ナタリー PowerPush - 在日ファンク
ハマケン×長岡亮介 “大人のファンク / メロウ”対談
ハマケンは常に曲のモチーフを探しちゃうタイプ
ハマケン 長岡さんが歌詞を書くときのモチーフとか原動力ってどういったものなんですか?
長岡 歌詞書くのは得意じゃなくて、できることなら書きたくないというか(笑)。曲はできててもライブ当日の朝まで歌詞が書き終わらなくて、ライブで初めて歌うなんていうこともありますよ。まあハマケンの質問に答えると、自分の歌詞はぼーっとしているときに「あっ!」って思った一瞬の感覚が言葉になることが多いかな。例えば、台風が来たとき、家のトタン板がバーンと飛んでいったり、バタバタバタってなってる感じだったり。そういう「何か来るぞ」っていう一瞬の気配を言葉にしたいし、曲が終わったときに聴いてる人がその感覚を共有できているような、そんな曲だといいなって。
ハマケン それはすごい、途方もないことですよね(笑)。
長岡 うん、途方もないし、半ば諦めてるよ(笑)。でも、そういう曲のほうがいろんな解釈の仕方が生まれるでしょ。
ハマケン でも、自分の場合は「あっ!」っていう瞬間を追い求めようとすると、何も得られないことが多いというか。
長岡 でも、こないだ話したとき、「休みの日も休みじゃなくなっちゃう」ってことを言ってたでしょ。それって、つまりハマケンは常に曲のモチーフを探しちゃうタイプの人間ってことなんじゃない?
ハマケン そうなんですよ。探すんだけど、結局曲が出てくるのは探していたのとは全然違うところだったりして。そういえば、最近車買ったんですよ。
長岡 いいね。曲できそうじゃん(笑)。
ハマケン そうなんですよ。でも、真夏にクーラーをガンガンかけながら乗って、排気ガス出して、地球温暖化にも荷担してるわけじゃないですか。そう考えると悪者というか、背徳感を感じるんですけど、でも、乗りたいっていう。
長岡 その先に快楽が待っていると(笑)。
メンバーの在日ファンク観やイメージを受け入れられた
──今回のアルバムも大人の苦味が感じられるというか、今の話を置き換えると「車買ってイエーイ!」っていう無邪気な作品ではなく、背徳感も含まれているアルバムだと思うんですね。
ハマケン 背徳感のある「イエーイ!」ですね。今回のアルバムは「大人ですね」って言われるとちょっと違和感があるんですけど、「大人になりたい」って気持ちはあって。
長岡 いいね。「大人になりたい」っていうのはファンクなんじゃない?
ハマケン ファンクって10分くらい延々と演奏してるイメージがありますけど、以前は僕ら2、3分で「あ、もうお客さんが飽きちゃってるんじゃないかな?」って思ったりして、力尽きてたんですね。
長岡 2、3分だと、それはファンクじゃなくパンクだよね(笑)。
ハマケン はははは(笑)。でも、今回の曲はライブでやってると、グルーヴが長持ちするんですよね。それは他のメンバーが考える在日ファンク観やイメージを僕自身が受け入れたことが大きくて、そうなったことで在日ファンクのグルーヴが豊かになって、長持ちするようになったんじゃないかなって。でも、それはペトロールズが当たり前のようにやってることだと思うんですよ。「お前、これやれ。あれやれ」ってことじゃなく、「お前がそうくるなら、俺はこう返すよ」っていうやり取り。そういう余裕が僕にとっては、大人だなって思う点なんですよね。
長岡 そうやっていろんな要素が入ることでファンクネスが深まって、波のきらめきのようなファンクから深海の美しいファンクへ。
ハマケン ああ! それいいっすねー。
メロウはメロディにまつわるものだと思ってた
──あと、今回ハマケンさんは長岡さんにメロウについても教えを請いたいんですよね?
長岡 なんで俺に聞くんだろうって思いつつ、この場にやってきたんですけど(笑)。
ハマケン だって長岡さん、ミスターメロウでしょ! と言いつつ、メロウっていうのはメロディにまつわるものだと思ってたんですよ、僕。でもさっき調べたら「熟した」とか「成熟」っていう意味だったという(笑)。
長岡 あと、「豊潤」とかね。
ハマケン あ、わかってたんですね。
長岡 いや、俺も調べたの(笑)。個人的にメロウっていうと、THE ISLEY BROTHERSとかMOMENTSみたいなスイートなソウルが頭に思い浮かんだりもするんだけど。そういえばメロウってあんまり女の人には使わない言葉だよね。
ハマケン そうなんですか? 「熟した」っていう意味では「熟女」に通ずる言葉なのかなって思ったりもするんですけど。
長岡 でも、それだったら、「mature」(「円熟した」という意味)って言葉を使うよね。
CD収録曲
- ホームシック
- 電話<Interlude>
- ダチ
- 英会話<Interlude>
- 嘘
- 肝心なもんか
- 俳句<Interlude>
- 不思議なもんでさ
CD収録曲(順不同)
- カザーナ
- ASB
- モラル
- 誰
- エイシア
- 止まれ見よ
在日ファンク(ざいにちふぁんく)
浜野謙太(Vo)を中心に2007年に結成された7人組のファンクバンド。メンバーはハマケンのほかに、村上啓太(B)、仰木亮彦(G)、永田真毅(Dr)、後関好宏(Sa)、ジェントル久保田(Tb)、村上基(Tp)。結成当初は「浜野謙太と在日ファンク」名義で活動していたが、2010年6月に1stアルバム「在日ファンク」をリリースしたタイミングで現在のバンド名に改名した。さらに同年10月からサイトウ“JxJx”ジュン、サイプレス上野とロベルト吉野、ROY(THE BAWDIES)らとのコラボシングルを3カ月連続で発表。2011年には2ndアルバム「爆弾こわい」をリリースし、翌2012年1月にはシングル「爆弾こわい -岡村靖幸REMIX-」が発売された。そして同10月3日にミニアルバム「連絡」を発表。
ペトロールズ(ぺとろーるず)
長岡亮介(Vo, G)、三浦淳悟(B)、河村俊秀(Dr)によるスリーピースバンド。2005年に結成され、下北沢のライブハウスを中心に活動を開始する。ライブ会場限定で数々の作品をリリースしている。結成7年目にして初の全国流通アルバム「Problems」を2012年11月に発売する。