ダンスすることは生きること

──「坂道のメロディ」「わたしの願い事」「STARMANN」と、この3年間にリリースしたシングル曲が、「FLY」の中に違和感なく入っていますね。

この3曲は（タイアップの）お話をいただいてから、物語やテーマに寄り添うように作った楽曲でしたし、その時点では次のアルバムのことを見据えて作ったものではなかったので、「FLY」のどの位置に置くかいろいろ曲順を組み替えながら、自分の中で一番フィットする並びにしました。私がシングル曲で何を大事にしているのかということが、アルバムの流れの中で聴いても、よくわかりましたね。

──どういうことでしょうか？

アルバム曲で書く詞とシングルで書く詞は、私のマインドが違うんです。シングルになる曲は時代に投げかけるもので、皆さんに単発で聴いてもらう曲。ラジオから流れることを想定している曲。シングルになる曲は、歌詞もメロディも全体の印象も、シングルにするために作っているんだという意識が、私の中には一貫してあるんだと改めて思いましたし、「きちんといい曲を作ってきているな、YUKIは大丈夫だな！」と確認できました（笑）。

──アルバムを見据えて作った曲ではなかったにも関わらず、このシングルを作っていたときから、まるで「FLY」が始まっていたかのように、ちゃんとつながっていますよね。

そうなんです。これはすべての制作を終えてから気付いたことだったんですけど、収録した16曲の歌詞にはほぼ、“踊る”というニュアンスの言葉が入っていたんですよ。

──それはすごいですね。

私はダンサーではないけれど、YUKIにとってダンスは重要なワードなんだと思いました。動く。跳ねる。揺れる。ただ歌うだけではなく、私は自分の身体のすべてを使って、YUKIを動かしている。私にとってダンスは生きると同義語なので、踊るという言葉は生きていることを実感できるんですよね。

寄り道をしながら次の場所へ

──アルバムの最後は、タイトルチューン「fly」です。この曲で「FLY」は幕を閉じますけど、秒針が常に進んでいるように、早くもYUKIさんが次の一歩を踏み出している姿が見えてくるようです。

私は同じ場所に、ずっとはいられないんだと思いました。だから「もう行かなくちゃ」といつも思っています。今回のアルバム制作がスタートした最初の頃、私が目指していたのは、こういう完成形ではなかったけれど、どんどんフィジカルなもの、もっとダンサブルなものになっていきました。だから“踊る”というワードがどの歌詞にも入ったんだと思います。私は常に「こっちかもしれない、いや、あっちかもしれない」と、寄り道をしながら次の場所に進んでいるんです。私はこれからもきっと、1つの場所に留まらず、その時々のこだわりと楽しさを抱えて進んでいくんだと思います。

──「FLY」というタイトルは、今のYUKIさんにぴったりだと思いました。

ファッションデザイナーは自分のショーのテーマを四六時中考えていて、そこから決して逃れられないんだという話をインタビューで読んだことがあるんですけど、アルバムのタイトルにするワードは、その作品の全体像やテーマを言い表すものだけではなくて、今のYUKIを表すワードでもなければいけない。私は自分自身そのワードをどう日々に生かして体現していくのかを考えました。FLYは直訳すれば「飛ぶ」ですけど、スラングでは「カッコいい」「弾け飛んでいる」「セクシー」という意味もあるらしいんです。それを知って、フィジカルで“anytime dance”なこのアルバムを一言で表せる言葉は「FLY」しかないと思いました。

──10月からは来年1月末まで続く全国ツアー「YUKI concert tour“Flyin' High”'14～'15」がスタートします。オリジナルアルバムを携えた全国ツアーは約3年ぶりになりますね。

「FLY」が持っているちょっと懐かしい匂いや雰囲気も漂わせつつ、今の私をステージの上で思いっきり開放していくので、かなり弾けた感じのライブになると思います。ファンの皆さんとの距離を近くに感じられる密室感を楽しみたいです。