音楽ナタリー Power Push - ZAQ×fhána
ないものねだりのマブダチ対談
ZAQ「コンレボ」続投、アレンジで毒を盛って進化を
──歌詞については、続編を書くにあたって難しかった部分はありますか?
ZAQ 実は「コンレボ」は2期も私がオープニングを担当するとは思っていなくて、1期の「カタラレズトモ」の時点で私は物語の結末まで歌ったつもりだったんです。そしたら「2期もお願いね」って水島(精二)監督に言われて、「えっ、もう言うことないよ?」って(笑)。だから歌詞の内容は「カタラレズトモ」と基本的には同じで、結局はアニメのテーマである「正義とは何か」を問うているんです。そこにアレンジで毒を盛ることで、曲として進化させた感じですね。
──「コンレボ」は、昭和の特撮をオマージュしたアクションものである一方で、非常に複雑でシリアスな人間ドラマならぬ“超人ドラマ”が展開される作品ですよね。
ZAQ そう。例えば学生運動とか、主に昭和40年代に起こった事件をトレースしてるから、その時代はもちろん、現代に通じる問題提起や皮肉みたいなものも描かれているんですよね。だからちょっと、歌詞も暗いんですよ。曲名の通り、どれだけ叫んでも、その慟哭は割れてしまうっていう。
──でも、暗いとはいえ、なんとかあがいてやろうっていう前向きな意思も見える歌詞になっています。
ZAQ 2番のサビで「消える時代が痛過ぎて 抗えなくて抗った」っていう部分があるんですけど、それが一番言いたいことですね。やるしかない、抗うしかないんだって。
fhánaの曲は、物語がつながっている
──ご自分で作詞もされるZAQさんとは異なり、fhánaの場合は林英樹さんという作詞家が歌詞を担当されています。それでもアニメに寄り添いつつ、同時にfhánaの曲としても成立していますよね。
佐藤 タイアップのオファーをいただいたら、まず原作があれば原作を林くんに読んでおいてもらって、先方からのオーダーなども伝えて、その上で「fhánaとしてはこんなことを歌いたから、こんな感じにしてくれ」みたいなやりとりをかなり細かくしています。
ZAQ それです、それ。「fhánaとして歌いたいこと」が、ちゃんと全部の曲に入ってる。私はいかに自分を消すかっていうことをがんばってるんだけど。
towana そうなんだ?
ZAQ 自分のことを歌うというよりは、まずアニメありき。アニメに寄り添って、その世界観や物語と自分がシンクロする部分を掘り下げて、歌として抽出する。それが私のアーティストとしてのあり方なんですね。でも、fhánaはfhánaとしての存在がまずあって、アニメもその一部に取り込んじゃうようなところがある。それも1つのあり方として正解だなって思いますね。
佐藤 まさに1stアルバム「Outside of Melancholy」は、それまで担当させていただいたタイアップ曲たちと、個々のアニメの物語も、fhánaっていう大きな物語の可能性の一部として見えるように作ったんですね。だから、それを説明しなくてもわかっていただけてうれしいです。
ZAQ いやいやいや。そうなんですよ。fhánaの曲って全部、物語がつながってるんですよね。そこもすごいんですよ。私はどちらかと言うとブツ切りなので。
佐藤 ZAQさんの自分を消すというか、曲ごとにどんどんキャラを変えていく姿勢は、アー写やMVなどのビジュアルにも表れてますよね。
towana この前の曲(アニメ「紅殻のパンドラ」のオープニングテーマに採用された10thシングル「hopeness」)は、めちゃくちゃかわいかったですよね。すごい女子っぽくて。
──言われてみれば、ZAQさんのディスコグラフィはカオスですね。
ZAQ あははは!(笑)
towana 「全部同じ人なの?」っていう感じですよね。
カップリング曲は、味を薄めていく方向で
──実際、カップリング曲である2曲目「星空を歩く音」は、「割レル慟哭」を歌った人とは別人のような……。
ZAQ ポップです! 3曲収録されてるんですけど、今回のシングルは曲が進むたびにどんどん味を薄めていこうと思いまして。1曲目の「割レル慟哭」が、ジンギスカンともつ鍋を一緒に食べてるみたいな感じなので。
towana 濃い(笑)。
ZAQ しかもしつこい。洋楽っぽい作りでゴテゴテしてるから、次の「星空を歩く音」はアレンジもよりシンプルかつキャッチーに、J-POP寄りのロックにしてみました。
──この曲は明るい曲調に乗せて、“自分に正直に生きること”をテーマに、かなりパーソナルなことを歌ってらっしゃいますね。
ZAQ そうですそうです。私はさっきも言った通りタイアップでは作品に乗り移るタイプなので、カップリングでは自分の言いたいことをひねり出す感じで詞を書いてます。
towana この「星空を歩く音」の歌詞が、すごい泣けるんですよ! 「上手に泣けなくて」「伝えようにも言葉が出なくて だから歌った」って。この曲に限らずなんですけど、ZAQさんの詞は、どんな曲調でもグッとくるものがあるんですよね。
ZAQ ありがとう!
ZAQは、家にいるときは暗いタイプ?
