音楽ナタリー PowerPush - YUKI

“今の自分”を追求したダンスアルバム

躊躇なく「レリゴー」

──続く「Jodi Wideman」は浮遊感が心地いいですね。

YUKI

夜中に窓から抜け出して、友達や恋人に会いに行くような、10代の頃の秘密をイメージして(詞を)書きました。Jodi Widemanは架空の人物ですけど、詞を書いたあとに、実際に私はジョディに会っていたことを思い出したんです。イギリスに3カ月くらい行っていたときに、英語を教えてくださった方の名前がジョディだったことを思い出して、あの頃の自分と今の自分がシンクロしましたね。

──「Jodi Wideman」では「♪レリゴー」と歌っていますね。「誰でもロンリー」の「奈落から這い上がれ 誰でもアイドル」にしても、歌詞にポンと入っている言葉から、具体的なイメージを連想してしまいます。

私は日常生活の中で詞を書いているので、例えば、新聞を読んだときに知った時事的なことでも、ある日、詞の中にパッと入り込んでくるんです。例えば「レリゴー」の部分は、もともと「Let it go」と書いていたんですけど、私は今の時代を生きているのだから、そこは躊躇なく「レリゴー」って歌わないと!って(笑)。

KAKATOのライブに一目惚れ

──「It's like heaven」や「ポートレイト」では、YUKIさんの低い声が印象的でした。

私が持っているカラッとした高音域ではない声、普段の私が話しているときの声の延長のような声を歌の中に入れてみるという実験をしました。1オクターブ下の低い声でずっと歌った「ポートレイト」では、私はこんな低い声まで出せるんだという新しい発見がありました。

──「眼鏡を外して」はマイナー調の曲ですね。

マイナー調の曲は今までの曲の中にもあまりないので、とても珍しいですよね。実は、この曲は「megaphonic」を制作していた頃にはあったので、もう4年以上前の曲です。とても気に入っていたんですけど、マイナー調の曲は自分の中で異質ということもありましたし、「megaphonic」は外にエネルギーが向いていたアルバムだったので、あのアルバムには収録できなかったんですね。でも、今回は9曲目の「スリーエンジェルス」からの流れにできれば「眼鏡を外して」も生きると思ったので収録しました。

YUKI

──「眼鏡を外して」の歌詞が他の収録曲と少し感触が違ったのは、4年前の曲だったからなんですね。「スリーエンジェルス」も不思議な世界観を持つ曲ですが。

この歌詞に関しては、物語を作っているかのように書きました。一時期は学校の人気者だったのに、何かのトラブルが起きて、人気が翳ってしまった女の子が主人公です。何かを起こしたくてもがいているんだけど、うまくサバイブできなくて、出口がなかなか見えてこないような、主人公が1つのところに留まっている歌を作りたかったんです。ゲーム音は後から入れたんですけど、RPGの画面は場面が変わっているのに、ゲームをしている本人は同じ場所から動けていないイメージですね。

──「君はスーパーラジカル」は、ゆったりとした横ノリのグルーヴが心地いいですね。

私もこの曲はとても気に入っています。音と身体がぴったりと合ってしまうような心地よい横ノリの曲も、やってみたかったことの1つでした。

──「波乗り500マイル」には、KAKATOのフリースタイルのラップが乗っています。今までのYUKI作品にはなかったアプローチですね。

この曲のデモはずいぶん前に作っていたんですけど、もうその時点で誰か男性にラップを入れてもらいたいと思っていて。あるとき、今回この曲でドラムを叩いてくれた松下敦さんに「カッコいい2人組がいるからライブを観に来ない?」ってお誘いをいただいたので行ったら、(KAKATOの)環ROYさんと鎮座DOPENESSさんが本当にカッコよくて。すぐに「『波乗り500マイル』でラップをやってもらいたい!」と思いました。それを敦さんに言ったら、「俺の思った通り! きっとそうなると思ってYUKIちゃんに声をかけたんだよ」と言っていました(笑)。

──「口笛」と「カ・リ・ス・マ in the dark」では、東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一さん、加藤隆志さん、沖祐市さん、NARGOさん、元フィッシュマンズでPolaris、So many tearsの柏原譲さんが参加しています。

私と玉井健二くんと百田留衣くんの3人でアレンジを構築していった曲と、たくさんのミュージシャンが参加して、それぞれの解釈を持ち寄ってできた曲が1枚のアルバムの中できちんと肩を並べているのも「FLY」の面白いところだと思います。

──皆さんとのレコーディングは、どんな雰囲気だったんですか?

「口笛」で、皆さんと一緒にハンドクラップをしている途中で、NARGOさんがちらっと遊びに来てくれたので、急遽飛び入りでハンドクラップに参加していただきました(笑)。口笛を吹いているのは、沖祐市さんとNARGOさんですね。スカパラの皆さん、口笛はとても上手に吹けるんですって。私はうまく吹けないんですけど(笑)。

ニューアルバム「FLY」 / 2014年9月17日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] / 4104円 / ESCL-4277~8
通常盤 [CD] / 3240円 / ESCL-4279
アナログ盤 / 3780円 / ESLJ-3083~4
iTunes Storeにて配信中!
CD収録曲
  1. 誰でもロンリー
  2. Jodi Wideman
  3. はみだせ ラインダンスから
  4. 波乗り500マイル (feat. KAKATO)
  5. 君はスーパーラジカル
  6. It's like heaven
  7. 真夜中の恋人
  8. ポートレイト
  9. スリーエンジェルス
  10. 眼鏡を外して
  11. 口笛
  12. わたしの願い事(映画「ひみつのアッコちゃん」主題歌)
  13. STARMANN(フジテレビ系ドラマ「スターマン・この星の恋」主題歌)
  14. 坂道のメロディ -version FLY-(アニメ「坂道のアポロン」オープニングテーマ)
  15. カ・リ・ス・マ in the dark
  16. fly
初回限定盤DVD収録内容
  • STARMANN -Music Video-
  • 誰でもロンリー -Music Video-
アナログ盤収録曲

SIDE A

  1. 誰でもロンリー
  2. Jodi Wideman
  3. はみだせ ラインダンスから
  4. 波乗り500マイル (feat. KAKATO)
  5. 君はスーパーラジカル
  6. It's like heaven
  7. 真夜中の恋人
  8. ポートレイト

SIDE B

  1. スリーエンジェルス
  2. 眼鏡を外して
  3. 口笛
  4. わたしの願い事(映画「ひみつのアッコちゃん」主題歌)
  5. STARMANN(フジテレビ系ドラマ「スターマン・この星の恋」主題歌)
  6. 坂道のメロディ -version FLY-(アニメ「坂道のアポロン」オープニングテーマ)
  7. カ・リ・ス・マ in the dark
  8. fly
YUKI(ユキ)

YUKI

1972年生まれ、北海道出身の女性シンガー。1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年の解散までに、数々のヒット曲・名アルバムを発表する。2002年にシングル「the end of shite」で本格的なソロ活動をスタート。2012年2月には10周年を記念したシングルコレクションアルバム「POWERS OF TEN」を、11月にはカップリング曲を集めた「BETWEEN THE TEN」を発表した。また同年には日本武道館2DAYSを含む全国ツアー「YUKI TOUR“BEATS OF TEN”」を行ったほか、東京ドームでワンマンライブも開催した。2014年9月17日に約3年ぶりとなるオリジナルアルバム「FLY」をリリース。10月12日より全国ツアー「YUKI concert tour“Flyin' High”'14~'15」をスタートさせる。