ゆるミュージックほぼオールスターズの新曲「満ちる愛・繋ぐ夢」が配信リリースされた。
ゆるほぼは、誰でもすぐに弾ける“ゆる楽器”を通じて音楽の楽しさを提供する「世界ゆるミュージック協会」発のバンド。メンバーはトミタ栞、小澤綾子、五十嵐LINDA渉、大福くん、ラヴィクマール、村木ひらり、杉本星斗の7名で構成される。昨年11月のデビュー曲「るるる生きる」以来のリリースとなる「満ちる愛・繋ぐ夢」は大阪・夢洲で開催される「2025年日本国際博覧会」に向けた応援ソングで、山下穂尊(ex. いきものがかり)が作曲し、歌詞は公募したアイデアをもとに山下がまとめた。
音楽ナタリーでは「満ちる愛・繋ぐ夢」のリリースを記念し、メンバーを代表してトミタ、小澤、五十嵐、ラヴィの4人にインタビュー。バンド結成のいきさつや新曲の制作秘話とともに、個性豊かなメンバーから伝えたい、生きやすくなるためのメッセージも聞いた。
取材・文 / 秦野邦彦
ゆるほぼ最初のメンバー
──本日は「ゆるミュージックほぼオールスターズ」、略して「ゆるほぼ」から、トミタさん、小澤さん、五十嵐さん、ラヴィさんにお集まりいただきました。まずは自己紹介からお願いいたします。
トミタ栞 はい! ボーカルのトミタ栞です。
ラヴィクマール ギターとかいろいろ楽器をやってる発明家のラヴィです。
五十嵐LINDA渉 ドラムのLINDAです。私はアートディレクターとして、ゆるほぼの楽器をデザインしたり、ミュージックビデオのプロデュースも担当させていただいてます。
小澤綾子 キーボードの小澤です。よろしくお願いします。
──よろしくお願いします! ゆるほぼは、誰でも音楽の楽しさを実感できる世界を目指すプロジェクト、世界ゆるミュージック協会がメンバーを募って結成されたバンドだそうですが、そもそもこのメンバーはどうやって集まったんですか?
トミタ 私たちのプロデューサーさんが、とにかくゆるそうな人に声をかけてくれたみたいなんです。私は最後のほうに入れていただいたんですけれども……LINDAさんが最初のメンバーですか?
LINDA 私が最初ですね。世界ゆるミュージック協会という、楽器を弾くハードルを下げることを目的とした協会があって。去年の1月くらいにプロデューサーさんから「楽器のデザインをお願いできませんか?」とお話をいただいたんです。そこからアイコンを作って、「これから曲を出して、“ゆるミュージック”をもっと広めていきたいから、メンバーにもなってほしい」って言われて。
トミタ そのときメンバーはまだいない?
LINDA まったくいなかったです。で、2番目に入ったのが小澤さんですね。
小澤 はい。私は「スポーツ弱者を、世界からなくす」というコンセプトで2015年4月に活動を開始した世界ゆるスポーツ協会代表の澤田智洋さんと以前から仲よくさせていただいていたんです。その澤田さんが新たに音楽の分野でも世界ゆるミュージック協会を立ち上げて、「楽譜が読めない人、楽器が扱えない人でもその場でパッと弾ける楽器があるから、今度その楽器を使った面白いバンドを組もうと思ってるんだけど、よかったら参加してみない?」と声をかけていただいたのがきっかけです。
──小澤さんは筋ジストロフィーという難病を抱えながら「どんな障害や病気があっても夢や希望は叶えられる」という思いを広く伝えるために、会社員兼シンガーソングライターとしても活動されています。
小澤 なので歌うのかなと思ったら「小澤さん、楽器ね」と言われて。「いや私、楽器は弾けないので無理です」とお断りしたら「そんな小澤さんみたいな人たちのためのバンドだから大丈夫。自信を持って参加して」とお誘いいただいたので、参加することに決めました。
──ちなみにLINDAさんはこれまでに楽器を習得されたことはあったんですか?