──そして3曲目「Page」ではまた表情を変えて、しっとりしたR&Bです。
ZAQ ここまで薄まると、もはやウーロン茶ですね(笑)。本当にシンプルに作りたくて。1990年代から2000年代前半の洋楽R&B、具体的にはTLCやDestiny's Child、アリーヤあたりのR&Bをやりたいなと思ったんですよね。 歌い方もかなりR&Bに寄せて、フェイクも多かったりするので、だいぶ違う一面を見せられたかなと。
kevin 俺はこの「Page」がめちゃめちゃ好きで、もう何度も繰り返して聴いてます。
佐藤 歌詞的に素のZAQさんの内面が一番よく表れてるのが2曲目「星空を歩く音」で、音楽的にZAQさんの嗜好やルーツが一番よく表れてるのが3曲目「Page」ですよね。
ZAQ よく見てらっしゃる! 恥ずかしいな! その通りだと思います、はい。
towana ZAQさんって、いつお会いしてもこんなふうに元気なんですよ。それを知ってるから、歌詞を読んで余計に泣けるのかも。「ああ、本当はこんなふうに思ってるんだ」って想像して。
──今は明るく振る舞ってらっしゃるけど、家に帰ったら膝を抱えているかも?
ZAQ やめてー!
yuxuki 家だと静かなんですか?
ZAQ 想像もつかないと思うよ。マネージャーとのLINEとかもかなり暗いもん。
fhána一同 えーっ!(笑)
ZAQ そういう暗い部分があるからこそ、人前に出たときに反動でハイになってしまうのかな。
kevin ホントにZAQさんは盛り上げ隊長で……。
ZAQ kevinにだけは言われたくないわ!(笑)
kevin いやいや(笑)。ZAQさんは周りの空気までアゲにアゲてくれるから、待ち時間が一緒だったりすると楽しくてしょうがないですね。
次のページ » 世界を肯定する方法を探すfhánaのアルバム
- ZAQ ニューシングル「割レル慟哭」 / 2016年4月27日発売 / Lantis
- アーティスト盤 [CD+DVD] 1944円 / LACM-14479
- アニメ盤 [CD] 1404円 / LACM-14480
CD収録曲
- 割レル慟哭
- 星空を歩く音
- Page
- 割レル慟哭(OFF VOCAL)
アーティスト盤DVD収録内容
- 割レル慟哭 Music Video
- Making of 割レル慟哭
- ZAQ 2ndアルバム「NO RULE MY RULE」 / 2016年7月13日発売 / Lantis
- Now Printing
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4320円 / LACA-35570
- 通常盤 [CD] / 3240円 / LACA-15570
- fhána 2ndアルバム「What a Wonderful World Line」 / 2016年4月27日発売 / Lantis
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc] 3888円 / LACA-35557
- 通常盤 [CD] 3240円 / LACA-15557
CD収録曲
- The Color to Gray World
- What a Wonderful World Line
- ワンダーステラ
- Relief
- little secret magic
- Antivirus
- 虹を編めたら
- critique & curation
- c.a.t.
- Appl(E)ication
- 追憶のかなた
- ホシノカケラ
- コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
- gift song
初回限定盤Blu-ray Disc収録内容
MUSIC VIDEO
- What a Wonderful World Line!
- 虹を編めたら
- コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
- ワンダーステラ
リスアニ!LIVE 2016 LIVE映像
- 虹を編めたら
- コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
- divine intervention
- 星屑のインターリュード
- Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~
fhána「What a Wonderful World Line Tour 2016」
- 2016年5月7日(土)東京都 LIQUIDROOM
- 2016年5月14日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2016年5月15日(日)大阪府 umeda AKASO
- 2016年6月4日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO(※追加公演)
ZAQ(ザック)
シンガーソングライター。3歳の頃からピアノを始め、音楽大学のピアノ科に進学。学生時代に触れたアニメソングに衝撃を受け、アニソンシンガーを目指すように。ニコニコ動画主催のコンテストでファイナリストとなったことを契機に、2012年、アニメ「未来日記」のキャラクターソング「正義戦隊ゴ12th!!」のサウンドプロデュースを手がけてクリエイターデビュー。その後もさまざまなアニメ作品に楽曲を提供し、また同年10月にはアニメ「中二病でも恋がしたい!」のオープニングテーマ「Sparkling Daydream」でアーティストデビューを果たした。以来順調にシングルリリースを重ね、2014年4月には初のオリジナルフルアルバム「NOISY Lab.」を発表。また2013年以来、毎年、国内最大級のアニメソングイベント「Animelo Summer Live」に出演している。2016年4月に通算11枚目となるニューシングル「割レル慟哭」をリリース。表題曲はテレビアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」の第2期オープニングテーマに採用された。また同年7月には2ndアルバム「NO RULE MY RULE」がリリースされる。
fhána(ファナ)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga (Leggysalad)という3人のプロデューサーと、女性ボーカリストtowanaによる4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。「僕らはみんな河合荘」「ウィッチクラフトワークス」「ぎんぎつね」「有頂天家族」「天体のメソッド」といったアニメ作品でテーマソングを担当して高い評価を集めた。さらにChouChoや相沢舞のプロデュース、さよならポニーテールやDECO*27の楽曲のリミックスなども行っている。2016年4月には2ndフルアルバム「What a Wonderful World Line」をリリース。アルバム発売後には東名阪3都市を回るライブツアー「What a Wonderful World Line Tour 2016」を行う。