音楽ナタリー PowerPush - 悠木碧

4匹の怪獣とともに いざ“スキマ”を巡る冒険に

「なぜなら私がこういう言葉と音が好きだから」

──ただ辻林さんってFrostyとStinkyの恋愛模様を歌った「迷宮舞踏会」も書いていますよね?

そこは柔軟に(笑)。確かに「迷宮舞踏会」のデモが届いたときは「あっ、こういう楽しくてにぎやかな曲も書ける方なんだ!」ってビックリしたんですけど、その楽しくてにぎやかな感じが本当にかわいかったので、スキマ世界の曲として歌わせていただきました。bermeiさんもzakbeeさんも辻林さんも、そして作詞の藤林さんももちろんなんですけど、皆さん私の大好きな作家さんなので、そこは安心印というか(笑)。「お願いします」って言えば私が大好きな詞や曲を書いてくださる。それも私の想像を飛び越えてもっと好きになっちゃうような言葉と音がたくさん届くことはわかっていましたから、その中から特に好きなものを並べてみました。

悠木碧

──それこそ聴き手に媚びたりすり寄ったりするのではなく、悠木さんの好きなものを取り揃えてみた、と。

はい(笑)。「ビジュメニア」や「クピドゥレビュー」のことを「いいな」って思った方は、きっと今回アルバムのこともきっと好きになれるはずですから。なぜなら私が「ビジュメニア」も「クピドゥレビュー」も「イシュメル」の収録曲も全部かわいいと思ってるし、大好きだから(笑)。

──だから同じく悠木碧楽曲が好きな人たちと、これから好きになるであろう人たちに向けて、悠木さんが今かわいいと思う言葉と音をプレゼンテーションしてみた。

はい! いい意味でワガママな作り方ができたなって思ってます(笑)。

「やっと声優らしくなれた」

──その実際のプレゼンテーション作業、つまりボーカルレコーディングっていかがでした?

「なんかやっと声優らしくなれたな」って思ってます。

──「声優らしくなれた」?

今回アルバムの中には女の子と4匹のスキマ怪獣が出てきますよね。そうやっていろんなキャラクターになりきりながら歌えたことで、声優が歌う意味をちゃんと見つけられた気がしたんです。

──以前から繰り返し言ってましたもんね。曲中の主人公を演じるように歌ってこそ声優である悠木さんが楽曲を発表する意味が生まれるはずだし、演じるように歌えることこそ声優ならではの特質だって。

はい。ちょっと話がそれてしまうんですけど、私、もともと子役としてキャリアをスタートさせていて。そこから声優に転身したんですけど、その理由の1つにはいろんなキャラクターを演じてみたかったからっていうのがあるんです。というのも、たぶん顔出しでお仕事をなさってる方ならきっと皆さん経験があると思うんですけど、そのルックスに似合うお仕事が来がちになることがあって……。

──悠木さんであれば童顔で小柄でいらっしゃるから……。

子役さんと同じ現場に呼ばれたりとか(笑)。もちろんそういうお芝居もすごく楽しかったんですけど、やっぱりどこか退屈してしまっている自分もいたんです。もっと全然違うことをしてみたいな、いろんな役を演じてみたいなって。だから声優に転身したっていう面もあって、しかもおかげさまでアニメのお仕事では本当にいろんな役を演じさせてもらうことができていて。今回は音楽でもそれと同じことができた。それがすごくうれしかったですね。

──確かに「迷宮舞踏会」はちょっと年齢感高めの男の子っぽい歌い方をしているんだけど「ソラミミPiZZiCATO」のボーカルはかなり幼いイメージ。曲ごとに声のトーンやキャラクターを違えてますよね。

「アールデコラージュ ラミラージュ」や「ダスティー!ダスティーストマック」なんて1曲の中に何人出てくるんだ、これ?って感じですし(笑)。さっきお話した通りWoolyは1人遊びが好きなとってもマイペースな子なので「ダスティー!ダスティーストマック」の中ではみんなとリズムを合わせることができなくて。だから4人一緒に歌ってるところでちょっとリズムをずっこけさせてみたりしてるんです。そうやってそれぞれのキャラクターを立てるように歌えたのも声優として活動しているからなのかなって思ってます。

悠木碧新曲?「角の生えた不思議な生き物の歌」

──インタビュー冒頭の繰り返しになるんですけど、以前から「スキマを歌いたい」と言っていた結果、今回「イシュメル」ができあがったわけですよね?

そうですね。

──じゃあ今後悠木さんが歌いたいモチーフってあります?

うーん……。「イシュメル」で培ったことを生かして、また不思議な生き物のことかなあ。今度は角とか生やしてみたいです(笑)。

──怪獣がパワーアップした(笑)。

角が生えたことで言葉や音や私の歌声が変わったら面白いですよね。なんか曲全体に角っぽいしなり感が出てきたりとか(笑)。

1stフルアルバム「イシュメル」2015年2月11日発売 / FlyingDog
初回限定盤 [CD+DVD+小冊子] 3996円 / VTZL-92
通常盤 [CD] 3240円 / VTCL-60383
CD収録曲
  1. SWEET HOME
  2. アールデコラージュ ラミラージュ
  3. ビジュメニア
  4. twinkAtrick
  5. たゆたうかなた
  6. 迷宮舞踏会
  7. ロッキングチェアー揺れて
  8. ソラミミPiZZiCATO
  9. ダスティー!ダスティーストマック
  10. クピドゥレビュー
  11. Angelique Sky
初回限定盤DVD収録内容
  • 「アールデコラージュ ラミラージュ」MV
  • 「アールデコラージュ ラミラージュ」メイキング映像
悠木碧(ユウキアオイ)

3月27日生まれ、千葉県出身の声優・歌手。4歳の頃から子役として活動し、2003年にテレビアニメ「キノの旅」で声優デビュー。2008年放送の「紅」では初のヒロインに抜擢され、その後さまざまな作品で主要キャラクターを演じる。2011年には「魔法少女まどか☆マギカ」の主人公、鹿目まどか役で大きく注目を集めた。またその一方で2012年3月に1st“プチ”アルバム「プティパ」を発表し、アーティストデビューも果たす。2013年2月には新居昭乃らを迎えた2nd“プチ”アルバム「メリバ」をリリースし、11月には神奈川・横浜アリーナでのアニソン系イベント「ANIMAX MUSIX 2013」に出演。そして2014年1月、表題曲がアニメ「世界征服~謀略のズヴィズダー~」のエンディングテーマに採用された1stシングル「ビジュメニア」を発表し、わずか3カ月後となる4月にはアニメ「彼女がフラグをおられたら」のオープニングテーマ「クピドゥレビュー」をリリース。そして同年夏の「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」への出演などを経て、2015年2月、1stフルアルバム「イシュメル」を完成させた。