ラウドでロマンティックに響く「ウズラ」
──「ローリア」は3連のリズムと、いなたさのある歌が絡み合うエモーショナルな楽曲ですね。
吉田 「君は波に逆らって 跳ねる 跳ねるように先を急ぐ」というフレーズが最初にできて、「これはよさそうだ」と思って作り始めた曲です。全体の流れもメロディも一筆書きみたいな感じでできました。ピアノのフレーズを含めて、最初からアレンジのイメージもはっきりしてましたね。
鷲見 アレンジの最初の段階から山本健太さんにも入ってもらって。
吉田 うん。1発目に弾いてくれたフレーズがめちゃくちゃよかったんですよ。後日レコーディングでスタジオに入ったときも、「前のやつを弾いてください!」と頼みました。すごいプレイヤーです、ホントに。
山岸 そうだよね。あと最初から歌詞があったから、波がうねってる感じ、泡が浮かんでる様子も演奏に反映できて。やっぱりアレンジの段階で歌詞があるといいんですよね……(吉田のほうを向いて)責めてるわけじゃないよ。
吉田 デモの段階では歌詞がないときのほうが多いからね(笑)。
──「ウズラ」はロックバンドとしての強さが伝わってきました。「がらがらの街を歩く」という歌詞は、新型コロナウイルスの影響で、街から人の姿がほとんど消えた時期のことを歌ってるんでしょうか?
吉田 どうだったかな……「ウズラ」の歌詞は自分の体験というより、ある人のことを考えながら書いたんです。相手のことを深く知っているわけではないんですが、自分の中でイメージを膨らませて、その人のことについて誠実に言葉にできることがあるとしたら、どういうものだろう?と。
鷲見 “ある人”は共通の知り合いなので、この歌詞を見たときは「うんうん」という感じでした。ただ、最初の段階では歌詞がなかったから、まずはストロングに演奏することだけを意識していて。曲の原型は2年くらい前からあったんですが、当時はなかなか形にできなかったんです。それから練習を重ねて、3人で音を合わせて、ようやく収録できるまでになった。
山岸 2年くらい前はどこかしっくりこなかったんですよね。楽譜上は演奏できていても、精神性が違うというか、吉田が求めているものとは違うんだろうなと。その後、いろんなバンドの曲を聴いたり、スネアの音なども研究したりして形になって。アルバムに収録できてよかったです。
吉田 最初は「速くてカッコいい曲にしたい」くらいのザックリした感じだったから、イメージが伝わってなかったのかも。レコーディングの過程で、さらによくなったんですよ。エンジニアの南石聡巳さんと「どうやったらラウドでロマンティックに響くか」と相談させてもらって。ポストプロダクションもうまくいったし、気持ちいい音になりました。
ずっとThe Beatlesを聴いていた
──「GHOST」は70年代あたりの古きよきロックを想起させるサウンドで。このアルバムは本当に多彩な楽曲がそろってますね。
鷲見 「GHOST」のサウンド、いいですよね。いいベースの音を探るために、この曲のアレンジをやっていたときは、ずっとThe Beatlesを聴いてたんですよ。後期のThe Beatles、初期のポール・マッカートニーのソロみたいな、温かみのある音にしたくて、「センスのいいフレーズ、思い浮かばないかな」と思いながら、いろいろ試しました。ポールには遠くおよびませんが、曲に合った気持ちいい音にたどり着いたかなと。
山岸 ドラムの音もいろいろ試しましたね。基本的には8ビートをシンプルに突き通そうと思ってたのですが、バスドラの代わりにカホンを試したり。
吉田 あの音、めちゃくちゃいいよね。
──いろいろ実験されているんですね。
山岸 面白いことをやろうという気持ちは常にありますね。
吉田 そこもThe Beatlesっぽいかも(笑)。
鷲見 ちょっとフザけたこともやってるからね(笑)。
──「世界が終わる時間まで 楽しいことしていようぜ」というリリックも印象的でした。この曲、どうしてタイトルが「GHOST」なんですか?
吉田 うーん……この歌詞は個人的な思いを複合的に書いていて、それがゴーストっぽいと思ったのかな。この歌詞の中でしゃべってるヤツ、ゴーストっぽいんですよね、自分の中では。
──「稲妻」は古きよきロックンロール、カントリー、ブルースをポップに昇華した楽曲で、これもアルバムを象徴する楽曲という印象を受けました。
吉田 ありがとうございます。この曲は最初から完成形のイメージが明確だったんですよ。3ピースのアレンジもそうだし、ピアノやトランペットの音も合うだろうなと思って。歌詞もそのときからありました。
──これはラブソングですよね?
