ナタリー PowerPush - ゆれる
忍者屋敷に隠された人生観
ゆれるがミニアルバム「XENOtransplantations」(ゼノトランスプランテーションズ)を発表した。
奄美大島出身のAmi(G, Vo)とYuta Sakae(B)、京都出身のBauchi(Dr)の3人による3ピースバンド・ゆれる。彼らはAmiのつづる文学的な歌詞と情熱的なサウンドで人気を集めている。ナタリーでは今回、バンドの魅力を探るべくソングライティングを担当しているAmiに初インタビューを実施。彼はバンド結成の経緯から自身の人生観、そして「自信作だ」と言い切る今作への思いまでたっぷりと語ってくれた。
取材・文 / 小林千絵 インタビュー撮影 / 中西求
ゆれるの始まり
──ナタリー初登場となるので、まずはバンドの結成の経緯を教えてください。AmiさんとYuta Sakaeさんが奄美大島出身なんですよね。
高校生のときに組んでたバンドが人間関係のもつれで解散しちゃったんです。そのときに「バンドメンバーに必要なのは実力じゃない。大切なのは人間関係だ」って気付いて。残ったドラムのやつと、幼なじみだったYutaを誘ってバンドをもう1回始めたんです。でも卒業するタイミングでドラムが家業を継ぐことになって。それで、大阪に住んでいる兄貴がいたので、とりあえず兄貴の家に住みながらバンドやろうと思って奄美を出ることにしたんです。そしたらYutaも一緒に行くって言ってくれたので2人で大阪に行くことにしました。
──そして京都出身のBauchiさんと出会うんですね。
最初は別のドラムとゆれるを始めました。そのときBauchiはよく出てたライブハウスの照明やってて。僕らの曲に拍子のない曲があって、目でタイミング合わせてダダダってするんですけど、Bauchiはそれをビタビタに合わせられる唯一の照明だったんです。で、あるときドラムが体を壊してツアーをキャンセルしないといけないかもしれないって危機があって、Bauchiにサポートをやってもらったんです。そしたらめっちゃ楽しかったし、最高にいいライブができてしまったんです。いいライブができたことはうれしかったんですけど、代わりが利いてしまったってことがものすごく悲しくて。絶対このメンバーでしかできないことがしたかったはずなのに。そのあとBauchiがゆれるに入りたいって言ってくれて、この3人になりました。
──そもそもAmiさんが音楽を始めたきっかけはなんだったですか?
兄貴がThe Offspringのコピーバンドを文化祭でやってるのを観に行って。めっちゃカッコいいと思って……始めました。
──それまで音楽は聴いていたんですか?
兄貴のCDばっかり借りて聴いてました。小学5年生のときはNirvanaを聴いてました。
北海道のバンドに魅了された
──奄美大島の音楽文化ってどういうものなんでしょうか?
島唄があって。みんなちっちゃい頃から聴いてるし、歌える。大阪に来るまで気付かなかったんですけど、それって珍しいことなんですよね。
──そうですね。島唄のような、その土地に根付いている音楽というのは他の地域にはあまりないですね。
奄美の人はみんな島唄好きだし、結婚式とかで流れるとめっちゃいいBGMだなと思うし、勉強しとけばよかったと思います(笑)。僕の兄貴はSOUTH BLOWってバンドをやってるんですけど、名前が「南風」だし、奄美を存分に推してた。ちゃんと奄美大島に帰ってライブとかしてるんですよ。そのへんは見習わなきゃなと思います。
──ゆれるは島唄っぽい曲をやらないですよね。
似合わないからですかね。あと僕が北海道の音楽……eastern youthやkiwiroll、COWPERS、bloodthirsty butchersとかの音楽が大好きなんで、音像とかはそっち側に影響を受けてるんだと思います。だから島っぽさがなくなってしまったのかもしれない。根底には流れてると思うんですけど、アウトプットとしては出てないですね。
──曲のインスピレーションはどこから受けるんでしょうか?
お風呂と帰り道に。降りてくるんですよ。
──降りてくる……?
原付で走ってたりするとうるさいじゃないですか。その雑音の中で思い浮かぶんですよ。だからシャワーの音とかも。
──それは曲? 歌詞?
メロディです。イントロとかはギター持ちながらしかできないけど、メロディはそうやって生んでます。
バンドなんでぶつからんと意味がない
──サウンドはどのように作っていくんでしょうか?
僕がAメロやBメロ、サビなどの部品を持っていって、みんなで構成を決めていきます。ベースやドラムに最初は「こうして」っていうのは言わないんですよ。BauchiはBauchiがやりたいこと、YutaはYutaがやりたいことをしてほしいから。絶対的に個性っていうのは大事にしたいし、バンドなんでぶつからんと意味がないと思って。
──ちなみにAmiさんから見た、2人の個性はどんなところですか?
Yutaは思想も表現も鉄みたいなんですよね。芯がしっかりしてて屈しないし、アンダーグラウンドやし、何にも負けない。沈んでますけど、強さみたいなのがあるんです。
──Bauchiさんは?
Bauchiは真逆で、超オーバーグランドやし、好奇心あって、なんでも取り入れようとがんばるんで、めっちゃバランスがいいです。
──ちなみにAmiさんはご自身でどのような性格だと思います?
自分のことはちょっとアレですけど、YutaもBauchiも俺が好き放題やるってことに重きを置いてくれるんですよ。俺、音楽理論の本とか何回も買ったことがあるんですけど、4ページ目くらいの代理コードあたりから読めなくなっちゃうんです。だからフレーズとかも型にハマってないと思うんですね。そこが俺は武器やと思ってて。俺が気持ちいいって思ってたら誰かが気持ちいいと思うって思ってるんで。それが個性かなって思ってます。
- ミニアルバム「XENOtransplantations」
- 2014年6月25日発売 / 1836円 / テイチクエンタテインメント / QFCS-1007
- CD収録曲
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- クレイジーサマーソルト
- ヒューズヒュー
- そうそう これは想像です
- ABZRBRND [Chorus 壺坂恵(ecosystem)]
- 鵺になく
- 赤い破壊
- 家
ゆれる
奄美大島出身のAmi(G, Vo)とYuta Sakae(B)、京都出身のBauchi(Dr)による3人組ロックバンド。大阪を拠点に活動を始め、2011年12月に1stミニアルバム「mutilations」をリリースする。翌2012年10月に2ndアルバム「distractions」を発売。文学的な歌詞と情熱的なライブパフォーマンスで聴衆の心を揺さぶり、全国でじわじわと知名度を上げる。そして2014年6月に、スマイルカンパニーの自社レーベル「BLUE ALBUM」より3rdアルバム「XENOtransplantations」を発表した。