吉田山田「焼き魚」インタビュー|「吉田と山田が生きていればこの音楽は消えない」苦境に立たされた2人が切り開く新境地 (3/3)

山田の手描きイラストによるMV

──「焼き魚」のミュージックビデオは山田さんの手描きイラストを使ったアニメーションになると伺いました。

山田 普通だったら原画みたいなものを描いて「これを動かしてください」ってお願いすると思うんですが、今回は全部自分で描こうと思って。例えばブルブル震える線を表現するためには何枚も何枚も、コマの枚数分の絵を描く必要があるのでめちゃくちゃ時間がかかっています(笑)。今日も朝から描いていました。

──なぜご自身の手描きイラストを使うことに?

山田 ライブのグッズデザインとか、「イ~ハ~」という楽曲のMVに出てくるキャラクター原案とか、これまでにもいろんなイラストを描いてきたけど、すべて自分だけで完結するようなMVを作ったことがなかったんです。もちろんすべてを1人でできるわけではないから、動画作りには「もやし」のMVを作ってくれたアリ(佐々木基有)に入ってもらっていて。本当に2人だけで作っているのが楽しい。よっちゃんとかスタッフさんには途中の絵を見てもらうことはあるけど、このMVが本当にいいものかどうか、公開されるまでわからないんですよ。そこにすごくワクワクしています。

山田義孝(Vo)

山田義孝(Vo)

──最小単位のチームでMVを作ると言うのは、もしかしたらレーベルから離れたことでできるようになったことの1つかもしれませんね。

山田 そうかもしれないですね。たくさんの人が関わることでいろんな意見が取り入れられて、その結果いいものが生まれる瞬間もあるけど、ミニマムな人数だけで最後まで作り上げることで得られるものもある。誰かに任せてしまえばそれなりにいいものはできるかもしれないけど、僕は今このタイミングで自分の中に浮かんできた絵やキャラクターをMVにしたいと思っちゃった。毎日すごく大変だけど、達成感もすごくあります。

吉田 山田の言う通り、いいかどうかはわからないけど最後までやる、というのはすごくいいですね。アリのことも若い頃から知ってるし、仲よくなってからけっこう時間が経っているから、ある程度のものを生み出すことでお金にするのは簡単なんですよ。でも僕らも、おそらくアリも、お金をもらいながら「本当に自分がやりたいことってなんだったんだろう」と虚しく感じるような瞬間があるような気がして。「焼き魚」のMVを作る作業って、山田もアリもすごく大変なんですよ。でもやってて楽しいから、自分たちだけで最後までやろうとしている。お金になるかどうかじゃなくて、自分がワクワクするかどうかで仕事をしている2人が仕事をしているこの瞬間が、すごく尊いなと僕は感じています。

山田 楽しいけど、ちゃんと完成するかなあ(笑)。

吉田 僕も音に関してこだわることがあるからわかるんですが、「神は細部に宿る」という言葉は本当にあるんですよ。「こんな細かいところまでオーダーしたら迷惑かな」とか、「この予算でここまでお願いしていいかな」とか、いろんなことを考えちゃうけど、そういう思いを超えて「どうしてもここだけはこだわりたいんです」と口にして実行するのが大事で。山田とアリはそれがナチュラルに言い合える仲なんですよね。きっと誰にも伝わらないような細かいところも2人はこだわって作っていますので、楽しみにしてほしいですね。

吉田山田「吉田山田10周年記念『大感謝祭』」の様子。(撮影:松本いづみ)

吉田山田「吉田山田10周年記念『大感謝祭』」の様子。(撮影:松本いづみ)

新しい感性が垣間見える全国ツアー

──2月4日にはツアーが始まります。アコースティック形式のツアーと、バンド編成のツアーがありますが、どんなツアーになりそうですか?

吉田 ストリングスを入れたり、バンドサウンドだったり、アルバムの曲はけっこう攻めたアレンジのものが多いんです。だから2人だけのアコースティック編成で演奏するとなると、大変な曲ばっかりなんですよね(笑)。とりあえず山田は「焼き魚」用にコンロ持ってきてね。俺はギター弾くから。

山田 え、そこ再現する? 火気厳禁だよね?

吉田 楽器としてなんとかならないかな(笑)。コンロの音、入れたいんだよね。

──山田さんはツアーに向けてどんな気持ちですか?

山田 やっといつも通りツアーが回れるようになりつつあるのがうれしいですね。街中で声をかけられたとき、「YouTube観てます」「CD買いました」より「ライブ行きました」と言われるのが一番うれしいんですよ。ライブという空間を一緒に味わったというのが、僕の中ではすごく大きいことで。もう13年も活動しているけど、僕はまだステージに立つ直前まで怖いと思うときがあるし、緊張もする。でもその怖さも緊張感も、それを跳ね除けたあとの楽しさも味わった仲間が街中にいるということが何よりもうれしいから、ファンの方と一緒にライブを楽しみたいですね。

吉田 もちろん毎回ライブは違うんですが、特に今回のツアーは今までとはもっと違うものになるような気がしていますね。僕らの新しい感性に触れに来てもらいたいです。

山田 アルバムを作っているときに気付いたことですが、曲のほとんどに「生きる」という歌詞が入っているんです。それは大袈裟な意味じゃなくて、僕らが生きるには音楽が必要だし、自分たちが窮地に立ったからこそ出てきた言葉だとも思う。だから僕らがちゃんと生きていることを、ライブと新曲で感じ取ってもらえたらうれしいです。

吉田山田

吉田山田

ライブ情報

吉田山田「吉田山田ツアー2023」

Acoustic Set
  • 2023年2月4日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年2月5日(日)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2023年2月11日(土)宮城県 darwin
  • 2023年2月16日(木)香川県 DIME
  • 2023年2月18日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2023年2月19日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2023年2月23日(木・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年3月4日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠

Band Set
  • 2023年3月17日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年3月19日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年3月21日(火・祝)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)

プロフィール

吉田山田(ヨシダヤマダ)

吉田結威(G, Vo)と山田義孝(Vo)からなる男性2人組アーティスト。高校時代に出会った2人が紆余曲折を経て、2003年頃に音楽活動をスタート。地道なライブ活動を経て、2009年10月にシングル「ガムシャランナー」でメジャーデビューを果たす。2013年12月から2カ月にわたってNHK「みんなのうた」でオンエアされた「日々」が大きな反響を呼び、ロングヒットを記録。2020年4月にデビュー10周年を記念したベストアルバム「吉田山田大百科」を発表した。2023年2月に新曲「焼き魚」を配信。2月から3月にかけて全国ツアー「吉田山田ツアー2023」を開催する。5月には9thアルバム「備忘録音」をリリースする。