ナタリー PowerPush - 吉木りさ
あなたに伝えたいメッセージ「世界は教室だけじゃない」
グラビアアイドルや歌手として精力的な活動を展開している吉木りさが、前山田健一(ヒャダイン)プロデュースの第2弾シングル「世界は教室だけじゃない」をリリースした。
吉木とヒャダインはともに自ら「暗黒時代」と表現する鬱屈した中学時代を経験。本作は、同じようにうつむきがちな日々を送る学生や社会人へ贈る、ストレートで力強いメッセージソングだ。
ナタリーではアルバム「Poche」のリリース時に続き、2度目のインタビューを敢行。本作に込めた思いや、暗黒時代の記憶、コンプレックス、そして順調に歌手活動を続ける現在の心境などを尋ねた。
取材・文 / 成田邦洋 撮影 / 上山陽介
「根暗あるある」でヒャダインと共鳴
──ヒャダインさんとのタッグが続きますね。
はい! 本当に出会えてよかったな、と思える大切な方の1人で、またヒャダインさんの曲を歌わせていただくことができて、すごくうれしいです! ヒャダインさんとの曲作りでは、自分の意見をとても尊重していただいているので、非常にありがたいです!
──そんな中、今回の「世界は教室だけじゃない」はどのような経緯で生まれたんですか?
ヒャダインさんと打ち合わせをするにあたり、事前にスタッフさんから「どういう歌を歌いたいか考えておいてほしい」と言われていたんですね。で、どうしようか悩んでいたとき、山手線の電車の中でふと思いついたんです。山手線ってドアの上にモニタがあってニュースが映るじゃないですか。そこでいじめで悩まれているお子さんのニュースを見て、自分の過去を思い出すと同時に「私にできることって何かな?」って考えたんです。
──ご自身の過去、というのは?
中学時代の私はすごく根暗で、ゾンビのような青春時代を過ごしてました。でも、今は周りの人にも恵まれて、すごく順調にお仕事させていただいている。過去のどうしようもない自分があったからこそ、今こうして日々がんばれている。だから、今学生さんや社会人の方で、居場所がなくて苦しい思いをしている人は、私みたいな人もいるから、全然今のままの自分を受け入れていいんだよ、と。
──歌うべきテーマを発見したわけですね。
そうなんです。ただ「こういうテイストの曲って、直接的すぎるので重たくなってしまうんじゃないかな?」とも思って。そのことを打ち合わせでお話しました。すると実はヒャダインさんも私と同じで、すごく暗い思春期を過ごされた方だったことがわかったんですよ。「仲間ですね! これは絶対いい曲作れますよ!」って言ってくださって。あとの打ち合わせは「あー、そういうのあるよねー!」みたいな「根暗あるある」で大盛り上がりでした(笑)。
──「根暗あるある」を具体的に教えてもらっていいですか?
例えば中学時代、私たちが結局どこでお昼ごはんを食べるかというと、トイレで食べるようになるんです。どこにも居場所がないので。「そうそう、あるよねー! トイレ、いいよねー、個室!」みたいな感じで話したりとか(笑)。
──すごく陽気に話されてますが(笑)、世に言う「便所飯」ですね。
それです! あとは、同じクラスのリーダー的な存在で、私たちにとって脅威に思える人が好きだと言ってるアーティストさんのことを、自分が好きになれなくなる、っていうのがあるんです。曲の背景にその人たちのことが浮かんでしまって素直に聴けない。私はそれをもう克服しているんですが、ヒャダインさんは今でもちょっと引きずってるらしいです(笑)。
見てくれている人は見てくれている
──暗黒時代というのは、時期としてはいつ頃ですか?
特に地獄のようだったのは、中3の1年間ですね。歌詞にも入ってるんですけど「家族に黙って歯を食いしばっていた」時期でした。
──だいぶつらかったようですね。
でも、やっぱり身内の人って「なんか様子がおかしいなー」ってすごくわかるじゃないですか。それでずっと心配してくれていて。で、両親に「何か思ってることがあるなら話してみな?」ってあるとき言ってもらって、その瞬間「わー! 今までつらかったー!」って涙がドワーッと滝のように流れて、ようやく全部打ち明けることができました。これは中学3年の秋くらいだったと思います。
──それが状況が好転するきっかけになったと。
そうですね! すごく変わりました。それまでは自分の殻に閉じこもってばかりだったんです。でも、それだとどんどん岩のように気持ちが固くなってしまうので、そのフィールドからちょっと逃げて誰かに打ち明けてみたり「もう転校しちゃってもいいじゃん!」みたいな気持ちになると、意外と次につながるんだなー、って大人になった今、思っています。
──ご家族にかけられた言葉で印象的だったものはありますか?
