福岡発の4人組ロックバンド・ユアネスが6曲入りCD「Shift」を11月21日にリリースする。
初の全国流通盤1st Mini Album「Ctrl+Z」に続く1st EP「Shift」には、「Ctrl+Z」とあわせて“Ctrl+Z+Shift=元に戻した行動を「やり直す」”という意味が込められており、前作と密接な関係にある作品に仕上がっている。音楽ナタリー初登場となる今回は、メンバー全員にインタビューを実施。バンド結成のいきさつなどを振り返りつつ、新たなテイストが加えられているという新作に込めた思いについて、そしてバンドが今どんな状況にあるのかを探った。
取材・文 / 田山雄士 撮影(ヘッダ写真除く) / 大橋祐希
こう見えて取っつきやすいバンドなんです
──ユアネスは福岡で結成されたバンドですが、今年上京されたんですよね?
黒川侑司(Vo, G) はい。前作の「Ctrl+Z」をリリースした1カ月後、今年の4月に上京してきました。福岡にいた頃よりも音楽のための時間をいっぱい作れるようになったので、よりよい環境で活動できてます。
古閑翔平(G) 向こうでは日々アルバイトに追われてた感じだもんね。今はやっと音楽に集中できる環境になって。
田中雄大(B) みんな近所に住んでるんですよ。それもあって、東京にもだいぶ慣れました。
──それぞれが感じる上京してからのバンドの変化について、もう少し詳しく聞いてもいいですか?
小野貴寛(Dr) そうですね、全体的に質が上がってきてて……。上京してから、ライブ1つにしても反響がよくなってきてると思いますね。まず、東京が拠点だとどこにでも移動しやすいし、ライブに出られる回数が増えてきて。僕個人としては対バンしたドラマーと話す機会も増えて、技術の向上にもつながってます。
黒川 ミュージックビデオを数本YouTubeにアップし始めてから、いろいろガラッと変わった感じがあるよね。そういう意味でネットの反響も大きいかな。ユアネスを知っている方が着々と増えてきたので、このタイミングで新作を出せることも楽しみなんです。前作のリリース時より、いろんな人から期待してもらえてる気がしますね。
古閑 「Ctrl+Z」のリリース前は、ライブ会場限定で自主制作盤を販売するのがメインだったからね。あとは通販でCDを購入してくれる人もちょくちょくいたんですけど、全国流通盤がいろんなお店に置かれるようになってから、さらに多くの反響が届くようになりました。今までユアネスのことをまったく知らなかった人たちが、僕らの音楽を聴いて実際にライブに来てくれるっていうことが増えて。
──皆さん物販に立って、お客さんと話したりもするみたいですね。
古閑 そうなんです。どんな心境の人たちが聴いてくれてるのか、僕らの音楽に対してどういう感想を述べてくれるのかなって。楽曲を作るうえでいろいろ勉強する意味でも、なるべくリスナーと話したいという気持ちがありますね。
田中 曲を聴いてからライブに来てくれる人が増えたことで、ライブ中のお客さんのリアクションも自然と変わってきて。演奏しながら見ていて楽しいですね。僕らの曲はどちらかと言うと、手を挙げたり、ノリノリで踊ったりするタイプではないけれど。
黒川 「踊れー!」とかは言わないです、僕。
古閑 黒川が言ったら、なんか怖いわ(笑)。
田中 でも、お客さんが楽しみ方を模索してる感じが見えると、僕らもすごくうれしいんです。
黒川 こう見えて取っつきやすいバンドなんですよ、ユアネスって(笑)。第一印象はクールに感じるかもしれんけど。
古閑 近寄りがたいと思いきや、しゃべりだしたら「いい人たちやんけ!」みたいな。
「音楽でメシ食っていきます!」「俺もそうします!」
──ユアネスってバンド名、いいですよね。シンプルで実在する単語のように聞こえるけど、検索するとちゃんとバンドのことだけがヒットするという。
黒川 造語なんですけど、本当にまぐれでいい感じになったので気に入ってます。メンバーのグループLINEで、好きな文字を1つずつ出し合っただけなんですよ。「僕は侑司だから“ゆ”かな」みたいな。それを並び替えていちばん語呂がよかったのがユアネスで。当時はそもそもバンドというものをまったくわかってなくて、コンセプトもなく「組んだだけ」って感じで……でも、ライブに出るにはとりあえずバンド名が必要じゃないですか。
──では、結成からの話も少し聞かせてください。4人は福岡の音楽専門学校で出会ったそうで。
田中 はい、4人がそろったのはそこですね。古閑との出会いはもう少し前で、高校のときに面識もないままにいきなり連絡が来たっていう。
古閑 学校も違うのにね(笑)。僕は高1で楽器を始めたんですけど、あるとき同級生が「知り合いにうまいベーシストがいるよ」って教えてくれたんです。で、当時流行ってたSNSのGREEですぐに田中を見つけて「1回スタジオに入りませんか?」ってメッセージを送って。それを受け入れてくれたのが大きかったですね。スタジオで演奏する姿を見て、すぐに「ええやん!」と思いました。
田中 で、高2のときにコピーバンドを組んで「どうせなら一緒に専門学校へ行こう」みたいな。
古閑 そうそう。それで、FSM(福岡スクールオブミュージック&ダンス専門学校)で同期のドラムコースにいた小野ちゃんに会って。黒川はボーカルコースじゃなくてPAコースにいたんです。
黒川 僕と古閑も入学前からTwitterではつながってて。
古閑 「FSM 入学」で調べると、つぶやいてる人がいるもんなんです。だから、とりあえず全員フォローして。
──すごい積極的ですね。
古閑 そうですね、ネット上では。
全員 わはははは!(笑)
古閑 黒川がPAコースにいながらも歌がうまいってことも、学校の友達伝いに知ったんですよ。だから「もしよかったら、歌ってる動画とかあれば送ってください」ってメッセージを送って。
黒川 高校のとき、1回だけ文化祭に出た動画があったんだよね。
──黒川さんも高校から音楽をやっていたんですか?
