音楽ナタリー Power Push - 妖精帝國
人間界に降臨した妖精たちの現在進行形
妖精帝國のあるべき姿はダークヒーロー側にある
──そして本編ラストが「Shadow Corps」。訳すとアルバムのテーマそのものである「闇の軍団」ですね。
ゆい ゾンビの軍団が押し寄せてきたという歌だ。ダークヒーロー、つまり闇というものは、見え方の問題であってすべてが悪と決まったわけではないと私は思っていて。妖精帝國のあるべき姿というのは、そのダークヒーロー側にあるのだ。憎まれてはいるが、そこには正義がある。我々なりの正義をもって生きている。歌詞はこうしたイメージで書いたものだな。
──とても妖精帝國らしい雰囲気に仕上がったのかなと。
Nanami あれ、そうですか? サウンドは今までよりももう少し重め、ギターもベースもドラムも重厚になって新しいタイプの曲になったと思っていたのですが……。
橘 妖精帝國らしさで言えばボーカルのメロディはそうかもしれませんね。ただサウンドは、イントロの特徴的な三連符を絡めた刻みとか、非常にシンプルでカッコいいものが作れたなと思います。ギターのハモりも怪しいコード感で、怖さとか闇というものを十分に表現できたんじゃないかと。
紫煉 「Shadow Corps」はかなり早い段階に作った曲で、今回のテクニカルなことに挑戦していく傾向の出発点になった感はありますね。「ここまでやっちゃえ」と表現に制約を設けずにとことんやる雰囲気が生まれて、ワクワクしたのを覚えています。
橘 昔は自分とゆい様の2人でしたけど、こういうことがしたくて今のバンド体制にしたのはありますね。今回のアルバム制作ではいろんな新しいことに挑戦したし、新しい我々の音を生み出せた満足感があります。
妖精帝國の変化と挑戦
──今回のアルバム「SHADOW CORPS[e]」は、妖精帝國のサウンド面に大きな変化のあった作品でもあったわけですね。
ゆい 確かにそうだな。今回はバンドとしての試みがいっぱいあるので、バンド体制を改めて打ち出した妖精帝國に付いてくる者たちはいるか、という側面はあるな。
──ゆい様は制作中、こうした変化をボーカリストとしてどのように受け止めていましたか?
ゆい とにかく難しい。例えば「白銀薔薇奇譚」はミドルテンポだが、Aメロの詰め込み具合ったらなくてだな、テンポはゆっくりかもしれんが、別にゆっくりとは思わなかった。だが難しかったのは私だけでなく、皆もハイレベルなことに挑戦していたので、制作時には苦しんで、だがそれゆえにいい作品ができたのではないかと思っている。これは新しい我々と言ってもいいのではないだろうか。
橘 ミックスの作業も1つひとつの楽器の音がクリアに聴こえて、メンバーの存在感が出せるよう意識しましたし、ボーカルもこれまでよりも少し大きめにしました。マスタリングも最高の形で納得できる内容になって、制作だけでなく仕上げの部分でも今までの作品とはだいぶ印象が変わって聴こえると思うので、ぜひ多くの人に届いてほしいですね。
──アルバム封入チラシによると、アルバム楽曲を披露する式典は、まだ準備中?
ゆい 詳細は未定だが、「式典決定!」という知らせだけは伝えておこうと思ってな。
一同 (笑)。
橘 式典は近々で必ずやりますので、ぜひ臣民の皆さんには楽しみにしていただきたいです。
- ニューアルバム「SHADOW CORPS[e]」
- [CD+DVD] 2015年8月5日発売 / 3780円 / Lantis / LACA-15496
収録曲
- Attack!!
- "D" chronicle
- 闇色corsage
- 白銀薔薇奇譚
- 残夜の獣
- calvariae
- Infection
- 檄
- ancient moonlit battleground
- Shadow Corps
ボーナストラック
- 体内時計都市オルロイ(テレビアニメ「少女革命ウテナ」劇中曲カバー)
DVD収録内容
- Shadow Corps(Music Video)
妖精帝國(ヨウセイテイコク)
1997年、妖精帝國終身独裁官・ゆい(Vo)と橘尭葉(G)を中心に結成された音楽ユニットで、正式名称は妖精帝國第三軍楽隊。妖精を信じる人間が少なくなってしまった現代において、音楽活動を通じて荒廃した妖精帝國の復興を目指す。2006年3月にシングル「あしたを許して」でランティスよりメジャーデビュー。ヘヴィメタルを軸に、テクノ、トランス、ゴシック、クラシックなどさまざまな要素を盛り込んだサウンドで唯一無二の世界観を作り上げている。2013年1月のメンバー脱退・加入を経て、ゆい(Vo)、橘尭葉(G)、Nanami(B)、紫煉(G)、Gight(Dr)の5人編成となった。2015年8月に通算6枚目のオリジナルアルバム「SHADOW CORPS[e]」をリリース。