スマートフォン向け3DアクションRPG「白猫プロジェクト」内で展開されたイベントを題材にしたテレビアニメ「白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE」の放送が、4月6日(月)よりMBS、MX、BS11、AT-Xほかでスタートする。オープニングテーマは、西川貴教とASCAが“西川貴教+ASCA(ニシカワタカノリ アンド アスカ)”名義で歌唱する「天秤-Libra-」に決定。この楽曲は熱量の高いボーカルの同士の掛け合いによって、作品内に登場する主人公・アイリスと闇の王子の関係性をエモーショナルに表現した1曲となっている。
音楽ナタリーでは西川とASCAの対談をセッティング。その声に惹かれ自らASCAを指名したという西川と、学生時代から西川の存在に憧れていたというASCA。そんな師弟関係とも言える2人に、このコラボに込めた思いを語り合ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)
“女版・西川貴教”を目指していました
──4月に放送スタートするテレビアニメ「白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE」。そのオープニングテーマ「天秤-Libra-」を西川貴教+ASCA名義で手がけることになった感想を聞かせてください。
西川貴教 5年の歴史を持つ「白猫プロジェクト」はゲームアプリにおいても老舗だと思うんですよ。たくさんのユーザーの方が楽しんでいらっしゃるわけですし。そんな「白猫」のアニメ化第1弾において、オープニングテーマに指名していただけたことがまずうれしかったです。同時に、ものすごく愛されている作品だからこそ、そこに関わるプレッシャーが大きかったのも事実です。
ASCA 「白猫プロジェクト」と言ったらもう、誰しもが知っているアプリゲームですからね。私もプレイしています。まさか自分が関われるなんてまったく想像していなかったです。アニメ化の発表があったときにも、「へえ、アニメ化されるんだ。楽しみ!」みたいな感じで、いちユーザーとして感動していましたから(笑)。なので今回のお話をいただいたときは心から驚きました。しかも、私が学生時代から憧れていた西川さんと一緒に歌うことができるなんて……ダブルの衝撃でしたね。
──今回は西川さん自らが歌唱のパ―トナーとしてASCAさんを指名したそうですね。
西川 そうですね。僕がこういった形で楽曲提供させていただくときは、できるだけその作品の世界観をきちんと踏まえたうえで制作をしていきたいなと常々思っていて。今回も事前にいろいろな資料を見せていただいて、アニメの制作スタッフの方々と細かくリレーションを取らせていただきました。そのコミュニケーションの中で、よりアニメの世界観を踏襲するために作品内に登場する「アイリスと闇の王子」という2人の存在を「楽曲にも盛り込んだほうがいいだろう」となったんです。それぞれの立場からそれぞれの思いを歌い合う、といった感じで。じゃあお相手は誰がいいかなといろいろ探していく中で、ASCAさんがいいんじゃないかなと思い、ご指名させていただきました。
──決め手はどこにあったんでしょう?
西川 僕の声の特性とぶつかりあったときに負けない個性を持っていることですね。それは歌い方のような技術的な部分ではなく、声色の個性という意味で。声帯というのはマイクのようにいろいろイジってどうにかなるものではないんですよ。生まれ持った、たった1つのものでしかない。そこにしっかりとした個性と存在感があるという意味で、ASCAさんにはすごく光るものがあった。そこが決めてだったと思います。……って、俺が話すのをなんちゅう顔で見てるのよ(笑)。
ASCA いや西川さんのおっしゃることが心に染みちゃって(笑)。憧れていた方にそんなことを言ってもらえるなんて……この喜びはきっと誰にもわからないと思います!
西川 わかんねえのかよ!(笑)
ASCA (笑)。今回のお話をいただいたときはぶっ飛んでしまうくらいの喜びでした。私は中学生の頃に西川さんという存在を発見しまして、「こんな素晴らしい人が世の中に存在しているんだ!」と衝撃を受けたんです。それ以降は西川さんの歌い方をいろいろ研究させていただいて、どっぷりと西川さんの沼にはまってしまいました。歌い方やパフォーマンスに関しても影響をかなり受けていて、所属事務所の社長と「女版・西川貴教を目指そう」みたいな話をしていたくらいですからね。
西川 それすごいね(笑)。
ASCA だから今回ご一緒できることが決まったときは、ここまであきらめずに歌ってきて本当によかったなと思いましたし、全力でがんばろうと気合いが入りました。
西川 本当にうれしいですね。誰かの人生に影響を与えられて、心象風景の一部になれていることは、音楽を生業をさせてもらっている立場として一番光栄なことですから。でもASCAさんの場合は歌い始めるとね、僕を敬う気持ちを一切忘れちゃうところがまたいいんですけどね(笑)。もうグイグイ来るところが素敵。
ASCA あははは(笑)。
──変に恐縮することなく、対等にぶつかってくるわけですね。