吉田 そうですね。個人的にしっかりラブソングが書けたかなと。まず「人混みにひとりぼっちでも あたしあなたのこと見つけてみせるから」という歌詞が浮かんで、「いいこと言ってるな」と思ったところから書いていきました。
鷲見 感動しちゃいますよね。デモ音源を聴いたときから「これはアルバムに入れたい」と思ったし、いい形で収録できてよかったです。曲順もベストかなと。当初はもっと前のほうに入れる案もあったんだけど、終盤に置いたことでさらにグッとくる感じがあって。
山岸 うん。冒頭で「サンダー!」と叫んでますけど、ふざけてるわけじゃないです(笑)。
進んでないけどエネルギーは燃焼している
──アルバムの最後に収録されているのはタイトルトラックの「ジャンプロープフリークス」。パンキッシュなアッパーチューンですね。
吉田 アルバムの中で最後にできた曲ですね。
鷲見 1回スタジオに入って、その場で音を合わせて、「できた!」って感じだったね。
──「JUMP ROPE FREAKS」をアルバムのタイトルにしたのはどうしてなんですか?
吉田 日本語にすると“縄跳び狂”という意味で。縄跳びって、やってる人はめっちゃ飛び跳ねてるのに、その場からほとんど動いてないじゃないですか。それが面白いなと思って。端から見ると進んでないんだけど、本人の体内ではエネルギーが燃焼していたり、筋肉が鍛えられたり、爆発的なことが起きていて。それって、いろんなことに当てはまりそうな気がしたんですよ。社会の状況やバンドの立ち位置、このアルバムに通底するエモーションにもフィットする部分があるなと。
──確かに。特にこの2年間、ロックバンドはライブも思うようにできず、停滞しているように見えるかもしれないけど、情熱を持って動いていたわけで。
鷲見 表立った活動ができていない間も、いろいろやっていて。それを全部知ってほしいということではないけど、事実、一生懸命やってますからね。
──このインタビューでも、「どれだけ試行錯誤を繰り返してきたか」ということについてしっかり話していただきましたしね。メンバー同士が意見を交わし合って、少しずつ形にするのはバンドのあるべき姿なんじゃないかなと。
鷲見 そうですよね。夜中まで作業してると、「バンドっぽいな」と思うこともあるので。ほかのバンドもそうだと思うけど、ライブをやっている時間はごくわずかで、実は太陽の光が届かないところで作業している時間のほうが長いんですよ。
山岸 もちろん楽しんでやってますけどね。楽しいことだけじゃないですけど(笑)。
──アルバムリリース後は、2年ぶりのツアーが行われます。ようやく通常の活動に戻りそうですね。
山岸 戻りたいですね、ホントに。
鷲見 たくさん曲も用意したしね。
吉田 ツアー、すごく楽しみです。ただ、通常の活動に戻っても制作の時間はしっかり取りたいです(笑)。
鷲見 ライブと制作を並行してやるのって、大変だからね。
吉田 そうそう。うまくやってる人たちはすごいと思う。
鷲見 このアルバムがたくさんの人に受け入れてもらえたら、制作に時間をたくさんかけることの意義を周りの人たちにもわかってもらえるかも(笑)。
吉田 確かに。たくさんの人にぜひ聴いてほしいですね。
ツアー情報
ズーカラデル「JUMP ROPE MADNESS TOUR」
- 2022年2月12日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
- 2022年2月19日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2022年2月23日(水・祝)宮城県 Rensa
- 2022年3月1日(火)福岡県 BEAT STATION
- 2022年3月3日(木)大阪府 BIGCAT
- 2022年3月5日(土)広島県 LIVE VANQUISH
- 2022年3月6日(日)香川県 DIME
- 2022年3月12日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2022年3月20日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
プロフィール
ズーカラデル
吉田崇展(G, Vo)、鷲見こうた(B)、山岸りょう(Dr)からなる北海道・札幌発の3ピースロックバンド。2017年9月に1stミニアルバム「リブ・フォーエバー」をライブ会場で販売開始。2018年11月に2ndミニアルバム「夢が醒めたら」をリリースし、12月より初ワンマンツアー「地獄の入り口 TOUR」を行った。2019年7月に1stフルアルバム「ズーカラデル」リリース。2022年1月に2ndフルアルバム「JUMP ROPE FREAKS」を発表した。2月から3月にかけてツアー「JUMP ROPE MADNESS TOUR」を行う。