LINDA 幼稚園の年長さんまでピアノをやってたけど、「猫踏んじゃった」しか弾けなかったです。
トミタ めっちゃ早くやめてるじゃないですか(笑)。
ゆるいと思いきやガチ
LINDA そして3人目がトミタさんですね。オンラインでやっていたトミタさんのバースデーライブをプロデューサーさんが観て、その自然体なパフォーマンスや、進行、演出、すべてが“ゆるい”ことが決め手になったんですよね。
トミタ えーっ、そうなんだ!? 初めて聞きました。
LINDA トミタさんと同時に決まったのがラヴィさんですね。
ラヴィ 僕はもともとラヴィラボという会社で新しい楽器を作って、いろいろなところで展示していたんです。それを見たプロデューサーさんから「もっとたくさんの楽器を作っていただけませんか」と言われて、僕の周りで楽器作りができる人を紹介しながら“ゆる楽器”の展示会をやって、盛り上がっていたんですね。そしたら、ある日いきなり呼ばれて、衣装を着せられ、写真を撮られ……。それもジャケット写真を撮るのに1日がかりとか、朝から皆さんすごくがんばってるし、「あれ? みんなガチでやってる?」って(笑)。
トミタ ゆるいはずなのに(笑)。
ラヴィ 展示会用に一緒に写真を撮って、Webページを作るのかなと思ってたら、すごくしっかりしたものだったのでびっくりしました。本当に何もわからないまま参加したので。僕は個人的に楽器を習ったことはないんですけど、楽器を弾いていると脳のアルファ波とベータ波がすごく高くなってリラックスできることは知ってたんです。だけど多くの人は楽器を弾けないから、簡単に演奏できる楽器を研究していたんですね。なので、ちょうどいい機会だなと思って、ゆるほぼに入りました。
メンバーは増員予定?進化し続けるゆるほぼ
──今回いらしていただいた4名以外にもメンバーがいらっしゃいます。
トミタ キッズメンバーの村木ひらりちゃん、杉本星斗くん、和菓子のキャラクター・大福くんです。これだけ多彩なメンバーがそろったなら、やっぱりキッズもいてほしいということでオーディションをしたんです。ちなみにその当時はまだ私、バンドを組んでボーカルになると聞いて間もない頃で半信半疑だったんですよ。そしたらプロデューサーさんに「何言ってんだ、本当にやるんだよ」と言われて、うれしくてちょっと泣いちゃったというエピソードもあります(笑)。オーディションで会わせていただいたキッズたち、みんな本当にかわいくて。全員いてほしかったんですけど、純粋にビビッときた2人を僭越ながら選ばせていただきました。
──やっぱりキッズがいると、音楽への入り口という意味で広がりますよね。
トミタ 説得力がありますよね。ゆる楽器には体全体を使って演奏できるものもあるので、大福くんに担当してもらえたらステージ映えするし、みんなにわかりやすく説明できると思うので期待してます。
LINDA このバンドの大きなテーマとして「ダイバーシティ」という部分があって。私はLGBTQの中のゲイなんですけど、そういう部分もたぶん評価していただいていると思いますし、小澤さんは筋ジストロフィーという病と戦いながらいろんな啓発運動をされていたり、トミタさんは発信力のある若い女性代表、インド人のラヴィさんは国籍を超えてという意味合いの中で、「子供たちにも参加してもらったらもっと素敵になるよね」という思いがありました。これからもメンバーはどんどん増えていくんじゃないかな?
トミタ たぶん、ゆるほぼの“ほぼ”にはその保険がかけられてると思います(笑)。ゆる楽器も、まだまだ可能性を秘めた原点みたいなものがどんどん発明されている最中なので、これからたくさん増えていくと思うんですね。それを演奏するメンバーも必要になってくるので、進化し続けるバンドとして楽しんでほしいです。
──我々はそれをまさにスタートから見ているわけですね。
小澤 もう「新しい」としか言いようがないですね。私自身もいろんな発見があって楽しいなと思っています。いつも自分が、障害のある人たちの小さな声を発信するという活動をしていて。「世の中にはいろんな人がいるよ」ということを言い続けてはいたんですけど、私が考えもしなかったくくりの皆さんというか、普段接することのないようなメンバーと新しいものを作り上げていくというのがすごく楽しですし、いい意味でも悪い意味でも思い通りにいかないというか、この先どうなるのかみんな自身もわからない。そういう予測不能な感じがワクワクするなと思っています。あと、みんなすごく優しいんです。
──はい。
小澤 トミタさんは車椅子に乗っている私に「知らない世界をいろいろ教えてほしいから一緒にごはんに行こう」と誘ってくださったり、LINDAさんは車椅子の私のためにいつも場所を確保してくれたり。スタジオだと車椅子で入れるトイレがなかなかないんですけど、「このスタジオはこれぐらいの広さがあるから安心して」と先回りして気遣ってくれます。ラヴィさんはよく時間に遅れてくるけど(笑)、いつも面白いし、「ありのままでいいんだよ」と教えてくれるムードメーカーですね。
ラヴィ 今日の取材は一番乗りで来ました(笑)。
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ちょっと力を抜く大切さ