吉田山田|10年の活動を集約した「大百科」インタビュー&著名人ランナーによるリリース記念コメント

アルバム6枚分のライブ盤

──アニバーサリー盤には昨年行われた47都道府県ツアーのライブ盤が6枚付属します。かなり思い切った収録内容ですよね。

吉田 ツアーを回り始めた頃は、ベストアルバムにライブ音源を入れようとは全然思っていなかったんです。ただ、47都道府県を6ブロックに分けて、これまで発表したアルバム6作品をすべて網羅するツアーを計画するにあたって、記録として僕らのライブの音を残しておこうとは思っていて。各ブロックごとに1公演ずつ、録音用にエンジニアさんに入ってもらっていたんです。ツアーの後半にベストアルバムをリリースすることが正式に決まったタイミングで、もしかしたら今録音しているライブ音源をベスト盤に入れていいかもしれないと思い付いて。本当の意味で10年を振り返る作品って、すべての曲が入っていることだと思うんです。厳密には全曲が入っているわけではないんですが、無理言ってライブ音源をアルバム6枚分付けちゃいました。

山田義孝(Vo)

山田 アルバムとかシングルでリリースした音源だとバンドさんの力を借りていろんな音を入れているんですけど、47都道府県ツアーは全公演2人だけでライブをし続けてきて。単純にアレンジが全然違うし、純度がものすごく高い吉田山田がライブ盤には収められていると思うんです。全部のアルバムを持っている人に聴き比べてほしいくらいですね。

吉田 正直言うと、去年の47都道府県ツアーはすごく苦労したんです。ルーパーのような新しい機材を導入して、2人でどんなアレンジができるかを全部1から考えていきながら、リハーサルの時間もそこまでないのにすぐにセットリストが変わっていくわけですから。しかも47都道府県を6つのブロックに分けると1ブロックだいたい7、8公演しかないんですよ。けっこう仕上がってきたところで次のアルバムのセトリに変えなきゃいけない。だから個人的にはこうしてライブ盤として世に出せて本当にうれしい。値段的にはメチャクチャ高いものになってしまいましたが、10年に1度のことだからと思い、入れたいものはすべて入れました。

──Blu-rayのサブタイトルには「あの部分以外、全曲入ってます」とありますが、「あの部分」というのは……。

吉田 言わないでくださいね。権利的な問題が発生してしまうので。

山田 あの会場に来てくれた人ならわかる内容ですね。

──当日のライブではけっこうな尺を使っていたので、ライブレポートで書こうかけっこう悩んだんですよ(笑)。

山田 ダメですよ。もし関係者の方の目に留まったら大変なことになってしまいますから!

2時間半しゃべりっぱなしの副音声

吉田結威(G, Vo)

──Blu-rayのうち、MV集には副音声が入っていると伺いました。ライブ映像に副音声を付けるアーティストも多い中、なぜMVに副音声を付けたんでしょうか?

吉田 今の時代、MVはYouTubeで観れるものなので、ただ収録するのではなくて何か付加価値を付けたくて、副音声を入れることになったんです。副音声の収録は初めてだし、MV26曲分って2時間半以上あるので、けっこう身構えていたんですよ。曲によっては2人共黙っていてもいいかもしれない、みたいなことを話しながら収録し始めたんですけど、しゃべり始めたらもう止まらなくて。あっという間に2時間半経ってましたね。

──どんなことを話しているんですか?

吉田 MVを観て当時のことを振り返っていることもあるんですけど、けっこう関係ない雑談をしているところもあります。収録のときにマネージャーさんが買ってきてくれたチーズハットグを食べながらただ雑談している曲とか(笑)。

山田 お菓子を食べながら本当に自由にしゃべったよね。

吉田 26曲目になったときに「え、これで最後?」となって、急いでトークを締めたんですよ。放っとけば40曲分ぐらい収録できたんじゃないかな。すごく内輪的な楽しみ方なので推しにくい部分なんですけど、個人的には副音声をすごく聴いてほしい。「ガムシャランナー」のMVをしっかり観るのなんて8年ぶりくらいですから、MVを流すだけでもいろんな思い出がよみがえってきたし、当時の自分の表情とかファッションとかにもいちいちツッコんでるし。トークには2人の個性がよく出てるので、じっくり聴いて楽しんでもらいたいコンテンツです。

吉田結威(G, Vo)
山田義孝(Vo)

10年後もきっと笑ってる

──ベスト盤のリリースをもってデビュー10周年のアニバーサリー企画がひと段落すると思いますが、これからの吉田山田はどうなりそうですか?

吉田山田

山田 正直に言うと、いろんな可能性がありすぎて、自分たちでもまだわかっていない部分も大きいです。でも間違いなく楽しくなりそうなことだけはわかっていて。昔のMVを観て改めて思ったんですけど、デビュー当時の僕の恰好ってすごかったんですよね。三つ編みに蝶ネクタイでスカートを履いて、シルクハットを被って。今振り返ってみるとそれは自分たちが歌う音楽も一緒で、デビュー当時はすごく着飾っていた気がするんです。キャリアを重ねていくことで服を1枚1枚脱いでいくように自分自身に近付いていって、「証命」の頃には裸のような状態になった。それを経て今「着たことがない服を着てみたい」という気分なんです。裸一貫になって剥き出しの状態で歌うことで伝わること、発見できたことはたくさんあったけど、ヒリヒリしてしんどいこともあった。ここから先は音楽を楽しみたいんですよね。だから着たことがない服で自分たちを着飾ってみても面白いだろうし、自由な発想で楽しむのがここから先の自分たちなのかなと思っています。

吉田 「いくつになっても」と「微熱」は皆さんに聴いていただける最新の曲ではあるんですけど、僕らはもうその先にいて、すでに次の感覚で曲を作っているんですよ。しかも今、メチャクチャたくさん曲を作ってる。これは今まで感じたことがなかった感覚なんですけど、デビュー10周年を迎えて、3部作という連作を完結させて、さらにベストアルバムをリリースして、今すごく気持ちがスッキリしているんです。1つちゃんと壁を越えた実感がある。さらにちゃんと音楽に向き合えている。次のアルバム、けっこう変わると思います。もしかしたらわかりやすい変化じゃないかもしれないけど、僕らの根本が今までと変わったので、音楽もきっと変わる。すごくいい状態で11年目を歩き出せています。

山田 副音声を録るためにこれまでのMVを観ていて、この10年いろんなことがあったなと思い返したんです。つらいこともたくさんあったけど、それが全部笑い話になってる。きっとここから先の10年もいろんなことがあるけど、20周年のときには全部笑い話になっているんだろうな。それがちゃんとわかったから、未来に対して不安がないんです。この2人なら、きっと10年後も同じように笑えているはずだから。


2020年4月9日更新