尾崎くんのメロディにはネガティブな詩が合う
──「百日紅」はクリープハイプの尾崎世界観さんの提供曲です。
彼の作るフォーキーな曲が好きなので「フォークソングで弾き語りができるような曲が欲しいです」とお願いしたら、この曲が届きました。朝、スターバックスコーヒーにいたときに携帯に曲が届いて、その曲があまりにも素晴らしくて、その場ですぐ「嗚呼、好い 流れる血が 私を女だと知らせる」というサビができました。もともとは、不甲斐ない、どうしようもないダメな女性の歌でした。曲を聴いて出てきた言葉をメモしていったんですけど、「ヤキモチ」とか「堕落」とか、ネガティブな言葉しか出てこないメロディでした(苦笑)。尾崎くんのメロディにはそういう詩がすごく合うんです。
──メロディが言葉を呼んだんですか?
私が無意識に尾崎くんをイメージして聴いていたのかもしれないんですけど、それを抜きにしても結構ヤバい歌になってしまって(笑)。でも悲しい歌を作ってしまって、ライブで歌いたくなくなるのは嫌だと思ったんです。それでもっと自分のほうに寄せようと思ったら、自然とこういう歌詞になりました。尾崎くんが一番好きだと言ってくれたのは「身の程を知れと唱う百日紅 やましさと裏腹に流す涙」という歌詞。「ここはすごくいいですね。もうこれがあれば、僕はあとはお任せします」と言ってくれました。尾崎くんには「YUKIさんの曲からあふれ出る女性の優しさ、女性みんなが持っている母性みたいなのをすごく感じていました。この曲からも同じようなものを感じて、すごくよかったです」と言われました。
Charaの曲はやっぱりクセが強いんです(笑)
──そして、25年以上の付き合いだというCharaさんと一緒に作った「24hours」。ソウルフルで愛がたっぷり詰まった歌詞が心地よい歌ですね。
今回、Charaに曲をお願いしたところ「実はYUKIをイメージした曲が何曲かすでにあるから」と送ってきてくれて。その中の1曲が「YUKI的な24hours」、「24hours」の原曲でした。Charaと一緒にセッションして、私はあまり楽器が弾けないんですけど、Charaにいきなり「YUKI、ギター弾いて」と言われて、言われるがままに弾いてみたり、とりあえず歌って、どんどん録音していきました。
──この曲は、CharaさんとYUKIさんのクセがうまく両方ブレンドされていて、お二人にしか作れない、とてもハッピーな曲に仕上がっていますね。
「話し足りないわ 24hours」のところのメロディは、Charaがギターを弾きながら出てきたメロディで、その音に素直に歌詞を作っていくと、不思議とChara節になりました。今回YUKIの作品として作曲をお願いして、作ってもらって。もちろん「YUKI的な」というタイトルになっているということはYUKIをイメージして作ってくれているし、Charaの曲を歌えることはとてもうれしいんですけど、やってみたら実は一番歌詞を書くのが大変で。私、歌詞はそんなに時間をかけたり悩むほうではないんですけど、初めてこんなに悩みました。やっぱりクセが強いんです(笑)。歌いながらメロディにいろいろな言葉を入れてみるけど、入らない……みたいな。やっぱりChara特有のメロディが存在していて、Charaの言葉がちゃんと入るメロディになっているんです。Charaは「瞼のタンバリンで 合いの手を入れて」という歌詞がすごく気に入っているそうです。
この曲たちは“私のため”のフォルム
──アルバムの最後を締めくくるのは、YUKIさんが作詞、作曲、編曲を行った「美しいわ」です。ギター1本と歌の、シンプルな曲です。シンプルだからこそ、YUKIさんの歌がリアルに聴こえてきます。
誰かがインタビューで、ちょっと意地悪なインタビュアーに「メンバーがいなくなって変わりましたね」とか「歳を取りましたね」というようなことを言われたときに、「いや、変わることは美しいんだよ」と返していたのがすごくカッコよかったんです。過去に囚われていても何も変わらない。人は成長して変わっていくべきだと思いますし、変わっていくことは悲しくて切ないことでもあるけれど、美しいことでもあるんだということを私が体現して、表現できて、このアルバムでも言うことができたらうれしいと思いました。ギターを弾きながら、歌詞とメロディが同時に出てきた曲で、口笛は私が吹いています。奇跡的にうまくできました(笑)。
──今回のこのアルバムは、YUKIさんから出てきた音と言葉、頭と心の中で鳴っている音が詰まったアルバムになっていますね。
好きな人たちに曲を作ってもらったということもありましたけど、私が一番気持ちいい形を探してできたアルバムが「forme」なんです。この17年間、勉強させてもらったことがたくさんありましたし、感謝もしています。こんなに大変だったんだなとわかることもありました。自分でどこまでできるか、足りないところもわかりましたし、うまくできるところもわかりました。そういう意味でも、このアルバムは絶対に必要で。これは私が今、出すべきアルバムだったんです。これまで私の歌を聴いていてくれた人にも、初めて聴く人にも、まさに「これが今の私です」と言えるものができました。
──YUKIさんの今の“フォルム”が、このアルバムの曲たちなんですね。
「forme」は実は英語だと「form」で「e」が付かないんです。でも、フランス語で書くと「e」がついて「forme」になる。このタイトルには「for me(=私のために)」という意味もあります。この曲たちは私のためのフォルムで、アルバムはまさに私自身です。アレンジはほぼ私がやっています。以前ももちろんアレンジには参加していたんですけど、大まかなことしかやっていなかった。でも今回は自分の頭の中で鳴っている音を実際に形にして、それをミュージシャンに再現してもらっているので、そういう意味でも全然違います。原形も途中経過も、すべてに携わっているので、すごく充実感があります。
──3月9日からはツアー「YUKI concert tour "trance/forme" 2019」が始まりますね。
ひさしぶりのホールツアーです。ホールは客席が肉眼で見えて楽しめるところもあるのですごく好きです。とても楽しみですね。
──ツアータイトルにある「trance/forme」というのは、どういう意味が込められているんでしょうか。
今回のアルバムは曲によっていろいろな登場人物が出てきて、曲によって私は変わっています。ライブでもいろいろと自分の形を変えようと思っていて、変幻自在な私をお見せできればと思います。曲もライブをやるごとにどんどん変化していくと思うので、きっと面白いことになると思います。
