大団円では済ませないアルバムメイキング

──新曲の中で一番ボーカルレコーディングで悩んだのは「New World」ですか？

小倉　いや、最後の「Billion-Carat」ですね。

石原　うん。

──確かに「EDMの手法を取り入れたJ-POP」「ダブステップ風J-POP」というカッコ付きのダンスミュージックではなく、かなりガチ感のあるEDM、ダブステップですもんね。この曲がアルバムのラストを飾っていることにもビックリしました。

石原　最後に皆さんが考えるゆいかおりらしい曲を歌って「めでたしめでたし」ってなるんじゃなくて、さらに新しいことに挑戦していることには私たち自身ビックリしました（笑）。

──しかもタイトルが“10億カラット”で、詞の中では「いつかなるのBillionaire ハートの」と宣言して「Hey, Be a Bright GEM!」と聴き手こと“宝石”たちにハッパをかけている。

小倉　私、さっきから同じことばっかり言ってる気がするんですけど、このデモは特に衝撃で（笑）。その歌詞やタイトルもそうですし、あとサウンドもそうで。「Billion-Carat」って確かにダンスミュージックではあるんだけど、私たちがこれまで踊って歌ってきたダンスミュージックとはリズムのルールが違うんですよ。

──EDMは頭打ち。拍の表でリズムを刻むから、裏拍を刻むヒップホップやジャズやハウスとはリズムのマナーが違うって言われがちですもんね。

小倉　だからどこに軸足を置いてリズムをとればいいんだろう？とは考えました。

唯ちゃんと私の声が重なったら目の前が開けた

──どうやって解決しました？

小倉　抽象的になっちゃうんですけど、ゆいかおりが発揮できるカッコよさとこの曲の持つカッコよさの架け橋みたいなものを探してみました。最初このサウンドに寄り添って、かなりシリアスに歌っていたんですけど、なんかしっくりこなくて。

石原　以前もお話した気がするんですけど、私たちのキャラクターだと“クラブに通ってるセクシーなお姉さま”みたいなカッコよさは発揮できませんから（笑）（参照：ゆいかおり「NEO SIGNALIFE」インタビュー）。

小倉　それでいろいろ試行錯誤してみたんですけど「この新しいリズムをちょっと子供っぽいくらいに純粋に楽しんじゃおう」って気持ちを切り替えて歌ってみたら、急に曲に対する印象自体が変わったし、すごくスムーズに、ゆいかおりらしいEDMとして歌えるようになったんです。

石原　で、そうやって唯ちゃんが「ゆいかおりらしい『Billion-Carat』」っていう道を見つけてくれていたから、私は少しラクをさせてもらえました（笑）。

──ラクできた？

石原　私もやっぱりどうやったらゆいかおりらしいカッコよさみたいなものを表現できるのか、すごく悩んでたんですけど、この曲は唯ちゃんが先にレコーディングしていて。サビで唯ちゃんと私がユニゾンになるんですけど、先に録っていた唯ちゃんの声に自分の声を重ねたとき「あっ、私が考えていた歌い方でいいんだな」「私の思うゆいかおりのカッコよさでよかったんだな」ってなったんです。「こういうふうに歌おうね」って2人で話し合ったわけじゃないのに、考えていることは同じだった。だから唯ちゃんの声と自分の声が混ざった瞬間、目の前がパッと開けた気がしたんです。

──さっきの友情の話じゃないけど、本当に心意気の部分で通じ合っていた、と。以前も石原さんは「なぜかはわからないけど、小倉さんのことはわかっちゃう」っておっしゃってましたよね（参照：ゆいかおり「Ring Ring Rainbow!!」インタビュー）。

石原　あはははは（笑）。そのときの私、ほとんど何も言ってないに等しいですね。でも本当になぜかはわからないけど唯ちゃんのことがわかっちゃうんです。

小倉　私にとっても「キャリさんだったらこう歌うだろうな」「こういうお芝居をするだろうな」ってわかるのが当たり前のことだから、改めて「心意気が通じてますね」って言われると逆にビックリしちゃいますね。でも今回のアルバムでは本当に新しい挑戦をたくさんさせてもらってるんですけど、それでもゆいかおりらしい作品になってるのは、やっぱりこの2人で声を合わせているからなのかな、って思ってます。