神様に言わせればかわいい遅刻
ぜったくん 実は僕もけっこう、遅刻はするほうなんです。しかも寝坊というか“起きられない系の遅刻”が多くて(笑)。それと、仮に決めていた時刻より早く起きたとしても、その余裕から普段よりもチンタラ準備してたら遅刻してしまうパターンもあります。
金田 あるよねえ(笑)。
ぜったくん なので、自分自身も遅刻のエピソードは尽きないですね。デカいので言うと、「sleep sleep feat.さとうもか」(2019年9月配信)という曲のレコーディングの日のこと。「sleep sleep」はその名の通り「眠り」がテーマで、さとうもかさんにフィーチャリングアーティストとして参加してもらうことになったんですよ。レコーディング初日がもかちゃんとの初対面だったんですが、起きたのが集合時間だったという。
──おお……(笑)。
ぜったくん 場所が自宅から1時間のところだったので、完全に遅刻ですよね。それで当然、謝りながら現場に到着したら、もかちゃんに「曲のテーマ通りの人なんだねー!」と笑いながら言われてしまいました(笑)。ほかにもリハーサルで普通に寝坊したり、サポートのメンバーから電話をもらって起きたり、枚挙にいとまがないですね。
金田 まあ、“遅刻の神様”に言わせればかなりかわいい遅刻ですけどね(笑)。神様くらいになると、電話じゃ起きないですから。
ぜったくん さすが!(笑)
金田 現場が沖縄で、朝7時くらいに羽田発の飛行機に乗らなきゃいけないけど、起きたら夕方だったこともありました。「明日は朝早いから早く寝よう」と6時間くらい睡眠時間を確保したら10時間くらい寝てしまったこともありましたね。あとは、乗らなきゃいけない新幹線のホームのベンチに30分くらい前に到着して、「これなら遅刻しないだろう」と思ってたんですけど、それで海外ドラマをスマホで観始めたら夢中になってしまって。気が付いたら新幹線を4本くらい乗り過ごしていました。
──やっぱり、2人とも寝るのは好きですか?
金田 嫌いな人っているんですか?(笑) そんな人に会ったことがないんだけど。
ぜったくん 寝るのってめちゃくちゃ気持ちいいんですけど、その一方で「寝なくても生きていられたらいいのにな」と思うことはありますね。睡眠時間がなければできることも増えるし。
金田 ああ、確かに10代や20代の頃は「自分がベッドで寝ている間、ほかの芸人にめちゃくちゃ重要な仕事が決まっていたりしているんじゃないか?」という焦りはあったかも。それでどんなに眠くても一生懸命起きたりしていたね。
ぜったくん 起きていたからって特にいいことなんて起きてないんですけどね。
金田 そうそう! 空が明るくなるまで飲んでベロベロになって、ただ終わるっていう日々。「何か起きるんじゃないか?」と期待してるうちは何も起きないんですよ。
ぜったくん そうかもしれない。
選ばれしチャーハン
──ちなみにこの曲のトラックは、どこかロックンロールを彷彿とさせる雰囲気ですよね。
ぜったくん トラックは、まさにロックンロールっぽいギターのリフから展開していったのですが、ビート周りは宮田“レフティ”リョウさんに手伝ってもらいました。スネアのロールを足すことでロックな感じを出して、そこにサビを乗っけたら「めっちゃいいじゃん!」って。おっしゃる通り、60'sのロックンロールを完全に意識しつつ、「君が起こしにきてくれるならいいな」のフレーズはヒップホップっぽくしたかったので、ドラムの音色や空気感をガラッと変えて、空間系エフェクターでふわっとさせました。真ん中のサビが終わったあとは、夢っぽい音像を作って“遅刻の神様”が降臨しやすい場を作っています(笑)。
──ぜったくんから音源が送られてきたときに、金田さんはどんな印象を持ちましたか?
金田 すごくポップだし、ぜったくんらしい内容だと思いました。僕自身の芸風もどちらかといえばポップ寄りだと思っているので、色合いや温度感も自分にぴったりだなと。ただ、今回は“遅刻の神様”として降臨するわけだから、そのキャラ設定をどうするかは試行錯誤しましたね。レコーディング前にも自分なりに“遅刻の神様”像を思い浮かべてみたし、実際にレコーディングスタジオに入ってからは、その場でぜったくんにディレクションをしてもらいました。例えば「昔、金田さんがテレビ番組でやっていた、このキャラっぽい言い回しで」とか、ディティールを一緒に詰めることができたので、少しは共同作業になったかなーと自分なりに思っています。
ぜったくん いやいや、少しどころかガッツリとコラボしていただいたじゃないですか(笑)。「寝坊! チャーハン! 関係性は? な~~い!!」という部分とか。
金田 「関係性は? な~~い!!」は、実際に僕がよく言っているフレーズなので、それを盛り込んでくれたのはうれしかった。
ぜったくん 「寝坊! チャーハン!」のところも、最初は「寝坊! ゴボウ!」だったんですけど、“寝坊”と“ゴボウ”だと若干関係性があるよなあって話になり。
金田 よくよく考えてみれば、寝坊とゴボウに関係性なんてないんですけどね(笑)。
ぜったくん そうなんですけど(笑)、語呂がいいのでここはもっと関係性が薄いワードを入れたいなと思って探していたら、金田さんが「ゴボウじゃなくてチャーハンだったらどう?」とアドバイスをくださって。「チャーハンでいきましょう!」となりました(笑)。
金田 ほかにもいろいろフレーズが出てきたんですけど、厳正なるオーディションの結果、チャーハンが選ばれました(笑)。しかも「チャーハン!」の叫び方にもいろんなニュアンスがあることもわかりました。面白かったなあ。
女子に起こしてもらいたい
──歌詞の中でぜったくんっぽいと思ったのは、幼馴染の気になる“あの子”に起こしてもらいたいという願望、もしくは妄想エピソードが挿入されているところです(笑)。
ぜったくん あれってなんなんですかね。みんなの共通イメージとしてある幼馴染感。「近所に住む女の子が窓から入ってきて、自分を起こしてくれる」っていうやつ(笑)。おそらく、人それぞれリファレンスは違う気がするんですけど、いつかどこかで読んだコミックのワンシーンが記憶にこびり付いている。ちょっとオカン気質の女の子で、友達みたいな関係性なんだけど、お互いに少しだけ異性として意識している、みたいな(笑)。
金田 わかるわかる。
ぜったくん 同じ高校に通っているんだけど、校内ではお互い恥ずかしくて目も合わせない。でも帰宅すると女の子のほうがグイグイくる感じ……「おい、起きろや!」ということがあればよかったなあ、って(笑)。まあ、そんな子が実在する確率は限りなく低いんですけど。
──具体的に、思い浮かぶコミックはありますか?
ぜったくん ラノベが原作の「とらドラ!」というアニメの中に、それと近いシーンがあるんですよ。ヒロインの逢坂大河という高級マンションで1人暮らしをしている女の子が、隣のアパートに住む主人公・高須竜児の部屋に窓を伝って遊びに来るという。ただ、遅刻しそうな男子を女子が起こす、みたいなシーンは特になかったので、歌詞にある「君が起こしにきてくれるならいいな」という願望がどこから生まれたのかはちょっと自分でもわからない(笑)。
金田 まあ、いずれにしても女子に起こしてもらいたいという共通認識が男子にはあるかもね(笑)。
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ぜったくんは天才肌