「辞める」という思考がない
──長らく活動を共にしてきた四さんの脱退があって、その心情に2人は少なからず共感する部分もあると思うんですよ。それでもなお、如月さんとましろさんが夢に向かって歩き続けられるのはなぜなんでしょうか? なぜ2人は大丈夫なんですか?
如月 すごく怒ることはあるんですけど、あきらめたことは一度もないかもしれないですね。
──怒ったというのは?
如月 去年の「CCC TOUR」で一度メンバーに怒ったことがあるんですよ。「このままで本当に進んでいくことができるの?」って。それはさっき話した「全員が楽しめていない」というのが理由で、全員が楽しめてなかったら意味がないし、そんな状態をファンのみんなに見せるわけにはいかない。そのとき「意味がない」とは言ったけど、「だから辞めましょう」とはならないんですよね。なんでだろう。
ましろ めーちゃんは純度100%の如月愛海なんだよね。頭がいいし、物事を難しく考えないから計算がなくて。例えば何か物事をうまく進めるために嘘をついたりしないんですよ。めーちゃんは自分の発言と本音の齟齬で悩んだりは絶対しないと思う。
如月 「辞める」という思考がないんですよね。もし私が辞めるとして、私を応援してくれた患いさんやグループを応援してくれた人たちに何をどうすればいいのかわからないし、そうなったときに何をどう伝えたらいいかわからなすぎて。それはやっぱり「辞める」という選択肢がないから、そういう想定をまったくしていないからなんですよね。
ましろ 不思議なことに、僕が入ったときからめーちゃんはもう今の如月愛海みたいだったんだよね。活動の年数を重ねてきてこうなったんじゃなくて、ぜん君。の最初からこういう人間だった。それはすごいことだと思う。
──ましろさんは?
ましろ 僕はめーちゃんとはちょっと違って、大丈夫じゃないタイプだと思うんですよ(笑)。めーちゃんとは性格が正反対で、僕は物事を細かく考えすぎちゃう性格で。嘘もつけるし、器用に動けるタイプだから、めーちゃんの大丈夫な感じとは違うと思うんだよね。
如月 ましろはね、性格がひねくれているんですよ(笑)。
ましろ うん。ひねくれてる。
如月 でもそれはいいところだと思うんですよ。例えば何かできなかったときに“なにくそ根性”がすごく強かったりするし。
ましろ でも僕がすごく悔しがるのってステージに関することだけなんですよ。僕はステージに立つことは這ってでもやるべきことだと思っているんです。ただそれは個人としてのエゴに近いもので、ぜんぶ君のせいだ。に関してはグループで武道館に立つべきものだと思っている。
──如月さんとは違って、個人としての観点とグループの一員としての観点、どちらも持っている、みたいなことですよね。
ましろ そうだと思います。ぜんぶ君のせいだ。としてこうあったほうがいい、みたいな意見があるとして、そのときに関して言えば僕の意見はどうでもよくなるんですよ。それはぜん君。を大事にしているから。
如月 私とましろはタイプが違うけど、お互いが思い描いているぜんぶ君のせいだ。が一緒なんですよ。性格は違うし、こだわりも違うけど、ぜん君。に関してのことは強くリンクしてる。だから2人でいくらでもグループのことが話し合える。
ましろ 僕は心が強くてがんばれるタイプではないし、言ってしまえばぜん君。には最初「すぐ辞めてやろう」ぐらいの気持ちで入ったんです。でもぜん君。に入って自分のために音楽をすることだけじゃなくて、人のために音楽をする喜びを知ったんです。それは僕がぜん君。に、コドモメンタル(ぜんぶ君のせいだ。が所属するレーベルプロダクション)に教えてもらったことだし、めーちゃんも僕も今の環境に対して「ありがとう」の気持ちがとても強いと思う。
如月 グループに対してもレーベルに対しても、応援してくれる方々に向けての「ありがとう」の気持ちが大きくて、それに比べて自分の悩みとかが小さすぎるんですよね。だから私たち2人は大丈夫なんだと思います。
中野サンプラザで覚醒した
──今日の取材には参加していませんが、今後もグループの一員として一緒に活動していく十五時さんに関して2人はどう思っているんでしょうか?
如月 十五時は初めてメンバーの脱退を経験するわけなので、けっこう慎重に話を聞きました。「メンバーの脱退があるけど十五時は大丈夫?」って。そのときに彼女は「応援してくれている患いさんのことを考えると、そう簡単に辞められない」と、さらっと言ったんですよ。そのとき「この子は大丈夫だな」ってすごく安心したんです。もうこちら側に足を踏み入れているなって(笑)。
ましろ まだ1年ちょっとしか経ってないのに、自分のことよりも患いさんのことを考えられるようになっているのはすごいよね。
──中野サンプラザ公演のアンコールでは5人がそれぞれソロ曲を歌うシーンがありましたが、十五時さんはトップバッターだったんですよね。そこですごく堂々と歌っている姿が印象的で。
ましろ 僕もビックリしちゃって。活動休止とか、脱退とか、いろいろ不安に思うことが多かったのに、あんなに大きなステージを目いっぱい使って堂々と1人で歌っていたんですよね。ステージ袖から十五時の姿を観て、ステージでちゃんと輝けるメンバーに成長していることに感動しました。
如月 練習中にはそういうふうに思わなかったんですよ。本番を迎えて、ここぞというところで覚醒した感じがあって。おそらく、今まではちょっと甘えてた部分があったのかもしれないですね。でもグループがこういう状況になって、そうも言ってられなくなって肝が据わったのかな。すごく頼もしいメンバーに急成長しました。
ぜんぶ君のせいだ。の第2章が始まる
──活動休止を経て、ぜんぶ君のせいだ。はどういうグループになるんでしょうか?
ましろ 今までは1歩1歩昇っていった先に武道館があると思って、目の前の段差をひたすら駆け上がってきたんです。でもここから先はそうじゃない。まず武道館という目標をちゃんと見据えて、どう登っていけばいいかを考えてやるべきことをちゃんと時間をかけてやることで、僕らはきっと進化できると思っています。
如月 一度表舞台から姿を消すわけですから、次にみんなの前に姿を現すときはぜんぶ君のせいだ。の第2章が始まるときなんですよ。「武道館に行ってほしいな」じゃなくて「あ、このグループは武道館に行くな」と思えるようなグループになって帰ってきます。それができなきゃ帰ってこないですね(笑)。生半可な進化じゃないものを見せるので、少しの間待っていてください。