ナタリー PowerPush - ゆよゆっぺ

“VOCALOUD”の雄、ついにメジャー戦線へ

自身が敬愛するエモ / スクリーモやラウドロックサウンドを、初音ミク、巡音ルカといったボーカロイドに歌わせるという衝撃の楽曲群で、2008年よりニコニコ動画で圧倒的な人気を集めてきた「ゆよゆっぺ」がこの秋、ついにメジャーデビューを果たした。メジャー初のアルバム「Story of Hope」には、ニコニコ動画で殿堂入りとなった全ての楽曲に新曲やボーナストラックなどを加えた全15曲を収録。ヘビーなサウンドを軸にしつつも、柔軟な音楽性を垣間見せるそのクリエイティビティからは、ボカロPという括りだけには収まらない才能が感じられるはずだ。

このアルバムリリースを記念して、ナタリーでは初のインタビューを実施。こちらが投げかけた質問に対し、激しいボディアクションを交えながらハイテンションで答えてくれた発言の数々。彼の愛すべきキャラクターも含め、楽しんでもらえればと思う。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 上山陽介

メジャーデビューしても僕が僕であることは変わらない

──ブログを拝見しましたが、メジャーデビューに対してかなり激しくスクリームされていましたよね。「うひょおおおおおおおおおおおおお!!!」「うをおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」と。

インタビュー写真

あははは(笑)。ほんとそんな感じなんですよ、気持ちとしては。今回メジャーデビューできるのは今まで聴いてきてくれた人のおかげだし、周りの環境のおかげだし、そこへの感謝はもう言っても言い切れないというか。1人ひとりとガッツリ握手していきたいくらい。そんな気持ちを込めての、あの叫びなんです。

──メジャーへの憧れはずっと持っていたんですか?

正直、去年ぐらいまで全然そんな気持ちはなかったんですよ。むしろ「メジャーになって何か変わるの?」「今の流行りに乗っかってボーカロイドに食いついてるだけなんじゃないの?」みたいな不信感のほうが大きかったくらいで。でも、ボーカロイドの「Mew」でご一緒させていただいた坂本美雨さんの歌声を実際に聴いたとき、やっぱメジャーのアーティストってすげえんだなって思ったんです。やなぎなぎさんのディレクションをさせてもらったときも、やっぱメジャーっていうのは自分にはできないことをやれる場所なのかもしれないなってすごく思えて。なので、メジャーデビューのお話をいただいたときには「すいません、ぜひやらせてもらいます」っていう感じになったんですよね。

──喜んで受け入れたと。

はい。新しいワンステップを踏み込める、いい機会をもらえてほんとありがたいなって感じです。ただ僕にとってのメジャーデビューは1つの通過点だと思ってほしいところもあって。昔から聴いてくれてる人の中には、僕が遠くに行っちまうんじゃないかって思ってる人もいるみたいなんですけど、メジャーデビューしたからって僕が僕であることは変わらないですし、これからもよろしくねっていう気持ちが強いというか。ここからさらに高みに上っていく感じを、良かったら一緒に見てほしいんですよね。そういう意味を込めて、今回のアルバムに「Story of Hope」ってタイトルを付けたんです。

──ここからスタートする“希望の物語”を見ていてくれと。

今までの道筋も含めて、ですけどね。このストーリーは僕が死ぬまでは終わらないものなので、ここからこの言葉を掲げていきたいなって。

「そうだね、ハニー」

──では、ゆよゆっぺさんのここまでの活動をちょっと振り返ってもらえればと。ボーカロイド楽曲をニコニコ動画に投稿し始めたのは2008年からということですが、それ以前も音楽活動はやっていたんですよね?

やってました。高校1年の頃からバンドでギターボーカルをガッツリ。だから基本的にお勉強ができなくて、両親にはすごく迷惑をかけたんですけど(笑)。当時から、今作ってる楽曲に通じるような、激しいサウンドが大好きでしたね。

──プロフィールを拝見するとギターのみならず、いろいろな楽器が弾けるようですが。

とりあえず楽器と呼べるものはなんでも触りたくなるんですよ。最初に触ったのはピアノです。うちの両親は僕が女の子として生まれてくると思ってたらしく、「これはピアノをやらせるしかないわね」「そうだね、ハニー」みたいな感じで、生まれる前からピアノが家にあったんです。そしたら男が生まれてきたんで「せっかく買ったピアノがおじゃんだわ」「そうだね、ハニー」っていうことで、そのピアノに自動演奏装置をつけるんですね。で、優雅にコーヒーを飲みながらショパンの自動演奏を聴くみたいな貴族ごっこを楽しんでたらしいんですけど、そのうちに僕がそれに触るようになって。きっかけは謎なんですけど、なんとなく楽しそうだなと思ったんでしょうね。で、自動演奏を眺めながらベートーベンの「エリーゼのために」を覚えて、なんとなく弾けるようになったんです。今思えば、そこが僕にとっての音楽のスタート地点だったかもしれないですね。その後、中学校の合唱コンクールでピアノを弾くことになったときに、あまりにも難しい曲だったので改めてちゃんとピアノを習い始めるんですけど。

──他の楽器に関しては?

ギターは小学校6年生のとき、親父にアコースティックギターを買ってもらったのがきっかけですね。親父が左利きだったんで、向かい合って弾くと手の動きをそのまま真似することができたんですよ。そんな親父自動演奏でギターも覚えて(笑)。あと、小学校の授業ではみんなが嫌ってたボンゴとかマリンバ、三味線なんかを担当してましたね。僕、マリンバとボンゴは超うまいっすよ! マリンバで「コンドルは飛んでいく」とか叩かせたら結構いいとこまでいけるんじゃないかっていうくらい(笑)。高校のときは友達が遊びで組んでたバンドでドラムを叩かせてもらったり、他にもベースやDJもできます。まあ基本的に楽器で人と合わせて音を出すのが昔から好きなんだと思います。

CD収録曲
  1. Intro
  2. Story of Hope(巡音ルカ)
  3. 「S」(巡音ルカ)
  4. Thunder Girl(巡音ルカ)
  5. Palette(巡音ルカ)
  6. Leia(巡音ルカ)
  7. Reon(巡音ルカ)
  8. Hope(初音ミク)
  9. Lost Story(初音ミク)
  10. For a Dead Girl+(巡音ルカ)
  11. ALONE(巡音ルカ)
  12. Blue(初音ミク)
  13. カミノコトバ(初音ミクAppend)
  14. The last 8 bars(初音ミク)
  15. 7/8(巡音ルカ)
  16. Hope - My Eggplant Died Yesterday Ver.(ボーナストラック)
初回限定盤・通常盤 DVD収録内容
  • 「Leia」ビデオクリップ
  • ドキュメンタリー映像「ゆよゆっぺのチョリ帰省」
初回限定盤付属コミック内容
  • 「引っ込み思案と轟音ギター☆」(原作:ゆよゆっぺ / マンガ:kgr / 全32P)
ゆよゆっぺ

プロフィール画像

ラウドロックを軸にさまざまなジャンルを盛り込んだボーカロイド楽曲をニコニコ動画に発表し、何度も“殿堂入り”を果たしている人気ボカロP。2012年9月にアルバム「Story of Hope」でメジャーデビュー。現在は自身のバンド、My Eggplant Died Yesterdayでも活躍している。10月6日には東京・2.5Dにて「リアルちょりちょりフェスティバル」と題したボカロP初の完全ワンマンイベントを実施。