ナタリー PowerPush - Zeebra
キングが語る「俺の任務」
Zeebraが4年2カ月ぶりとなるニューアルバムをリリースした。今回の作品は、メッセージ性の強い「Black World」と、フロア / ダンサー向けな「White Heat」という2枚のアルバムを1つのパッケージにした2in1仕様。総勢27組のアーティストが参加したこの作品で、Zeebraは自身の揺るぎないヒップホップを提示している。彼がこの作品で伝えたかったこととは? そしてこの先、どこに向かおうとしているのか? 自他ともに認めるヒップホップのキングに話を訊いた。
取材・文 / 宮崎敬太 インタビュー撮影 / 中西求
「ええー? ストドリじゃねんだ!?」みたいな(笑)
──久しぶりのフルアルバムですね。
そんなに(期間を)空けるつもりはなかったんですけど、レーベル移籍のことで予定してたより半年とかもうちょっと長くかかっちゃった。
──しかも、今回は「Black World」と「White Heat」の2枚を1つにした2in1アルバムということで。でも、2枚組仕様ってことではないんですよね?
うん。俺、2枚組大っ嫌いなんで。なぜかというと、DISC 1の後にDISC 2を入れるのがめんどくさい(笑)。それに好きなアーティストでも、2枚組ってなると全曲は聴ききれないんですよね。だから、今回のアルバムは外袋をはがすと、「Black~」と「White~」が別々のCDケースに入ってて1枚ずつになるんです。それぞれ6枚目と7枚目のアルバムなんだけど、どっちが6枚目とかも決めてません。それはもう「聴いたあなたが決めてください」くらいの感じでいいと思ってるんですよ。
──個人的な感想としては、「Black~」がかかってるクラブは男の客ばっかりで、逆に「White~」のほうは女の子が多そうだなあ、と思いました(笑)。
そのとおりですね。「Black~」は野郎向けでメッセージ性の強いヒップホップアルバムです。逆に「White~」はパーティチューンやラブソングが中心で、あんまり深く考えないですむ、いい意味で聴き流せる感じにしたかった。だからメンツで言ったらAIちゃんは「White~」向きなんだけど、あの曲(「Blue Feat. AI」)はメッセージ的にも重いから「Black~」に入れたんです。そういえば、前にテレビで「Zeebraの曲でどれが好きですか?」みたいなアンケートを渋谷の駅前でやってて。
──1位は「Street Dreams」とかですか?
それが1位は「Perfect Queen」だったんですよ! 俺も「ええー? ストドリじゃねんだ!?」みたいな(笑)。これはきっとそのテレビスタッフが女の子メインで訊いたんだなって思って。でも、それは仕方がないというか。ハードなのもフロア / ダンサー向けなのも作ってきたから、人によって両極端な意見が出るんですよね。
──なるほど。
最近もTwitterでエゴサーチなんかすると(笑)、「やっぱ(キング)ギドラのときとかのハードなのが一番だ」とか、「ジブさんにはキラキラのパーティチューンをやってほしい」みたいな感じで。じゃあ、それはもう両方やるしかないかなっていう感じですよね。
──でも「Money In My Pocket Feat. NaNa」(「White~」収録)のようなフロア / ダンサー向けなパーティチューンでも芯にヒップホップを感じさせるのはZeebraさんのすごいところだと思います。
それはなんなんですかね、自分でもよくわかんないんですよ。両サイドを見せると言っても、一人の人間なんで。俺の中ではその両サイドが矛盾してないから、それが表れてるのかなっていう気はする。
3.11で頭ん中がぐちゃぐちゃになった
──「Money In My Pocket Feat. NaNa」(「White~」収録)はパチンコ「CR龍が如く 見参!」のテーマソングですよね。
はい。「超スーパー大当たりになったときにPVが流れるから、半端なく景気いい曲でお願いします」って言われて書き下ろしました(笑)。パチンコって筐体の申請に1年くらいかかるんで、これはPVも去年の年末には撮り終えてたんですよ。
──PV、すさまじいお祭り騒ぎですよね(笑)。
「金がポケットパンパンで入りきらねえ! お前、どんだけ調子いいの?」みたいな(笑)。で、そういうの作ったは良かったんだけど、3.11が来て。「こんな曲出していいのか」とか、もう頭ん中ぐっちゃぐちゃになっちゃったんですよ。何していいかわかんないから、制作も1回止めました。
──なるほど。ZeebraさんはKGDRで東京電力を批判した曲「アポカリプスナウ」を発表されていましたが、アルバムで最終的に提示したメッセージはとてもポジティブなものだと感じました。
俺も別にポジティブな曲を作ろうと思って作ったわけじゃないんです。自分の中から出てくる気持ちなんだと思う。例えば、KGDRで「アポカリプスナウ」をやったりしたけど、あれは普通に糾弾すべきことを糾弾しただけ。でも、俺は東電に対してではなく、みんなのためにアルバムを作ってるんですよ。そこで「伝えるべきメッセージはなんなんだ?」って考えたとき、結局「みんな元気とかパワーを求めてるんだ」というところにたどり着きました。だから、やっぱりそこに立ち戻ればいいんだって、俺の中でも決着がついて。そこからはひたすらポジティブなエネルギーを持って曲を作りました。そうすると否が応でもそういう言葉が出てくるんですよね。
──今KGDRの話題が出ましたが、今回の作品にK Dub ShineさんとDJ Oasisさんをフィーチャーした「Pop」(「Black~」収録)を入れた意図を教えてもらえますか?
