「フゥーッ！」が証明する“ゆいかおりらしい”新機軸

──石原さんの選曲の“観点”は？

石原　唯ちゃんもそうだと思うんですけど、11月からのツアーで初披露する予定だったので「ライブで盛り上がる曲を」って。

小倉　うん。

──実際お客さんの反応っていかがでした？

石原　今回初めて、振り付けの中にダンスバトルっぽいパートがあって……。

──2コーラス目のあとギターソロのところでソロのダンスを回しますよね。

石原　この曲はツアー初日の名古屋（11月22日の愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール公演）で初披露したんですけど、そのソロのところで（甲高く）「フゥーッ！」っていうお客さんの声が聞こえてきて（笑）。

小倉　聞こえた聞こえた！ あの「フゥーッ！」を聴いたときは「わかってもらえた！」ってすごい感動した！

──確かに名古屋のお客さんは“わかった”んでしょうね。PVのメイキングを観てもダンスバトル前後のお2人って、ここまで聴いてきた「NEO SIGNALIFE」像を体現していましたし。撮る直前、小倉さんは“夏織に勝つ”とばかりにキメ顔を作ってるのに、石原さんは恐ろしくノンキな調子で「負けないんだからー」と言っていて。しかもその直後、小倉さんは自分のキメ顔に吹き出しちゃってたし（笑）。

石原　だからちゃんとゆいかおりらしくて、でもカッコいいことが伝わる、私たちなりの新しい曲になったなって思ってます（笑）。

ゆいとかおりの絶妙なズレ方

──カップリングの「オリオンからのメッセージ」は一転。松井五郎さん作詞、CHI-MEYさん作曲のフォーキーでセンチメンタルなバラードです。

小倉　実はここまで切ない感じのバラードって、今までゆいかおりでは歌ってこなかったので、すごく新鮮だったし、すごくいいなって思いました。ちょっと大人になった気がしたというか（笑）。

石原　あはははは（笑）。でも確かにゆいかおり的には一番切ない曲だし、一番大人っぽい曲ですよね。

──その切なくて大人っぽい曲はどう料理しました？

石原　「NEO～」と同じ。主体的に歌えた気がします。私自身、落ち込んだときは切ない曲を聴いて気持ちを落ち着けることで「またがんばっていこう」って思えるタイプだし、歌詞に「凍えた街路樹」とか「ポケットでメールの音が響く」とかみんなが知っているリアリティのある光景が出てくるから、自分の気持ちを曲に乗せられたのかな、って。

小倉　私は「オリオン～」を歌ってると、ちょっと不思議な感覚になるんですよ。頭の中に絵本のような光景が浮かんできて。その絵本の中のヒロインが少し悲しそうに「凍えた街路樹」の間を歩いていると、空からこの曲が降ってくる感じ。上からなのか、隣でなのかはちょっと曖昧なんですけど、私はその子の近くでこの曲を歌ってあげている感じがしてるんです。

──かたやヒロインに移入して歌い、かたや詞の世界の具体的な登場人物なのかは曖昧だけど、確実にその世界にコミットしている人として歌った、と。

小倉　なんか全然違っちゃってましたね（笑）。

石原　ねっ！ てっきり唯ちゃんも同じ気持ちで歌ってると思ってたのに（笑）。

小倉　でも同調できてる（笑）。

──そうなんですよね。コーラスワークもこの曲の大きな聴きどころになっていますから。

小倉　見た目や性格について「似てるね」って言われることがよくあるんですけど、似ているようで実は全然違う2人なので。

石原　歌うときに思い浮かべる光景が違うように考え方は真逆だったりしますから。

小倉　でもそのズレ方、例えば夏織ちゃんの出っ張り方と私のヘコみ方がちょうどいい感じ。重ねてみるとピッタリハマる。ゆいかおりってそういう存在だから、ちゃんと声を重ねられるんだと思います。

ゆいかおりが2015年に狙うターゲット

──ちょっと話が前後しちゃうんですけど「NEO SIGNALIFE」で「I know TARGET」と歌った2人が2015年に狙うべき“ターゲット”って？

石原　何を狙えばいいんだろう？（笑）

小倉　ねっ？（笑） ただ、自分たちの考えていることを言葉にできるようなったのもそういうことだと思うんですけど、ゆいかおりとして5年活動してきて、やっと自分のやるべきこととかやりたいことがはっきりわかってきた気はしていて。

石原　うん。でも時代の流れとか、そのときどきの状況によってやるべきこととかやりたいことはまた変わってくるだろうから、今「これを狙います」「ここを目指します」って具体的には言えないし、これから自分がどんな存在になるのか全然想像はつかないんですけど、とにかく視野は広くしておきたいな、とは思ってます。広い視野で何パターンもアイデアを持っておけば、状況が変わってるのに固定観念に縛られちゃって何もできなくなる、みたいなことはなくなるはずなので。

小倉　で、そのときどきに起こることを踏まえつつ、そのとき狙うべき“ターゲット”が見つけられたらいいですね。そのためにも曲選びもそうだし、ライブもそうだし、トークもそうなんですけど、今できることは全部できるようになっておきたくて。そうすれば「今回あれができたんだから、次はこれもそれもできるはず」って狙える場所や目指せる場所の幅も拡がるはずですから。