ナタリー PowerPush - YUKI
やっと歌えた自分の本当の気持ち アルバム「うれしくって抱きあうよ」完成
いいと思ったことを言葉にできて、行動できる人は強い
──今作に収録された曲たちは、どこか懐かしい感触を持った曲も多いですね。
私が小学生の頃に聴いてた音楽……それは私のルーツなんですけど、自分の体に染み込んでいたものが散りばめられていますね。ただ、アルバムに入れるための曲選びをしていたときも、自分の気持ちにそのまま上手に乗って、素直に選んでしまったとしか言えなくて……。今回のアルバムは、素直という言葉がいちばん似合うかもしれないです。
──アルバムの1曲目が「朝が来る」。そして、ラストは「夜が来る」。1日の始まりから終わりまでを描いたアルバムでもあるんですか?
みんな平等に1日24時間与えられているけれど、その限られた時間をどう有効に使うのかは自分次第なんだと、そういうふうに捉えられるようになったんです。「うれしくって抱きあうよ」も、うれしいんだったら抱きあえばいいじゃない、触りたかったら触ればいいじゃない、という気持ち……心に思ったことを行動するってステキじゃない? という気持ちをそのまま書きました。“言霊”という単語があるくらいなので、いいと思ったことは言葉にするべきなんじゃないかと思ったし、いいと思ったことを言葉にできて、行動できる人はやっぱり強い人なんじゃないかなぁ。生きていくって、どうしてもいろいろあるし、自由に生きようとすればするほど厳しい現実が目の前にやってくるけど、決して人はひとりぼっちでは生きていけないし、たくさんの人たちに守られて生きているんだと思えたら、同じ1日でもステキに過ごすことができるんじゃないかなと思います。死ぬ間際に、私は「今日も楽しかった」と思いたいし、人生をたった1日のことのように短かったなと思うのかもしれないと思ったんです。
──なるほど。
1日は短いようで長くて、人生は長いようで短い。実はこのアルバムに、「人生は短い。それはまるでたった1日のように」という詩を書いて載せているんです。それが、このアルバムのコンセプトと言えば、コンセプトかもしれない。人生って短い、あれもできなかった、これもできなかった、と思うよりも、今日1日はあんなこともあった、こんなこともあった、ちゃんと洗濯もしたわ、お掃除もできたわ、結構いいことがあったわ、また明日、 じゃあおやすみ、って寝るほうがいい(笑)。その積み重ねで人生が終わってしまうのだとしたら、たくさんの人にやさしくできて、たくさんやさしくされて、いっぱい笑えて、好きな人を増やして、幸せをたくさん感じて、感謝の気持ちを増やしたほうが、絶対に幸せだと思うんです。なんで私は幸せじゃないんだろう、なんでついてないんだろう、そう思った時点で、きっともう幸せではないんだと思います。私は幸せになりたいのよ! と思ったら、じゃあ幸せになろう! と気持ちを替えるだけで、何かがそこで生まれるんです。本当に、自分次第なんだと思います。
──今の時代、どうして自分だけがこんな目に遭うんだろうって思っている人って、本当にたくさんいると思うんです。でも、今のYUKIさんの言葉を聞いたら、そうか! って思ってくれる人も多いんじゃないかしら。
本当ですか! うれしいです! もちろん、そんなふうに気持ちを切り替えられない方もいらっしゃると思うんですけど……。サバイブしていくことを楽しめるくらいに、私はタフになりたいんです。すごく辛いときに笑うと、心もいつのまにか笑っているし、免疫力も上がるらしいんですよ!(笑) だったら、私は笑いたい。100%全部が楽しい人、100%幸せな人なんていないんです。だけど、それをわかった上で、あえてうれしくって抱きあおうよ、と思うんです。ありがとうと思ったら伝える、うれしかったら笑う、感謝の気持ちを伝えたかったら言う。やっぱり、どんなに心の中で思っていたって、言葉にしなければ相手には伝わらないでしょ? 私はこのアルバムを今発表したいんです! って、心から思っているので、今すぐみなさんに届けたいですね。そして、みなさんにいろいろなことを思ってほしい。このタイトルだけでも、ジャケットを見ただけでも、1曲だけでも、何かを感じてほしいと思います。
「自分らしくいる」というのが、今年のテーマ
──初回限定盤にはビデオクリップのほかに、YUKIさんが今回のアルバムをダンスで表現した映像「Dance! Dance! Dance!」を収録したDVDが付属しますね。なぜ、アルバムをダンスで表現しようと?
アルバムを目で見るのも楽しいんじゃないかなと思って。それで、私も踊ってみたいなと思って、バレエの動きを取り入れたダンスを踊りました。
──あのぉ……YUKIさんって、バレエやってましたっけ?
全くやったことがないです(笑)。なので、すごくヘタクソなんです! ある意味、衝撃映像かもしれないですよ。私のダンスの60点ぶりを楽しんで観てください(笑)。ヘタでもいいから、怖がらずに踊る。何かあったときにも、恐れずに行動に起こしてごらん? 感じたことを言葉に出してごらん? という、思いのままに踊ってみました。もうね、本当にうれしかったから踊った、という映像です。
──そして7月からは全国ツアーが始まりますね。
今回のアルバムをちゃんと表現してあげたいので、「うれしくって抱きあうよ」というタイトルどおりに、手作りで、手触りを大切にしたライブにしたいです。観終わったあとに、今、この時間を一緒に過ごしたんだな、という生々しい感触が残るようなツアーになると思います。
──今年はアクティブな1年になりそうですね。
はい。今年はコミュニケーションの年にしようと思っているんです。いろいろな自分に会いたいし、いろいろな方とお会いしたい。どこへ行っても何をしても、ちゃんと自分でいられるようになってきたので。「自分らしくいる」というのが、今年のテーマですね。
CD収録曲
- 朝が来る
- プレゼント
- COSMIC BOX
- ランデヴー
- just life! all right!
- チャイニーズガール
- 恋愛模様
- さようなら、おかえり
- うれしくって抱きあうよ
- ミス・イエスタデイ
- 汽車に乗って
- 同じ手
- 夜が来る
初回限定盤DVD収録内容
- 「汽車に乗って」「ランデヴー」「COSMIC BOX」「うれしくって抱きあうよ」ビデオクリップ
- 撮り下ろしダンス映像「Dance! Dance! Dance!」
YUKI(ゆき)
1972年生、北海道出身の女性シンガー。1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年の解散までに、数々のヒット曲・名アルバムを発表する。また、1999年のバンド活動休止中にはTHE B-52'Sのケイト・ピアソンらとスペシャルバンド「NiNa」にシンガーとして参加。さらに2001年にはCHARAやちわきまゆみらとガールズバンド「Mean Machine」を結成し、ドラマーを務めた。2002年にシングル「the end of shite」で本格的なソロ活動をスタート。バンド時代と異なり、先鋭的なサウンドと前衛的なビジュアルで唯一無二の世界観を確立した。2007年10月には、ソロ活動5周年を記念したベストアルバム「five-star」がオリコンウィークリーチャート1位を獲得している。