私はコンプレックスの塊だったので、周りの女の子にどんどん染まっちゃえ、とか思ったこともあるんです。でも母親からは「りさはりさのままでいいんだよ」って。「あなたは一見、ちょっと不思議な子に思われるかもしれない。変わった子だから。しかも成績も悪いし、本当にひどい子だけど……」。
──辛口ですね(笑)。
ね、ひどいこと言われるんですよ!(笑) 「だけど、りさのその不思議なところが受け入れられるときが、絶対に来るんだよ」って。「そのときまで絶対に自分を否定しないで受け入れて、ずっと私は私でいいんだ、って思っていれば、見てくれている人は見てくれているからね、大丈夫だよ」みたいなことを言ってくれて。もう、その言葉にどれだけ救われたか!
──では、暗黒時代は中学校のときに終わりを迎えたと。
いや、それが中学の暗黒時代を脱出するために、私「高校デビュー」というものにチャレンジしたんですけど(笑)。ところが、やっぱり今どきのかわいい女の子と感覚がズレていて。中学のときとキャラも変えてハイテンションで「はじめましてー!」みたいに学校へ行ってみたら、みんなが「ざわ、ざわ……」「危険人物が来たぞ……」(笑)。結果的にまたも教室の中でポツンと1人になってしまい、落ち込みながら、不登校になりつつあったんですけれども……。
──高校でもまずいことに。
でも、そのクラスの中で1人だけ、すごくおとなしい学級委員の女の子が私を心配してくれたんです。私がたまにフラッと教室に入って授業を受けているときに、わざわざ手紙を書いて渡してくれて、「何かなー?」って思って読んでみたら「吉木さんお久しぶりです。今日来てくれたんですね。みんなすごく心配してるから、よかったらまた学校に来てくださいね」みたいな。
──素晴らしい人ですね。
もう、すごくいい人で! 今でもその子に感謝し尽くせないくらいありがたく思ってるんですけど。その子のおかげで少しずつ学校に行くようになって、だんだんクラスのみんなとなじめるようになって。なので高校時代は楽しく過ごすことができました。それもまた「見てくれている人は見てくれている」という母の教えなんですよね。
- ニューシングル「世界は教室だけじゃない」 / 2012年12月5日発売 / 日本コロムビア
- ニューシングル「世界は教室だけじゃない」CD+DVD盤 / 1600円 / COZA-737~8
- ニューシングル「世界は教室だけじゃない」CD盤 / 1260円 / COCC-16673
CD+DVD盤収録曲
- 世界は教室だけじゃない
- Over the rainbow!
- ナビゲーション
- 世界は教室だけじゃない(Instrumental)
- Over the rainbow!(Instrumental)
- ナビゲーション(Instrumental)
CD盤収録曲
- 世界は教室だけじゃない
- Over the rainbow!
- A Risa In WonderLand
- 世界は教室だけじゃない(Instrumental)
- Over the rainbow!(Instrumental)
- A Risa In WonderLand(Instrumental)
DVD収録内容
- 「世界は教室だけじゃない」Music Video
吉木りさ (よしきりさ)
1987年千葉県生まれ。小学4年から高校3年まで日本民謡を習う。2008年に坂本冬美のカバー「夜桜お七」でCDデビュー。2009年よりフジテレビ系深夜番組「キャンパスナイトフジ」にレギュラー出演して注目を集め、写真集やイメージDVDをコンスタントに発売する。以降、さまざまな雑誌の表紙やグラビアページを飾るほか、ドラマや映画、バラエティ番組など多方面で活躍。2011年3月には「yoshiki*lisa」名義でテレビ東京系アニメ「GOSICK-ゴシック-」のオープニングテーマ「Destin Histoire」をリリースし、2012年3月に1stアルバム「Poche」を発表する。8月には前山田健一(ヒャダイン)プロデュースのシングル「ボカロがライバル☆」を発売。12月5日、前山田プロデュース第2弾の新曲「世界は教室だけじゃない」をリリースした。