音楽ナタリー Power Push - ゆよゆっぺ×ヒゲドライバー

筋肉タイプ? 骨タイプ? インターネット発アーティスト同士の作曲談議

100通りから1つを選ぶより、1000通りから1つを選ぶほうがいい

──歌詞に関してはどうですか? アレンジやメロディは作れても、歌詞は「これを伝えたい」という動機がないと難しいところもあると思うんですが。

ゆよゆっぺ

ゆよゆっぺ ちょっとしたことを大きくしちゃうんですよね、僕は。今回のアルバムを作るときも、レコード会社の人と話をしていて、冗談みたいな感じで「僕、ゆとりなんで」って言ったのがきっかけなんです。「ゆとりって、なんかよくないですか?」って。アルバムのタイトルは「ゆとりだから本気になれない」なんですけど、1曲目が「ゆとり」、2曲目が「だから」、3曲目が「本気になれない」ですから(笑)。「面白い! やろう!」と思ったら、そこから完成するまで続けるので。こう言うとふざけてるようだけど、それを本気のクオリティでやらせてもらえるのが役得ですよね。とんでもない機材とスタジオ、ガチの音、ガチの気持ちでやれるのはすごくうれしいし、アーティストの部分を残しておいてよかったなって思います。

ヒゲドライバー そういう瞬発力はすごいし、アーティストとしてはそれが正解だと思いますね。僕は「いいな」と思っても、いざ曲を作ろうとしたときに「どうかな? つまらないかもな」って冷静になってしまうこともあるので。

──「商業音楽として成立するか?」をジャッジするということですよね。

ゆよゆっぺ ヒゲさんはそのバランスを取るのがすごくうまいんですよ。バンドの曲も提供曲も、人を振り向かせるワード、フレーズが必ず入ってるので。誰もがどこかで何かを感じられる音楽というか。

ヒゲドライバー そこは意識してますね。さっきの「Stay Alive」で言うと、サビは「I Stay Alive」以外の言葉がハマらなかったんです。「もうちょっとアニメに寄せてください」という話もあったんだけど、サビは変えなかったので。「自分の耳にこれだけ残るんだから、聴いてくれる人にも残るはずだ」っていうことなんですけどね。「東京ソーダ」もそう。歌詞とメロディはワンセットで、ほかの言葉はハマらなかったから。そういう組み合わせを見つけたら勝ちなんですよ、自分の中では。

ゆよゆっぺ どうしてそこに行き着けるかもわからないんですよね。自分のメロディには隙があるというか、「ほかの歌詞でも成り立つ」と思ってしまうんですけど、ヒゲさんの曲はそうじゃないですから。

ヒゲドライバー

ヒゲドライバー なんだろうな……「これしかない」というところに行き着くまでにはいろんな葛藤があるというか、ざっくり言うとトライ&エラーなんですよね。1つひとつ当てはめて「これは違う、これも違う」って繰り返すしかないので。メロディも同じなんですけど、100通りから1つを選ぶよりも、1000通りから1つを選ぶほうがいいじゃないですか。

ゆよゆっぺ 「Stay Alive」もそうだったんですか?

ヒゲドライバー もちろん期限があるから、その範囲の中のトライ&エラーですけどね。メロディ、歌詞ができるまでは外界をシャットアウトして、ずっと同じトラックをループしながらひねり出そうとしてるので。だから「メロディが降ってくる」なんて信じられないんですよ。

ゲーム制作とか、音楽以外のことをやりたい

──最後に今後の活動について。ゆよゆっぺさんとヒゲドライバーさんはこの後も、バンド、DJ、シンガーソングライター、楽曲提供などを並行して続けていくわけですよね?

ゆよゆっぺ そうですね。アーティストとしての寿命はわからないですけど、今はできることを全力でやるしかないと思っていて。「自分にとって何が一番大切か」よりも、すべての列車を同時に走らせるほうがいいと思うんですよ。どれでもいいから「いいな」と思ったものを聴いてほしいですね。どれを聴いてもらっても、自分でやってることには変わりないので。

ヒゲドライバー バンドもクリエイターとしての活動も続けていきますけど、最近また新しい夢ができて。自分で音楽以外のことをやりたいんですよね。たとえばゲームとか?

ゆよゆっぺ おや? もしかして「YAS」かな……?

