それぞれの作品を聴いて感じたこと
向井 SHE IS SUMMERの音楽ってボーカルのキュートな感じとベースの重たい感じの組み合わせがカッコいいですよね。僕みたいな低音好きでもすごくカッコいいなって思えました。
MICO 新作の「hair salon」は特にそうなりましたね。プロデューサーに片寄明人さんを迎えて制作したんですけど、片寄さんに「声に明るい成分が十分にあるから、トラックはちょっと低めにカッコよく作っても面白そうだね」ってアドバイスをいただいて。
佐藤 確かに歌声とトラックとでコントラストがあってすごくよかったです。
MICO 華やかなトラックも好きなんですけど、ボーカルと同じような明るい成分だとかぶっちゃうんですよね。ライブだと特にボーカルが抜けるのが難しくなる部分があって、今回はこうなりました。
向井 「CALL ME IN YOUR SUMMER」のビデオもめちゃくちゃいいですよね。ショートムービー仕立てな感じで。
佐藤 めちゃくちゃよかった! 曲もカッコいいし。イントロから「キター!」って思いました。めっちゃ好きです。
MICO ありがとうございます。MVは長めな映画の予告編じゃないですけど、いろんな情景が入った映像を作りたくて。韓国で撮影したんですけど、その日はめちゃくちゃ体調が悪かったんですよ。
佐藤 え、そうなんですか。いい感じのアンニュイさが出てましたよ(笑)。
MICO 咳が止まらなくて韓国で買った咳止めを飲んだら、今度はめちゃくちゃ眠くなっちゃって。ソファに寝そべってるリップシンクのシーンは本当に寝てるんです(笑)。監督と1対1で撮影していてプレイバックも見ていなかったので、どんな映像になっているのかけっこう心配だったんですけど、いい感じに仕上がりました。本当に眠かったなあ。でも曲には合っててよかったなと、私も思いました(笑)。
向井 佐藤さんの「SickSickSickSick」は、聴いたときにラナ・デル・レイを思い出したんですよね。ちょっとダウナーっぽい歌い方みたいな。あの感じがめちゃくちゃ好きで。MICOさんが持っている明るい成分とは正反対の声の成分ですよね。ジャケもすごく素敵でしたよね。
MICO 素敵でした! 内容もきのこ帝国とはまた違った一面が見られる感じですよね。
佐藤 バンドサウンドだとやっぱり埋もれないようにある程度高いキーで歌わないといけないんですけど、トラックだから低い声でもいい感じになるんですよね。
MICO なるほど。佐藤さんはきのこ帝国の曲もソロの曲もご自身で書かれていますけど、棲み分けってどうしてるんですか?
佐藤 作る時期で分けてる感じですね。実はソロの作品はもう去年できていて、今年に入ってからはまりんさんとディスカッションをしながらトラック待ちの状態だったんです。で、きのこ帝国の「タイム・ラプス」の制作は今年に入ってからだったので、制作時期は全然かぶってなくて。ソロのEPを7月、バンドのアルバムを9月にリリースしたので、周りのみんなに「一気にすごい量の曲を作ったんだね」って言われたんですけど、実際は全然余裕でした。ジャケットと言えば、向井さんの「LOVE」のジャケもいいですよね。
向井 ありがとうございます。あのジャケ、スタッフとかなりの範囲を手作りでやったんですよ。旗を作って、すごい朝早くから車で海に行って。めっちゃまぶしくてほぼ半目になってたんですけど、奇跡の1枚が撮れたなって思います。
佐藤 アルバムのテーマと合ってますよね。
MICO タイトルがシンプルに「LOVE」ですもんね。
向井 家族愛とか兄弟愛とか恋愛とか、いろんな「LOVE」について歌っていて。普通だったらちょっとダサく聞こえるようなタイトルや曲名でもカッコよくやってやろうと意気込んで制作しましたね。基本的に余計なものは削ぎ落としたいというのはアートワークやタイトル、曲でも意識しました。
MICO 私はこの中だと「FURUSATO」が一番好きです。向井さんの曲はカッコいいし都会的じゃないですか。でもこういう洗練されたトラックで、あの歌詞を歌うっていうのがすごくカッコよかったです。
3人に共通することは?
──ここまでいろいろと話してみましたが、3人に共通しているのはどういうところだと思いますか?
向井 2人のビデオを見ていたら視覚的なアプローチを大事にされていて、そこが自分がやりたいこと、やっていることと共通するなと思いました。音楽だけじゃなくて、自分自身を取り巻くいろんなものをセルフプロデュースしている感じがして。
佐藤 確かにトータルで魅せたいという思いはあるかもしれないですね。
MICO そうかも。あと全員都会的なイメージがあるのかなって。MVのロケ地とかも都会だし。自然って言うよりは街の中に寄り添う音楽ではあるのかなって。
佐藤 そうですね。あと、私は並行してやっていますが、みんなバンドを経てソロにたどり着いてるんですよね。バンドでいろんな経験をしたうえでソロを選び取っているのは、根拠はないですけど強い気がします。
向井 自我が強そうですよね(笑)。
MICO うーん、そうかも。でも譲れないものはありますけど、自分が譲れないと思っているものが本当はどこまで譲るべきものではないのかって、わからなくなりませんか?
佐藤 わかる(笑)。
MICO なんて言うか、踏み外さないとこれ以上進化しないっていう部分もある気がしていて。私はとにかく変わりたい願望があるんですよ。いろんな人と一緒に音楽を作るのも自分じゃない何者かになって、1人じゃたどり着けなかった景色を見てみたいからで。今はこれ以上どこにいけばもっと新しい景色を見られるんだろうって、ずっと考えています。
佐藤 私も変わっていかないと飽きちゃうタイプなので、気持ちはよくわかります。ずっと同じところから見える景色じゃつまらないですよね。だからいろんな刺激を受けたくてソロを始めたんですよ。
MICO 景色が変わると、もともとの自分じゃひらめかなかったことをひらめいたりしますもんね。
向井 うんうん。
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