- YUKI concert tour "trance/forme" 2019
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- 2019年3月9日(土) 神奈川県 厚木市文化会館
- 2019年3月10日(日) 神奈川県 厚木市文化会館
- 2019年3月19日(火) 埼玉県 大宮ソニックシティ
- 2019年3月20日(水) 埼玉県 大宮ソニックシティ
- 2019年3月28日(木) 大阪府 フェスティバルホール
- 2019年3月29日(金) 大阪府 フェスティバルホール
- 2019年4月6日(土) 福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2019年4月7日(日) 福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2019年4月20日(土) 石川県 本多の森ホール
- 2019年4月21日(日) 石川県 本多の森ホール
- 2019年4月28日(日) 神奈川県 神奈川県民ホール
- 2019年4月29日(月・祝) 神奈川県 神奈川県民ホール
- 2019年5月11日(土) 宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年5月12日(日) 宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年5月18日(土) 広島県 広島文化学園HBGホール
- 2019年5月19日(日) 広島県 広島文化学園HBGホール
- 2019年5月31日(金) 兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
- 2019年6月1日(土) 兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
- 2019年6月8日(土) 北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2019年6月9日(日) 北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2019年6月15日(土) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2019年6月16日(日) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2019年7月6日(土) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年7月7日(日) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- YUKI「forme」
- 2019年2月6日発売 / EPICレコードジャパン
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初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / ESCL-5180~1 -
通常盤 [CD]
3240円 / ESCL-5182 -
完全生産限定盤
[アナログ2枚組]
3780円 / ESJL-3115~6
- CD収録曲
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- チャイム[作詞:YUKI / 作曲:HALIFANIE / 編曲:YUKI、百田留衣、南田健吾]
- トロイメライ[作詞:YUKI / 作曲:CHI-MEY / 編曲:YUKI、CHI-MEY]
- やたらとシンクロニシティ[作詞:YUKI / 作曲:小形誠 / 編曲:YUKI、沖山優司]
- 魔法はまだ[作詞:YUKI / 作曲:吉澤嘉代子 / 編曲:YUKI、沖山優司]
- しのびこみたい[作詞:YUKI / 作曲:西寺郷太 / 編曲:西寺郷太、YUKI]
- ただいま[作詞:YUKI / 作曲:堀込泰行 / 編曲:YUKI、沖山優司]
- 口実にして[作詞:YUKI / 作曲:前野健太 / 編曲:YUKI、前野健太]
- 風来坊[作詞:YUKI / 作曲:津野米咲 / 編曲:YUKI、トオミヨウ]
- 転校生になれたら[作詞:YUKI / 作曲:川本真琴 / 編曲:YUKI、川本真琴、STUTS]
- Sunday Girl[作詞:YUKI / 作曲:細野晴臣 / 編曲:細野晴臣]
- 百日紅[作詞:YUKI / 作曲:尾崎世界観 / 編曲:YUKI、沖山優司]
- 24hours[作詞:YUKI / 作曲:Chara / 編曲:皆川真人、Chara、YUKI]
- 美しいわ[作詞・作曲・編曲:YUKI]
- 初回限定盤DVD収録内容
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- チャイム(Lyric Video)
- トロイメライ(Music Video)
- YUKI(ユキ)
- 1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年のバンド解散後、2002年にシングル「the end of shite」でソロ活動を開始した。2012年5月にはソロ活動10周年を記念して東京・東京ドーム公演「YUKI LIVE "SOUNDS OF TEN"」を開催し、約5万人を動員。JUDY AND MARY時代にも東京ドームでライブを行っていることから、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った初の女性ボーカリストとなる。2017年2月にソロデビュー15周年を迎え、3月には約2年半ぶりのオリジナルアルバム「まばたき」をリリース。2018年1月には、シングルコレクション「すてきな15才」とライブDVD / Blu-ray「YUKI concert tour“Blink Blink” 2017.07.09 大阪城ホール」を発表した。2019年2月に9枚目のオリジナルアルバム「forme」をリリース。3月からホールツアー「YUKI concert tour "trance/forme" 2019」を開催する。
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