左からヒゲドライバー、ゆよゆっぺ。

ヒゲドライバー そうそう。昔、RPGゲームをフリーで公開したことがあるんですけど、そのときに「音楽とコンテンツが一緒になると、やっぱり強いな」ということを実感して。「Stay Alive」もそうだと思うんですよね。“リゼロ”がヒットしたからこそ、あの曲にもすごい反響があったので。まだまだ先のことになると思いますが、コンテンツを自分で作って、音楽を演出として使うということをやってみたいですね。

GRILLED MEAT YOUNGMANS 1stミニアルバム「EATMANS」 / 2016年9月28日発売 / 1944円 / MOtOLOiD / LOID-0014
GRILLED MEAT YOUNGMANS 1stミニアルバム「EATMANS」
収録曲
  1. Overture
  2. 復讐のベジタリアン
  3. Good Morning Bounce
  4. Get Ready
  1. Pegasus
  2. 夜食
  3. S.O.Y
  4. Thank You My Bee
ゆよゆっぺ ニューアルバム「ゆとりだから本気になれない」 / 2016年10月26日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
初回限定盤 [CD+DVD] / 3024円 / YCCW-10290/B
通常盤 [CD] / 2484円 / YCCW-10291
CD収録曲
  1. You and beautiful world
  2. めいめろ
  3. Story of Hope
  4. Hope
  5. Lost Story
  1. Sweet Circle
  2. ゆとり
  3. 本気になれない
  4. Cry
  5. だから
  6. いつでも、どこでも
初回限定盤DVD収録内容
  1. 「だから」ミュージックビデオ
  2. ゆよゆっぺのチョリ帰省2~松下先生インタビュー動画~
ヒゲドライバー ベストアルバム「ヒゲドライバー10th Anniversary Best」 / 2016年1月20日発売 / 2808円 / EXIT TUNES / QWCE-00556
ヒゲドライバー ベストアルバム「ヒゲドライバー10th Anniversary Best」
収録曲
  1. ALARM
  2. Sono Sabi
  3. Kiss me
  4. Reset me
  5. チェリー
  6. Hello Computer
  7. SAMURAI BEAT
  8. マイティボンジャック
  9. ukigumo
  10. アナログ
  1. KOKORO BEAT
  2. 雲のスピード
  3. ホログラフ
  4. キュート・ポップ
  5. 498 Tokio
  6. PULSE LASER
  7. GIGI BABA
  8. HAPPY HEART BEAT
  9. REMEMBER THE BEAT
ゆよゆっぺ
ゆよゆっぺ

ラウドロックを軸にさまざまなジャンルを盛り込んだVOCALOID楽曲をニコニコ動画に発表し、何度 も“殿堂入り”を果たしている人気ボカロP。2012年9月にアルバム「Story of Hope」でメジャーデビューを果たしたあとも、自身のバンド・GRILLED MEAT YOUNGMANSや、DJ名義のDJ'TEKINA//SOMETHINGとしての活動、BABYMETALをはじめとするさまざまなアーティストへの楽曲提供など活躍の幅を広げている。ゆよゆっぺとしては2014年7月には同名の小説と完全連動したアルバム「ぼかろほりっく」を発表。2016年には、5月にDJ'TEKINA//SOMETHINGとして女性アイドルグループのリミックスで構成されたアルバム「KAWA-EDM」、9月にGRILLED MEAT YOUNGMANSとして1stミニアルバム「EATMANS」を発表し、10月にゆよゆっぺ名義でシンガーソングライターとしての1stアルバム「ゆとりだから本気になれない」をリリースする。

ヒゲドライバー
ヒゲドライバー

2005年に無料インディーズ音楽配信サイト・muzieで楽曲を発表したのを皮切りに、主にインターネット上で活動しているソロアーティスト。2008年にWindowsの効果音だけで作られたオリジナル曲「Hello Windows」をニコニコ動画に投稿して話題になる。同年6月に初のオリジナルCDアルバム「ヒゲドライバー1UP」を発表して以降、ハイペースで音源をリリース。スピード感のあるキャッチーなメロディーを得意とし、インストのチップチューンから歌ものロックまで幅広いジャンルの曲を制作している。近年はアーティストやゲーム、アニメへの楽曲提供を数多く担当。2013年に、バンドプロジェクトを始動してCDとミュージックビデオを制作するためクラウドファンディングサイト・CAMPFIREで支援を募り、翌2014年にヒゲドライVANを結成。ヒゲドライバーとしては、2016年1月に10周年記念ベスト盤をリリース。バンドは2016年6月にミニアルバム「インターネット・ノイローゼ」を発表した。