音楽ナタリー Power Push - YURiCa/花たん

ボカロPと手を取り合った“原点回帰”の1枚

まらしぃくんは面倒くさがり?

──収録曲の中で1つ驚いたのが10曲目「Linaria」でまらしぃさんが作曲だけでなく作詞も手がけていたことでした。

以前からまらしぃくんは作詞が苦手って言ってますもんね。今回は曲を作る前に「どんなお花が好きですか?」って質問をもらったんです。それで私の好きな花を伝えたんですけど、できあがった歌詞はその花のことにまったく触れられてなくて(笑)。でも「Linaria」の歌詞はわかりやすいし、すごくキレイな言葉がたくさん使われているので、苦手といいながらもグッとくる歌詞を書ける人だなって思って。

──VOCALOIDの曲も作ってますし、小説を書いたりもしてますから。まらしぃさんもすでに言葉のスペシャリストのはずですしね。

そう。ぜひもっと作詞をしてほしいと思いました。もしかしたら、ただの面倒くさがり屋なのかもしれないですね(笑)。

──今回のアルバムのレコーディングには各楽曲の提供者がそれぞれ立ち会ったんですよね?

そうなんです。実は打ち合わせの段階で一度会って直接お話させていただいていたんですが、レコーディングにも皆さん来ていただいて。自分が好きでお願いした方ばかりなので、ディレクションしに来てもらえるのはうれしい半面、曲やメロディを完全に覚えなきゃっていうプレッシャーの中で歌ってました。

──何か印象に残っているエピソードはありますか?

きくおさんの「うらみのワルツ」を録ったときですね。今回の曲はきくおさんの描く世界観がすごくて、それをどう表現したらいいかって、すごく入り込んでレコーディングしてたんです。そしたら自分の中でも楽しくなって夢中になっちゃって、この曲を録り終わったとき、のどが疲れて歌えなくなり、次のレコーディングができなくなってしまって……。1日2曲ずつ録っていたから、次のボカロPの方もスタジオにいらしていたんですけど「すみません、後日レコ—ディングさせてください」と謝罪して、改めさせていただいたんです。今までこんなことなかったから、自分でもビックリしました。

ワンマンで不安なのは歌詞

──8月には東京・渋谷Star Loungeにて、ワンマンライブを開催しました(参照:YURiCa/花たん、超満員の初ワンマンでオリジナルアルバム発売告知)。花たんさんにとって初めてのワンマンだったわけですが、終えてみて感想は?

すごくホッとしています。実は私、歌詞を覚えるのがすごく苦手で(笑)。イベントとか発売記念ライブって2曲くらいだから覚えられていたんですけど、ワンマンライブで13曲分の歌詞を覚えられるかが、すごくプレッシャーで……。

──結果としてはその苦手を克服してステージに立ったわけですよね?

そうなんです。リハーサルでバンドメンバーの方と音を合わせているうちにすごく楽しくなって。プロの方々に演奏をお任せしている安心感があったというか「もし間違えても自信持って歌っちゃえばいいんだ」って思えたんです。だから本番を迎えるときは「怖い」とか「嫌だ」って感情はなくなってました。「私の歌を聴けー!」って感じで、動画に負けないくらい歌えるんだぞっていうのを見せる気持ちのほうが強かったですね。

──初ワンマンはバンド編成でのライブでした。「ロックな曲好き」という花たんさんだけに、生バンドへのこだわりはあったのでしょうか?

こだわりとかはあまりなかったんです。実は私、ライブにあまり行ったことがない人間で。初めて行ったライブがニコニコ動画で活動されてる方々のライブだったんですけど、やっぱりVOCALOIDの曲とかをバンドで再現してるのはカッコいいなあって思ってたんです。今回はスタッフさんが「花たんの歌はバンドに負けない迫力があるから」って言ってくれたのもあって、生バンドと一緒に歌を披露することができました。

──アルバムの初回限定盤にはこの日のライブの模様が収められているんですよね?

はい。ライブシーンやリハーサル風景を観ることができます。残念ながら私は映っていないんですけど、バンドの皆さんのカッコいい姿をたくさん観れますので(笑)。今回、皆さんにはバックバンドになってもらいたくなくて、バンドの演奏まで含めて“YURiCa/花たんのライブ”にしたかったんです。だから譜面台とかも一切置かず、みんなでお客さんのほうを向いてやり切っています。

──11月8日には東京・下北沢GARDENで早くも2度目のワンマンライブが開催されます。アルバムリリースを挟んで行われる公演になりますが、どんなステージになりますか?

