ナタリー PowerPush - younGSounds
ついにアルバム完成! イルリメがモリカワ&やけのはらにインタビュー
パンクやクラブシーンの重要人物たちが集まって結成されたドリームバンド、younGSoundsが5年以上の活動を経てついに初のオリジナルアルバム「more than TV」をリリースした。このアルバムには以前からライブでおなじみの楽曲を中心に11曲を収録。ハードコアやヒップホップをごった煮にした内容ながら一般的なミクスチャーとは一線を画す、ハチャメチャでハイテンション、かつ誰もが楽しめるパーティサウンドに仕上がっている。
今回の特集ではyounGSoundsの最初期メンバーで2009年に脱退したイルリメがインタビュアーとなり、バンドのフロントマンであるモリカワアツシ(Vo)とやけのはら(Rap, Sampler)に取材を実施。知られざる結成時のエピソードからアルバム「more than TV」の魅力までたっぷり語ってもらった。
インタビュー / イルリメ 構成 / 橋本尚平 撮影 / 佐藤類
イルリメが心細いからって、巻き添えでやけのはらが連れてこられた
──ライブで今まで聴いてきた曲がようやくスタジオ録音で音源化されたということで……。
やけのはら え、そんな他人行儀な感じですか?(笑)
モリカワ わはははは!(笑)
──だって今日は俺インタビュアーだからちゃんとしないと(笑)。ライブだけを続けてきてこれまではずっと得体の知れないバンドって感じがあったんですけど、曲を録音してパッケージ化することでメンバーそれぞれやバンドとしての意思が少しずつ明らかになってきて、今回のアルバムでyounGSoundsの輪郭が見えてきた気がしますね。
やけのはら ありがとうございます。なんとなく今日のテンションがつかめてきました(笑)。
──というわけでまず、結成の経緯を教えてもらえますか?
やけのはら 結成は2006年ですね。元々はモリカワさんと、今はyounGSounds名誉メンバーになってる谷口(順)さんがidea of a jokeっていうバンドをやってて。そこに僕とか、もう辞めちゃったイルリメっていう人が参加して(笑)。それが最初ですね。
モリカワ idea of a jokeが活動休止してから、谷さんと電話で「イルリメ誘ってバンドやらない?」「それいいっすね」みたいな話をして、その5分後くらいにまずイルくんに電話したんだよね。
──ほかのメンバーはどうやって誘われたんですか?
モリカワ やけくんは確か、イルくんが「1人じゃ心細いから」って巻き添えで連れてこられたんだよね(笑)。
──そうでしたね(笑)。
やけのはら あはははは(笑)。
モリカワ (竹久)圏ちゃんは本当はyounGSoundsじゃなくて、idea of a jokeのギターが辞めたときに新メンバーとして誘うつもりだったんだよね。でもその後idea of a jokeのドラムの子が妊娠して、もう続けるの無理になっちゃったからyounGSoundsに移行して、そのときに圏ちゃんに正式にオファーしたんです。
──なるほど。younGSoundsっていう名前はどうやって決まったんですか?
モリカワ idea of a jokeの曲の歌詞から取ったんですよ。
やけのはら 「AUSTIN」ですね。僕はその曲がすごく好きで「ヤングサウンズ」って歌ってたのがすごく耳に残ってたんで、江の島にあるOPPA-LAって店でモリカワさんと一緒に企画をやったときに「ヤングサウンズ」ってイベント名にしたんです。そのイベントにはイルリメとかU.G MANとかも出てもらったから、それがバンド結成につながる流れになったんだと思ってます。
──あれ? 最初からこういうバンド名でしたっけ?
