ナタリー PowerPush - ゆいかおり
初の夏全開ポップチューン&オトナな新境地
楽しいこともつらいことも分かち合ってきた2人
──では今回のレコーディングはどうでした?
石原 長く一緒にやっているからこそ「求められている歌い方はこうかな?」というのが自分なりに理解できるので、意外と苦戦することなく歌えました。
小倉 2ndアルバム(2013年10月発売のアルバム「Bunny」)に入っていた「翼になるよ」もハードルが高かったんですけど、それがあったからこそ「Intro Situation」は意外とすんなり入り込めたかなと思います。
──歌詞を自分の言葉として歌うとき、お2人はその歌詞を自分のものにするための変換作業をどのように行っているんですか? べったりヒロインに寄り添ってしまうものなのか、ある程度距離を置いているのか。
石原 私はベッタリ寄り添ってはいないですね。景色が出てきたときに、この子たちの目線じゃなく、遠くから見たほうがよくわかるというか。
小倉 私はいつもわりとそうなんですけど、先に物語を描いて、そこにこの子たちを当てはめるみたいな。頭の中で風景や気持ちを想像して、だったらこの子はこう歌ってるかなっていうふうに考えます。普段アニメに声を当てる感じに近いと思います。
──フレームを設定して眺めているという視点は、やっぱり職業柄というところが大きいんでしょうか。
小倉 そうかもしれないですね。だから曲によって自然と声色が変わったりはしますね。意識しなくても。
──お2人それぞれの捉え方なのに、自然と出ているものが一致してるのが面白いですよね。
小倉 でもたぶんお互い、自分はこうしようと思いながら、相手がこう来るんだろうなーというのがわかるんですよ。
石原 うん、それは確かにあるよね。
──それだけ通じ合えているのは面白いし、うらやましい関係ですよね。幼なじみでバンドやってますみたいな関係ならわかるけど、それぞれの活動がある中でのユニットという間柄なわけですし。
小倉 でも私たちはもう幼なじみに近いくらいずっと一緒にいて、楽しいこともつらいことも全部を分かち合ってきたので(笑)。
石原 食べるものも一緒だったしね(笑)。
小倉 山も谷も一緒に乗り越えてきたから、自然と通じ合えるんだと思います。
──そういった曲の捉え方、歌詞の受け止め方は最初の頃から変わってないですか?
石原 最初の頃はどこにアクセントを置いたらいいのかなとか考えるのに必死で。結局わかんなくなっちゃって、そうすると歌詞が置いてけぼりになるんですよ。だから結局技術よりも気持ちが大事だな……って気付いたのがこの頃くらい(テーブルに時代順に並べられた全作品の中から5thシングル「君のYELL」を指しながら)。けっこう遅いですけど(笑)、そこからはとりあえず自分の思うがままに歌ってみようというスタンスになりました。
小倉 最初の頃は言われたことに応えるのに必死でした。でも徐々に声優のお仕事で学んだことが歌にも生かせるようになって。歌い方で自分なりの遊びを入れたりとか、「こうしてみたい」という欲がだんだん伴ってきた、みたいな感じです。
──分岐点になったのはどのあたり?
小倉 うーん、「Shooting☆Smile」(2011年4月発売の4thシングル)ですかね。「Puppy」の頃には楽しんで歌えるようになっていたので。
ゆいかおりが歌う権利、義務、野心
──一方カップリングの「MIRRORING DESIGNS」はバキバキのダンスミュージックで、かわいらしいお嬢さんが2人で歌ってるのに、権利だの義務だのという……。
ゆいかおり/「MIRRORING DESIGNS」*short ver.
小倉 まさかゆいかおりの曲で「野心」なんて歌うとは思ってなかったです(笑)。
石原 「権利かあー」って。この頃(初期の作品を指しながら)には想像もしてない単語だったので、ゆいかおりもここまで来たか!と思いました(笑)。ここまでバキバキなダンスミュージックはなかったので歌えるかなって心配だったんですけど、歌ってみるとスイッチが入るというか。ここまでテンション上がって歌えるんだなって、新境地を見つけた気分です。
小倉 夏は2人とも誕生日ということもあって、ちょっと大人っぽい曲調を目指してるというのは事前に聞いていたんです。今までにない私たちが出せたらいいなと思っていたので、歌っていてもすごく楽しかったですね。あと2人ともダンスが好きなので、この曲はきっとダンスが映えるだろうなと思うと、ライブで歌うのも楽しみです。
──さっき歌い方のプランニングについて聞いたのは、今回の2曲の歌い方がそれぞれまったく違ったからなんですよ。この切り替えはどうしてるんだろうっていう。
石原 「Intro Situation」は遠くから見てましたけど、これはもうちょっと私自身に近付けて歌いました。ここまで激しくはないですけど、私の中にもある感情なので、それを全面に乗せていこうって考えながら。
小倉 今までが表舞台のゆいかおりを歌ってたとすると、この曲はそんな表舞台に立つために日々がんばっている心境とか、そっちに近い気がするんです。普段見せない決心、負けないようにがんばらなきゃって思ったこととか、今までの経験を振り返りながら歌いましたね。
──メロディに乗せて「権利と義務」なんて歌うこと、あまりないですよね(笑)。でもすごくフックになるし、耳を奪われるんですよ。
石原 そこは私のパートなんですけど、初めにもらったときはどっちが歌うか知らなかったので、私だったかーって思いました(笑)。
──いつもと違う歌の表現は大変でしたか?
小倉 いつも以上に練習して臨んだんですけど、いざ録るとなるとなかなか気持ちが入らなくて。でも先にサビを録ったらうまくいきました。Aメロは口調がちょっとキツめなので、なかなかうまく歌えなかったんですよ。サビが一番伝わってくるって言われたので、先にサビを歌ってAメロBメロを録ってみたら、ちゃんと気持ちが付いてきて。
石原 私は朝早くのレコーディングだったんですけど、逆にテンション上がっちゃって(笑)。最初は声を慣らしていこうよって感じで歌ってたのに、一発目からあまりに声が出るからすぐ録っちゃおうって。今までに感じた思いが出てくれば出てくるほどボルテージが上がって、意外とすんなり歌えました。
- ニューシングル「Intro Situation」 / 2014年7月2日発売 / キングレコード
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1836円 / KICM-91523
- 通常盤 [CD] / 1188円 / KICM-1523
CD収録曲
- Intro Situation
- MIRRORING DESIGNS
- Intro Situation(off vocal ver.)
- MIRRORING DESIGNS(off vocal ver.)
初回限定盤DVD収録内容
- 「Intro Situation」MUSIC VIDEO
- MAKING
ゆいかおり
小倉唯と石原夏織からなるユニットとして2009年に結成。2010年5月にはシングル「Our Steady Boy」でメジャーデビューを果たす。それぞれ声優として活動しながらもコンスタントにリリースを重ね、2011年9月には1stアルバム「Puppy」、2013年10月には2ndアルバム「Bunny」を発表した。2014年7月にニューシングル「Intro Situation」をリリース。8月16日には「Intro Situation」の発売と2人の誕生日を祝うライブイベント「ゆいかおり BIRTHDAY SPECIAL LIVE『INTRODUCTION!!』」が開催される。