ゆず|20周年を経て、次のフェーズへ

順調そうに見えてかなりキツかった10年前

──確かに10周年の頃と比べても、音楽的な自由度もどんどん上がってますよね。

北川悠仁(撮影:立脇卓)

北川 10周年のときとは全然違いますね。10周年の頃は正直言って、かなりキツかったんです。「栄光の架橋」も発表してたし、順調そうに見える反面、ちょっとマンネリ化していたというか「ゆずってこういう感じでしょ」という形ができてしまっていて。それは悪いことではないんだけど、僕らはその形を続けていくのではなくて、さっきも言ったように「まだ聴いてない人に届けるためにはどうしたらいいだろう?」という方向を選んだんですよね。でも、最初は厳しかったんです。手探りだったし、やったことが思ったように響かないこともあった。その頃からテレビにも出させてもらうようになったんですが、ライブと同じようなパフォーマンスが見せられなかったり……いろいろな挫折や葛藤を経験しながら、少しずつ進んできて、今はたくさんの人に自分たちの音楽が届くようになって。ベストアルバムもいろいろな方に手に取ってもらってるし、ドームツアーも丁寧に準備できた。がんばってきてよかったなって思います。

岩沢 例えが合ってるかどうかわからないけど、会社員の方と似てる気がするんですよ。20歳そこそこで入社して、5年くらいでちょっと周りが見え始めてきて。10年くらいで係長くらいになって、部下ができる。そのくらいで迷うと思うんですよね、「この会社でいいんだろうか?」って。

──確かに自分の人生を本気で考え始めるのって、実は30歳くらいかもしれないですね。

岩沢 もがく時期だと思うんですよね。会社を辞めて自分で起業する人もいるだろうし、「この会社でがんばるためにはどうしたらいいか」と考えることもあるだろうし。僕らはさらに10年経って、40歳になって。若いスタッフが加わったり、自分たちがやるべきことも増えているんです。それこそ“思えば遠くに来たもんだ”ではないけど、20年の間にいろんなことをやってきたなと。10周年のときはそういうふうに思えなかったんですよ。同じように振り返ってたはずなんだけど、それよりも「来年はどうしよう」という感じだった。そういう意味でも、10年目と20年目の違いは大きいですね。

北川 10周年までは、いろんな人たちが僕らを導いてくれていたんですよね。「次はあそこに行こう」と示してくれて、僕らはそれに対して一生懸命アプローチすることで進んできたんですが、10周年以降は自分たちでフラッグを持って、次の場所を示すようになって。20年目を迎えて、それがすっかり板に付いたんだと思います。例えばライブの打ち上げのときも、以前は自分自身が真ん中にいて「イエーイ!」って盛り上がってたんですよ。今はみんなが盛り上がっているところを肴にしてお酒飲んでる(笑)。次のことを考えながら、「みんな、楽しんでるな。よかったな」って。それもこの10年で変わったところですね。

大変そうだと思ったけどワクワク感が勝った

──では、新作について聞かせてください。「謳おう」「4LOVE」という2枚のCDが2週連続でリリースされます。リリースを発表した東京ドームのライブでも「2枚出ます! がんばりました! ゆず、偉い!」って言ってましたよね。

北川 そうですね(笑)。「ゆずのみ」(2016年11月に開催した東京ドームワンマンライブ)のリハーサルの時期に「カナリア」(「謳おう」収録)ができたことがきっかけだったんですよ。作ってる段階から「この曲は自分たちの新しい1歩になる」という予感があって。さらに「タッタ」もできて、「この2曲をどう表現したらいいかな?」と考えたときに、弾き語りを中心にEP盤を作ったらどうかなと。「アルバムを作る余裕はないけど、それだったらやれそうだな」と思ってたんですけど、さらに「愛こそ」という曲ができて。そのタイミングで、「愛こそ」を軸にもう1枚、CDを出したら面白いんじゃないかというアイディアが出たんです。