やけのはら そのへん、みんなの記憶があやふやなんですよね。最初のうちはidea of a jokeの一部を残した名前もあった気がするし。でもイベントの「ヤングサウンズ」に関わってたイルリメや僕や谷口さんがメンバーだから。
モリカワ 自然と「younGSoundsでいいんじゃない?」ってなったんだよ(笑)。
「これをライブやっていいのかな」っていう疑問はずっとあったよね
──younGSoundsの曲の作り方って面白いなと思ってて。ダンスミュージックとバンドサウンドを融合するのってなかなか難しくて、バンドがシンセやリズムマシンを取り入れると、どうしてもダサくなったり海外の模倣みたいになってしまいがちなんですよ。だけどyounGSoundsの曲は海外のバンドもやっていないような新しい手法で作られてる。でもこういう、サンプルをカットインして曲を作っていく「バンド演奏 VS サンプラー」みたいなやり方、1回目にスタジオに入ったときから雛形ができてましたよね。
モリカワ できてたんだよねえ。
やけのはら あー、今話してて思い出してきた。谷口さんの中に大枠のアイデアがあったみたいで「サンプラーを使ってなんかやりたいんだよね」って言ってたんだ。そう言われて、どうすればいいのか全くわからないままサンプラーを持ってスタジオに行ったの覚えてますね。「なんか適当に音入れてきて」って言われても、その適当のあんばいが全然わかんない(笑)。そんな状態でスタジオに入って、谷口さんのアイデアを実際に試してみたら、すっごいダサくて。みんな困って、そこでいったんまっさらになったんですよ。
──谷口さんのアイデアって?
やけのはら バンドがカッコよくバーっと演奏して、途中で急にサンプラーだけになって全然違う曲になるみたいな。それを延々繰り返し続ければいいんじゃないかって言ってたんですけど、やってみたら「何これ?」って笑っちゃう感じになったんですよ。でもその方法を残しつつも試行錯誤しながらちょっとずつ変えていったら「意外とこれでいいじゃないか」みたいになって。
──俺も覚えてます。強引に次々と変わる曲調も、歌だけじゃなくてラップがあるからなんとか聴かせることができるんじゃないかって。
やけのはら 「なんとか聴かせることができる」って(笑)。
──歌だとキーがあるから急に曲が変わると歌いにくいんですが、ラップを入れれば大丈夫なんじゃないかって。谷口さんの斬新な発想をみんなで形にするみたいな感じだったの覚えてますね。
やけのはら あれ、モリカワさん的にはどんな感触だったんですか?
モリカワ どうだったかなー? 面白かったけど、これをライブでやっていいのかなっていう疑問はずっとあったよね。
──自分たちの曲を初めてのお客さんがどう思うかってことですか?
モリカワ そうそう。自分たちはもう慣れちゃってたけど、同じ方法で音楽やってる人はほかにいないし、客観的に見たらどうなのかなって。最初はライブに誘われることもなかったし、自分たちからやろうともしなかったから、とりあえず初ライブまでは時間かけて曲を作り続けてた。
1stオリジナルアルバム「more than TV」 / 2012年7月18日発売 / 2500円 / felicity / PECF-1051
収録曲
- ヤングサウンズのテーマ
- HOT SHOT
- EMBASSEY OF YS
- EL SANTO
- HUMAN PSYCHOLOGICAL PARTY
- BEAUTY BOOTY GIRL
- CASH MONEY ENTERTAINMENT
- DA CHASE
- FORTUNE TELLER
- ヤングサウンズのDISCO
- ヤングサウンズのエンディングテーマ
Erection presents younGSounds
「more than TV」Release Party
2012年10月9日(火)
東京都 代官山UNIT
OPEN 18:00
前売 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別 / 前売購入特典あり)
<出演者>
LIVE:younGSounds / 曽我部恵一BAND / and more
DJ:JxJx(YOUR SONG IS GOOD) / ロベルト吉野(サイプレス上野とロベルト吉野)
チケット一般発売:8月12日(日)
younGSounds(やんぐさうんず)
idea of a jokeのモリカワアツシ(Vo)と谷口順(B)を中心に、KIRIHITOの竹久圏(G)、イルリメ(Rap, Key)、やけのはら(Rap, Sampler)、TIALAの柿沼実(Dr)が集まって2007年からライブ活動開始。その後イルリメが脱退、谷口が名誉メンバー化し、現在は元DROOPのmiesha(Vo, Key)、クリプトシティの中尾憲太郎(B)が参加している。音楽性は、バンド演奏のハードコアパンクとサンプラーによるヒップホップを切り刻んで混ぜあわせたような、極めて特異なパーティミュージック。2009年にライブアルバム「bootleg of ys」を発表し、2012年7月に初のスタジオ録音盤「more than TV」をリリースした。