。なんとなく客席から伝わってくる“そういうことちゃうねんなぁ”感。あれから単独ライブは何回もやってますが、あの出鼻の挫かれ方を超える単独はこれから先も恐らくないと思います。その後の本ネタはみんな嘘のように笑ってくれ、一応オープニング以外は大成功だったと思います。

しかしながらあの静寂は本当に怖かったです。ワーもキャーもクソもなく、客席から汚い関西弁を捲し立てながら舞台へ上がっていく変な奴らをただただ見るだけの数分間。東京のお客さんがそんな感じなだけなんかなと思い、一応大阪の単独でも客席から登場してみましたが、寸分の狂いもなくそんな感じでした。

でも今考えると、そういうお客さんの前でやってきたからこそ、その後賞レースの決勝にも何回も出られたのかなと思います。ワーキャーもなく、出待ちもない、ただネタだけを見せろと言ってくる、ある意味ストイックなお客さんの前でやれてることに感謝しながら、今後も単独ライブを続けていこうと思っております。

森田哲矢(モリタテツヤ)

さらば青春の光。左から森田哲矢、東ブクロ。

さらば青春の光。左から森田哲矢、東ブクロ。

1981年8月23日生まれ、大阪府出身。2008年に相方の東ブクロとさらば青春の光を結成。2013年に立ち上げた株式会社ザ・森東の代表取締役社長。「キングオブコント」では2012年から2018年までに6度決勝進出した。フィンランド発祥のスポーツ・モルックの日本代表としても知られ、2019年にフランスで開催された世界大会では国別対抗戦に参加、日本チームのベスト8という成績に貢献する。現在は「さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ」(TBSラジオ)、「ノギザカスキッツ」(日本テレビ)、「会心の1ゲー」(テレビ朝日)などにレギュラー出演中。

バックナンバー

この記事の画像(全3件)

読者の反応

  • 7

からすまゆうき @karasuma_yuuki

"「おい東口、こうなったらお前の東京のカキタレ全員呼んでくれ」。そんな汚物のような言葉も吐いていたと思います。"お笑い芸人は各地にセフレがいるのか。流石だな。

さらば青春の光・森田「ワーキャーもなく、出待ちもない、ストイックなお客さんに感謝」 https://t.co/epyNYcZUEe

コメントを読む(7件)

関連する特集・インタビュー

さらば青春の光のほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのお笑いナタリー編集部が作成・配信しています。 さらば青春の光 の最新情報はリンク先をご覧ください。

お笑いナタリーではお笑い芸人・バラエティ番組のニュースを毎日配信!ライブレポートや記者会見、番組改編、賞レース速報など幅広い情報をお届けします。