黒川 いや、やってなかったんです。文化祭もバンドをやってる友達に「お前、カラオケうまいんやから頼む!」って頼まれて出ただけなんで。それでONE OK ROCKを歌ったりしたかな。
古閑 楽器もやってなかったね。ただ、声がすごくよかったので、すぐにボーカルに誘いました。
黒川 オリジナル曲もやってたけど、それも友達が作ったものをそのまんま歌う感じで。僕はまさか自分がミュージシャンになるなんて思ってもいなかったです。当時の僕は本当に「将来なんてどうでもいい」と思ってて……気づいたらFSMにいた感じなんです。おかげで、ケーブルの8の字巻きは一番得意になりましたけど。
古閑 それ、PAコースの流れでする話なんかなあ(笑)。
小野 スタジオの片づけ、確かに早いもんな。
──でも、どこかでその意識も変わったんですよね。
黒川 専門を卒業するまでは、まだまだ本気でバンドに打ち込んではいなかったんです。でも僕以外のメンバーは「音楽で食っていきたい」っていう強い意識を持ってたので、なんとかそこについていくうちに自然と僕のバンドへの向き合い方も変わりました。
古閑 実は卒業タイミングで当時のドラマーが「上京する」と言って東京に行ったんです。僕らとしても「いつかは」と考えてはいたけど、まだCDも出してなかったし、自主企画とかワンマンライブとか、福岡でやってないことが多すぎて、1つずつちゃんとやっていかないと失敗するからと思い留まって。
田中 それで一時期はサポートドラムを迎えて活動してたんですけど、「やっぱり正式メンバーを入れよう」と。
古閑 そこで浮かんだのが同期の小野ちゃんで。なんでかって言うと、専門学校の入学のときに自己紹介があったんだよね?
小野 うん。楽器隊は全員同じオリエンテーションをするんです。
古閑 まあ、そこで名前に加えて何か一言言わなきゃいけないわけですよ。で、僕が「古閑です。田中を誘ってこの学校に来ました。音楽でメシ食っていきます!」って自己紹介したら、いきなり小野ちゃんが手を挙げて「俺もそうします!」って(笑)。
小野 自分の順番、まだ回ってきてないのにね。
全員 わはははは!(笑)
田中 しかも、そのときまだ全然話したことなくて、知り合いじゃないっていう。
小野 俺は覚えてないんだけどね。
古閑 今思い出しても面白いです。俺の自己紹介のタイミングで知らないやつがブッ込んできたから「なんで!? コイツやべーな!」と。それが強烈に印象に残ってたんですよね。なおかつ学校でもピカイチでドラムがうまかったし、人間的にも明るくて、音楽性が広げられる予感がしたので。
黒川 そこからユアネスが加速していったのは間違いないよね。
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「Ctrl+Z」と「Shift」は2つで1つ
- ユアネス「Shift」
- 2018年11月21日発売 / HIPLAND MUSIC
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[CD] 1620円
YRNS-0002
- 収録曲
-
- 変化に気づかない
- 凩
- 少年少女をやめてから
- T0YUE9
- 夜中に
- 日々、月を見る
- ツアー情報
「Shift Tour 2019 – ONE MAN TOUR –」 -
- 2019年1月5日(土) 福岡県 INSA
- 2019年1月13日(日) 東京都 WWW
- 2019年1月19日(土) 愛知県 APOLLO BASE
- 2019年1月20日(日) 大阪府 OSAKA RUIDO
- ユアネス
- 黒川侑司(Vo, G)、古閑翔平(G)、田中雄大(B)、小野貴寛(Dr)からなる、福岡で結成された4人組ロックバンド。2018年3月に初の全国流通盤「Ctrl+Z」をリリースし、4月に東京・渋谷TSUTAYA O-nestで東京初ワンマン、大阪・梅田Zeelaで大阪初の自主企画、5月に福岡INSAでワンマンを開催し、全てSOLD OUT。その後も各地のライブイベントや「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」「RUSH BALL」などの大型フェスに出演。2018年11月に6曲入りCD「Shift」をリリースし、2019年1月より本作を携えた全国ツアーを開催する。