西川 そうそう。それって本当に素晴らしいことなんですよ。遠慮してるようじゃ、いい結果は生み出せないですからね。僕としても「一緒に歌う相手として不足はない」という気持ちで向き合っているわけだから、ASCAさんのスタンスは本当に頼もしかったです。今回の曲はのっけから100%くらいのテンションを持っていて、それをサビに向けて120%くらいまでドライブさせていかなきゃいけないんですよ。そうしないと、みんなの心に引っかかって、感動させられるレベルには到達できないというか。そこをASCAさんは感覚として理解したうえで、最高の歌に落とし込んでくれたので、指名してよかったなと思いました。
太刀や大剣を振り回すような気持ちで
──「天秤-Libra-」は重厚なコーラスが印象的な、力強さと美しさを併せ持った楽曲になっていますね。
西川 ド直球で王道感があるアニメなので、そのオープニングをどう彩るのかをしっかり考えました。結果、オペラを彷彿とさせるオーケストレーションとクワイアをメインに据え、それらを2人のボーカルが切り裂いていく……そして海を割って新たな世界を創生するようなイメージを持つ楽曲になったと思います。僕としては小手先で勝負するのではなく、デカい太刀や大剣を振り回すような気持ちで挑みたかったんです。作詞のRUCCAさんも作曲・アレンジの菊田(大介[Elements Garden])さんも今回初めてご一緒させていただきましたけど、そんな僕の思いをしっかり汲み取ってくださってすごくうれしかったです。
ASCA サウンドの力強さはもちろん、この曲の肝は西川さんと私の声がスリリングに掛け合っていくところだと思います。サビで感情が爆発する感じもすごく気に入ってます。
西川 この曲はスピード感があるし、展開もすごく多い。だから一瞬でも気を抜くとボーカルがあっという間に置いて行かれてしまうんですよね。いかに楽曲に振り回されることなく、勢いを増していけるかが試される楽曲だったので、そこがきちんとハマったときは本当に気持ちよかったです。
──歌入れは一緒に行ったんですか?
ASCA 別々でした。最初に西川さんがレコーディングされて、その2日後に私が歌ったんですけど、西川さんの歌声がとんでもなくパワフルで、聴いた瞬間に「これはマズいぞ」と思いました(笑)。とは言え、私も全力でぶつかるしかないと思ったので、寝る間を惜しんで何度も何度も楽曲を聴き込んで挑みました。楽曲自体にすごくパワーがあるので、レコーディングで歌っていると自分の熱量がどんどん爆発していく感覚を味わえました。最初はアイリスというキャラクターが持つ女性らしい部分をAメロとBメロに盛り込もうと思ってたんですけど、そのプランも一瞬で消え去ってしまったんです。タイトに声をリズムに当て、子音がガツンと耳に残る西川さんの圧倒的なボーカルに引っ張られるように、結果的には自分として新しい歌唱ができたと思います。今までにないASCAを感じてもらえる仕上がりになったと思います。
西川 「きっとこう歌ってくれるはずだ」という確信があったりもしたので、そこはもう信頼してたんです。でも実際に上がってきた歌を聴いてみたら想像していたものとはまったく違う表情が出ていて。僕の歌にちゃんと呼応してくれていたことにビックリしたんです。さっき、学生時代から僕の歌を聴いてくれてたという話を聞いて納得したんですけど、ある種、僕の遺伝子を組み込んだ歌い方をしてくれていたんですよね。その柔軟な感性やボーカリストとしての奥行きには感動したし、そんな彼女のバックボーンの1つになれていることへの喜びも感じましたね。
ASCA 自分でもずっと大事に研究してきた西川さんの遺伝子を込めた歌い方ができたような気がしています。もちろんそこには西川さんへの憧れ、愛情もたっぷり注ぎ込めたと思いますし。そのせいなのか、歌う前はすごく緊張していたけど、レコーディングは今までで一番早く終わったんです。
闇の王子のように大きな意志を引き継いで
西川 改めて今回一緒にやれてよかったなと思いました。声をかけたときに「えー、あいつ? ヤダよ」って言われなくてよかった(笑)。
ASCA いやいや、そんなこと思うわけないじゃないですか(笑)。
西川 こういった仕事をしていても、自分の存在価値って正直よくわからないんですよ。でも彼女のように慕ってくれるミュージシャン、音楽仲間がいることで、自分の価値が見出されるところがあるというかね。本当にここまで続けてきてよかったと思うし、感謝の気持ちしかないんですよね。
ASCA 見出しますよ、これからも!
西川 あははは(笑)。ありがとうございます。今回の僕とASCAさんの関係のように、活動を続けて行く中でまた枝葉が広がっていくことって絶対にあると思うんですよね。この曲を聴いてくれた子がシンガーを目指してくれることがあるかもしれないし、ASCAさんに憧れて歌い始める子が出てくるかもしれない。そして、いつかそういった人とまた音楽を通して出会うこともあるかもしれないっていう。
──その存在や意志は連綿とつながっていくものなんでしょうね。
西川 そうそう。僕らは3話くらいまでアニメを観させていただいたんですけど、主人公の闇の王子もまた、大きな意志を引き継いで命を燃やしていくんです。そこに僕はすごく共感できたので、それを象徴するセリフを今回のミュージックビデオの語りの部分で引用させてもらったりもして。
ASCA なんだかすべてが重なりますね。
西川 そう。ちゃんとつながっていくんだよね。今回、「白猫プロジェクト」に関わらせてもらうことでASCAさんとの出会いがあり、その2人の関係値がまたアニメ自体にもリンクしていくっていう。よくできたお話だなという感じがすごくしました。
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