もちろん今回のアルバムの収録曲も歌いますし、前回よりもたくさん曲を披露しようと思っています。でも前回のライブのときに歌った歌詞をもう忘れかけていて……(笑)。

──また覚えるのが大変であると。

またイチから覚えないといけなくて。ライブされてる方々は皆さんやっぱりすごいなあって思ってます。今回は短いスパンで2回ワンマンをさせていただきますけど、今後は東京以外の場所でももっとライブしたいんです。これからの目標ですね。

5年後、10年後も歌を

──これまで何枚もアルバムをリリースしていて、ワンマンライブも大盛況で終わりました。そして今回“原点回帰”を意識した作品を作り上げたわけですが、花たんさんが考える今後の目標ってなんですか?

なんだろう……。今回は初心に返りながらも、新しいことをしたいっていう、ただその一心だったので。将来のことまではあまり考えていなかったんですよね。こうやって改めて聞かれると、やっぱり5年後、10年後も歌っていたい。歌に携わるお仕事ができていたらなって思いますね。

──花たんさん自身が作詞作曲を担当した楽曲がすでにいくつもありますし。やろうと思えば全曲自作曲によるオリジナルアルバムも作れると思いますが。

それ、たぶんすごく発売日延びちゃいます(笑)。作曲はまだまだで、自分の曲なのにキーが合ってないことがあるんですよ。歌ってみたら「あ、めっちゃ低い」みたいな。でも、下手ではあるんですけど、やっぱり自分の世界が作れるのは楽しいので、次のアルバムでも1、2曲は自作の曲を入れたいなと思っています。今はまだ未熟だけど、もし将来自分だけが書いた曲が収められたアルバムができたらシンガーとしてはすごく光栄なことなので、これからがんばってそういう作品が作れるようになりたいですね。

ニューアルバム「Flower Rail」 / 2015年10月21日発売 / Subcul-rise Record
「Flower Rail」
初回限定盤 [CD+DVD] 2592円 / SCGA-00040
通常盤 [CD] 2160円 / SCGA-00041
CD収録曲
  1. Flower Rail
    [作詞・作曲:OSTER project]
  2. Psycho theory
    [作詞・作曲:buzzG]
  3. かまってウォーアイニー
    [作詞・作曲:てにをは / CV:吉野裕行]
  4. 極夜街
    [作詞・作曲:40mP / piano:まらしぃ]
  5. うらみのワルツ
    [作詞・作曲:きくお]
  6. Reason for being
    [作詞・作曲:ダルビッシュP]
  7. 時の終着点
    [作詞・作曲:かめりあ]
  8. Color
    [作詞:YURiCa / 作曲:YURiCa、ダルビッシュP / 編曲:ダルビッシュP]
  9. Cinderella Holic
    [作詞・作曲:TOKOTOKO]
  10. Linaria
    [作詞・作曲:まらしぃ / 演奏:logical emotion]
<ボーナストラック>
  1. 「千本桜」Studio Live Session
  2. 「飴か夢」Studio Live Session
初回限定盤DVD収録内容
  • レコーディングメイキング
  • ショーケースライブレポート(8/8渋谷Star lounge)
YURiCa/花たん「Flower Rail」レコ発ワンマンライブ

2015年11月8日(日)
東京都 下北沢GARDEN

YURiCa/花たん(ユリカ/ハナタン)

ニコニコ動画やYouTubeなどの動画共有サイトを中心に活動する女性シンガー。2008年2月に「ハジメテノオト」の歌唱動画を初投稿した。2009年4月に投稿した「ロミオとシンデレラ」が“歌ってみた”カテゴリでランキング1位を獲得し、その知名度を一気に広める。2011年6月には1stアルバム「FLOWER DROPS」をリリース。アルバム収録曲「笹舟」は、TBS系テレビ「教科書にのせたい!」のエンディングテーマとしてオンエアされた。2013年にはボカロ曲のカバーを集めたアルバム「FLOWER」を発表している。2015年8月に初のワンマンライブ「『Flower Rail』YURiCa/花たん ShowCase Live」を開催。同年10月にニューアルバム「Flower Rail」をリリースする。