今年は3.11や原発のことが起こって、こんな状況になったら俺ら以外に誰が出ていくんだっていう。あと、俺的にKGDR、というかキングギドラって、やっぱり本当に言いたいことを曲にするグループでいたいんですよね。でも、そんなメッセージなんてコンスタントにあるわけじゃないから。それを無理矢理やろうとすると、メッセージがどんどん軽くなっていっちゃうんですよ。それよりは、本当に言いたいことがアルバム分溜まってきたらやるべきかな、と。
──では、「Pop」のリリックにある「KG 3.0 We comeback 鳴り響かすぜ言葉のガンショット」ということは……。
そう。のろしですね。俺の来年のホールツアーでは何かが起こるので楽しみにしててください!
「Black World」収録曲
- The God
- Take Over (All Guns Up)
- Pop Feat. K Dub Shine & DJ Oasis
- Fighter's Anthem Feat. Anarchy
- Blue Feat. AI
- Gang On The Backstreet Feat. 東京スカパラダイスオーケストラ
- Cruisin' (Skit)
- ジャングル・クルーズ
- The Illest
- Last O.G.
- Keep On
- One Hip Hop Feat. Zeebra / DJ Mitsu The Beats
「White Heat」収録曲
- Android
- Butterfly City Feat. RYO the SKYWALKER, Mummy-D & Double
- Money In My Pocket Feat. NaNa
- Fly Away
- Super DJ
- Venus In The Underground
- One And Only Feat. Big Ron
- My Applebum
- Dream Team Feat. Dag Force
- Endless Summer Feat. COMA-CHI
- Love Shines (Butter Smoother) / DJ Hasebe Feat. Sugar Soul & Zeebra
- Fire Feat. Zeebra (No Nukes Rebirth) / DEXPISTOLS
Zeebra LIVE TOUR THE LIVE ANIMAL 2012 "BLACK WORLD / WHITE HEAT"
- 2012年2月25日(土)
福岡県 福岡DRUM LOGOS
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2012年3月2日(金)
愛知県 名古屋CLUB DIAMOND HALL
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2012年3月6日(火)
大阪府 大阪BIG CAT
OPEN 18:30 / START 19:30 - 2012年3月10日(土)
宮城県 仙台Rensa
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2012年3月16日(金)
東京都 赤坂BLITZ
OPEN 18:00 / START 19:00
料金:オールスタンディング4500円(全公演共通・ドリンク別)
※Zeebraオフィシャルホームページにて先行チケット予約受付中
期間:2012年1月10日(火)23:00まで
Zeebra(じぶら)
1971年生まれ東京都出身のラッパー。キングギドラのメンバーとして1995年にデビューする。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。その後は、日本を代表するヒップホップアーティストとしてさまざまなシーンで活躍。2006年には、アルバム「The New Beginning」でアメリカのトッププロデューサーであるSWIZZBEATZやSCOTT STORCHとの共演を実現した。さらに2008年には、ラッパーとしての活動20周年を記念して武道館ワンマンライブ「Zeebra 20th Anniversary The Live Animal in 武道館」を開催している。2010年にはレーベルをAriola Japanに移籍。シングル「Butterfly City Feat.RYO the SKYWALKER, Mummy-D & DOUBLE」や「Blue Feat. AI」といった話題曲をリリースしたほか、DEXPISTOLSやDJ MITSU THE BEATSの作品に参加するなど、ジャンルや世代を超えた活躍をみせている。そして、2011年12月には、約4年半ぶりとなる最新2in1アルバム「Black World / White Heat」をリリース。2012年はZeebra Live Tour 『The Live Animal 2012 "Black World / White Heat"』と題したホールツアーを展開する。