──それにしても2週連続のリリースってすごいですよね。しかもベスト盤が出て、ドームツアーが終わった直後に。

北川 大変だなとは思ったけど、「実現したら面白そうだな」というワクワク感のほうが勝ったんですよ。「そんなことは誰もやったことないだろうな」と。20周年のドームツアーのタイミングっていうのもよかったんですよね。これまでを振り返ることと、新しい道を提示することの両方のベクトルでやれたので。ツアーのあとに新作をリリースすれば、ファンのみんなもうれしいだろうし。とはいえ、やっぱり大変でしたけどね(笑)。

岩沢 ベスト盤のツアーだったから、(並行して新作の制作も)できたのは確かだと思います。過去の曲はしっかり体に入っているし、ツアーのリハーサルと新作のレコーディングでしっかりシフトチェンジできたので。新しい曲が中心のツアーだったら、たぶんできなかったでしょうね。

MOROHA・UKが新鮮なアコギを鳴らす「カナリア」

──「謳おう」の軸になったという「カナリア」は、どんなテーマで制作されたんですか?

北川 まず日本テレビ系の「NEWS ZERO」のテーマソングのお話をいただいたんです。「NEWS ZERO」とは震災の時期から共に歩んできたという実感があるし、コンスタントにご一緒してきたので、その1つの集大成になればいいなと思って作ったのが、「カナリア」だったんですよね。

──アコギの使い方が独特ですよね。ビートがすごくシャープで、ヒップホップのテイストがある。

北川 MOROHAというヒップホップグループのUKくんというギタリストに参加してもらったんですよ。アコギでヒップホップをやってるんだけど、それがすごく面白くて、ぜひ一緒にやりたいと思った。僕が作ったサビのメロディを基にして、UKくん、蔦谷好位置くんとスタジオでセッションしたんですけど、すごく楽しかったですね。ゆずにとってのアコースティックギターは“響かせるもの”という感じだったんです。UKくんのギターは全然違っていて、すごくエッジがあるし、切り付けるような感覚で。そこに自分のメロディを乗せてみたかったんですよね。

岩沢 ゆずの根本にはない音だし、今までにない曲になったと思いますね。レコーディング中もUKくんがすごく不思議なことをやっていて、ずっと「へー!」って言ってました(笑)。「その楽器、何?」というところから始まって、ゆずの現場ではありえないことばっかりだったので。すごく刺激的だったし、楽しかったです。

──ゆずの中には存在しない要素であっても、面白いと思えばどんどん取り入れたい、と。

岩沢 来る者は拒まず、です。ヒャダインと一緒にやった時点で、もう誰が来ても大丈夫になりました(笑)。いろんな人とやってみたいし、楽しみしかないですね。

北川 できるだけ遠いところにいる人と合わさるのが楽しいんですよね。ゆずはすごく地盤がしっかりしているから、ちょっとやそっとじゃ崩れないんですよ。ただ、その分動きづらくなることもあって。だからこそ、大よそやらないだろうなということにトライしてみたいし、それが楽しいんですよね。特に15年目以降は、そういう挑戦の繰り返しだったと思います。そのときは奇抜に感じられたとしても、時間が経つとスタンダードになってたりするし、それが自分たちの自信にもなって。これからも怖がることなく、いろんな人と出会いたいと思いますね。

ゆず「謳おう」
2017年6月21日発売 / SENHA&Co.
ゆず「謳おう」

[CD]
1404円 / SNCC-89936

Amazon.co.jp

収録曲
  1. カナリア
  2. タッタ
  3. 天国
  4. 保土ヶ谷バイパス
  5. カナリア(Instrumental)
ゆず「4LOVE」
2017年6月28日発売 / SENHA&Co.
ゆず「4LOVE」

[CD]
1404円 / SNCC-89937

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 愛こそ
  2. 日常
  3. ビーチ
  4. ロンリーカントリーボーイ
  5. 愛こそ(Instrumental)
  6. 日常(Instrumental)
  7. ビーチ(Instrumental)
  8. ロンリーカントリーボーイ(Instrumental)
ゆず「YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM ゆずイロハ1997-2017」
2017年4月26日発売 / SENHA&Co.
ゆず「YUZU 20th Anniversary ALL TIME BEST ALBUM ゆずイロハ1997-2017」

