ZEUS|軍務を経験したから歌える“オトナ”のラブソング

日本を中心に活動する韓国人グループ・ZEUSが2ndシングル「VENUS」を11月7日にリリースした。前作「Thunder / Re Smile」は力強い歌詞とサウンドが印象的だったが、今回のシングル収録曲は2曲ともラブソングだ。SHU-I時代の彼らを知るファンにとってはうれしいと同時に、新たな姿を表現した驚きも感じさせる内容とも言える。今回のインタビューでは「VENUS」で彼らが表現したかったこと、さらにグループの音楽的なルーツについて聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 新元気

プロモーション活動して、軍人からアイドルに戻った

──前回の取材前後に日本全国でシングル「Thunder / Re Smile」のプロモーション活動をされたそうですね(参照:ZEUS「Thunder / Re Smile」インタビュー|再び動き出した3人、目指すのは「日本と韓国の架け橋」)。

インソク はい。日本で音楽活動を行うのは3年ぶりで、そもそもZEUSとしては初めての活動だったので。SHU-Iの頃に応援してくれていたファンの方が、少しずつ戻ってきてくれている感じがしました。

ミンホ 本当はちょっと不安があって。「Thunder / Re Smile」は大人っぽいクールな曲で、SHU-Iの頃の曲とは、全然雰囲気が違うから。SHU-Iが解散してからいろんなことを経験して成長して、僕らも表現したいことが変わってきました。でも、ファンの皆さんは好意的に受け入れてくれたので、すごく安心できました。

チャンヒョン インストアイベントで初めて僕たちを知ってくれた人もたくさんいて。「今日初めて観たけど、これから応援するよ」と言ってもらえたのがすごくうれしかった。

ミンホ あと、プロモーション活動を通じて、歌うことやダンスをすることなどアーティストとしての感覚をだいぶ取り戻せました。あの曲を制作してた頃や前回取材を受けたときは、まだちょっと軍人の感覚が残っていたと言うか(笑)。

──軍隊に行ってどんなところが変わったと思いますか?

ミンホ

チャンヒョン 軍務経験が関係あるかどうかはわからないけど、SHU-Iで活動していた頃より自発的になりましたね。昔は事務所に言われたことをただやっていた部分があったし、自分の意見を言えなかったりすることも多かったんです。でも今は自分たち自身でいろんなことを考えて活動してる。いいものを作るために、メンバーとスタッフ全員が納得するまでとことん話し合います。もちろん僕もそこに積極的に関わっていくし。

ミンホ 全員、責任感が強くなったと思う。軍隊は1人のミスで100人が死んでしまう、そんな世界なんです。だからとにかく1人ひとりがしっかりと責任感を持って行動しなくてはならない。そういう考え方を叩き込まれて、何をするにしても自分の責任を考える癖が付きました。だから僕らは自分たちの責任で、本当に好きなことだけやろうと思っています。結果云々ではなく。

インソク 僕は肉体面での変化がものすごく大きいですね。軍隊では本当に限界まで自分を追い込む訓練が年に2、3回あるんですよ。もう本当に死んじゃうんじゃないかってくらい厳しい。これは体験しないと絶対にわからないと思います。その経験をすると、体力的な面はもちろん、精神的な面でも「あの訓練に比べたら全然楽だな」って思えるんです。それはZEUSの活動にも、日常生活にも生かせると思っています。

ファンは家族のように身近で大切な存在

──11月から行われている1stツアー「ZEUS FIRST TOUR」の感想も教えてください。

インソク

インソク 本当にうれしかったですね。ワンマンライブは、2015年12月に開催したSHU-Iのライブ以来だったので。やっぱりイベントとライブは全然違いますからね。

チャンヒョン そもそもこの3人でツアーをするのは今回が初めてなんですよ。

インソク そうそう。ツアーをやって、ようやくZEUSの活動がスタートしたような感覚になりましたね。

ミンホ ファンの人たちも「(SHU-I時代も含めて)今までで一番いいライブだった」ってみんな言ってくれたんですよ。僕らはまだ持ち歌が少ないので、カバー曲もたくさん歌いました。本当に歌いたい曲を選んだし、ライブの構成も全部自分たちで考えて、すべて自分たちのやりたいようにやったんです。僕ら自身も本当に楽しくて、過去最高のライブができたと感じました。

──ライブではどんな曲をカバーしたんですか?

ミンホ いろんなテーマで何曲か選びました。そのうち1つは平成が来年で終わるので、平成にヒットした曲を歌おうと思いました。「だんご3兄弟」、サザンオールスターズさんの「TSUNAMI」、米米CLUBさんの「君がいるだけで」などですね。あと僕たちが入隊していたときに日本で流行ったTWICEさんの「TT」とか、リオデジャネイロオリンピックのときにテレビでよくかかっていた安室奈美恵さんの「Hero」とか。単純に「いい曲だから歌う」って言うよりも、選曲の意味があったほうがみんなも楽しめると思ったんですよ。

──ワンマンライブやインストアイベントでさまざまなファンと交流されたと思いますが、皆さんにとってファンはどんな存在ですか?

インソク 車とガソリンみたいな関係ですね。活動の原動力と言うか。僕らはファンがいなくては動くことができない。

チャンヒョン

チャンヒョン 単に大切な存在、みたいなノリではなくてもっともっと重要な存在です。

──韓国のK-POPアイドルとファンは日本よりも距離が近く、双方が影響を与え合っている印象があります。

ミンホ 確かに韓国ではアイドルとファンの距離は近いと思います。とはいえ、昔は自分たちとファンをどこかで線引きしているような思いもありました。だけど軍隊に行って、坊主頭にして、こんなメイクもしない、泥だらけの自分の顔を鏡で見たとき、「ファンの皆さんはこんな僕を愛してくださっていたんだ」って心底思ったんですよ。新たにZEUSを始めるにあたって、僕は初心を忘れないことを肝に命じました。だからいつも「僕たちがファンの皆さんに歌ってあげる」のではなく、「ファンの皆さんが歌ってる僕らを観に来てくれる」と思っています。

チャンヒョン 僕が僕らしくいられる仕事って、歌手しかないんですよ。だからファンの皆さんがいてくれないと、自分は存在できないと思っています。

──実際ほかのK-POPアイドルの人たちに同じ質問をしたら、「ファンは家族に近い」と言っていた人もいました。

インソク うん、そういう感じ。例えば、冬になるとのどにいい薬をくださったりしますから(笑)。家族みたい。