[CD3枚組]
3780円 / SNCC-86931

Amazon.co.jp

DISC 1 イ「いくつもの 日々を越えたよ 20年」
  1. 夏色
  2. 栄光の架橋
  3. 雨のち晴レルヤ
  4. 飛べない鳥
  5. いつか
  6. 表裏一体
  7. からっぽ
  8. アゲイン2
  9. 桜木町
  10. イロトリドリ
  11. 少年
  12. スマイル
  13. 嗚呼、青春の日々
  14. 逢いたい
  15. 見上げてごらん夜の星を ~ぼくらのうた~
  16. イロトリドリ(ゆず×いきものがかり)
DISC 2 ロ「路上から 思えば遠くへ きたもんだ」
  1. サヨナラバス
  2. 贈る詩
  3. LOVE & PEACH
  4. 恋の歌謡日
  5. OLA!!
  6. ヒカレ
  7. 桜会
  8. 春風
  9. 雨と泪
  10. Yesterday and Tomorrow
  11. 月曜日の週末
  12. 3カウント
  13. よろこびのうた
  14. 友達の唄
  15. サヨナラバス(ゆず×back number)
DISC 3 ハ「ハモります いつでもきみは ひとりじゃない」
  1. with you
  2. 終わらない歌
  3. いちご
  4. 友~旅立ちの時~
  5. REASON
  6. 超特急
  7. うまく言えない
  8. かける
  9. Hey和
  10. センチメンタル
  11. シシカバブー
  12. HAMO
  13. 守ってあげたい
  14. ストーリー
  15. またあえる日まで
  16. 悲しみの傘(ゆず×SEKAI NO OWARI)
YUZU HALL TOUR 2017 謳おう
  • 2017年9月21日(木)
    熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
  • 2017年9月23日(土・祝)
    長崎県 長崎ブリックホール
  • 2017年9月27日(水)
    石川県 金沢歌劇座
  • 2017年9月30日(土)
    北海道 函館市民会館
  • 2017年10月2日(月)
    青森県 青森市文化会館 リンクステーションホール青森
  • 2017年10月10日(火)
    愛媛県 松山市民会館
  • 2017年10月12日(木)
    鳥取県 米子コンベンションセンター BiG SHiP
  • 2017年10月16日(月)
    大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年10月17日(火)
    大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年10月24日(火)
    愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2017年10月25日(水)
    愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2017年11月7日(火)
    神奈川県 パシフィコ横浜国立大ホール
  • 2017年11月8日(水)
    神奈川県 パシフィコ横浜国立大ホール
  • 2017年11月10日(金)
    神奈川県 パシフィコ横浜国立大ホール
ゆず
北川悠仁と岩沢厚治によるデュオ。当初は横浜・伊勢佐木町で路上ライブを定期的に行っていた。1997年に寺岡呼人をプロデューサーに迎え「ゆずの素」でインディーズデビュー。1998年にリリースしたメジャー1stシングル「夏色」が大ヒットを記録し、以降次々とヒットナンバーを生み出している。2001年には初の東京ドーム公演「ふたりのビッグ(エッグ)ショー」を実施。2005年には日産スタジアムで「YUZU STADIUM 2005 GO HOME」を行う。2007年にはCDデビュー10周年を迎え、記念アルバム「ゆずのね1997-2007」をリリースした。デビュー15周年の2012年には、ベストアルバム「YUZU YOU[2006-2011]」をリリースし、大阪・京セラドーム大阪と東京・東京ドームでライブ「ゆず15周年感謝祭 ドーム公演 YUZU YOU」を大成功に収める。2013年5月発売の11th アルバム「LAND」が「第55回 輝く!日本レコード大賞」最優秀アルバム賞に選出。2016年には、自身初のアジアツアー「YUZU ASIA TOUR 2016 Summer NATSUIRO」を開催し、台湾、香港、シンガポールの3都市で初ライブを実施した。同年11月に東京ドームにてデビュー20周年突入記念弾き語りライブ「ゆずのみ」を開催し、2日間で約10万人を動員する。2017年にデビュー20周年イヤーとして、4月にオールタイムベストアルバム「ゆずイロハ 1997-2017」を発表。初の全国ドームツアー「YUZU 20th Anniversary DOME TOUR 2017 ゆずイロハ」を実施した。6月に5曲入りCD「謳おう」、8曲入りCD「4LOVE」をリリース。